老後に必要な資金は2000万円と発表されたこともあり、将来の貯金について不安を抱える人は少なくありません。どうやってお金を増やせばよいのかわからない、貯蓄だけでは足りるか心配な人も…。
そこで、今回は将来に向けて貯金する方法についてまとめました。貯蓄や投資、NISAとiDeCoの違い、個人年金など、どの方法が最も自分に合っているのかチェックしてみてください。
- この記事でわかること
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- 世代別の貯蓄平均金額はいくら?
- 積立定期預金、定期積立預金、財形貯蓄制度、社内預金制度の違い
- つみたてNISAはいくらまで非課税なの?
- 混乱しがち?つみたてNISAとiDeCoの違い
- 頼れるFP(ファイナンシャルプランナー)はどんな人?
貯蓄額の平均や貯蓄計画の立て方って
厚生労働省の調査によると、平成28年の1世帯あたりの平均貯蓄額は以下のようになっています。
- 平均貯蓄額
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- 全世帯:1,031万5千円
- 高齢者世帯:1,221万6千円
全世帯で見たときよりも、高齢者世帯の方が貯蓄額は高くなっています。これは老後に向けて貯蓄をする人が多いことを考えると、当然のこととも言えるでしょう。また、年齢別の貯蓄額は、それぞれ以下のようになっています。
- 年齢別の平均貯蓄額
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- 29歳以下:154万8千円
- 30〜39歳:403万6千円
- 40〜49歳:652万円
- 50〜59歳:1,049万6千円
- 60〜69歳:1,337万6千円
- 70歳以上:1,260万1千円
このように、労働力の中核となっている年代においては年齢を重ねるにつれて貯蓄が増えていることからも、老後に向けて貯蓄をする人は多いと考えられます。70歳以上で貯蓄額が減っているのは、退職して貯金を崩しながら生活している人が増えてくるからでしょう。また、労働世代が貯金をすることには、将来に備えることも含めて3つのメリットがあります。
- 急な出費に対応できる
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- 貯金があれば、突然のケガや病気で大きな医療費がかかったり、冠婚葬祭でご祝儀やお香典を渡したりといった出費にも対応しやすい
- 特に、年代によっては友人の結婚が続いたり、急に里帰りをすることになったりする
- 家電が壊れて書い直す必要が出ると、普段の生活費とは別に大きな出費になる
- 貯金をしていないと、突発的な出費が生活費を圧迫し、場合によってはキャッシングなどの必要が生じたりしてしまう
- 将来的にかかる大きな出費に備えられる
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- 教育資金・住宅資金・老後資金は、「人生の三大資金」と呼ばれる大きな出費
- 子ども一人にかかる教育費は、幼稚園から大学まで国公立に通ったとしても少なくとも1,000万円以上の費用がかかる
- お金を積み立てておけば子どもが希望する進路のために資金を充てられるが、全く貯金がないとそうもいかない
- 老後資金も同様に、公的年金だけでは十分な生活が送れないという認識が一般的
- 心のゆとりが生まれ、人生の質が上がる
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- 貯金をしておけば、何かあったときでも安心感があり、日々不安を感じにくくて済む
- 突然のリストラ、災害に遭って生活が見通せなくなるなどの金銭的なリスクに対する不安感は、心のゆとりをなくして人生の質が下がってしまう可能性も
- 精神的な余裕があれば生活にハリが生まれ、人生の質が上がりやすい
積立定期預金は毎月少しずつ貯めたいコツコツタイプ
しっかりとお金を貯めたいなら、積立貯金という最も手軽かつ堅実な方法があります。
- 積立定期預金がおすすめな人
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- 毎月数千円から数万円のお金を積み立てていく貯金方法
- 今はまとまった手持ちのお金がないけれど、これから貯金を始めたい人におすすめ
通常、銀行での定期預金は100万円以上のまとまったお金がある人が利用するものですが、積立貯金はまとまったお金がなくても初められます。
毎月のお給料からコツコツと貯めていけば、数年後には利息を含めてまとまった金額を受け取れます。貯金ができなくて悩んでいる人がお金を貯めるためにも、積立定期預金はおすすめの方法です。
貯金ができない人の多くは、給料が振り込まれた後、お金を使って余った分を貯金に回そうとします。しかし、実はこの方法ではいつまで経ってもお金は貯まりません。
貯金をしようと思ったら、給料が振り込まれてすぐに貯金分を引いて、残ったお金で生活するのが確実です。積立貯金を始めると、毎月一定額が自動的に貯金用の口座に振り込まれますので、この仕組みを簡単に作ることができます。
コツコツとタンス預金をして、お金が貯まったら定期預金に預ければ良いと考える人もいるかもしれませんが、手元にお金があると、何か欲しいものができたときや遊びに行きたいときについつい使ってしまうこともあります。口座に入っていれば「引き出す」というワンステップがありますので、衝動的な買い物や遊びを防ぐブレーキにもなるのです。
銀行の定期積立預金
積立貯金の中でも最も手軽なものは、銀行の積立貯金です。給与振込口座がある銀行や、よく利用する銀行があれば窓口で相談してみましょう。
また、ネット銀行なら手続きがインターネット上でできるうえ、利率もメガバンクなどより高く設定されているところも多く、より効率的にお金を貯められます。
会社の財形貯蓄制度
会社が財形貯蓄制度を採用していれば、それを利用する方法もあります。毎月の給与から一定額を天引きし、そのお金を契約銀行に送金して貯蓄を行います。会社は引き落としと送金を担当し、実際にお金を管理するのは金融機関なので、自分で手続きする手間がいりません。
会社の社内預金制度
会社が社内預金制度を設けている場合、それを利用する方法もあります。同じように給与から一定額を天引きするのですが、これを会社が直接預かって貯蓄します。社員にとっては金融機関よりも高い金利がつく預金になりますし、会社にとっては預金を設備投資や運転資金に回せるというメリットがあり、長期間働く予定の会社であれば利用するメリットは大きいでしょう。
つみたてNISAは月々の積立で始める個人年金タイプ
「NISA」とは、通常の株式や投資信託などの売買益や配当金などが非課税になる制度のことです。
正式名称を「少額投資非課税制度」と言い、「つみたてNISA」として知られていますよね。年間120万円までは非課税で投資ができ、上限はあるものの最低金額は設定されていません。
- つみたてNISAがおすすめな人
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- 小さな額で投資を始めてみたい人
- 個人年金を検討している人
- 非課税制度を利用して節税したい人
NISAは年間の上限が120万円ですが、その年内に非課税枠の未使用分があったとしても、翌年に繰り越すことはできません。また、NISA設定期間中にNISA口座内で売却した場合、その売却分の額を再度非課税枠として利用することもできません。1年間の間に分配金の再投資や商品の乗り換え(スイッチング)を行った場合は、その分の新たな非課税枠が必要です。
つみたてNISAとiDeCoの違い
自分で掛金を設定して積み立てる個人年金の「個人型確定拠出年金(iDeCo)」には5,000円以上という最低金額の設定があり、仕組みが異なります。
また、iDeCoとの最も大きな違いとして、いつでも売却して証券会社の口座などから出金できることが挙げられます。iDeCoは原則として60歳以降の受給年齢になるまで資金の引き出しができませんので、注意しましょう。急に資金が必要になった場合でも安心なのは、NISAの大きなメリットの一つです。
NISAの非課税対象になるのは、株式投資信託や国内外の上場株式、国内外のETF、ETN(上場投資証券)、J-REITなどの売却益や配当金、普通分配金などです。3ヶ月〜半年程度の株価の上昇による売却益を効率的に確保したい人や、高配当銘柄の投資などに向いています。
NISAには、投資期間や年間投資限度額、投資対象商品によって「NISA(一般NISA)」と「つみたてNISA」の2つがあります。
- 一般NISA
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- 通常の運用利益にかかる税金20.315%が非課税になり、その上限は年間120万円、最長5年トータルで600万円分の累計投資額に適用される
- 5年間のNISA期間が終了すると、「ロールオーバー」の手続きでさらに5年間、非課税で保有できる
- 年間投資額が高く、対象商品の幅も広い。換金も自由に行える
- 日本在住の20歳以上の人であれば、誰でも簡単に口座を開設できる
- つみたてNISA
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- 通常の運用利益にかかる税金20.315%が非課税になり、その上限は年間40万円、最長20年トータルで800万円分の累計投資額に適用される
- 対象商品の販売手数料がゼロ、投資信託の信託報酬は1.5%以下と決められていて、節税にもコストダウンにもなる
ただし、一般NISAとつみたてNISAの併用はできませんので、注意しましょう。NISAに使う口座は1つしか選べませんので、一度には一般NISAかつみたてNISAのどちらかしか利用できません。
また、従来の特定口座での取引と損益通算ができないこと、確定申告による3年間の損失の繰越処理の対象外であることもしっかり把握しておきましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は60歳以降の暮らしのための貯蓄タイプ
NISAとよく比較される資金準備としてiDeCo(個人型確定拠出年金)が挙げられます。
iDeCoは主に60歳以降の老後のために備える資金で、60歳を超えないと資金の引き出しができないことがNISAとの大きな違いです。しかし一方で、拠出額が所得控除されるため、節税をしながら年金資産を作れるという大きなメリットもあります。
- iDeCoがおすすめの人
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- 所得控除で節税しながら、資産を確保したい人
- 60歳を超えるまで資金の引き出しができなくても困らない人
iDeCoは自分で将来のために月額の積立金額(掛金)を設定して積み立てる個人年金で、掛金は月額5,000円以上、1,000円単位で自分の公的年金の加入状況によって上限金額が異なります。最も多い上限は68,000円で、掛金の金額は年に1回変更できます。年間の掛金上限額は職業によってそれぞれ以下のようになっています。
- 自営業者(第1号被保険者):年間81万6千円
- 会社員、公務員(第2号被保険者):年間14万4千円〜27万6千円
- 専業主婦など(第3号被保険者):年間27万6千円
iDeCoの非課税対象となるのは、元本確保型の商品(定期預金、保険商品)や運営管理機関が選定する投資信託の運用益です。企業年金とは異なり拠出を開始した時点で受給権がもらえ、自分で掛金を設定できるため資金計画が立てやすいです。ただし、運用商品は自分で選ぶため、どのように資産形成したいのかを学びながら運用していくことが重要になってきます。
iDeCoのメリットとデメリット
iDeCoのメリットとして、3つの節税ポイントが挙げられます。
- iDeCoの節税のメリット
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- 掛金が全額所得控除の対象となり、所得税や住民税が節税できる
- 通常、金融商品にかかる運用益に対する20.315%の税金が非課税になり、受け取れる年金がその分増える
- 受取時に「退職所得控除」「公的年金等控除」の対象になる
運用した資産の受け取り方は「一時金」「年金」「一時金と年金の両方」という3つの形式から選べますが、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が受けられます。
iDeCoのデメリットは2つあり、1つは60歳まで原則として引き出せないこと、もう1つは手数料がかかることです。手数料とは、制度に加入するときの手数料と口座管理手数料の2つがあり、これらは運営管理機関によって異なります。手数料を抑えるためには、どこの運営管理機関で加入するかよく検討しなくてはなりません。
iDeCoとNISAを併用すると得られる節税効果
iDeCoとNISAは併用することができますので、それぞれの特徴をふまえて併用するとさらに大きな節税効果が得られます。例えば、一般NISAとiDeCoを併用すると株式などの売買益、配当金、分配金などの非課税だけでなく、iDeCoの掛金も全額所得控除されます。
つみたてNISAとiDeCoを併用すると、投資信託やETFの運用益に対する非課税とiDeCoの掛金全額控除が受けられ、手数料の低いつみたてNISAの対象商品で効率よく運用することができます。このように、それぞれの特徴をおさえて上手に併用することも節税や資金形成には重要です。
FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するメリットや費用は?
FP(ファイナンシャルプランナー)とは、日本FP協会によれば「相談者の夢や目標を達成するために、総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法(ファイナンシャルプランニング)をサポートする専門家」のことだとされています。よく「お金の専門家」などと呼ばれますが、金融や税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度などまさにお金に関する幅広い専門知識が必要とされる職業です。
では、FPには具体的にどんなことを相談できるのでしょうか。
FPに相談できる悩み
- 家計管理
- 貯蓄をするためには家計をどう見直したらいいか、家計管理の方法はどうすれば良いのか、現在の家計状況を見ながらアドバイスしてもらえる
- 老後の生活設計
- 老後の生活費はどのくらいかかるのか、そのためにはどのくらい貯蓄すべきなのか、老後の生活資金準備の有効な方法などもアドバイスしてもらえる
- 教育資金
- 子どもの教育資金の準備はどのようにすればよいか、将来的に学費が払えるのかなど、現在の家計状況からアドバイスしてもらえる
- 公的年金・出産手当など社会保険から受け取れる内容
- 公的年金がどのくらいもらえるのか、その他、出産や子育てなど社会保険から受け取れるお金について教えてもらえる
- 住宅資金
- 現状の家計から、どのぐらいの物件なら購入可能か、また住宅ローンの負担を軽くしたいときなど、住宅ローンについてアドバイスしてもらえる
- 資産運用
- 退職金を運用したいがどのようにすればいいのか、資産運用に活用できる金融商品を教えてほしいなど
- 税制
- 医療費控除を申請できる医療費にはどんなものがあるのか、配偶者控除は働いていても受けられるのか、など家計に関する税制について教えてもらえる
- 保険
- いま加入している保険の内容がよくわからない、家族の加入中の保険で必要な保障が備えられているのか知りたい、保険を見直したい、保険料の負担を減らしたいなど
- 介護・医療費
- 介護費用はどのくらいかかるのか知りたい、公的介護保険とはどういうものか知りたい、将来の介護費用が不足しないか心配、など
- 相続・贈与
- 相続の準備について知りたい、遺言書はどう書けばいいのか知りたい、孫に預金などを贈与すると税金がかかるのか、など相続や贈与について具体的な相談ができる。必要に応じて税理士や弁護士、司法書士などの専門家を紹介してもらえる場合もある
このように、FPは家計に関することであればかなり広範囲にわたって相談に乗ることができます。ある意味では広く浅くといった面があり、FPによっては得意分野が異なる場合もあります。例えば、年金に強いFP、保険に強いFPなど個々の能力が異なっている場合もあります。ですから、相談内容によっては複数のFPを訪ねてみるのも良いでしょう。
FPに相談するときには、以下のようなものを準備しておくとスムーズです。
FPに相談したい!事前に準備しておくとよいもの
- 老後の生活資金準備についての相談の場合
- 家計簿、金融資産の明細、年金定期便など
- 保険に関する相談の場合
- 保険証券、ご契約内容のお知らせ、など
- 住宅ローンに関する相談の場合
- 住宅ローン返済計画一覧、住宅ローン年末残高証明書、源泉徴収票など
- 資産運用・相続など
- 預貯金や金融資産の明細など
弁護士などと同じように、FPに相談するためには基本的に料金がかかりますが、1時間あたりの相談料はだいたい5,000円〜10,000円です。中には20,000円以上というFPもいますが、逆に無料相談から始められるFPもいて幅が大きいです。初めてでとりあえずFPと合うかどうか話してみたいという場合は、まず無料相談から始めてみるのも良いでしょう。
おわりに:積立貯金、NISA、iDeCoなどの特徴を知って上手に利用しよう
労働世代である20代〜60代は、年代が上がるにつれて貯金額が増えていきます。これは、高齢になって働けなくなった後に備えて貯金をしているからだと考えられます。老後の資金形成のためには、積立貯金やNISA、iDeCoなどの方法があります。
NISAとiDeCoは併用できますので、両方を上手に併用して節税すると良いでしょう。また、現在の経済状況から最も良い方法を選ぶには、家計に関する専門家であるFPに相談する方法もあります。
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