仕事をするには都会が便利ですが、老後は田舎でのんびり暮らしたいと考える人も多くいます。特に、進学や就職で都会に出てきた人が、老後はUターンで地元に戻って暮らしたいと思うケースは珍しくありません。
そこで、老後の田舎暮らしのメリット・デメリットや、利用できる移住支援金制度についてまとめました。人気の移住先や準備、都会ライフを続けるメリットについても詳しく見ていきましょう。
- この記事でわかること
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- Iターン・Uターン・Jターン現象の違い
- 交通アクセスの不便さが田舎暮らしのデメリットとなる理由
- 老後に身近にあると安心な施設
- 地方移住で検討したい「移住支援金制度」「起業支援金制度」
地方移住を考えている人はどのくらい?人気の移住先は?
総合旅行プラットフォーム「エアトリ」が地方や海外への移住について調べた調査結果によると、国内の地方に移住することについて、「地方移住を考えたことがある(31.1%)」「いずれは地方移住をしたい(7.5%)」と、地方移住を前向きに考える人は4割弱います。しかし、実際に移住したという人は10.7%にとどまりました。
移住したいと考える人に人気の地域は、以下の10道府県です。
- 沖縄県
- 北海道
- 福岡県
- 静岡県
- 長野県
- 鹿児島県
- 神奈川県
- 千葉県
- 宮崎県
- 京都府
移住するタイミングとしては老後のセカンドライフを想像する人が多いですが、もっと早い段階で移住するケースもあります。よく知られているのはIターン・Uターン・Jターンと呼ばれる現象です。詳しく見ていきましょう。
Iターン現象とは
Iターン現象とは、出身地とは別の地方に移り住むことを指します。特に都会出身者が地元の大学に進学したものの、卒業後は地方の企業に就職するなどの例がよく知られています。また、都会で就職したものの、後に地方の企業に転職することは「Iターン転職」と呼ばれることもあります。
Uターン現象とは
Uターン現象とは、地方から都市部へ移住した人が再び地方の生まれ故郷に戻る現象を指します。Iターン現象とは逆に、田舎から都会の大学に進学し、卒業後は生まれ故郷の企業に就職するという例がよく知られています。田舎出身者が都会の大学に進学後、そのまま都会で就職し、その後、故郷の企業に転職することを「Uターン転職」と呼ぶこともあります。
Jターン現象とは
Jターン現象とはUターン現象に近く、地方から都市部へ移住した人が、生まれ故郷の近くのやや規模が小さめの地方大都市圏、中規模都市などに戻って定住する現象のことです。例えば「沖縄の離島出身者が本土へ移住した後、沖縄本島へ戻る」「北海道の小さな都市の出身者が首都圏に住んだ後、札幌に戻る」などがJターン現象の例です。
必ずしも生まれ故郷のすぐ近くや同じ都道府県でなくても、沖縄から東京の大学に進学し、三重県の企業に就職した、といった場合もJターン現象として捉えられます。これもIターン現象やUターン現象と同じく、都会で就職した後に地方の企業に転職する場合は「Jターン転職」と呼ばれることがあります。
また、これら3つの人口還流現象をまとめて「UJIターン現象」と呼ぶこともあります。
都会から田舎へ移住するメリットとデメリットは?
都会から田舎へ移住することには、メリットもあればデメリットもあります。メリットとデメリットそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
都会から田舎に移住するメリットって?
都会から田舎に移住することのメリットは、大きく分けて3つあると考えられます。
- 自然が多い
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- 田舎暮らしの最大のメリットとも言える
- 都会にも少なからず自然はあるが、広大な山々、綺麗な空気、大空などは田舎の醍醐味
- 雄大な自然を感じながら過ごす時間は、かけがえのないものとも言える
- ストレス軽減につながる
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- 大自然を感じられることは、ストレスホルモンの現象につながることが研究からも明らかに
- 定年退職後は社会生活におけるストレスを感じにくくなるかもしれないが、ストレスがゼロになるわけではない
- 田舎暮らしもストレスフリーになるわけではないものの、自然との触れ合いがストレス軽減につながる可能性はある
- 居住費が安い
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- 都会と比べて居住費が安く済む
- 住宅の購入でも、賃貸住宅でも同じグレードで都会にある建物と比べると安く済むことが多い
田舎は自然が多く、住居費にかかるコストを削減できる可能性が高いことが大きなメリットと言えます。さらに、大自然を感じられる環境にいれば、ストレスの軽減につながる可能性もあるでしょう。自然と触れ合いながらストレスを癒したいと考える人には、田舎の大自然の中でゆったり過ごすのがおすすめです。
都会から田舎に移住することには、デメリットもある?
一方で、都会から田舎に移住することには、以下のようなデメリットも考えられます。
- 交通費がかかる
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- 近くにスーパーがない、薬局がないなど生活用品の購入に苦労することも
- バスや電車などの公共交通機関、自家用車を利用することで、交通費やガソリン代の出費や自家用車の維持費などが増える可能性がある
- 近くに病院がない
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- 移住先の近くに病院がないと、地域によっては週に何度か医師が訪れて往診するというケースも
- 緊急性を要する疾患を発病した場合、すぐに搬送などの処置が行えず、初期治療が遅れてしまうことも
田舎暮らしの最も大きなデメリットは、交通費・車の維持費がかさむということです。バスや電車などの公共交通機関なら乗車賃がかかりますし、これまで自家用車を持っていなかった人なら購入したり、維持したりする費用がかかります。
また、近くに病院がないか町医者などの規模が小さい病院しかない場合、いざというときの治療がスムーズに受けられないかもしれません。健康面に不安があるけれど地方に移住したい、という人は、できるだけ大きな病院の側に移住するのが良いでしょう。
都会に住むのも悪くない!老後の都会ライフのメリット
田舎暮らしにもメリットとデメリットがあるように、都会に住み続けることにもメリットがあります。
- 買い物に困らない
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- 年齢を重ねていくほど、近くにスーパーなど生活用品のお店が揃っていることは重要
- ドラッグストアや大型ショッピングセンターも、都会なら近くで揃いやすい
- 食料品も日用品もまとめて購入できれば、体力が衰える老後にも便利
- 病院が近い
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- 年齢を重ねるにつれて、身体の不調に悩まされることも多くなっていく
- 近くに病院があれば、不調をすぐに相談できるし、何日かおきの定期的な検診にも通いやすい
- 緊急を要する疾患にかかったときでも、すぐ対応してもらえる安心感がある
また、老後にも社会貢献したい、健康維持のために外に出たい、年金以上に生活費をさらに稼ぎたいなど、さまざまな理由で仕事を続けたいと思う人も多いでしょう。そんなとき、都会暮らしであれば仕事が見つかりやすく、給与水準も高い傾向にあります。都会では人手不足から高齢者の活用を推進している企業や自治体もありますので、シニア人材の採用のチャンスは田舎よりも多いと言えるでしょう。
憧れの移住ライフをするために必要な準備とは
では、憧れの田舎暮らしを始める前にはどんな準備が必要なのでしょうか。大きく分けて、以下の5つが考えられます。
- しっかり情報収集する
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- まず、田舎暮らしについての情報や候補の土地の情報をしっかり集める
- どのような地域か、現在の居住地と何が違うか、生活の上で不便はないか、など
- メリットだけを見るのではなく、デメリットもしっかり理解する
- 自然が多いところが良くても、同時に自然災害も多くリスキーな場所は避ける、など
- 移住する前に、実際にその場所に行ってみる
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- いくつか移住先を絞り込んだら、実際にその地域に行ってみる
- 空気感や音、匂い、景色など、ホームページ・SNS・書籍などではわからなかったこともわかる
- 賃貸住宅を借りて、ある程度住んでみる
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- いきなり住宅を購入して定住前提にするのではなく、賃貸住宅を借りてみる
- 実際にその地域に住んでみて、周辺住民との関わりや暮らし心地を検討する
- 暮らしてみて過ごしやすいと思ったら、住宅を購入する
- 移住支援制度を活用する
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- 地域によっては、移住支援制度を利用できることも
- 自治体によっては、移住助成金を出してくれることもあるので、よく確認する
- 資金を確保する
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- 田舎では都会と比べて生活費や住居費がかかりにくいものの、かからないわけではない
- 何不自由なく生活するためには、ある程度資金に余裕が必要
特に、地方移住のための資金の準備は早めにしておく必要があるでしょう。老後にもかかってくる税金や保険料として、国民健康保険料や水道料金、固定資産税、住民税などがありますが、これらは市区町村によって異なります。特に、国民健康保険料や水道料金は自治体によって大きく変わってきますので、市区町村の医療保険課ホームページ、水道局ホームページなどをしっかり確認しましょう。
また、医療機関や物価についても考えなくてはなりません。大きな病院の近くに移住するのがおすすめなことは説明した通りですが、地方でも都市部より郊外の方が大きな病院に近い物件を安価に購入しやすい傾向にあります。徒歩圏内、民間バス、自治体運営のローカルバスなどが停車することもありますので、通いやすさについてもしっかりチェックしましょう。
物価は、地元スーパーのチラシを見るのが最も手っ取り早いです。チラシが丸ごと掲載されているアプリや、地域の店舗別に商品価格を抽出しているサイトなどがありますので、こうしたシステムを有効活用して実態を掴みましょう。
国の「移住支援金制度」を利用するのが便利
人口の急減と超高齢化という大きな問題に直面する日本で、国と自治体が一体となり、それぞれの地域の特色を活かした「地方への移住を支援する制度」が展開されています。
その政策の一つとして「移住支援金制度」があります。これから起業しようと考えている人なら「起業支援金制度」も合わせて受けられるかもしれません。
- 移住支援金制度:最大100万円(単身者は60万円)
- 東京23区に在住・通勤する人が東京圏以外の地域または条件不利地域(東京圏内の過疎・山村・離島など)へ移住し、「起業支援金」の交付を受けるような起業をしたり、移住支援金の対象となる会社へ就業したりする場合に交付される
- 起業支援金制度:最大200万円
- 東京圏以外の地域、条件不利地域で新たな需要や雇用の創出などを促し、地方経済の活性化につながる社会的事業を始める場合に交付される
移住先で起業するという場合、起業支援金と移住支援金を合わせて最大300万円の支援を受けられます。詳細な条件は自治体によって異なりますので、「ふるさと求人」や「移住支援金」「起業支援金」などのホームページを確認しましょう。
さらに、移住支援金制度以外でも地方自治体が独自に、以下のような移住者支援制度を実施している場合があります。移住先に活用できる制度があれば、ぜひ利用してください。
- 家や仕事探しのサポート
- 交通費の助成
- お試し移住の家賃補助
- 給食費無料化
- 出産育児一時金支給
- 出産お祝い金
- 医療費無料
- 子どもの進学に関する補助金
- 住居購入の補助金、固定資産税の無料化
- 移住世帯への補助金
- 移住世帯への家や土地の無償譲渡(一定条件あり)
おわりに:老後の田舎暮らしはメリットたくさん。移住支援金制度が使えることも
老後に限らず、田舎暮らしに憧れを抱く人はいます。地方移住を考えたことがある、考えている人が4割にのぼることからも、UJIターン現象という言葉が生まれたことからも、田舎暮らしを好む人が一定数いることがわかります。
とはいえ、田舎暮らしにはメリット・デメリットの両方がありますし、自分に合うかどうかも地方によって異なります。よく検討した上で選び、移住支援金制度など利用できる制度があれば活用しましょう。
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