なんとなく体調が悪いけれど、これと言った疾患や持病は見つからない。そんな悩みを抱えているなら、あなたの体は慢性炎症状態にあるのかもしれません。
今回は慢性炎症とは何か、慢性炎症が原因で引き起こされる具体的な症状の例や予防・改善のためにできる対策や東洋医学的な治療法まで、まとめて解説していきます。
- この記事でわかること
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- 急性炎症と慢性炎症の特徴・違い
- 炎症サイトカインとの関連が考えられる不調
- 慢性炎症の改善のための生活習慣改善
- なかなか治りにくい不調に対する東洋医学的アプローチ
疲労や不調が改善しない「慢性炎症」って?
身体的、または精神的ストレスに対して起こる免疫反応である炎症には、2種類あります。
- 急性炎症
- 外傷や細菌の侵入、ウイルス感染などにより誘発される炎症のこと。典型的な症状には発熱や腫れ、疼痛、赤みなど
- 慢性炎症
- 何らかの原因で免疫サイクルに異常が生じ、体内で炎症が慢性化した状態のこと。具体的には、炎症を起こしている部位に集まり原因を攻撃する活性酸素が過剰に分泌されることで周辺組織が破壊され、組織の線維化や細胞増殖が異常に進んでしまう
体内に異物の侵入などの異常が起こった場合、本来なら体は炎症反応の起きている部位へ免疫細胞を集め、活性酸素を使って攻撃・駆逐し、損傷した組織の修復を行います。
しかし、何らかの異常でこの免疫細胞のコントロールメカニズムに異常が起きてしまうと、活性酸素が必要以上に出続けてしまい、免疫反応全体が狂ってしまうのです。
免疫反応が狂ってしまうと、攻撃対象である体内の炎症反応が消えることもありません。すると「組織リモデリング」と呼ばれる状態に陥り、免疫反応の異常によって起こる臓器の機能障害と体内各所で続く慢性炎症が、じわじわと心身に不調を引き起こすこととなります。
慢性炎症は「万病の元」?心と体に悪影響が…
ここからは慢性炎症が私たち心身に及ぼす影響について、詳しく見ていきましょう。
体に何らかの異常が起こると、異常部位は異常が起きたこと免疫機能に知らせるため、「炎症性サイトカイン」と呼ばれるシグナルを発します。
この炎症性サイトカインは、活性酸素の攻撃対象です。正しく免疫細胞が機能していれば、活性酸素の攻撃とその後の細胞修復を受けて、異常個所からの炎症性サイトカインの発出もストップするわけですね。
しかし慢性炎症になると、炎症性サイトカインも発出がずっと続くことになります。長期間、大量に発出され続けた炎症性サイトカインは血流に乗り、さまざまな臓器や細胞に運ばれて、他の組織の炎症や疾患を誘発してしまうのです。
例えば、以下のような疾患は慢性炎症の影響により起こる可能性があると言われています。
- 慢性炎症の関与により、発症することのある疾患
- アトピー性皮膚炎、ぜんそく、肥満、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、がん、肝炎または肝硬変、関節リウマチ、認知症、うつ病 など
慢性炎症を和らげる食事と肥満に気をつけるべき理由
慢性炎症の発症を予防し、炎症が飛び火することによる心身の不調を改善するには、慢性炎症の原因となる食事と生活の習慣を改めるのが効果的です。
まず食生活においては、抗酸化作用の高い以下栄養素を豊富に含む果物類や野菜類、青魚、お茶などの飲み物を積極的に摂れるよう、食事の内容を変えていきましょう。
- 慢性炎症の緩和に効果的な栄養素の例
- ポリフェノール、ビタミンC、EPA、DHA
また、肥満を予防・改善するために、栄養のバランスとカロリー摂取量に注意する必要もあります。自身にとって無理のない範囲で、以下のポイントに留意した食事を摂るようにしましょう。
- 肥満と慢性炎症を予防・改善するための食事のポイント
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- 必要な栄養素はバランス良く摂りつつ、脂質と糖質の摂取量は少なめを意識する
- 食事は1日3回、できるだけ毎日決まった時間に摂るよう、生活リズムを整える
- 1日あたりの食事量は、自身の性別や年齢から導き出した必要カロリー量を目安とする
- 慢性炎症予防のための生活習慣改善ポイント
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- 免疫機能に異常をきたす一因となるストレスは、可能な限り避けるようにする
- 体に炎症反応を起こすとされる喫煙、過度な飲酒の習慣は直ちにやめる
- お酒を飲むときは、1日あたりビールの大ビン1本程度の量に収める
- 散歩なら30~60分を目安に毎日、難しければ週に1回でもいいので定期的に運動する習慣をつけ、全身の血流促進と肥満の解消に努める
- 瘀血の人に見られるサイン
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- 肩こりや頭痛が起こりやすい
- 皮下出血が起こりやすく、気が付いたら体にあざができている
- 肌の色が暗く、冷えのぼせの症状がある
- 女性の場合は生理痛や生理不順、不正性器出血がある
- 活血剤、駆瘀血剤の例
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- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 折衝飲(せっしょういん)
- 通導散(つうどうさん)
- 窮帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 温経湯(うんけいとう)
一方で慢性炎症の予防と軽減のため、改めるべき生活習慣としては以下が挙げられます。
漢方薬では慢性炎症の体は「瘀血」体質に
東洋医学的に見ると、慢性炎症の起きた体は血流が滞った瘀血(おけつ)の状態です。
血流が悪くなると、体の維持に必要な酸素や栄養が各細胞へ十分に行き届かなくなり、老廃物の回収と排出も滞ってしまいます。
体内にのこされ、蓄積された老廃物はやがて炎症の原因となることもあります。そして老廃物が原因で起きた炎症は栄養不足の周辺細胞へ、また血流にのって他の臓器や組織にも飛び火し、慢性炎症を発症・悪化させるのです。
瘀血の状態、または瘀血体質の人に見られるサインとしては以下が挙げられるでしょう。
瘀血の症状は活血剤(かっけつざい)、または駆瘀血剤(くおけつざい)と呼ばれる漢方薬により、改善できると言われています。
以下に、代表的な活血剤を紹介しますので、慢性炎症が原因と考えられる心身の不調に悩んでいるなら、服用を検討してください。
おわりに:生活と食習慣を改善し、漢方の力も借りて慢性炎症による不調を軽減していこう
慢性炎症とは、体内で起きた炎症が鎮静化されないまま全身へ飛び火し、心身にさまざまな不調が起こる状態のことです。何らかの理由で免疫機能に異常が起きた場合に発症し、生活習慣病や心筋梗塞、がんなど重大な疾患を発症する一因になると考えられています。そんな慢性炎症の予防と改善には、抗酸化作用の高い栄養素を積極的に摂ることと、生活習慣の改善が効果的です。漢方薬の力も借りつつ、症状の軽減と体質改善に努めましょう。
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