頭が痛いと風邪のひき始めかと思い薬を飲む人も多いですが、風邪以外で頭痛が起こることも多く、その原因もさまざまです。
今回は、そのような原因となる疾患がない頭痛、片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛を中心に、それぞれの頭痛の違いや治療法をご紹介します。最後に、虫歯を主な原因とする頭痛についても解説しますので、心当たりのある方はぜひ確認してください。
- この記事でわかること
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- 頭痛に悩む人が多いのは〇十代の女性だった?
- 片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛の見分け方
- すぐに病院へ!見過ごしてはいけない危険な頭痛
- 受診するときに医師に伝えたい痛みの特徴って?
- お口のトラブルで頭痛が引き起こされる理由
頭痛はもはや国民病?男女や年代で起こる頭痛の違いってあるの?
「日本における頭痛有病率に関する疫学調査(1997年)」によれば、日本で慢性頭痛に悩まされている人は全国で約3,000万人にも達するとされ、これは日本の人口の約40%に相当します。そのうち、片頭痛で悩む人は約840万人、緊張型頭痛で悩む人は約2,200万人で、特に片頭痛は女性に多いことがわかっています。
片頭痛を発症している人が最も多いのは30代女性で、5人に1人は片頭痛を抱えているというデータが報告されています。その前後も含めた20〜40代の働き盛りに片頭痛を発症する女性が多く、男性と比べて20代で約2倍、30代で約3倍、40代で約7倍もの女性が片頭痛を発症しています。また、前兆のある片頭痛は全患者中の約3割でした。
発作の頻度は平均で月に2〜3回、持続時間は1時間〜17時間程度と無視しづらい多さ・長さですが、病院を受診している率は低く、69.4%の人に受診歴がありませんでした。同調査によれば、自分が片頭痛を抱えていると気づいている人はわずか11.6%であり、受診率の低さは片頭痛を自覚している人の少なさに起因すると考えられます。
緊張型頭痛の場合は、男性が18.1%、女性が26.4%と多少女性が多いものの、片頭痛ほどの偏りは見られませんでした。緊張型頭痛は男性の10〜40代、女性の20〜30代、50代に多いと報告されています。
頭痛の種類って?片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛の違いは?
慢性頭痛には、片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛の3種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。
- 片頭痛
- 頭の片側または両側がズキズキ、ガンガンと痛む
- 吐き気を伴うような頭痛が、一定の期間を置いて繰り返す(月に1〜2回、多いときは週に2〜3回)
- 脈打つような痛みと表現されることが多く、身体を動かすと痛みがひどくなる
- 悪心・嘔吐を伴ったり、音や光に敏感になったりすることも
- 群発頭痛
- 目の奥をえぐられるような、柱に頭をぶつけたくなるような、と形容される激しい痛みが片側の目の奥に起こる
- 涙が出て目が充血し、鼻水が出ることも
- 多くの場合、年に1〜2回、1〜2ヶ月にわたって毎日のように激しい頭痛が繰り返し起こる時期が訪れる
- 緊張型頭痛
- 肩や首筋のコリとともに、頭が締めつけられるように痛む(頭に輪をはめて締めつけられるような、と表現されることも)
- 毎日のように起こる頭痛だが、痛みの強さは他と比べると弱く、仕事や日常生活ができなくなるほどではない
- 精神的・肉体的いずれのストレスも引き金となることがある
また、これら以外にも重篤な疾患から引き起こされる「危険な頭痛」があります。以下のような痛みや症状が現れた場合は、すぐに病院を受診しましょう。
- くも膜下出血
- 頭がバットで殴られたように痛み、吐き気や嘔吐を伴う
- 髄膜炎
- 頭全体、特に後頭部が強く痛み、うなじが硬くなり、身体を動かすと痛みが増す
- 38〜39℃の発熱がある
- 脳出血
- 頭痛や吐き気に伴って手足が痺れ、感覚が鈍ったり、動かせなくなったりする
- 意識がぼんやりし、ろれつが回らなくなる
- 脳腫瘍
- 頭全体または一部分の重い感じ、鈍痛が徐々に悪化、吐き気がないのに突然吐く
- 慢性硬膜下血腫
- 頭痛の他に手足の麻痺や尿失禁が生じる。1〜2ヶ月程度前に頭を強く打ったことが原因となって起こる
頭痛は脳神経科や頭痛外来に相談を!ペインクリニックもおすすめ
慢性頭痛である片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛の場合は、「脳神経外科・脳神経内科・内科・ペインクリニック内科」のいずれかを受診すると、適切な検査を受けられます。
また、もともとかかりつけ医がいるという場合は、相談すると頭痛の専門医を紹介してくれます。自己判断が間違っていた、重篤な疾患が隠れていた、という場合もありえますので、慢性頭痛に悩んでいる方は一度病院で検査をしておきましょう。
事故や転倒後に頭痛がある場合は、「整形外科・脳神経外科・ペインクリニック内科」のいずれかで痛みの原因を調べましょう。頭部の外傷によって頭痛が引き起こされている場合、ダメージの度合いによっては生命に関わることもあります。このような頭痛は、大元の原因としてケガや疾患がありますので「二次性頭痛」と呼ばれます。
自律神経失調症が疑われる場合は、かかりつけ医や内科を受診しましょう。そこで原因がわからず、検査でも異常が発見できない場合は心療内科やペインクリニック内科を受診するのがおすすめです。
もし、全く原因に心当たりがない頭痛に悩んでいるという場合は、「頭痛外来」など、頭痛を専門とした病院を受診するのが良いでしょう。しかし、激しい頭痛が続く場合や、吐き気や意識障がいなど他の症状がある場合は脳血管障がいなどによる危険な頭痛の可能性も考えられますので、すぐに脳神経外科を受診しましょう。
また、頭痛で病院を受診する場合、以下のようなチェック項目をリストアップしたメモを持っていくと診察がスムーズに進みやすいです。わかる範囲で受診の前に書き出しておきましょう。
- 最初の頭痛はいつ頃から始まったか(痛む場所・痛み方・前兆・随伴症状・それ以降の頭痛の頻度)
- 現在、どんな頭痛があるか(痛む場所・痛み方・前兆・随伴症状・頻度)
- 頭痛の際、温めるのと冷やすのとではどちらが楽になるか
- 頭痛の最中、頭や身体を動かすと痛みが酷くなるかどうか
- 頭痛の最中、光・音・匂いなどを不快に感じるかどうか
- 家族や身近な親戚などに、頭痛持ちの人がいるかどうか
片頭痛の治療法や薬を飲むタイミングって?
片頭痛には、以下のような症状の特徴があります。
- 痛いときと痛くないときがあり、月に数回程度起こる人が多い。痛み出すと数時間〜数日間続く
- 脈打つような、ズキンズキンとした痛み
- 頭の片側だけ痛むことも、両側が痛むこともある
- 吐き気や嘔吐などの症状が出やすい
また、痛みが起こる前に以下のような「前駆症状(前兆)」という症状が出ることがあります。
- 目の前にチカチカするような光が見える
- 視野の中に一部、見にくい場所が出る
- 匂いや音に過敏になる
片頭痛の原因ははっきりとはわかっていませんが、飲酒や睡眠不足、睡眠過多、天候や気温の変化、ストレスからの解放、チーズやチョコレートなどチラミンやポリフェノールを含む食べ物などが原因となることが多いようです。処方される痛み止めは2種類で、「ロキソニン・カロナールなど通常の痛み止め(市販薬と同じ)」と、「トリプタン系薬剤(片頭痛専用の痛み止め)」ですが、いつも飲んでいる市販薬がある場合は処方しないこともあります。
トリプタン系薬剤(片頭痛の専用薬)は、前兆(前駆症状)の際に服用しても、また症状が酷くなってから服用しても成分が適切に効かず、効果に乏しかったり、痛みが治りにくくなってしまったりすることもあります。片頭痛が始まってすぐ(発症から1時間程度の間)か、または頭痛が軽度のときに飲みましょう。痛みだけでなく吐き気・嘔吐・光や音への過敏も抑えられます。
通常の痛み止めは、市販薬と合わせて月に10日程度にとどめ、飲み過ぎに注意しましょう。これは薬物乱用頭痛を防ぐためで、他の理由で処方された鎮痛薬や市販薬も含めて飲みすぎてしまうと、逆に頭痛の頻度が増えたり、薬が効きにくくなったりしてしまうというものです。1日複数回服用したときも「1日」と数え、日数が10日を超えないように服用しましょう。
群発頭痛の治療法は薬と純酸素吸入法が効果的?
群発頭痛は、名前の通り特定の時期に集中して起きるのが特徴の慢性頭痛で、以下のような症状の特徴があります。
- 1ヶ月〜2ヶ月の間はほとんど毎日起こるが、その他の時期には起こらない
- 頭の片方だけに起き、目の周りや奥に痛みが発生し、頭の片側や上顎付近に拡大していく
- 激しい痛みで、じっとしていることや我慢していることができない
- 逆に、動くと痛みが紛れる
- 痛みは1日に1〜2回起こり、1回あたり15分〜3時間くらい続く
- 毎日、ほとんど同じくらいの時間に痛み始める(朝方に痛みが強くて目が覚める場合が多い)
- 痛みの他、涙・目の充血・鼻水などの症状が現れることも
群発頭痛の仕組みはまだ解明されておらず、そのため要因としてはっきりしたものもわかりません。しかし、群発頭痛が起こるきっかけとして以下のようなものが知られています。
- 血管の炎症・拡張
- 脳内に酸素や栄養を運ぶ血管に炎症が起こり、腫れて拡張するため頭痛が起こる
- 飲酒
- 飲酒そのものが群発頭痛を引き起こす場合と、頭痛が起きているときに飲酒すると悪化する場合がある
- 気圧の急激な変化
- 飛行機に乗るなどして、気圧が急激に変化すると頭痛が起こる
- 時差などで体調が悪化し、頭痛が起こることも
- 体内時計が狂う
- 時差にも関係するが、決まった時間や時期に起こることから、出生時から持っている体内時計が狂うために頭痛が起こるとも考えられている
この他、昼寝をすることによって群発頭痛が起こる場合もあるとされています。そのため、群発頭痛の予防や再発防止には、以下のようなポイントを心がけましょう。
- 群発頭痛が起こる期間には禁酒・禁煙を心がける
- 登山や飛行機に乗る(気圧が急激に変化する)場合には、前もって医師に相談する
群発頭痛の治療には、純酸素吸入法や薬物療法を利用します。
- 純酸素吸入法
- 医療用の酸素ボンベから酸素を吸入する方法で、5分程度で痛みが軽減する
- 約8割の人に効果があるとされる
- 薬物療法
- 発作時にトリプタン系薬剤を使ったり、血管拡張薬を使ったりする
- 痛みに対し、ステロイド薬を使うことも
また、群発頭痛を予防するための薬剤として「カルシウム拮抗薬」が使われることがあります。他にも「エルゴタミン製剤」を寝る前に飲んだり、頭痛が起きてすぐのときに飲んだりすると痛みを予防しやすいとされています。一方で、市販薬などが群発頭痛を誘発する可能性も指摘されていますので、薬は自己判断で服用せず、必ず医師と相談の上で服用しましょう。
緊張型頭痛の治療法は薬やストレス対策が中心
緊張型頭痛の特徴は、以下のような症状です。
- 頭全体が締めつけられるような痛みで、後頭部から首筋にかけての両側もズキズキと痛む
- 首や肩のコリを伴うケースが多く、ふわふわとしためまいや倦怠感が起こることも
- 始めは頭痛の起こる頻度は低いが、症状が悪化していくと頻度も増えていく
緊張型頭痛の原因は明らかになっていないものの、身体的・精神的ストレスが重なることで症状が悪化すると考えられています。ストレスで頭・首・肩・背中の筋肉が緊張し、血流が悪くなって乳酸やピルビン酸などの老廃物が筋肉に溜まり、神経を刺激して痛みが生じます。やがて、筋肉が緊張していないときにも痛みを感じるようになり、慢性的な頭痛へと進行していきます。
身体的ストレスとは、無理な姿勢を長時間取り続けて筋肉に力が入った状態のことで、パソコンやスマホの操作などうつむき姿勢、自動車の運転、合わない枕での就寝などが挙げられます。そのため、緊張型頭痛の予防・治療法として、日頃から身体を適度に動かしたり、入浴したり、ストレッチしたりして筋肉をほぐし、リラックスすることを心がけましょう。これらの対策は同時に精神的なストレスの解消にもつながりますので、積極的に行いましょう。
その他の治療法としては、主にNSAIDsなどの痛み止めで症状を和らげる対処療法が基本です。ただし、片頭痛などと同様、痛み止めの使いすぎは薬物乱用頭痛の原因となりますので、使いすぎないよう注意しましょう。首や肩の筋肉のコリが強いときは、筋肉の緊張を緩める「筋弛緩薬」を使ったり、精神的な不安やストレスが強いときは「抗不安薬」を使ったりする場合もあります。
虫歯が頭痛の原因かも?!放置すると大変な状態に…
少し特殊な慢性頭痛のケースとして、虫歯から頭痛が起こることもあります。具体的には、以下の5つの疾患に伴うケースです。
- 歯髄炎(しずいえん)
- 虫歯が歯髄(神経と血管が集中している場所)まで進行したもので、ズキズキとした痛みが特徴
- 炎症が酷くなると、頭痛やひどい口臭が起こる
- 歯に穴が発見できなくても、見えない場所に虫歯ができて歯髄炎になっていることも
- 歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)
- 虫歯菌が歯髄から副鼻腔(頬骨の内側にある空間)に入り込み、炎症を起こしたもの
- 頭痛、頬の痛み、勢いのある鼻水などが特徴
- 歯が原因でない上顎洞炎でも症状は同じなので、適切な診断が必要
- 筋緊張性頭痛(歯の噛み合わせのズレが原因)
- 虫歯によって歯の噛み合わせがズレると、片側の筋肉が緊張して痛みを伴う
- 虫歯の無い方の歯でばかり食事をするため、歯がすり減り噛み合わせの高さがズレて、頭全体がズレるというもの
- 頭痛のほか、肩こりや首の痛みを伴うことも
- 脳炎
- 虫歯菌が原因となり、脳内に白血球が入り込んで炎症を起こすもの
- 頭痛のほか、首の後ろの痛み・発熱・吐き気・嘔吐などの症状が見られる
- 進行すると、突如としてけいれんや意識障がいなどの症状が現れる
- 虫歯が脳炎まで進行することは極めて稀だが、放置し続けると発症する可能性がある
- 脳静脈血栓症(のうじょうみゃくけっせんしょう)
- 虫歯菌が血流に乗って脳の静脈に達し、炎症を起こして血栓を生じるもの
- 刺すような強い頭痛が特徴で、生命に関わることも
- 虫歯から進行するのは極めて稀だが、脳炎同様放置し続けていると進行する可能性が
いずれの場合もあまり楽観視できる状況ではありませんので、虫歯が原因の頭痛が疑われる場合、応急処置として以下の「患部を冷やす」「鎮痛剤を飲む」「血行を良くするような行動を控える」という3つのポイントを心がけ、早めに病院に行きましょう。
- 患部を冷やす
- 濡れたタオルや保冷剤、タオルで巻いた氷などで患部を冷やし、血流を抑えて痛みを和らげる
- 歯と頭の両方が痛い場合、どちらも冷やす
- 急激に冷やしたり、冷やしすぎたりすると痛みが強まることがあるため、注意する
- 鎮静剤を飲む
- 冷やしても痛みがおさまらなければ、鎮痛剤を服用する
- 歯科で処方されたものでも、市販薬でもOK
- 血行を良くするような行動を控える
- お風呂に入る、アルコールを飲むなど血行を良くする行動は控え、安静に
- 痛みが引いてきたからと血行を良くしてしまうとぶり返すことがあるので、注意する
おわりに:慢性頭痛は日本人の約4割。適切な診断と対処を行おう
慢性頭痛は片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛が主で、日本人の約4割が抱えているとされています。片頭痛も緊張型頭痛も女性の方が多く、特に片頭痛は男性の数倍も発症者がいます。頭痛の種類は自己判断が難しいので、一度病院を受診して適切な診断を受けましょう。
また、重篤な疾患や虫歯が原因で頭痛が起こることもあります。これらの場合は生命に関わることもありますので、心当たりがあればすぐに病院を受診しましょう。
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