強い耳鳴りとめまいは、日常生活に支障をきたすこともあるやっかいな症状です。疾患が原因であるケースもあれば、ストレスや生活習慣が影響している可能性もあります。
今回は耳鳴りとめまいが起こる原因と症状を、発症のメカニズムや気をつけたい生活習慣、セルフケア方法や医療機関受診の目安などと一緒に紹介していきます。
- この記事でわかること
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- 一過性のめまいと耳鳴りの一般的な対処法
- めまいと耳鳴りで注意したい疾患
- ヘッドホン難聴発症リスクを上げる音の大きさ
- 食習慣改善で取り入れたい食品
- めまいと耳鳴りで注意すべき、病院での治療が必要な疾患
めまいと耳鳴りは耳の奥の「内耳」の異常が影響している?
人間の耳は、まず音を空気の振動として鼓膜で受け止め、中耳腔内の耳小骨へ伝えます。中耳腔内は空気で満たされており、ここで音が増幅されます。次は内耳にある蝸牛(かぎゅう)に音が到達します。蝸牛はリンパ液で満たされており、音がリンパ液の振動へと変わります。リンパ液の振動は蝸牛の上に位置する基底板を揺らし、感覚細胞がその揺れを受け取ると、音が電気信号に変換されます。その電気信号が脳幹を経由し、大脳の聴覚を伝わるエリアである聴覚野に伝わって初めて、音として聞けるようになります。
人間の耳の鼓膜より奥、中耳腔や蝸牛のあるエリアは「内耳(ないじ)」と呼ばれる場所で、以下のような器官も存在しています。
- 三半規管
- 前庭または耳石器(じせきき)
- 蝸牛
- 蝸牛神経
- 前庭神経
音を感知するための蝸牛には音を感知する有毛細胞がありますが、有毛細胞の機能に何らかの異常が発生すると、聞こえていない音を聞こえていると錯覚し、耳鳴りを引き起こすと考えられています。平衡感覚を司る三半規管に異常が起こると、めまいの原因となります。
めまいは耳の機能に関係ないように思われがちですが、原因となる蝸牛と三半規管が同じ内耳にあるため、耳の異常が影響し、めまいの原因にもなり得るのです。
ただ、耳鳴りとめまいは、一過性の症状であれば心配ありません。具体的には耳鳴りなら数分以内で治まるもの、めまいは1時間程度安静にして楽になるようなら、医療機関の受診や治療は必要ないでしょう。
ただし数時間も異常が続く、または数日以上の長期にわたり耳鳴りやめまいの症状が持続する場合は、背後に重大な疾患が潜んでいる恐れがあります。病院を受診して医師の診断を受け、原因に応じた治療を受けることをおすすめします。
次項からは、原因の特定や医療機関を受診するかどうかの判断目安となるよう、めまいと耳鳴りの症状を詳しく見ていきましょう。
めまいとはどんな症状?更年期の女性に起きやすいって本当?
まず代表的なめまいの症状、考えられる原因疾患、発症のきっかけは以下の通りです。
- めまいの代表的な症状
- 天井がぐるぐる回るように感じる、回転性のめまい
- 雲の上をふわふわ歩くように感じる、浮遊感のあるめまい
- 立ち上がったときや体勢を変えたときに感じる、立ちくらみ
- 発症の原因と考えられるもの
- 末梢前庭障害など内耳の障害、または中枢前庭障害など脳の障害
- 発症の背景に潜んでいると疑われる疾患
- 激しく回転し、耳鳴りの症状も伴う「メニエール病」
- 頭の位置、体勢を変えたときにめまいを誘発する「両性発作性頭位めまい症」
- 突然発症し、数日間にわたり持続する「前庭神経炎」 など
- 発症のきっかけとなり得るもの
- ストレス、過労、寝不足 など
また、上記いずれにも当てはまらないケースとして、更年期障害に伴う自律神経系の症状でめまいを訴える女性が多いこともわかっています。
耳鳴りとはどんな症状?「ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)」とは?
続いて耳鳴りの代表的な症状、考えられる原因や疾患、発症のきっかけを見ていきましょう。
- 耳鳴りの代表的な症状
- 周囲に音源がない音が聞こえてくる
- 他の人には聞こえていない音が、自分にだけ聞こえてくる
- 鳴っていない音が聞こえることで、不快や苦痛がある
- 発症の原因と考えられるもの
- 外耳、中耳、内耳、聴神経中枢や脳の障害が考えられるが、多くは内耳感覚細胞の障害
- 発症の背景に潜んでいると疑われる疾患
- 音を感じる内耳より奥に、何らかの異常があるために起こる感音難聴
- 加齢に伴う聴力の低下、内耳の機能低下などによって起こる老人性難聴
- 職場など、長い時間を過ごす場所での騒音が原因で起こる騒音性難聴
- 主にストレスが原因とされる、突然発症する突発性難聴 など
- 発症のきっかけとなり得るもの
- ストレス、過労、寝不足、騒音、耳の機能異常 など
また、若者に多く見られる耳鳴りの原因として近年挙げられている原因疾患として「ヘッドホン難聴」が挙げられます。
ヘッドホン難聴は、ヘッドホンやイヤホンを使い大音量を聞き続けることで起こる難聴で、WHO(世界保健機構)によると、11億人もの若者が発症リスクにさらされています。以下に、ヘッドホン難聴の原因と治療法、予防法についてもまとめておきますので、自身に心当たりがないかチェックしてみてくださいね。
- ヘッドホン難聴の原因
- 85デシベルを超える大きな音にさらされ続けることで蝸牛の有毛細胞が傷つき、音を感じ取りにくくなる
- 目安として1週間あたり80デシベルでは40時間以上、98デシベルでは75分以上ヘッドホンで音を聞き続けると発症リスクがあるとされる
- ヘッドホン難聴の治療法
- 基本的には耳を安静にすることで回復するため、定期的に耳栓などを使って音の刺激を避けると効果的
- その他、血管拡張薬やビタミンB12製剤、代謝促進薬などの内服薬、点滴薬などによる薬物療法も行われる
- ヘッドホン難聴の予防法
- 音量を下げるか、休憩をはさむようにして連続して聞くのを避ける
- ヘッドホンを使った音楽や動画の視聴を、1日1時間以内に抑える
- ノイズキャンセリング機能の付いたヘッドホンを利用し、音量を下げる
めまいと耳鳴りのセルフケア法-生活習慣改善とツボ押し
具体的な症状や原因がわかったところで、ここからは、めまいと耳鳴りの症状軽減に効く生活習慣改善のポイントと、ツボを紹介します。
生活習慣改善のポイント
めまいと耳鳴りを軽減するには、疲労やストレスを溜めず、末梢神経の代謝を改善するビタミンB12を積極的に摂ることが基本となります。具体的には以下の習慣を毎日の生活や食事に取り入れ、症状改善をめざしてください。
- 少しでも心身に疲労を感じたらこまめに休み、ストレスを溜めないようにする
- 1日6時間以上の良質な睡眠を十分にとれるよう意識し、心身をリラックスさせる
- 運動や散歩、入浴、アロマテラピーなど自分に効く方法でこまめにストレスを発散する
- 運動や半身浴など全身の血流促進を習慣化する
- 血行を阻害する喫煙はやめる
- あさり、牡蠣、しじみなどの貝類、サバ、サンマ、イワシ、カツオなどの青魚、レバーなどを積極的に食べる
めまいと耳鳴りに効くツボ
- 翳風(えいふう)
- 耳たぶの後ろ側のくぼみにあるツボ。翳風に親指を当て、のこり4本の指で頭全体を掴むようにして揉んで刺激すると良い。
- 耳門(じもん)、聴宮(ちょうきゅう)、聴会(ちょうえ)
- 耳の穴にフタをするように付いている突起の前側、口を開けるとへこむところに縦に並んでいる3つのツボ。
- 口を開けながら耳門、聴宮、聴会を結ぶ線を人差し指の腹で押さえ、そのまま10秒キープ。
- その後5秒休む、これを1セットとして朝・昼・晩に1セットずつの1日計3回行うと良い。
- ツボにより強く刺激を与えるため、口を開けて押すのがポイント。
いずれも簡単に実践できることばかりですので、無理のないところから習慣にしていきましょう。
めまいと耳鳴りは「突発性難聴」や「メニエール病」、重大な疾患が原因かも
自律神経の不調や一時的な内耳機能の低下が原因でない場合、めまいや耳鳴りの原因と考えられる代表的な疾患に「突発性難聴」と「メニエール病」があります。それぞれの疾患の特徴、考えられる原因、症状を以下にまとめました。
- 突発性難聴とは
- 突然めまいや耳鳴りを発症する、内耳の障害。神経の聞こえ自体が悪くなるもので、ストレスやウイルスが原因で発症するとされるが、はっきりした原因はわかっていない。
- 耳がふさがったような感覚を伴うのが特徴。
- 原則、一度発症すれば二度発症することはなく、安静と薬物療法で治療が可能。ただし、発症からおよそ1か月で症状が固定化してしまうため、早期に治療する必要がある。
- メニエール病とは
- 内耳のリンパ液増加が原因で起こるとされる疾患。突発性難聴に似た耳の閉そく感、難聴、めまいが起こるが、はっきりした発症原因はこちらもわかっていない。
- 症状が何度も繰り返し現れるのが特徴で、利尿剤とステロイドを使った薬物療法、安静により治療していく。
上記以外にめまいを起こす重大な疾患としては、以下のような脳の異常が考えられます。
- めまい症状を伴うことのある脳の疾患
- 脳梗塞、脳出血、脳しゅよう、椎骨脳底動脈循環不全 など
また、腫瘍の圧迫によりきこえと平衡感覚の両方に異常が起こる聴神経腫瘍の可能性も考えられます。めまいと耳鳴りが数日以上治まらない場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科など医療機関へ受診しましょう。
おわりに:めまいと耳鳴り、数日しても収まらないときは医療機関で相談を!
主に内耳の異常で発症するめまいと耳鳴りは、多くの人が経験する症状です。そのほとんどが数分、または1時間ほど安静にしていれば治まる一過性のものですが、なかには数時間、数日にわたり症状が続く場合もあります。そんなときはまず、生活習慣の改善とツボ押しでセルフケアをして、症状の軽減をめざしましょう。それでも治まらないときは早めに医療機関を受診し、原因の特定と適切な治療をしてもらいましょう。
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