コミュニケーション能力は「コミュ力」とも呼ばれ、人と人との関係性づくりに長けている能力をいいます。コミュ力は、ビジネスシーンにおいてもやはり重要な能力。企業が採用選考などで重視するポイントの一つでもあります。
では、「コミュニケーション能力」とは具体的にどのような能力のことを指すのでしょうか。また、それをどのようにスキルアップしていけば良いのでしょうか。
- この記事でわかること
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- 企業が求めるコミュ力はどんな能力?
- 一緒に会話したくなる人は「傾聴」力がある?
- 会話のコツ「ミラーリング」のやり方
- コミュ力は話下手でもあげられる?
- コミュ力アップトレーニングや研修の種類
企業が求めるコミュニケーション能力とは?
コミュニケーション能力とは、一般的に意思疎通・協調性・自己表現能力において、以下のようなことができていることを指します。
- 意思疎通
- 伝えるべきことをきちんと伝え、相手の話にきちんと耳を傾けること、自らがよく考え、他者や組織内の調和を意識した行動をすること
- 協調性
- 周囲の考えを理解しようと努力する気持ちを持つこと
- 自己表現能力
- 伝えたいメッセージが明確で、説得力を持つよう工夫すること
特に、企業が求めるコミュニケーション能力とは、「組織の中でチームワークを生み出すためのコミュニケーション能力」であり、これまでも企業はこのスキルを重視してきました。今後もやはり「組織や人を管理するマネジメント能力」、「既存の業務を見直して改善する能力」、「新たな発想を生み出したりする能力」などとともに、特に大企業で求められるスキルです。
厚生労働省による「労働経済の分析(平成23年版)」によれば、企業が新卒者や転職者、既卒者の採用にあたって「これまで」重視したことと「今後」重視することを比較したところ、新規学卒者・転職者・既卒者のいずれの採用においても「コミュニケーション能力が高いこと」を重視する企業の割合は上がっていることがわかりました。
これまでは「仕事に対する熱意」や「業務に役立つ専門知識や技能」なども重視されてきましたが、今後はさらにコミュニケーション能力が重要視されるようになってきたと考えられます。企業の一員として業務に取り組む上で、コミュニケーション能力を特に重要なものと位置づける企業は依然として多いと言えるでしょう。
仕事に役立つ言語コミュニケーション能力とは?
言語コミュニケーションとは、名前の通り言葉を使ったコミュニケーションのことで、話し手が言葉を使って相手と会話を行うことを指します。コミュニケーションでは言語のやり取りが重要で、ときには言葉で相手との関係が悪化することもありますよね。
コミュニケーションでは言葉の意味と話し手の心情を伝えると同時に、相手の考えや気持ちを汲み取ることが大切です。会話はキャッチボールに例えられますが、自分の意思と相手の意思をやりとりすることで成立するものです。
それぞれの感情、人生観、立場などによっても言語コミュニケーションは変わってきます。お互いの違いを認め合いながら、会話を広げていかなくてはなりません。そのため、言語コミュニケーションでは言葉の正確さやわかりやすさのほか、相手に対する敬意や親しみやすさなどの要素が重視される傾向にあります。
ビジネスと言語コミュニケーション
ビジネスシーンにおいては、場面や状況に応じて適切な言葉を選ぶことも求められます。相手との適度な距離感を保ちながら、コミュニケーションをはかっていくことが重要なのです。
ビジネスで実践したい思いの伝え方
相手との会話をしっかり成り立たせるためには、自分の意思を明瞭に伝えていかなくてはなりません。特に、自分の価値観と相手の価値観が必ずしも同じとは限りませんので、必要な情報を過不足なく伝え合うことが大切です。また、単なる言葉の正確性だけを求めるのではなく、例え話を交えるなど表現を工夫し、わかりやすく伝えていくようにしましょう。
ビジネスで実践したい「傾聴」
コミュニケーションのためには、自分だけが一方的に話すのではなく、相手の考えを理解するための「傾聴」の姿勢も必要です。
人には誰しも「認められたい」という承認欲求を持っています。話を一生懸命聴いてもらえれば、気持ちが良いと思ってもらえる可能性が高いでしょう。相手の話に全神経を集中させ、一言一句聞き漏らさないつもりで話を聞くと良い関係が築きやすいです。
気軽に話がしやすい雰囲気作りを心がけ、しっかりと「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢をアピールしましょう。もちろん、相手が話をしているときには口を挟まず最後まで聞くことが重要です。特に、初対面の相手に対しては会話の糸口を掴むためにも、話によく耳を傾けることを意識しましょう。
言語コミュニケーション能力の上げ方
言語コミュニケーション能力を上げるために最も重要なのが、「言わなくてもわかるだろう」という過信を避けることです。日本は何かと察することが重視され、「不言実行」などの熟語にも代表されるように言葉より行動で示すことが美徳とされる文化を築いてきましたが、意思疎通を正しく確実に行うためには「言わなくてもわかるだろう」はNGです。
特に、重要なことは「数字・日付」などを交えて具体的に伝え、状況に応じてこまめにフォローアップしましょう。また、感謝や謝罪もしっかり言葉に出して伝えなくては意味がありません。いくら自分が感謝や謝罪を心の中で思っていても、伝わらなければ相手にとってはないのと同じですから、必ず言葉に出して伝えましょう。
ビジネスシーンでは、会話のマナーだけでなくビジネスマナーも重要です。特に就活やインターン先で会話をするとき、ビジネスマナーにも気を配れるとよりスムーズに会話が進むでしょう。相手との関係性だけでなく、相手との思いやりを大切にするビジネスマナーを身につけるためには、会話の内容だけでなく正しい敬語の使い方を習得することも忘れてはいけません。
また、会話のコツとして、以下の2つのポイントを心がけましょう。
- 相手の話をきちんと聞く
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- コミュニケーション能力とは、自分が一方的に喋り続けることではない
- コミュニケーション能力アップのために必要なのは、「話しかける回数」より、「相手の話をしっかり聞けたかどうか」
- 相手の話を聞きながら別のことを考えたり、次はこう言おうと考えたりするのはそもそも失礼。相手の話にしっかり聞き入ること
- できることなら、相手の話が気になって前のめりになるぐらいのテンションでちょうどよい
- 相手に合った話題を考える
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- コミュニケーション能力の高い人に共通しているのは、「話題提供がうまい」という点
- 相手との共通点や相手の特徴を考えながら、話が膨らむ話題を探す
- コミュニケーションのきっかけになりやすい話題:テレビやドラマ、ニュース、天気や気候、休日の過ごし方、出身地や地元、学生時代の勉強、食べ物や食事、お酒、体調や健康、趣味やハマっていること、服装、おしゃれなど
非言語コミュニケーション能力はテクニックも必要?
非言語コミュニケーションとは、言語以外の方法で意思の伝達を行おうとするもので、「ノンバーバル・コミュニケーション」とも呼ばれます。合図やジェスチャー、仕草、表情などでやり取りを行い、言語ではうまく表現できない自分の意図を理解してもらったり、相手の真意を汲み取ったりするのに役立ちます。
しかし一方で、非言語コミュニケーションは伝えたい内容をコントロールするのが難しいという特徴もあります。文化が異なると形式も異なりますので、場合によっては伝わらないケースがあることに注意しましょう。
非言語コミュニケーション能力の上げ方
非言語コミュニケーションの一環として、身だしなみは重要な要素の一つです。特にビジネスシーンでは個性を出すことにこだわりすぎず、場にふさわしい身だしなみを心がけましょう。その他、非言語コミュニケーション能力のアップにつながるポイントとして、以下の4つが挙げられます。
- ミラーリング
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- ノンバーバルコミュニケーションにおいて、会話相手と信頼関係を構築するための代表的な技術
- ざっくり言うと、会話相手のしぐさやポーズを、鏡に映すように真似していくこと
- 人は自分と似た相手に無意識に惹かれる性質を持っているため、これを利用して好感度を上げるのがミラーリング
- ただし、全ての動きを真似するのは不自然過ぎるため「相手の特徴的な仕草をたまに真似する」くらいの頻度を心がける
- うなずき
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- ミラーリング同様、ノンバーバルコミュニケーションで重要な技術の一つ
- いくら真剣に話を聴いていても、うなずきがなければ話し手は「聞いてもらっている」という実感が湧かない
- うなずかれることで、「自分の話が受け入れられている」という安心感を得られる
- 視線を合わせる
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- 視線を合わせることで、うなずき同様、自分の話を受け入れてもらっているという安心感を得られる
- 視線が他を向いているといくら真剣に聴いていても、おざなりに扱われているという気分にさせてしまう
- 人と視線を合わせることが苦手な人も多いが、無理に視線を合わせなくても、相手の「鼻の頭」を見ることで擬似的に視線を合わせられる
- 相手の心理的距離はしっかり縮まるので、ぜひ試してみて
- 表情
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- ノンバーバルコミュニケーションにおいて、表情を意識することは欠かせない
- 人は意識していなくても楽しいときは楽しく、悲しいときは悲しい表情になるものなので、相手の話にしっかり興味を持つことが良い表情を作る
- 相手の話に興味がない、嫌いな相手の話を聞かなくてはならないという場合は、表情を抑えてイヤな気持ちを悟らせないのも一つの方法
- 「傾聴」の姿勢で相手の話を聞く
コミュニケーション向上研修・講座の種類や内容は?
コミュニケーション能力を養うためには、研修や講座を受講する方法もあります。最初にご紹介したように、企業が「コミュニケーション能力」を重視しているのは、それがビジネスを行う上で大切な能力のうちの一つだからに他なりません。コミュニケーションなしで成り立つ仕事はほとんどないと言ってもよいからです。
コミュニケーション研修では、普段何気なく行っている意志の伝達で「行き違い」「勘違い」を起こさないよう、コミュニケーションの基礎を改めて理解し、コツやヒントを習得します。ついつい、コミュニケーションというと社外の人や顧客相手のことを想定してしまいがちですが、社内・部署内・上司と部下など、身近な間柄でも非常に大切なことです。
コミュニケーションの目的、大切な点や何が間違っているのか、といった基本的なところを、若い世代や新入社員に限らず、管理職の立場でも積極的に学んでいく必要があるでしょう。このように、コミュニケーション研修を行うことには以下のようなメリットがあります。
- 業務効率の向上
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- コミュニケーションコストがかかっていると、業務がスムーズに進まず、効率が落ちる
- 日常業務での意思疎通や連携をするため、仕事の基本となる報告・連絡・相談の質を上げなくてはならない
- コミュニケーションミスによる失敗が少なくなると、業務のアウトプットの質が高くなる
- 結果として、企業の業務向上にもつながる
- 顧客や取引先との関係性の向上
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- 顧客や外部の取引先とも、コミュニケーションで関係性が良くなると期待できる
- 客先でのプレゼン、取引先との価格交渉、外部とのメールのやり取りなど、日常の業務ではさまざまな場面でコミュニケーション能力が求められる
- ビジネスコミュニケーションスキルを高めることで、顧客満足度の向上にもつながる
話す力・聞く力を伸ばす研修・講座
コミュニケーション能力として最も基本的な「話す力・聞く力」を伸ばすための研修として、「スピーチトレーニング」と「傾聴研修」があります。スピーチトレーニングはプロのアナウンサーが講師となり、多くの受講者データに基づいて徹底分析されたカリキュラムとメニューで、短期間で技術が定着する効果的なコースを受けられます。
スピーチトレーニング
スピーチトレーニングは、以下の3つのステップで進んでいきます。
- STEP1:無料体験、カウンセリング受講(30分)
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- 現状の話し方の改善点について、プロのアナウンサーが考査してくれる
- 発声方法や発音など、具体的なスピーチ技術をプロがチェックしてくれる
- 現在の悩みや目標に合わせ、最適なカリキュラム・コースを提案
- ※対面、オンラインどちらでも可能
- STEP2:レッスンコースの選択
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- 「話し方」の用途はさまざま。会話力や話し方の美しさ、プレゼン、司会や面接、結婚式のスピーチ用など
- 初めて習う人や、話し方に自信がない人は「6時間SPEECHベーシックコース」がおすすめ
- STEP3:スピーチトレーニング期間(1〜2週間に1回の受講を推奨)
- アナウンサーとのマンツーマントレーニング
- 毎回違ったカリキュラムに沿って、スピーチ技術の向上を目指す
- カメラ考査と発声発音のトレーニングを組み込み、日々の仕事や生活の中でもトレーニングを意識できるよう工夫されている
- 話し方の良い状態を維持しながら向上させられる頻度として、1〜2週に1回の受講が推奨される
また、トレーニング中に指摘された箇所や動画、講師のアドバイスは「レッスンノート」で管理されています。アーカイブを見ることで、いつでも自分のパフォーマンスを客観的に復習できます。講師の動画や音声のeラーニング自主トレで滑舌や発声の練習を行い、苦手な箇所を反復練習しておけば、習ったことをしっかり身につけられます。
傾聴研修
もう一つの大切なコミュニケーション能力「聞く力」を伸ばす研修として、「傾聴研修」があります。傾聴とは何か、なぜ傾聴することが必要なのか、傾聴に必要なスキルは何かといったことを学習し、その上で自分の現状の傾聴スキルを把握し、今後の課題を明確にします。そして、実際にグループワークを中心としたカリキュラムで実践し、学習内容の定着をはかります。
対象者は内定者・新入社員・若手社員で、研修として1日(7時間)で行います。特に必要な条件はありませんが、1日あたり150,000円の費用がかかります。
コミュニケーション能力1級認定
コミュニケーション能力を学ぶ方法として、指定の講座を受講して認定を受けるという方法もあります。「コミュニケーション能力認定」には2級・準1級・1級がありますが、日常生活で活かせる2級・準1級に対し、1級ではリーダー・マネージャー層に必要なさらに高度なコミュニケーションスキルも学びます。
具体的には、以下のようなポイントをおさえていきます。
- 初対面かつ短時間で好印象を伝える、相手から信頼を寄せてもらうといったコミュニケーションの前提条件
- 「聞いてもらえる」「話しても大丈夫」という安心感を持ってもらう「聞く力」
- 互いの考えを理解し、認識を共有するための「話す力」
- 職場の生産性をアップさせるためのコミュニケーション能力
- 苦手な相手にも嫌われないためのコミュニケーションのポイント
- コミュニケーション能力を発揮させるための「自分を安定させるテクニック」
受講料は定価22,000円ですが、時期によっては早割などの割引を使って受講することもできます。開催地は札幌・東京・名古屋・大阪といった大都市に加え、オンラインでの受講もできますので、開催地に遠い場合、感染症リスクなどが気になる場合はぜひオンラインでの受講を検討してみましょう。
企業のノウハウを学べる!ANAコミュニケーション研修
ANAは、イギリスのSKYTRAX社が格付けする「エアライン・スター・ランキング」において、最高評価である5スターを獲得しています。SKYTRAX社は1989年に創立し、ロンドンに拠点を置く航空産業コンサルティング・格付け会社です。「ANAコミュニケーション研修」では、世界に認められたANAのコミュニケーション能力を、現役客室乗務員が携わった研修プログラムで受講できます。
主な研修内容には、以下のようなものがあります。
- ブレークスルー
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- コミュニケーションは、自分が考えていることを言葉で表すことから始まる
- 慣れた環境から外に踏み出し、自分自身を成長させ続ける「ブレークスルー」が重要
- 短時間で話をまとめたり、声の抑揚やボディランゲージを活かして自分の考えを的確に表現したりする練習を繰り返し、伝えることの重要性を学ぶ
- 自分の考えを適切に発言する
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- 顧客や上司、同僚に自分の考えを伝えることを躊躇したり、感情的に要望を伝えたりするのを防ぐ
- 相手を尊重しながら、自分の気持ちを正しく伝えるアサーティブ・コミュニケーションを学ぶ
- 苦手な人との関係を克服する
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- ソーシャルスタイル理論に基づき、相手のスタイルに合ったコミュニケーションをとる
- 苦手な相手との関係を克服し、ある程度の人間関係を築けるようにする
- フォロワーシップ
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- 組織で成果を高めるためには、リーダーを補佐するメンバーのフォロワーシップが不可欠
- 日本人のコミュニケーションの特性を理解し、発言から真意を洞察するプロセスを学ぶ
- リーダーに求められるコミュニケーション
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- 企業の信頼や価値を高めるためには、異なる意見が出ても互いが納得するよう話し合って結論を出すことが必要
- 組織を成功循環に導くリーダーシップコミュニケーションを学ぶ
後編はこちら
おわりに:コミュニケーション能力をアップして、人間関係をスムーズに
ビジネスシーンでコミュニケーション能力を必要とする場面は非常に多く、企業においても採用選考などで重視する項目の一つに挙げられています。コミュニケーション能力を上げるためには、言語・非言語コミュニケーションをしっかり理解することや、スキルアップのための講座を受講する方法がありますよ。後編では、発達障がいを抱える社会人におすすめのコミュニケーションアップを紹介します。
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