「人生100年」と言われる時代、いわゆる老後にあたる期間は非常に長くなっています。65歳で退職したとしても、その後20~30年にも及ぶ老後を快適に楽しく過ごすには、どんな準備をしておくべきなのでしょうか。
そこで今回は、快適なシニアライフのために解決し備えるべきことを紹介していきます。
シニアライフを楽しく生きるには心身の充実が大切!
老後の人生を楽しむため、最低限必要となるのが「生きがい」と「心身の健康」の2つです。年齢を重ねたこと、また現役を退いたことによる社会的地位の喪失や人間関係の変化、時間の使い方の変化により、うつ病を発症する高齢者は少なくありません。
また、仕事を失ったことで体を動かす機会も減ってケガをしたり、外出そのものが億劫になるほど衰弱してしまうケースもあります。老後と呼ばれる期間に入ると、せっかく時間ができても心身が健康でなければできることが限られてくるでしょう。
仕事以外の生きがい、夢中になれる何かを見つけて外に出かけ、新たな人間関係を築いて心身の健康を維持することが、老後を充実した時間にするための土台となるのです。また、将来的に生じるであろう悩みを、早い段階から解決しておくことも大切です。
次章からは、老後を謳歌するシニア世代の悩みの種となる可能性が高い孫育て、介護、相続問題に関する注意点を解説します。
孫の育児が生きがいに?しかし負担に感じることも…
孫育てとは、共働きで忙しい息子・娘世代に代わり、子どもから見て祖父母にあたるシニア世代が乳幼児や児童のお世話をすることです。社会構造の変化により、現在のシニア世代が若かった頃に比べ、共働きで生計を立てる家庭の割合は増加しています。
これに伴い、両親が働いている間に孫育てを任せられる祖父母の割合も増えているのです。
祖父母が孫育てをすることにより、家族が得られるメリットとしては以下が挙げられます。
- 祖父母にとってのメリット
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- 孫を通し、地域の人と交流する機会を得られる
- 孫と接し刺激を受けることで、新たな生きがいを得られる
- 体力の向上にもつながり、老化防止に役立つ
- 両親にとってはのメリット
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- 育児と仕事を両立させやすくなる
- 一時保育など、子どもの保育にかかる費用を削減できる
- 育児のストレスが軽減され、余裕をもって子どもと向き合えるようになる
- 孫にとってのメリット
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- さまざまな世代の人に接する機会を得て、他者への思いやりを学べる
- 両親に加え、より多くの大人から愛情を受けて育っていける
祖父母が感じる孫育てのデメリット
一方で孫育ては、以下のような要因からシニア世代の精神的・経済的負担にもなります。
ストレスが溜まる
幼い孫を預かる以上、祖父母には孫の安全を守る責任が生じます。しかしできることが限られていて、かつ、体力のある乳幼児・児童を楽しく安全に遊ばせるのには、体力も気遣いも必要ですよね。
自分が子育てをしていた時に比べて体力が低下した状態で、安全にも配慮しつつ孫のお世話をすることに、ストレスや疲労を感じるシニア世代は少なくありません。
両親と金銭トラブルになる
孫を預かっている間にかかる食費や娯楽費は、基本的には祖父母の負担となることが多いです。かわいい孫のための出費ですから、たまになら喜んで支払うでしょうが、これが毎日となるとシニア世代の家計を大いに圧迫しかねません。
このため孫の面倒を見る際にかかる費用をめぐり、両親と祖父母が金銭トラブルになるケースも起こっているのです。
上記のような孫育てにまつわるトラブルを回避し、豊かな老後を過ごすために活用してほしいのが、各自治体などが発行する「孫育て手帳」や「孫育てガイドブック」です。
- 孫育て手帳、孫育てガイドブックの大まかな内容
- 今と昔の子育ての常識の比較、息子夫婦・娘夫婦との上手な付き合い方、孫を安全にお世話するために知っておくべきこと、孫との遊び方 など
自治体のガイドブックを参照し、その内容に沿って孫や息子・娘夫婦と適切な距離を保てば、孫育てによるストレスや金銭トラブルのリスクはかなり低減できるでしょう。
介護問題に備えておきたいポイント
続いては、多くの高齢者が不安に感じているだろう介護問題について考えていきましょう。ベネッセ・シニア介護研究所が2015年に有料老人ホームの入居者、およびその家族に調査したところによると、48.6%が6か月以内の自宅介護を経験しています。
さらに入居の経緯を聞くと「けがや病気等により介護サービスが急に必要になった」や、「加齢や認知症に伴う急激な変化が生じた」ケースが多く見られました。
高齢者のけが、病気等による心身の不調は急激に進行します。高齢者の家族はある日突然、介護の必要性に迫られる可能性が高いのです。
将来的に介護の必要性に迫られたとき、また、長くなるかもしれない介護生活を家族みんなで乗り越えるために、いまからできることとしては以下が挙げられます。
介護が必要になった場合の希望や予定を家族で話し合う
ひと口に介護と言っても、その方法はさまざまです。介護職員が常駐する施設に入所したり、在宅で家族から介護を受ける他、自宅に介護職員や看護師の派遣を受ける方法も考えられます。
いざ介護が必要になったとき、介護される本人が意志表示が可能な状態とは限りません。
介護の必要性に迫られたとき、可能な限り本人が希望するかたちで介護を受けられるよう、シニア世代の老後と介護については早めに家族で話し合っておきましょう。
シニア世代が元気なうちから、介護費用の準備を始める
どのようなかたちで利用するにせよ、介護を受けるには多くの資金が必要です。
このため家族間での話し合いの際、希望する介護生活のイメージと併せて現段階でどのくらいの介護費用があるのか、家族の資産状況も話し合っておくことをおすすめします。
希望する介護生活に必要な予算を踏まえ、いまから費用の準備を始めて、介護に関わる金銭面の不安を軽減しましょう。
生前に相続の話はしておいたほうが安心?
人が亡くなると、その人が持っていた資産は遺された家族・親族に相続されます。しかし、相続の対象となる資産や相続人のリストアップ、手続きには時間がかかるうえ、相続手続きが可能な期間も限られています。
仮にあなたが急死した場合、家族は混乱のなか相続手続きに忙殺されることになるでしょう。そうなると家族・親族間で人間関係がもつれ、遺産相続が原因で大きなトラブルを起こるかもしれません。
トラブルを避け、相続の手続きをスムーズに進めるには、事前準備をする必要があります。具体的に資産を持つシニアと、相続人となる家族・親族が話し合っておきたい内容としては、以下が挙げられるでしょう。
- スムーズな相続のため、話し合っておくべきこと
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- 相続人となる人、シニア世代本人が訃報を伝えてほしいと考える人の連絡先の共有
- 現時点での持病、アレルギーの有無や種類、運動の頻度など生活習慣のヒアリング
- 病院に救急搬送される際に必要な健康保険証やおくすり手帳、診察券の場所の確認
- いまお付き合いのある寺社や霊園の確認と、葬儀の規模やお墓に関する意向
- 車や家、土地、金融資産も含め、シニア世代が保有する財産の把握とリストアップ
- 現在暮らす家が持ち家の場合、資産であり子から見た実家をどのように整理すべきか
- リストにある財産を、遺された家族や親族にどう相続してほしいかの意思確認 など
いまある資産・財産の確認と相続人のリストアップ、相続や葬儀、墓などに関する希望を整理できたら、その内容を確定させるべく遺言状の作成に入りましょう。
そのうえで、相続手続きに必要な以下の書類・情報の種類や保管場所を、家族または相続人間で共有しておくと安心ですよ。
- 相続手続きに必要な書類や情報
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- 現金をしまってある金庫の場所と暗証番号
- 実印や銀行員、銀行通帳、マイナンバーカード
- 健康保険、介護保険の保険証
- 生命保険関連の証券
- 損害保険関連の証券
- 年金手帳
- 運転免許証やパスポートなど、身分証明書
- その他免許証
- 公共交通機関の無料カード
- 自動車の名義変更に必要な車検証や、保管場所証明書
- 登記関連書類など、住宅に関する書類一式
- 高額医療費の還付に必要な、医療費の領収書
- 銀行や保険、携帯電話会社などの解約に必要なID/パスワード
シニアライフの不安を解消するならファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめ
ここまでに紹介した老後に発生し得る悩みのうち、家計や介護、相続などお金に関する問題については、ファイナンシャルプランナーに助言を求めることができます。
ファイナンシャルプランナーは、個人の収支や負債の有無、金額、資産状況、家族構成などの情報をもとに、その後の人生の資金計画を立ててくれる専門家です。「FP」とも呼ばれるファイナンシャルプランナーになら、以下内容の相談ができます。
- ファイナンシャルプランナーに相談できること
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- 家計の見直し
- 老後の生活設計
- 教育資金の準備設計
- 住宅購入資金やローンの見直し
- 年金や社会保険のアドバイス
- 資産運用プランニング
- 保険や介護、医療費の見直し
- 税制や相続に関する相談
お金について考えることが苦手だったり、介護や相続の問題について家族で冷静に話し合えるか不安という場合も、ファイナンシャルプランナーの力を借りてみましょう。
おわりに:老後の孫育てや介護、相続などお金に関することは、早めに話し合っておくべし
高齢になると、加齢や病気が原因で急激に体調を崩す可能性が高くなります。このため、老後避けては通れない介護や葬儀、相続に関するお金のこと、息子・娘夫婦に代わり孫をお世話する孫育ての参加については、早めに家族間で話し合っておかねばなりません。まだ元気な家族の老いや死について話すのは、難しいことと思います。しかし、将来必ず直面する問題をスムーズに乗り越えるためにも、話し合いと準備は早めに済ませておきましょう。
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