水を飲んでも飲んでもすぐに喉が渇いてしまう、ということはありませんか。夏場や運動後なら自然なことですが、そういった明らかな原因がないのに水を飲んでもすぐに喉が渇いてしまう場合、ドライマウスや妊娠などが関係しているかもしれません。
今回は、夏場や運動後でもないのに喉が渇いてしまう原因やその他の症状、喉の渇きを改善する方法についてご紹介します。
- この記事でわかること
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- 唾液の役割と口の渇きがもたらす健康被害
- 周囲の人からの指摘も!ドライマウスのサイン
- スポーツドリンクと経口補水液の特徴
- 口の渇きの原因となる病気と薬
喉が渇きやすい原因は?ドライマウスがもたらす悪影響って?
唾液は健康な成人で1日1.0〜1.5リットル分泌され、舌下腺・顎下腺・耳下腺の左右3対と、いくつかの小唾液腺から分泌されています。ただし量には個人差も大きく、年齢・性別・身体状況のほか、服用薬剤や季節によっても異なります。唾液は口内を潤すためのもので、刺激のある・なしで以下のように呼ばれています。
- 安静時唾液
- 刺激がなくても分泌される唾液
- 刺激唾液
- 食事など、何らかの刺激があって分泌される唾液
唾液には粘膜保護や水分平衡、潤滑といった水分のもたらす働きのほか、自浄・緩衝・抗菌・消化・組織修復・再石灰化・発がん予防などの働きもあります。口の中だけでなく、身体全体が正常な機能を発揮するためになくてはならないものなのです。このため、疾病などで唾液分泌が低下すると、以下のような異常が起こりやすくなります。
- 嚥下障害、咀嚼障害、発音障害、味覚障害 など
- 自浄作用の低下により、口の中に食物の残りかすが長時間残留し、虫歯など歯周疾患のリスクが高まる
- 粘膜保護作用の低下により、舌や粘膜の障害、義歯の不適合、舌苔の増加、味覚異常、嚥下障害なども起こりやすくなる
要介護高齢者の場合、同じような理由でグラム陰性桿菌が口の中に残ることで、不顕性肺炎を誘発するなど全身にも影響が及ぶことがあります。唾液分泌は私たちが普段意識している以上に、全身の健康に大切なものなのです。
口や喉が渇くのはどうして?
唾液分泌の低下は、不安や緊張など精神的な理由のほか、唾液腺障害や脱水など、機能的な理由でもよく起こります。また、塩分過多な食事を摂って細胞内の水分が使われると、一時的に体内の水分量が減り、唾液分泌が低下することがあります。他にも、機能的に以下のような理由で唾液分泌が低下することもあります。
- ドライマウスによる唾液分泌低下
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- 加齢によって、ドライマスになり唾液分泌量が減少する
- 服薬の影響によって、唾液分泌量が低下する
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- 薬に含まれる「抗コリン作用」により、唾液分泌が抑えられて口が渇く
- 抗アレルギー薬、抗精神薬、降圧剤などの副作用として唾液量の低下が起こる
- アルコールの過剰摂取による唾液分泌低下
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- アルコールの利尿作用により、尿量が増えて体内の水分量が減る
これらの要因に当てはまらない場合は、疾患が原因で口が渇いている可能性があります。特に、アルコールの大量摂取などから肝硬変や糖尿病を発症すると、その症状によって唾液分泌量が低下します。また、唾液腺や涙腺をはじめとする全身の外分泌腺に慢性的な炎症が起こる「シェーグレン症候群」という難病によって唾液分泌が低下するケースもあります。
ドライマウスの自覚症状や周囲が気づくサイン
前述のように、加齢による唾液分泌量の低下などを主な原因とする口の渇き「ドライマウス」では、以下のような症状が見られます。
- ドライマウスの自覚症状
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- 口が渇く、ねばつく、唾液が溜まっている感じがする
- 水をよく飲むようになった
- 話しづらい、食事しづらい、食べ物が美味しく感じられない
- 舌が痛い、ひび割れている
- 口臭が気になる
- 寝ていると、口がからからになってしまう
- 入れ歯が合わなくなった、入れ歯で口の中が傷つきやすくなった
- 虫歯や歯周病になったり、症状が悪化したりした
口の中が渇きやすくなるため、パンなどの乾いた食べ物が食べにくくなったり、食事のしにくさから摂食障害や味覚障害に陥ったりする場合もあります。ドライマウスのまま放置していると唾液の自浄効果が低下して歯垢(プラーク)がつきやすくなったり、虫歯の原因になったりします。人によっては、口腔内の違和感から発音障害につながることもあります。
ドライマウスでは本人が気づいていなくても、周囲の人が以下のような症状に気づくこともあります。
- 周囲の人が気づくドライマウスのサイン
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- 明らかに口が乾燥している
- 大唾液腺の開口部から、唾液が流出しない
- 唾液が泡状になったり、ねばついたりしている
- 舌表面の突起が消え、つるりとしている
- 舌の表面が荒れている
- カンジダ症と思われる、白いぶつぶつや線が口の中に見られる
身近な人にこのような症状が見られたら、ドライマウスかもしれません。
女性は生理や妊娠、更年期で口・喉の渇きを感じる
ドライマウスでなくても、女性はホルモンバランスの関係で体に変化が起きやすく、口や喉が渇くことがあります。具体的には、以下の4つのケースで口や喉が渇きやすくなります。
- 妊娠による口・喉の渇き
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- 妊娠初期には、胎児を守る羊水を清潔に保つため、体内の水分が使われて喉が渇く
- 妊娠に伴い子宮内膜を厚くしたり、水分を保持したり、体温を高めたりするプロゲステロンの分泌量が増え、水分補給をしてもすぐ喉が渇く傾向に
- いずれも異常ではないので、脱水にならないようこまめな水分補給が重要
- 月経前症候群(PMS)による口・喉の渇き
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- 月経前症候群によって、喉の渇き・頭痛・冷えなどの症状が出ることがある
- 月経(生理)による口・喉の渇き
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- 生理が始まるとホルモンの働きが活性化され、子宮を強化したり乳腺を発達させたりしようとして水分を体内に溜め込むため、喉が渇く
- 更年期障害による口・喉の渇き
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- 加齢によるホルモンバランスの変化により、さまざまな不調が現れる
- 喉の渇きのほか、ほてりや多汗、抑うつ、不眠などさまざまな症状が生じる
特に、更年期障害で喉が渇く人は多いようです。水分補給をしっかりすることはもちろんですが、他にも不調が多く身体が辛いようなら、早めに専門医に相談することも重要です。
ドライマウスや口・喉の渇きを改善する方法
ドライマウスや喉の渇きを改善するためには、水分補給をこまめにすることはもちろん、唾液分泌量の低下につながらないように生活習慣を整えたり、マッサージや体操で唾液腺を刺激したりするのも有効です。それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
ドライマウスや口・喉の渇きを抑える生活習慣とは?
刺激唾液の場合、噛むという刺激が脳に伝わって分泌されます。ですから、まずは普段から食物をよく噛んで食べ、唾液の分泌を促しましょう。噛みごたえのある食材を使ったり、食後にガムを噛むのを習慣化したりするのもおすすめです。逆に、以下のような生活習慣はドライマウスや口の渇きを進行させてしまいますので、注意しましょう。
- カフェイン、タバコ、アルコールの摂取
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- カフェインやアルコールには利尿作用があり、体内の水分量が低下する
- タバコで発生する煙が乾燥を招く
- 喫煙者は禁煙を心がけ、お酒やコーヒーは適量を楽しむようにする
- 塩分量の多い食事
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- 血中の塩分を薄めるために水分が消費されたり、ドライマウスの症状で塩が痛みにつながったりすることがある
- 食事の塩分量を減らすことは、健康のためにもドライマウス改善のためにも大切
- 口呼吸を避ける
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- 口呼吸は口の中を乾燥させてしまう
- 鼻呼吸を意識して行い、口の中の潤いを保つ
口内や喉のうるおいを保つためには、加湿器を使うのも有効です。特に冬は空気が乾燥しやすいので、室内に湿度計を設置したり、乾燥したと感じたらすぐに加湿器をつけたりすると良いでしょう。マスクをつけたり、保湿成分配合のマウススプレーを使ったりするのもおすすめです。携帯できるタイプなら、外出先で口の渇きが気になるときにも手軽に使えます。
また、服用している薬の副作用で口が渇いてしまうケースもあります。抗アレルギー薬や抗精神薬、降圧剤など、薬を飲み始めてから喉が渇くようになったという人は、一度医師や薬剤師に相談してみましょう。
マッサージや体操で唾液腺を刺激しよう
唾液腺を刺激するために、マッサージをしたり舌のストレッチをしたりするのも良い方法です。唾液腺を直接マッサージする方法としては、以下の3つがあります。いずれも強く押すのは避け、優しくマッサージしましょう。
- 耳下腺:耳の下の部分
- 上の奥歯のあたりを、後ろから前へ回すようにマッサージする。10回程度行う。
- 顎下腺:顎のエラ部分から約3cm内側の部分
- 耳の下から顎下あたりを、指先で押すようにマッサージする。5回程度行う。
- 舌下腺:舌の付け根の真下、顎の部分
- 顎の下を親指で押すようにマッサージする。5回程度行う。
舌のストレッチは、舌をできるだけ前に出して上下・左右に動かしたり、舌先で円を描くように大きく回したりするものです。右回りと左回りを両方均等に行いましょう。
水分補給のコツと渇きを改善する飲み物
口の渇きを防ぐために水分補給をする場合、より効率的、効果的に補給するためのコツを意識すると良いでしょう。まず、日常生活の中では以下のポイントに注意が必要です。
- 喉が渇く前に水分補給する
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- 軽い脱水症状に陥ると、かえって喉の渇きを感じにくくなる
- 喉が渇いたと感じなくても、こまめに水分補給することが重要
- 入浴前後、起床時には必ず水分補給する
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- 入浴時や睡眠中、知らず知らずのうちに汗をかいて水分を失っている
- 水分をこまめに摂取すると体内の血液量が増えてよく循環するので、健康維持にもつながる
- 飲酒時は真水の水分補給を忘れずに
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- アルコールは利尿作用があるため、飲んだお酒の水分量よりも多く排出されてしまう
- アルコールを飲むとき、飲んだ後は真水など利尿作用のない水分での水分補給を忘れずに
夏の時期は熱中症対策という意味でも水分補給が欠かせません。このときは汗で失ったミネラルを補えるよう、塩分や電解質が含まれる飲み物を選ぶと良いでしょう。特に、気温がそれほど高くなくても、湿度が高い日や急に暑くなって身体が暑さに慣れていないときなどは、意識していなくても汗をかいていることが多いため注意が必要です。
また、夏のクーラーと同様、冬の暖房も空気を乾燥させやすいので、こまめな水分補給を忘れずに行いましょう。冬は汗をかかないので水分補給を忘れがちなのですが、乾燥しやすい季節なので夏と同じように水分補給が重要です。インフルエンザなどのウイルス性疾患が流行する時期でもありますので、しっかり水分補給して自浄作用や粘膜保護作用を強化しましょう。
運動するときは、以下のようなポイントに気をつけます。
- 運動するときの水分補給のポイント
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- 運動を始める前に、コップ1杯ほどの水分を補給する
- 運動中は、15〜30分ごとに1回あたり200〜250mLの水分を補給する
上記を心がけることで、体温の上がりすぎを防ぎ、発汗した分の水分を補うことができます。また、激しい運動で発汗量が多ければ多いほど必要とする水分量も多くなりますので、上記はあくまでも目安とし、激しい運動を行うときは水分補給もしっかり行いましょう。
効率的・効果的に水分補給をするためには、飲み物を飲むことも重要です。日常生活での水分補給は常温の真水で構いませんが、長時間の運動や真夏の発汗時には、スポーツドリンクや経口補水液を活用しましょう。
- スポーツドリンク(ハイポトニック飲料)
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- 塩分や糖分を配合しているが、一般的な体液・血液の濃度と比べて低い浸透圧
- 体内への水分補給がスムーズで、糖質が少なくお腹に溜まりにくいので、運動中や運動直後に飲むのに適している
- 中には、高エネルギー(高糖質)でも低浸透圧になるよう工夫された商品もある
- スポーツドリンク(アイソトニック飲料)
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- 糖分や塩分を配合し、人間の体液・血液に近い浸透圧にされている
- 浸透圧は糖質の濃度によって変わるため、糖質が多い傾向にあり、飲み過ぎはカロリーオーバーになるリスクがある
- 運動の前や、運動後のリカバリーとして飲む
- 経口補水液
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- もともと脱水症の治療のために開発されたもので、スポーツドリンクよりも電解質の濃度が高い
- 真夏の大量の発汗時には、経口補水液がおすすめ
また、日常的に摂取する水分は体温に近い常温のものが吸収に良いとされていますが、運動や熱中症対策で飲む場合、5〜15℃の冷たい水を飲むと吸収しやすいようです。ただし、スポーツドリンクも経口補水液も、日常的に飲み続けてしまうと塩分や糖分の摂りすぎになってしまいます。本当に必要なときにだけ飲むようにしましょう。
喉の渇きが糖尿病や腎臓疾患の可能性も
ドライマウスの原因として、糖尿病や腎臓疾患などの持病も考えられます。具体的には、以下のような疾患が挙げられます。
- 糖尿病、腎臓疾患
- 膠原病(特に、シェーグレン症候群)
- 中枢・末梢神経障害
- 精神的ストレス
- 筋力低下
シェーグレン症候群は、最初にも少し触れたように全身の分泌腺に慢性的な炎症が起こるものです。自己免疫疾患の一つとされ、自分の免疫細胞が自分の分泌腺を異物と認識してしまい、攻撃・破壊してしまうために生じる疾患です。そのため、ドライマウスの診断ではまずシェーグレン症候群かどうかをチェックし、用いる薬を判断します。
口腔がんや咽頭・喉頭がんでは放射線治療がよく行われますが、放射線照射領域に唾液腺が存在することも多く、ここに放射線が照射されると唾液腺組織が破壊され、元に戻らなくなることもあります。また、以下のような薬剤の副作用による口の渇きは、ドライマウスを発症する原因の中で最も多いとされています。
- 循環器用薬
- 降圧利尿薬、交感神経抑制薬、血管拡張作用薬、抗狭心症薬、昇圧薬・低血圧症治療薬
- 精神科用薬
- 催眠・鎮静薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ・抗躁薬、精神刺激薬、抗めまい・抗てんかん薬、痙縮・筋緊張治療薬、抗パーキンソン薬、自律神経系作用薬
- 抗アレルギー薬
- 抗ヒスタミン薬
- 呼吸器用薬
- 呼吸促進薬、気管支拡張・喘息治療薬、鎮咳薬、去痰薬
- 解熱薬
- 解熱・鎮痛・抗炎症薬
- 消化器用薬
- 酸分泌抑制薬(制酸剤)、健胃薬
特に循環器用薬と精神科用薬は口が渇く副作用を持つものが多く、他の因子と重複するとよりドライマウスを生じやすくなります。
1日に摂取する水分の平均量はおよそ1000mLとされていますので、この量を大幅に超える水分を摂取しているのに喉が渇く、唾液の分泌量が減ってきて口が渇くと感じる場合は、疾患が原因かもしれません。まずは、早めに内科を受診しましょう。その後、検査を受けて必要があれば、腎臓内科や糖尿病内科など専門の科へ紹介されるケースもあります。
おわりに:すぐに喉が渇くのはドライマウスのほか、ホルモンバランスも関係
水を飲んでもすぐに喉が渇く場合、原因には脱水・発熱やドライマウスのほか、女性では月経・妊娠・更年期障害などのホルモンバランスが関係している場合があります。心当たりがあれば、生活習慣を整えたり専門医に相談したりすると良いでしょう。
ドライマウスの改善には、唾液腺をマッサージしたり、日頃から適切な水分補給をしたりすることも重要です。疾患が原因の場合もありますので、おかしいと思ったら医師に相談しましょう。
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