繊細な人、敏感な人とも呼ばれるHSPの人は、恋愛でストレスを感じることも多いようです。人一倍感受性が豊かなHSPの人はどんな恋愛傾向があるのでしょうか。またHSPの人が恋愛を長続きさせるためには、どんな恋愛相手がおすすめなのでしょう。
- この記事でわかること
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- HSPの人が得意なことや性格の特徴とは
- 恋愛中のHSPがやりがちな行動や考え方
- 恋愛でHSPが良好なパートナーシップを築く方法
- HSPの人が恋人や結婚相手を選ぶポイント
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)はどんな人?HSSとの違いは
HSPの恋愛傾向を解説する前に、まずHSPについて基本的な知識を説明します。
- HSP(Highly Sensitive Person)とは
- 視覚や聴覚などの感覚が敏感で、非常に感受性が豊かといった特徴を生まれつき持っている人のこと。もともとはアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が1996年に提唱した概念で、全人口の15〜20%にあたるとされ、約5人に1人がHSPであると考えられている。
HSPはその特性上、すべての人が内向的だと考えられがちですが、HSPの中には「HSS(High Sensation Seeking)型=刺激探求型」という人もいます。
- HSS(High Sensation Seeking)とは
- HSSはどちらかというと外向的で好奇心が強い傾向を持つHSPのタイプ。新しいことに対する興味・関心が強く、積極的に人と関わる。一方で、刺激に敏感なので疲れやすい特徴も持つ。HSS型HSPは、人口の6%程度と考えられている。
HSPは病気ではなく生まれ持った気質なので、治療法はありません。自分がHSPかもしれないと思ったら、その特性をよく理解して上手に付き合っていくことが大切です。HSPは一般的に繊細で生きづらい、と表現されることが多いのですが、逆にHSPの特性こそが強みに働くこともあります。例えば、以下のような能力には人一倍優れているとされています。
- 感受性が豊かで、直感が鋭い
- 人の良いところを見つけるのが得意
- 些細なことに喜びを感じられる
- ものごとに人一倍感動し、人の幸せを心から喜ぶことができる
- 人の話を丁寧に聞くことができる
- 深く考えることが得意
- 人が気づかないことにも気づき、改善することに長けている
- 良心的で真面目なたちで、決して無責任なことをしない
- 困った人がいると、助けずにはいられない
例えば、HSPの特徴の一つである「深く考えることが得意」という特性は、探求心の強さにもつながります。研究職など一つのものごとをじっくり追求する職業に就けば、その特性を遺憾無く発揮できるでしょう。感受性が豊かで直感が鋭いところは、人と関わる介護職、医療職、教職、カウンセラーなどにぴったりです。
このように、HSPの良いところに目を向けていくと、HSP気質は強みにもなりうることがわかります。自分の特性を知り、特性に合った環境にいれば仕事でもプライベートでも強みを活かして素晴らしい成果をあげることができるでしょう。
DOES(ダス)に当てはまるかどうかがHSPの判断基準
提唱者であるアーロン博士によれば、以下の「DOES(ダス)」という4つの特徴すべてに当てはまる人がHSPであり、1つでも当てはまらなければHSPではないとしています。自分がHSPかどうか迷ったら、ぜひチェックしてみてください。
- D:深く考えて処理する(Depth of processing)
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- あらゆることを想定する
- 考えてから行動するため、物事を始めるのに時間がかかる
- 軽はずみな行動をしない
- 浅はかな人を理解できない
- 人の言葉の意味を深く捉える
- O:刺激に対して反応が大きい(Overstimulation)
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- 大きな音が苦手
- 人混みが苦手
- 些細な言葉にも傷つく
- 驚きやすい
- 人と会うと疲れる
- 痛みに弱い
- E:感情移入し、共感しやすい(Empathy and emotional responsiveness)
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- 誰かが怒られていると、自分のことのように感じてしまう
- 映画や本の内容に共感し、感動して泣くことが多い
- 人のしぐさなどのサインに敏感で、その人の機嫌がわかる
- 動物の気持ちがわかる
- S:繊細な感覚(Sensitivity to subtleties)
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- 小さな音でも気になる
- 些細な匂いが気になり、気分が悪くなってしまう
- 強い光が苦手で、薄暗いくらいが心地よい
- チクチクする服などが苦手
- カフェインや薬剤に過敏に反応してしまう
HSPは恋愛するとどうなる?恋愛下手って本当?
上記のような特徴を持つHSPの人は、恋愛において以下のような傾向がみられます。
- 好きになると、相手のことばかり考えてしまう
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- 他人の言動に敏感なので、好きな人のことには特に一挙手一投足を気にしてしまう
- 相手の感情を先読みしすぎて、勘違いしたり傷ついたりしてしまうことも
- 駆け引きが苦手
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- 常に恋人のことを第一に考えるので、一夜の関係やお試し期間といったうわべの恋愛ができない
- 相手にヤキモチを焼かせるような言動をするなど、恋の駆け引きは苦手
- 相手のことを思うあまり、非HSPの相手からすると重いと思われてしまうことも
- 相手に尽くしたり、気を使いすぎたりして疲れやすい
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- 相手の言いたいこと、したいことを先読みしてしまい、自分の言いたいことを我慢してしまう
- 相手のことを常に優先して尽くし、気を使いすぎるあまり、恋愛に疲れてしまうことも
- 慎重になりすぎて、相手との距離が縮まりにくい
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- 本来の自分を見せることで相手が失望しないか、将来的にダメにならないかといったことで怖気づいてしまう
- 自分の言動が他人に与えるダメージまで考えて行動するので、恋愛には特に慎重になりやすい
- 不安で深読みしたり、誤解したりすることがある
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- 不安感が強くとても観察眼に優れているが、その特性が長所にも短所にもなりうる
- できるのが当たり前だと思っていると、非HSPの人にイライラしてしまうことも多い
- 観察眼に優れていることで、相手の悪いところに目が行きやすく誤解を生むことも
- 何事も深く考えすぎて、ネガティブになりやすい
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- 誰かが何気なく言った一言にも敏感に反応してしまい、言葉の裏を読み解こうとネガティブな妄想を膨らませてしまう
- 自分が何かしたのではないか、嫌われているのではないかと悩み続けてしまうことも
- 好きな人に依存しすぎてしまう
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- 何でも先読みしてしまうことは、相手にとって何でもしてくれる「都合の良い人」になりやすい
- 最初は尊重し合っていても、非HSP側の甘えが出てくるとその関係が崩れ、お互いをダメにしてしまう
- 好きな人に依存しすぎて、DVなどにあっても我慢してしまうのもHSPの特徴
恋愛は一般的に友人関係よりも親密にりますので、本来、自分のことをオープンにできる関係性になりやすいものです。しかし、慎重なHSPの人はなかなか本心を見せられず、恋愛に発展しにくいという大きな特徴があります。慎重になりすぎるあまり、不安ばかりが先走って相手の言葉を無理に深読みし、ネガティブ思考に陥ってしまうことも多いのです。
いったん恋人関係になると、好きな人に依存しやすいという特徴もあります。HSPの人はなかなか恋愛に踏み出せず、相手に気を使って尽くす傾向にあるので、非HSPの人からするとどこまでも甘えられて都合の良い相手になってしまったり、ときにはDVの矛先になってしまったりします。大きな心の傷に発展してしまうことも考えられますので、注意しましょう。
HSP同士のカップルは相性がよくて長続きしやすい?
HSP同士のカップルは、お互いの繊細な気持ちを理解して共感しあうことができます。そのため、HSP気質の長所をお互いに伸ばしながら、良好な関係を築いていくことができるでしょう。お互いに苦手なことも理解しやすいので、非HSPにはなかなか理解してもらえないようなことでも分かり合い、配慮し合うことができます。
一方で、気をつけなくてはならないのは「お互いに一人の時間が必要」というところです。すれ違いが起きやすくなったり、同棲していて家事の分担をしていても、お互いに外で疲れてしまって何もできなくなることがありえます。
そんなときに申し訳なさを感じたり、ネガティブ思考のループに陥ったりしないように気をつけましょう。依存傾向のあるHSP同士ですので、困ったときは親や友人を頼ったり、社会サービスを利用したりして乗り切るというような解決策を決めておくと良いでしょう。お互いに無理をせず、妥協するところは思い切って妥協することで、良い関係を続けて行けるはずです。
HSPが恋愛・結婚で注意したいポイント
HSPの人が上手に恋愛・結婚するためには、まず以下のようなポイントを心がけましょう。
- HSPを受け入れてくれる人を選ぶ
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- HSPは自己肯定感が低いことが多いので、気質を理解し受け入れてくれるパートナーが良い
- 感受性が人よりも強く、非HSPには理解できないことに悩みがちなので、個人の気質に理解と受容が深い人を見つける
- 感情の起伏が激しく、すぐ怒ったり泣いたりする人をパートナーにすると、HSP気質の人はかなり疲れてしまうので、できれば避けた方が良い
- 自分が一人になれる時間を死守する
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- HSPは周囲に常に気を張って生活しているので、一人になってゆっくり休み、疲れをとる時間が必要
- 同棲・結婚して一緒に暮らすようになっても、一人になって休む時間と空間を確保する
- 無理に隠そうとせず、丁寧に説明してパートナーに一人の時間の大切さを理解してもらうことが重要
- 自分のことを説明できるようになる
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- 特に非HSP相手の恋愛では、パートナーに自分の気質をしっかり理解してもらう必要がある
- 得意なこと、苦手なこと、できればやりたくないこと、どうしても必要なことなどは理解してもらう
- 特に、人混みや騒音など苦手なことはしっかり伝えておけば、お互いに楽しい時間を過ごせる
HSPの人が感じる感覚や受ける影響は、非HSPの人からはなかなか理解しにくいことがあります。そのため、大前提としてHSPに理解がある人や、個人の気質を受け入れやすい人を選ぶのが良いでしょう。その上で、一人になって休める時間を確保することや、その大切さを含めて自分の苦手なこと、得意なことなどを上手に伝えていくことが大切です。
そのためには、まず自分自身がHSPという気質に対して理解を深め、自分のできることとできないことをはっきり認識しておかなくてはなりません。一口にHSPと言っても、人によって持っている特徴やその強さもさまざまです。HSPという枠に当てはめすぎず、自分自身にとって得意なこと、苦手なことを知っておきましょう。
HSPが注意すべき、「自分軸」と「境界線」
HSPは人に共感しやすく、同調しやすい傾向にあります。すると、「自分は自分、他人は他人」というように区別して考えることが特に難しく、相手に引きずられやすくなってしまいます。自分と他人の境界線が薄いからこそ、他人の心身に起こったことに過剰に共感したり、無意識のうちに他人と同調し、他人の問題を自分の問題のように体感してしまったりするのです。
これは、HSPの持つ気質の特性上、自分を守る働きを持つ「自我」が十分に育っていない人が多いことにも関係します。心理学の面から自我を考えるとき、「人と親密な関係が築ける」「一定の自己肯定感がある」「感情や行動を自分で調整できる」という3つの要素がありますが、HSPの人はいずれの要素もなかなか育ちにくいのです。
そのため、HSPの人はよく「自分軸がない」という評価を受けてしまうことがあります。自分軸がない人は際限なく他人が踏み込んでくるのを許してしまい、周囲が目に入らなくなるほど恋愛にのめり込んで依存したり、見捨てられる不安から恋人に判断を委ねすぎて、相手から距離を置きたいと思われてしまったりします。
こうした恋愛傾向に心当たりがある人は、ぜひ、「自分軸」と「境界線」を意識してみてください。自分にも相手にも、本来、自分を守るための「境界線」があるのです。HSPの人が苦手なことを尊重されるべきなのと同じように、すべての人は自分を守るための安心で安全な境界線を持っています。その境界線を安易に越えないよう心がけるとともに、自分自身も境界線に守られていることを意識してみましょう。
良くも悪くも、HSPは自分で関係を修復したり、感情をコントロールしたりすることが苦手な特徴を持っています。自力で解決できないと思ったときは、信頼できる友人などに客観的な判断をしてもらい、「依存しすぎ」「のめりこみすぎ」な自分に注意を促してもらうようにしましょう。
後編はこちら
おわりに:HSPの思いやりの深さや繊細さを理解してくれる人を見つけて
HSPの人の気質は、恋愛や結婚にも影響が少なからずあります。パートナーがHSPについて理解してくれないままだと、HSPの人の苦しさが増してしまうでしょう。自分がHSPだとわかっている場合は、パートナーと一緒にHSPについて学ぶのもおすすめです。
後編ではHSPのカップルにおすすめのデートプランや書籍を紹介します。
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