企業に勤める人にとって、出世は一つの目標とも言えます。出世はキャリアアップや収入アップにも関係しますが、デメリットを感じて出世を望まない人もいます。出世を目指す人が思うメリット、出世を望まない人が思うデメリットを比較していきましょう。
- この記事でわかること
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- 出世による変化をポジティブに受け取れる人とは
- 管理職になると仕事内容がどのように変化するか
- 目上の人と良い関係を築くコミュニケーション
- 出世する人の生活習慣や性格
出世のメリットとデメリットとは?
まずは、出世することのメリットとデメリット、昇進と昇格という2種類の出世の違いについて確認しましょう。
収入アップ以外の出世のメリットとは?
出世のわかりやすく最大のメリットとして、給料が上がることが挙げられます。毎月の給与はもちろん、賞与や退職金などが増えたり、受けられる福利厚生の内容が充実したりと経済面に直結するメリットがあります。出世をしない場合と比べると生涯賃金が増えるため、人生において自由になるお金が増えます。
他にも、出世することで以下のようなメリットが考えられます。
- 上の立場になることで、自信や精神的な安定につながる
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- 会社内での立場が高くなると、精神的に楽になる部分は大きい
- 出世が遅れるよりは出世してしまった方が、同期や後輩との間に精神的なわだかまりを感じなくて済む
- ただし、人によっては出世によるプレッシャーが逆につらくなることも
- チームを動かすようになり、より大きな仕事を行える
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- 自分の担当する組織、部下ができるため、チームでの仕事を行える
- 自分一人ではできなかったような大きな仕事でも、チームを動かせる
- 仕事を部下にうまく割り振れれば、仕事量を組織全体で調整することもできる
- 社会的な地位が高まる
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- 常務・部長・課長など、役職名がついて会社の内外で社会的な地位が高まる
- 肩書きは、金融機関などで融資を受けるときの信用にも影響する
- 年齢が同じなら、肩書きがある方が収入が多いと判断され、融資を受けやすくなる傾向がある
また、立場が上になることで仕事上の裁量が増えたり、新しい経験を積んだりして自分自身の成長につながります。仕事に対する責任が重くなる反面、自分の意見ややり方を反映させやすくなりますので、創意工夫やモチベーションもぐっと上がるでしょう。努力を仕事に結びつけやすくなるため、仕事に対するやりがいを感じやすくなるのも大きなメリットです。
「地位が人を作る」というように、責任ある地位や役職に就くこと自体がその人を育てることもあります。つまり、出世したことでその地位や役職にふさわしい人間になろうと努力するのです。これまでとは違う立場や責任、性質の異なる仕事、組織のマネジメントなどを通じてさまざまな経験を積むことができるでしょう。
出世することで出会う人も変化しますし、さまざまな仕事を経験することで転職しやすくなります。現在は仕事の裁量が小さくてやりづらい、窮屈だと感じているような人は、特に出世のメリットを受けやすいでしょう。
出世のデメリットとは?
出世のデメリットは、メリットと表裏一体のものです。出世をすることで給料が上がったり、裁量の広い地位や役職に就いたりしますが、それは今までよりも責任が重くなり、求められるものも多くなるということです。より大きな成果を求められたり、担当するチームで何か問題が発生したときには最終的な責任を取らなくてはならなかったりします。
また、仕事上の付き合いを断りづらくなったり、休日に仕事の接待をしなくてはならなかったりと、なにかとプライベートの時間が減ってしまうこともあります。会社の社風によっては個人よりも会社を優先すべきとされることもあり、有給休暇や定時帰宅が難しくなり、自分の時間や家族との時間を犠牲にしなくてはならないかもしれません。
出世することは一般的に管理職になるということですから、自分自身の仕事だけでなく部下の仕事の面倒を見たり、組織を動かすための指示を積極的に出さなくてはならなくなったりします。言われたことや指示されたことを淡々と自分が処理するだけでなく、部下の仕事の成果が上がるよう図らなくてはなりません。
部下に仕事を割り振ったり、指示や指導をしたり、チームの目標を管理したり、職場の人間関係に配慮したりといったことも仕事に含まれるようになります。いわゆるマネジメント業務で、チームや会社全体を見回しながら自分で考えて仕事をしなくてはなりません。このため、受け身な性格の人が出世をすると、仕事の性質の変化に戸惑うことも多いのです。
他にも、出世のデメリットとして以下のようなことが考えられます。
- 上と下の板挟みになりやすい
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- 社長など最終的な経営の責任者でない限り、上司は必ず存在する
- 上司の指示に従いながら、部下の不満にも配慮していかなくてはならない
- 上司の意向を優先しすぎると部下がついてこなくなったり、部下に配慮しすぎると成果を上げられなくなったりと、バランスが大切
- 周囲の見る目が厳しくなる
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- 管理職としてふさわしい振る舞いができないと、周囲からの信用を失ってしまう
- 同僚がするなら許せることも、上司がすると反発してしまうということもある
- 部下に不満を持たれると、突き上げを受けたり悪口など良くない評判を流されたりすることも
- 会社の意向に背きづらくなる
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- 会社の言うことを聞かないと出世コースから外れてしまう可能性があり、会社に従い縛られやすくなっていく傾向がある
- 自分の意向に反すること、倫理的に問題を感じることでも、会社の指示だからと受け入れてしまうことも
- 会社の意向に背くような意見は言いづらくなってしまう
管理職になると残業代が支払われなくなるイメージがある…
また、管理監督者に該当する場合、残業代がもらえなくなってしまうこともあります。
これは、労働基準法において管理監督者(労働基準法第41条第2号「監督もしくは管理の地位にある者」)にあたる場合、労働基準法における労働時間の規制を受けなくなるためです。時間外労働に関する制限がなくなるため、残業代を支払わなくても法的に問題がなくなるというわけです。
もちろん、出世しても残業代がつくこともあります。管理監督者に該当しない場合もあり、残業代の代わりに役職手当がつきますので、必ずしも残業代が出ないとは限りませんし、トータルで見て割に合わないとは限りません。
ただし、激務になる場合は時給換算すると部下よりも給料が低くなってしまう可能性もあることを知っておきましょう。
昇進と昇格はどう違う?
出世には「昇進」と「昇格」の2種類があり、それぞれ以下のような意味を持ちます。
- 昇進
- 組織の中で主任から課長、課長から部長というようにポジションが上がること。一般的に、主任・係長・課長・次長・部長と部門の中で昇進していき、さらに幹部となると、常務・専務・副社長・社長・会長という出世コースもある。
- 昇格
- 社員の能力によって等級を定める「職能資格制度」を導入している企業の場合、人事考課や社内試験などの結果をもとに等級が上がる「昇格」が採用されている。昇格によって評価が上がり、給料もアップすることが多いですが、必ずしも昇進を伴うとは限らない。
つまり、平社員から管理職へ変わっていくのが昇進、個人の能力を評価されるのが昇格と言えます。マネジメント業務を目指す場合は、昇格だけでなく昇進を意識する必要があるでしょう。
出世するために必要な能力や人脈作りって?
出世を目指しているからといって、必ずしもマネジメント業務だけができれば良いわけではありません。
そもそも部下の仕事の面倒を見たり、業務全体を見回して指示を出したりするためには、本人がそれなりに仕事のできる人間でなくてはならないのです。まず、プレイヤーとしての実力をつけることから始めましょう。
どんな仕事をする上でも、自分の専門分野を持つのは基本です。専門分野を決めて知識を身につけ、経験を積み、「○○については誰にも負けない」という優秀なプレイヤーになりましょう。そのためには、言われたことをしっかりこなすだけでなく、自分が何をするべきか自分で考えられるようにならなくてはなりません。
このようにプレイヤーとしての実力をつけるためには、まず自分に合った仕事、成果を出しやすい仕事をする必要があります。人は自分がやりたいと思ったこと、得意なことをするときに最大限の能力を発揮できますし、モチベーションも高く保てます。実力があっても仕事が合わないと、なかなか成果に結びつきません。
優れた組織や上司であれば、やりたいことや能力にふさわしい仕事を割り振ってくれるでしょうが、そうでない場合もあります。そのときは、自分のやりたいことや合ったことをやらせてもらえるよう、積極的に上司に働きかけましょう。このとき「今の仕事がイヤだから違う仕事をやらせてくれ」という言い方は絶対にNGです。
まず、新しい仕事をするのに必要な能力を身につけた上で、自分がその仕事をやることで会社にとってどんなメリットがあるかプレゼンしましょう。基本的には就活と同じです。客観的に見て自分の成果だとわかりやすい仕事(企画した商品がヒットする、営業努力で売り上げが上がるなど)を選び、評価を上げやすくするのも大切なポイントです。
その上で、マネジメント能力を身につける必要があるでしょう。プレイヤーとして自分の専門分野の深い知識と豊富な経験を持ちながら、他の人にも上手く仕事をしてもらうよう注力するのがマネージャーです。つまり、プレイヤーだけをしていたときよりも幅広い能力が必要になります。
忘れてはいけない、社内での人脈作り
出世するためにはもちろん個人の資質や能力が第一に重要ですが、第二には社風を理解したり、人脈を作ったりすることも重要です。
出世の定義や評価基準は職種・ジャンル・各企業によってさまざまなので、まずは会社の評価基準を見極め、昇進試験があるなら求められる知識やスキルをリサーチ・分析し、昇進試験に向けて必要な力を身につけなくてはなりません。
同時に、社内での人脈作りも忘れないようにしましょう。人脈作りとは上司や幹部など上層部だけでなく、まず現在のポジションで人間関係を良好に保つということです。出世のためにも、出世した後の仕事をスムーズに進めていくためにも、同僚や上司・部下から信頼される良い人間関係を築いておかなくてはなりません。
できれば、他部署とも幅広くコネクションを開拓しておけると理想的です。人事業務には多数のステークホルダーが絡んでいますので、幅広く支持されていればそれだけ早く出世できる可能性が高くなると考えられます。昼食を一緒にとるなど、普段業務で関わらない社員とも積極的に交流する機会を作ると良いでしょう。
また、上司から価値ある人材だと思ってもらうことも重要です。誰であろうと替えが効く人材はありませんが、いなくては業務が成り立たないと思われるほどの人材は重用したいものです。常に複数のプロジェクトで複数の上司と働いているような場合は、それぞれの上司の期待にどう応え、相反する利益にどう対処していくか学ぶのも昇進後の勉強になるでしょう。
出世する人の性格と行動の特徴
ここまで、出世のメリットを受けやすい人や出世するにはどうしたらいいかというポイントをご紹介してきましたが、性格や行動面からも出世しやすい人の特徴を見ていきましょう。
出世する人に共通する性格とは?
出世する人は、だいたい共通して以下のような性格を持っています。
- ポジティブ
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- 何事に対しても前向きな人は、仕事に対しても精力的で出世しやすい
- 落ち込むことがあっても、すぐに思考や気分を切り替えて新しいことにチャレンジできる
- 結果、同じ時間でもネガティブ思考の人より成果を出しやすい傾向に
- コミュニケーション能力が高い
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- 相手を引き込むようなトーク力を持ち、商談などの交渉ごとを自分のペースに
- 他人の話を聞く能力も高いため、困りごとやニーズをいち早くキャッチできる
- 効果的な問題解決への提案やアドバイスができるため、取引相手や仕事仲間から信頼されやすい
- 可愛がられやすい
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- 周囲からなぜか可愛がられるタイプの人は、自然と味方や支持してくれる人が増える
- 思わず応援したくなるような人も、このタイプ
- 周囲への気遣いを増やすなど、努力して意図的にキャラクターを作るのも有効
- ストレス耐性が高い
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- 仕事のプレッシャーを長期間受けても、最高のパフォーマンスを発揮できる
- どのような状況でも良い仕事ができる人は、成果を出しやすく出世しやすい
- 目先の利益にとらわれず、じっと我慢して長期的な利益を生み出せるのも特徴
- 夢や信念を持っている
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- 将来的に叶えたい夢や、原動力となる信念がある人は、常に目標に向かって努力できる
- 困難や挫折を経験しても諦めず継続できるため、仕事でも結果を残しやすい
- 行動や発言に一貫性があるので、一つの仕事を極めやすい
- 向上心がある
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- 常に上を目指して努力する、向上心がある人がほとんど
- 自分が今置かれている地位や結果に満足せず、常に現状よりも上を目指している
- 一つひとつの成果は小さくても、少しずつレベルアップを繰り返せばやがて周囲と差がついていく
- 良い意味で打算的
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- 仕事のためにバッサリと損切りの決断を下したり、狡猾な手段で成果を得たりする
- 見方によっては性格が悪く見えてしまうこともあるが、合理性を追求した結果であることも
- 利益を追求するという意味で、会社にとって必要な人材とも言える
まとめると、ポジティブでコミュニケーションが高く人望を集めやすいことがわかります。一方で単なるお人好しにはならず、ある程度は良い意味で打算的に利益を追求できる人が出世に向いていると考えられます。
また、管理職のプレッシャーに耐えられるだけのストレス耐性や、現状に満足しない向上心や信念があるとより良いでしょう。
出世する人はどんな行動や習慣を持っている?
また、出世する人は以下のような行動や習慣を持っている人が多いです。
- 早寝早起きなど、健康に気を使っている
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- 男女問わず、仕事に情熱を傾ける体力や気力づくりのため、規則正しい生活を送っている人が多い
- 体力や気力を充実させるためには、運動習慣や食生活にも気をつけて丈夫な身体をつくる必要がある
- デスク周りがきれい
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- 効率重視して行動しているため、無駄な時間を少しでも減らそうとデスク周りやカバンの中、PCのデスクトップなどを整頓している
- 欲しいものがすぐ取り出せるようにし、業務効率を上げるという習慣が自然と身についている
- フットワークが軽い
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- 気になることがあればサッと動き、興味を持ったことはすぐにやってみる、など
- 行動力はチャンスを掴みやすくなり、上司への自然なアピールにもなる
- もっと知りたいとさまざまなものに興味関心を持つので、楽しみながら行動に移せる
- 義務的に勉強をするのではなく、好奇心を持って学ぶと習得も早い
- 常に業務効率化を考えている
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- デスク周りともつながるが、仕事の効率化ができる人は仕事ができる人
- 少しでも今の仕事を早く切り上げ、次の仕事に着手しようとするため動きに無駄がない
- 今やるべきことなどの優先順位を頭の中で計算して動けるので、効率よく仕事ができる
- 会議などのとき、自分の意見を持って発言している
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- 自分の意見を求められたときは、しっかりと述べることができる
- つまり、普段から自分の意思を持って仕事をしているということ
- 物怖じせず自分の意見を発信できると、周囲からの信頼も厚く認められる人間になれる
- オンオフをしっかり分けている
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- 仕事ができる人は、オンオフをしっかり切り替えてプライベートも充実している人が多い
- 仕事のストレスをオフで発散でき、ストレス解消できるので精神的に安定しやすい
- 家族や趣味の話を職場ですれば、キャラクターができて親しみがわき、会話が増える
出世する人は、自然と業務量や地位の負荷に耐えられるような人になりやすいです。つまり、健康でストレスを上手に発散できる人、仕事をさばくスピードが速い人などは出世しやすい傾向にあるでしょう。また、フットワークが軽くチャンスを逃しにくい人や、自分の意思をはっきり持って仕事をする人も仕事ができ、周囲から信頼されやすいです。自分も出世したいと思う人は、ぜひこうした行動や習慣から真似てみるのはいかがでしょうか。
後編はこちら
おわりに:出世すると仕事の幅や人生計画が大きく広がることも!
出世すると仕事やプレッシャーが増えるなど、デメリットを感じる人が多いことも事実です。ただし出世に伴い、裁量権を得ることができれば仕事の面白みが広がります。経営陣と近い立場でキャリアを積めば、可能性もより広がるでしょう。
後編では、出世を目指す若手社員や新入社員が知っておきたい出世のポイントを紹介します。
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