高血圧は、生活習慣病の一種として知られていますよね。その一方で、低血圧もさまざまな不調を引き起こす原因となることをご存知でしょうか。
今回は低血圧がどんな状態なのか、その定義や発症原因、種類、また種類ごとの代表的な症状や有効的な対策に至るまで、まとめて紹介していきます。
- この記事でわかること
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- 低血圧が疑われる症状や傾向
- 慢性持続性低血圧、起立性低血圧、急性低血圧、症候性低血圧の特徴
- 睡眠、入浴、ストレス解消を取り入れるポイント
- 早急な処置が必要な低血圧の症状
低血圧の基準値は?女性に多いのはなぜ?
高血圧は血圧が高い状態、低血圧は血圧が低い状態を表す言葉です。しかし、高血圧に明確や診断基準や数値が設定されているのに対し、低血圧には目安はあるものの、明確な範囲基準は設定されていません。
それぞれの診断基準となる数値や、発症している人に見られる特徴を見ていきましょう。
- 高血圧の基準や発症者の特徴
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- 140/90mmHg以上が、高血圧の診断基準となる
- 家庭で計測する場合には、135/85mmHgが高血圧状態と判断される
- 遺伝や生活習慣の他、腎臓や副腎の病気、薬の副作用などが原因で発症
- 動脈硬化や心臓肥大など、循環器病発症の原因となる疾患
- 有病率が高く、成人の1/3、高齢者の2/3は発症しているとされる
- 低血圧の基準や発症者の特徴
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- 明確な診断基準は設定されていない
- 血圧の最高値が100mmHg以下であるかが、低血圧か判断する目安とされる
- 高血圧に比べ有病率が低く、臨床的な注目度も低い
- 深刻な症状がなければ、特に治療の必要はないとされる
また男性よりも、女性ホルモンの影響を受けて末梢血管が拡張する女性の方が、低血圧を起こしやすいことも分かっています。
低血圧によって引き起こされる、代表的な症状には以下が挙げられるでしょう。
低血圧の症状
- 立っているだけで気持ち悪くなったり、動悸や息切れが起こる
- めまいや立ちくらみが起こり、ふらつきの症状がひどくなると失神する
- 朝起きるのが苦手で、全身に慢性的な倦怠感がある
- 顔色が悪い、青白いと言われることが多く、貧血を起こしやすい
- お風呂に入った後、または食後に体調が悪くなることがある
- 食欲不振、胃もたれ、腰痛、頭痛、首こり、肩こりが起こりやすい
- 精神的ストレスに敏感で、ストレスから体調不良に見舞われやすい
- 気象の変化で調子が悪くなったり、乗り物酔いしやすい
なお低血圧は、症状や原因により「慢性持続性低血圧」「起立性低血圧」「急性低血圧」「症候性低血圧」の4種類に分けられます。このため取るべき対策や治療法も、種類によって異なってくるのです。低血圧の種類や、種類別の特徴や対処法については、次章から見ていきましょう。
低血圧の種類と対策法【慢性持続性低血圧】
まずは「慢性持続性低血圧」の代表的な症状と特徴、有効な対策を紹介していきます。
- 代表的な症状と特徴
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- 特別な原因疾患がなく発症するもので、低血圧全体の9割を占める
- 生活習慣が原因で発症すると考えられており、自覚症状がなければ治療の必要はない
- 遺伝的な体質により発症することも多く、やせ型で虚弱体質の人に多い
- 対策法
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- 規則正しい生活を行い、過労や睡眠不足からくる心身のストレスを軽減する
- 運動、浴槽への入浴を習慣化し、心身をリフレッシュさせ全身の血行を促進する
- 朝が苦手で食欲がわかなくても、できるだけ3食きちんと食べて栄養を摂る
- 食事のときに緑茶、コーヒーなどカフェイン入りの飲み物を摂るようにし、食後に血管が拡張するのを防ぐ
低血圧の種類と対策法【起立性低血圧】
次に、低血圧のうち「起立性低血圧」の代表的な症状と特徴、有効的な対策を紹介します。
- 代表的な症状と特徴
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- 体を起こしたとき、動かしたときに立ちくらみなどの症状が出る
- 下半身にたまった血液が、心臓にうまく戻れないために起こると考えられている
- 動く前に比べ、動いた後に血圧が10~20mmHg以上低くなって発症する
- 原因疾患が明らかでない「特発性起立性低血圧症」と「二次性起立性低血圧症」に分けられる
- 特発性起立性低血圧症は、原因疾患がはっきりしないもので全体の8割を占める
- 二次性起立性低血圧症は、糖尿病や内分泌疾患、心臓弁膜症、心筋症や薬物の副作用など、原因がはっきりしたものが分類される
- 対策法
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- 二次性起立性低血圧症の場合は、根本原因となっている疾患の特定と治療をする
- 特発性起立性低血圧症の場合は、以下の方法で下半身からの血液の戻りを助けて症状の改善をめざす
- 対策の例は、腰のベルトをきつく巻く、弾性ストッキングを履く、10~15分足を組んで座る、専用の加圧式腹部バンドを使う、ウォーキングなど軽い運動を習慣にする など
低血圧の種類と対策法【急性低血圧】
低血圧のうち「急性低血圧」は、以下のような理由から体がショック状態に陥り、急激に血圧が低下することで発症します。
- 急性低血圧の原因になり得るもの
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- アレルギー反応によるアナフィラキシーショック
- 外傷による出血、突発的な心疾患により心臓機能が低下した
- アルコールが急速に体に吸収され、血管が拡張して血圧が低下した
このため急性低血圧の場合は、すぐに原因に応じた適切な処理をしなければ、命に関わる危険もあります。めまいやふらつきの症状が突然現れ、直前にケガによる出血、空腹状態で大量に飲酒をするなどの心当たりがある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
病気が原因の低血圧④【症候性低血圧】
何らかの疾患、体の異常が原因で起こる低血圧状態のことを「症候性低血圧」と言います。発症の原因となり得る疾患としては、以下が挙げられるでしょう。
- 症候性低血圧の原因となり得る疾患
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- 起立性調節障害…自律神経失調症の一種で、血圧の調整がうまくいかなくなる病気
- 甲状腺機能低下症…免疫異常の一種で、甲状腺機能が低下することで低血圧になるもの
- アジソン病…結核や自己免疫の異常により、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下する
- 心筋梗塞…心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が血栓で詰まり、血流が止まってしまう
- 不整脈…心臓の拍動が標準値を超えて多すぎる、または少なすぎることで起こる疾患
- 肺塞栓症…肺動脈が血栓で詰まり、ショック状態から死に至ることもある病気
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上記のうち起立性調節障害は子どもの発症が多く、成長とともに自然と治っていく可能性が高い病気です。しかし、甲状腺機能低下症やアジソン病、心筋梗塞、不整脈、肺塞栓症は自然治癒する可能性が極めて低く、放っておくと心臓の働きに異常をきたして死に至ることもあります。
めまいやふらつき以外に、胸の激痛や吐き気、冷や汗、顔や手足のむくみ、変色などの症状が見られるなら、症候性低血圧症の可能性が高いでしょう。早期の治療が必要な疾患もありますので、異常を感じたらすぐ医師に相談してください。
おわりに:低血圧の症状を感じたら、疾患が潜んでいないか医師に診てもらおう
高血圧に比べて罹患者の少ない低血圧には、明確な診断基準がありません。そのため目安となる数値を下回る低い血圧であっても、本人が困るような自覚症状がなければ治療は必要ないとされます。しかし、めまいや倦怠感、頭痛、吐き気など低血圧以外の症状も併発しているなら、その背後に重大な疾患が潜んでいる可能性もあります。低血圧に困っているなら、速やかに医師の診察を受けてくださいね。
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