親子関係がこじれると、子どもが大人になってからも親子両方の人生に悪影響を与えかねません。親子関係がうまくいかないことが仕事や結婚に影響することもあります。この記事では子どもの反抗期や親の過干渉、愛着障害、共依存など親子関係の悩みの原因を解説します。
- この記事でわかること
-
- 過干渉や親のエゴなど親子関係がこじれる原因
- 幼少期から思春期までの親子関係の変化
- 愛着障害は子どもの成長にどんな影響を与えるか
- 共依存親子の特徴と結婚への影響
こじれた親子関係の背景に考えられる不仲の原因
親子関係がこじれる理由はさまざまですが、大まかにまとめると以下の3つの問題が発生しやすいと考えられます。
- 互いを理解できない
-
- 親が子の気持ちや状況を理解できていない
- 子どもが何を考えているかわからない、学校のことや友達との関係がわからない
- コミュニケーションがとれない
-
- 普段から親子の会話が少なく、コミュニケーションがうまくとれていない
- 親が共働きでじっくり子どもと話す時間がないという要因があるケースが多い
- 反抗期
-
- 子どもが反抗期になると、どうしても親子関係がこじれやすくなる
- 反抗期は子どもの成長の証なので喜ばしいことだが、受け入れられない親も多い
このように親子関係で問題が生じてしまう背景には、親の過干渉やお互いの気持ちのずれなど、さまざまな原因が考えられます。
- 過干渉
- 子どもが成長して自分の意思で物事を決められる年齢になっているにも関わらず、口出ししすぎている
- 遠慮がない
- 親子だから、とあまりにも無遠慮に接していたり、遠慮なく厳しい言葉や仕打ちをしてしまい、自尊心を傷つけている
- 気持ちのずれ
- 親にいつまでも手がかかっていた頃の子どものイメージがあり、子どもの成長を受け入れられない
- 親のエゴ
- 「良い学校に行きなさい」など、親のエゴで子どもを縛りつけて、子どもの自由を狭めている
- 親への期待
- 子どもが親離れできず、いつまでも「親がやってくれて当たり前」と思っている。または親が小さい頃から子どもを過剰に甘やかしている
親子、家族は最も親しい他人とも言えます。血縁関係がある、一緒に暮らしているなどの理由からついつい「自分のことはわかってくれているはず」という甘えが生じやすいのですが、それぞれが別の人間である以上、やはり人間関係に問題はつきものです。次章では、それぞれの問題についてもっと詳しく掘り下げていきます。
親子の不仲の原因-中間反抗期と第二反抗期
親子間に起こる問題の根本的な原因として、幼少期の親(両親、保護者)との関係性が考えられます。どんな言葉をかけられたか、困ったときにどう対応してくれたかといった経験は、大人になってからもその人の価値観や自己評価などに非常に大きな影響を及ぼします。さらには、親から無意識にコミュニケーションのパターンを引き継いでしまっている場合もあります。
ハーバード大学が発表した「人生で幸福度に一番影響を与えるのは、幼少期の両親との人間関係」という記事をはじめ、幼少期の親子関係が人生に大きな影響を与えることが近年、脳の研究からも明らかになってきました。そこで、多くの親子が陥りやすい4つの問題について、詳しく見ていきましょう。
反抗期と中間反抗期の違いとは
知られている反抗期としては、乳幼児期の「イヤイヤ期(第一反抗期)」と思春期の「第二反抗期」が挙げられます。また、この間ぐらいの期間に現れることがある「中間反抗期」というものもあります。
- 中間反抗期とは
- 第一反抗期を適切に体験してきた子どもは順調に中間反抗期を迎えることが多い。どの子どもにも起こりうるもので、ごく自然な成長の一過程。子どもの自我が成長して大人になる準備を始めた段階
中間反抗期は「大人の行動や言葉を客観的に捉えられるようになった頃に起こる」とされ、具体的な時期としては「年長〜小学校低学年ごろ」に起こることが多いようです。中間反抗期では、親に口答えをするのが大きな特徴で、子どもとは思えないような表現や言葉遣いをする子もいます。たいていは、両親の日常会話などから学習している場合が多いようです。
まだまだ見た目には小さな子どもなので、自分と同等に反論してくることが、親にとってはより反抗的な態度に映ってしまうことが多いとされています。反抗的な発言が増えたり、言葉遣いが悪くなったり、大人の行動を冷静に見て批判したりするような言動が目立つようになるため、親としても子どもへの接し方が難しい時期でしょう。
逆に、第一反抗期の頃に反発や衝突が少なかった場合も中間反抗期が起こります。
一方で、中間反抗期を迎えない子どももいます。第一反抗期に厳しくしつけられたり、怖い思いをしたりして自分の思いを強引に押さえつけられた子どもは中間反抗期が起こりにくい傾向にあるようです。親に口答えをすると怖いことが起こる、自分が傷つけられると感じてしまっているためです。
また、自我が弱く周囲の状況に関心がない、発達そのものがゆっくりで自我の発達が遅めという場合に中間反抗期がないことがあります。このように、子どもの個性や持って生まれた性格など、個人差も大きいので、中間反抗期の有無が親子の関係性や子どもの成長に特定の影響を与えるとは言い切れません。
イヤイヤ期が終わって数年経ったら中間反抗期、そこからまた何年もしないうちに第二反抗期となってしまうと、親としてもへとへとになってしまうかもしれませんが、反抗期は子どもの順調な成長過程の一つでもあります。ぜひ、前向きに受け止めていきたいものです。
第二反抗期は思春期に迎える反抗期?
第二反抗期は、いわゆる思春期といわれる時期に起こります。
- 第二反抗期とは
- 第二次性徴を迎える小学校高学年から中学生くらいの時期に起こることが一般的。始まりの時期や終わりの時期、その長さなどには個人差が大きく、中には目立った反抗期を迎えない子どももいる
思春期の子どもは身体が第二次性徴によって大きく変化していきますが、心がついていかない状態であり、さまざまな不安やストレスを抱えやすい状態なので、反抗期という明確な時期でなくても反抗的な態度をとりがちなものです。
自分の身体が否応なしに変化していくことに心がついていけず反抗的な態度に出てしまったとしても、仕方のないことだと言えます。
さらに、小学生のうちはそれほど子ども同士の間に上下関係がないものの、中学生になると突然、先輩・後輩という呼び方が生まれ、そこに明確な上下関係が生まれ始めます。特に、スポーツ系の部活動をしていると、先輩の言うことは絶対、という文化が残っている学校も少なくありません。
第二反抗期は、こうした子どもながら複雑な社会に初めて接する時期であり、さらに身体の変化が起こる時期であり、子どもの心にかかる負担やストレスは並々ならぬものです。一概には言えませんが、反抗期に見せる反発は単一的な理由によるものではありません。不安・ストレス・不満・矛盾・自己主張など、やり場のない思いが反抗的な態度として吹き出してしまうとも考えられています。
反抗期の有無に男女の違いはありませんが、その言動や態度には多少差があるとされています。共通するのは「挨拶や返事をしない」「化粧や髪を染めるなど、服装が乱れる」「喫煙などの不良行為を試すように行う」といったことですが、他には男女によって以下のような態度に出やすいようです。
- 男子の場合の第二反抗期
-
- 暴力的な言動をする、物に当たる
- 壁や机を叩くなど、大きな音を出す
- 親に暴言を吐く
- 女子の場合の第二反抗期
-
- 男性的な言葉遣いをする
- 親に暴言を吐く
- 部屋に閉じこもる(立入禁止、などと書くケースも)
また、反抗期の子どもが見せるもう一つの特徴として、弱者には優しいというものがあります。例えば、母親が「そろそろお風呂に入りなさい」と言うと、「うるせえな!」などと暴言を吐く子どもも、おばあちゃんやおじいちゃんから同じことを言われると「わかってる」など、やや柔和な返事になることが多いようです。
一方、反抗期のない子どももいます。とはいえ、反抗的な態度を見せないからといって、必ずしも正常な発達過程を通っていないというわけではありません。例えば、性格がもともと穏やかで怒ったりイライラしたりしにくい子もいれば、反抗期が遅い子もいますし、反抗的な態度に出ない子もいます。
親子の不仲の原因-愛着障害とは
愛着障害とは、文字通り幼少期の愛着形成に問題を抱えている状態のことです。幼少期に親などの養育者と子どもとの間に情緒的な絆が育まれていくことを「愛着」と呼びますが、これが何らかの要因で上手くいかず、親や養育者の愛情を感じられない、信頼関係を構築できないまま成長していくと、対人関係や社会生活に問題を抱えやすくなるとされています。
これは、人間の正常な発達過程において、愛着形成を土台としてその後の情緒的・認知的・行動的・社会的発達が進んでいくためです。つまり、土台となる愛着形成が不十分だと、その後の発達にも影響してくるのです。愛着障害がよく発達障害と間違えられやすいのも、このように発達過程と密接に関係してくるからだと考えられます。
他にも、愛着障害がその他の障害や精神疾患、高血圧、過敏性大腸症候群などのリスクにつながる可能性もあることが指摘されています。
このように、最初は最も身近な養育者から、そして成長とともに周囲の人との関わりを通じ、子どもは愛着を獲得していきます。愛着関係は心の深い部分に根づき、自立心や自尊心を育て、人間関係や社会性の発達に影響するとされています。ですから、愛着形成が上手くいかなかった人は自立心や自尊心が低かったり、他者とのコミュニケーションに問題を抱えやすくなったり、社会生活や心身の健康に悪影響を受けたりすることがあるのです。
反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)と脱抑制型対人交流愛着障害
「愛着障害」という言葉には医学的な意味もあり、前述の心理的な愛着障害とは少し意味合いが異なります。医学的な「愛着障害」はかなり意味が限定的であり、「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型対人交流愛着障害」の2つに分類され、いずれも5歳以前に発症すると定義されています。
- 反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)とは
- 「人に対して過剰に警戒してしまう」という状態
- 脱抑制型対人交流愛着障害
- 「人に対して過剰に馴れ馴れしい態度をとってしまう」という状態
反応性アタッチメント障害も脱抑制型対人交流愛着障害も、明確な診断基準がWHOのICD-10(国際疾病分類第10版)にも記載されており、本人の特徴となる行動や身体症状の他、親や養育者との関係性が重要です。
- 関係性の診断基準
- 「虐待を受けていた」「頻繁に親や養育者の交代があった」などで、発達段階において愛着形成がきちんとなされているかの判別がつきにくい9ヶ月頃より前の子どもは診断不可能。また、症状の特徴が自閉症スペクトラムやその他の発達障害ともよく似ているため、その点も慎重に診断される
このように、医学的な愛着障害は年齢的には子どもの障害とされますので、大人になって何らかの社会的な問題を抱えていたとしても、それは医学的な意味での愛着障害とは診断されません。医学的な愛着障害の治療には投薬などの手法ではなく、カウンセリング・心理療法・家族療法などが用いられます。
親子の不仲の原因-過干渉とは
過干渉とは、過剰に子どもに干渉することです。子どものすることや考え方にあれこれ口出しして親の思い通りにコントロールしようとしたり、子どもが望んでいないことを先回りしてやったりしてしまいます。こうして親の価値観や理想を押しつけられた子どもは、自分のペースで物事を考えたり行動したりする機会を奪われてしまいます。
過干渉な親の特徴には、以下のようなものがあります。
- 友達を選ぶ、または友達付き合いに口出しする
- 子どもの服を選ぶ
- 子どもの持ち物が、自分の好みに合わないと批判する
- 行動を把握しようとする
- 子どもを監視する
- 宿題や学校の準備に口出しする
- 子どもの進路を自分の思い通りに決めようとする
- 結婚相手や付き合う相手に、親が条件を出す
- 携帯電話をチェックする
- 親が決めた習い事をさせる
- 一人暮らしを認めない
- 門限がやたらと厳しい
- 社会通念から逸脱しているものなど、親独自のルールを強制する
過干渉になる親は、基本的に自分と子どもの境界線が曖昧です。そのため、子どもに意思があることを頭では理解していても心理的に納得できず、自分がやらせたいことなら子どもがやりたくないことでも無理やりやらせますし、子どもが自発的にやりたいと思ったことを抑圧したり、行動が監視したりします。
過干渉の親に育てられた人は生きづらさを感じやすい?
このように過干渉な親に育てられた子どもは、過干渉が原因だと気づかないまま生きづらさを抱えている場合もあります。過干渉は子ども最も確実に不幸にできる方法、とも言われますが、具体的には以下のような生きづらさを抱えやすくなります。
- 愛された実感がない
- やりたいことがわからない
- 無意識に抑圧を感じている
- 思考停止・無感覚(自分がいなくなる)
- 受け身になりがち
- 自己否定が強い
- 「自分が好きになれない」「自分が悪い気がする」「自分に価値がない感覚がある」などと感じる
- やってみたいことがあってもどうせできない、と無気力になる
- コミュニケーションがうまくいかない
- 自尊心を傷つけられているので自分のことも他人のことも尊重できない
- 人の顔色や評価を過剰に気にしてしまう
- 人に合わせすぎるので、自分の意見がわからない
- 外の世界に対して恐怖心が強く、学校や社会に適応できないことも
- 自分を守るため、他人や社会に対して無関心になるケースも多い
- 「白か黒か」といった極端な思考を持っている傾向がある
- 一回の失敗で「自分はもうダメだ」、他人に対しても「信用できない」など極端な判断をする
- 現実よりも、妄想に逃避しがちになる
- 意識が内にこもりがちになり、外の世界で経験を積み重ねられない
親子の不仲の原因-共依存とは
共依存とは、もともとアルコール依存症の家族が陥りやすい状態から生まれた概念で、「アルコール依存症患者との関係に束縛された結果、自分の人生を台無しにされてしまっている人々」の特徴でした。アルコール依存症の患者は家族などに頼らなくては生活がままならないのですが、世話している家族などもまた、患者自身に依存しているような状態になってしまうのです。
このように「相手をケアしていながら、同時にケアする側もそのケアに依存していて、ケアされる側の自立を望まない」といった関係を共依存と呼ぶようになりました。親子関係でも同じように、子どもは生まれてきてすぐは親を養育者として頼らなくては生きていけないのですが、子どもはいずれ成長して自立していくものです。
しかし、親が子どもの成長や自立を受け入れられないと、自然と過干渉な状態になり、自立を邪魔する存在になってしまいます。結果、子どもは正常な状態で成長や自立できず、異常にお互いがお互いを欠かせない存在と思い合ったり、必要以上に依存し合っている関係に陥ってしまったりするのです。
親がいないと何もできない子どもになってしまい、例えば子どもが結婚したとしても精神的に親に依存したままということもありえます。このように共依存は「ケアする、される関係」において起こりやすいことから、父と子よりも圧倒的に「母と子」のペアが多いとされています。特に、母と息子の場合はマザコンとも呼ばれ、日本では馴染み深い関係でもあります。
具体的な共依存親子の特徴としては、以下の3つのポイントが挙げられます。
- 子どもがいくつになっても、実家を出ようとしない
-
- お互いを必要とし合っているので、どちらかがいない生活を考えられない
- 親は子どもを「手のかかる子」「自分が面倒を見てやらなくては」と思い込んでいる
- 子どもの方も「自分は何もできない」「一人では生活できない」と思っているケースが多い
- 親がいつまでも経済的な援助をしている
-
- 子どもが大人になってもお小遣いをあげている共依存親子は多い
- 子どもが仕事をしていたり、結婚して家を出ていたりしても経済的な援助をやめないケースも
- 子どもが仕事も結婚もせず、実家も出ず、経済的にも親に依存している
- お互いに依存している自覚がない
-
- 本人たちに共依存の自覚がなく、共依存や過干渉が加速しやすい
- 共依存しているという自覚が生まれれば、そこから抜け出すこともできる
- 自覚がないからこそ異常さに気づけず、依存していることに疑問を持たずに過ごしてしまう
親子関係のこじれや不仲を引き起こす原因はさまざまですが、幼少期からの親子関係や反抗期など、さまざまな原因が関連し合っているといえるでしょう。
後編はこちら
おわりに:親子関係にはさまざまなタイプがあり、デメリットを及ぼすこともある
親子関係の築き方は、まさに親子それぞれです。中には過干渉や共依存のように互いにデメリットを与え合う関係性もあります。関係改善の一歩は、自分たちの関係性のタイプを自覚することから始まります。後編ではこじれた親子関係を改・修復するための方法を紹介します。
コメント