便秘は症状によっては食習慣の改善だけでは改善できないことも。重症の便秘や慢性的な便秘の場合、便秘薬や医師による治療が必要になります。誤った自己判断で対処していると腸にダメージを与えかねません。
この記事では、便秘解消のための便秘薬の選び方や便秘外来の治療について紹介します。
- この記事でわかること
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- 自分に合う便秘薬の選び方
- 刺激性下剤を服用するときの注意点
- 便秘外来ってどんな治療をするの?
便秘の原因・症状別おすすめ6種類 サプリメントとの違いは?
便秘の薬は1種類ではなく、その原因や症状によって以下の6種類に分けられます。
- 膨張性下剤
- 便を大きく柔らかくして、大腸の運動を促す
- 浸潤性下剤(軟化下剤)
- 便中の水分を増やして便を大きく、柔らかくし、便の表面張力を下げて排便しやすくする
- 塩類下剤、糖類下剤
- 大腸内の水分を増やして便を柔らかくする、比較的作用が穏やかな下剤。特に酸化マグネシウムが汎用されるが、腎機能が低下している人や高齢者では高マグネシウム血症に注意が必要
- 刺激性下剤
- 大腸を刺激して蠕動運動を促す下剤。漢方薬もこのタイプに含まれる。よく効くため、便秘の症状が強いときに処方される
- 浣腸
- 直腸や大腸の粘膜を刺激し、排便を促す下剤。従来考えられていたほど習慣性は強くないことがわかったため、最近では早めに浣腸を使用したのち、飲み薬に移行する
- その他
- 自律神経に作用して蠕動運動を調節する薬、大腸や直腸の粘膜を滑らかにする薬、小腸での水分分泌を増やす薬 など
薬を服用する治療の場合でも、基本的にはなるべく穏やかな作用の薬を使いながら、食事療法や運動療法を組み合わせて少しずつ自然な排便ができるよう治療を行います。膨張性下剤や浸潤性下剤は作用が穏やかなため、薬なしでは排便できなくなる「習慣性」の心配がないとされますが、反面、効果が当日すぐに現れるわけではなく、飲み始めて数日後から効果が現れます。
便秘薬とサプリメントにはどんな違いがある?
上記のような薬と、サプリメントにはどんな違いがあるのでしょうか。サプリメントに公的な定義はなく、食品として分類されます。中にはトクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品などの分類もありますが、あくまでも食品として販売している以上、法的に表記できる効果がある程度制限されています。
これは、薬がはっきりと「病気の症状を解消・改善する効果を目的として使うもの」とされているのに対し、サプリメントは「健康を維持する効果を期待して、日常的に使うもの」とされているためです。
サプリメントには効果がないのではなく、効果に個人差が大きかったり、本人の健康状態によって効果が左右されたりするためにはっきりした効果がうたえないのです。ですから、サプリメントに効果がないというわけではありません。
例えば、抗加齢医療(いわゆるアンチエイジング)などの分野ではサプリメントの効果にも注目されていて、抗加齢医療を行う施設によっては、医薬品と同じように医師が処方することもあります。便秘に関する薬やサプリメントも同じように、その目的をきちんと理解して使うことが重要です。
市販の便秘薬(下剤)は腸に深刻なダメージを与えるおそれがある?
市販薬の便秘薬(下剤)はすぐに効果が現れるよう、刺激性下剤の成分が使われていることが多いため、習慣性が比較的高いと考えられます。刺激性下剤は大腸をむりやり動かして排便を引き起こす薬なので、使いすぎると大腸が刺激に反応しづらくなってしまったり、長期間使い続けると大腸が伸びきった状態になってしまったりして、薬を使わないと排便できなくなってしまうリスクも考えられます。
ですから、刺激性下剤は定期的に使うのではなく、旅行などで環境が一時的に変わって便秘が起こってしまった、という場合などに即効性を期待して使うのが良いでしょう。刺激性下剤であっても、たまにごく少量使う程度なら、腸に深刻なダメージを与えることはまずありません。
しかし慢性的な便秘の症状を抱える場合、刺激性下剤を使い続けていると腸に深刻なダメージを与えてしまう可能性が高くなります。下記のような人は慢性的な便秘の疑いがあります。
- 子どもの頃から便秘がちだった
- 社会人になってからずっと便秘がち
- 月経の前にはいつも便秘が起こる
具体的には、「センナ(センノシド)、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル、アロエ、大黄(だいおう)」などが刺激性下剤と同様の働きをしますので、使いすぎに注意しましょう。古くから使われている「ひまし油」も使用量を間違えると吐き気・嘔吐・激しい腹痛などを引き起こし、昏睡に至るという報告もあります。使いすぎないよう気をつけましょう。
慢性的な便秘は便秘外来の治療もおすすめ!自己判断のリスクって?
便秘改善には食生活や運動習慣などセルフケアのほか、便秘外来を受診するのも良い方法です。特に、一時的なものでなく慢性的な便秘の場合は、原因を突き止めて適切な方法で対処することが重要です。便秘の裏に重篤な疾患が隠れている場合もありますので、便秘外来など専門の医師による診断を受けておくのが良いでしょう。
便秘はいくつかの原因が複合的に絡み合っている場合がほとんどです。自己判断で市販の整腸剤や便秘薬を使っても治りにくい、繰り返すという場合は便秘薬を使い続けることで症状がさらに悪化してしまう場合もありますので、早めに便秘外来を受診しましょう。
便秘外来は単に便秘を治療したり、隠れた疾患を発見したりするだけでなく、腸にやさしい生活のアドバイスを受けたり、自然な排便が起こるようサポートしてもらえたりします。自分に合った改善方法や生活習慣のアドバイスを受ける目的でも、便秘外来を受診するのはおすすめです。
便秘外来ではどんな検査をする?
便秘の検査では、まず問診や触診・聴診が行われます。排便の状態や症状について詳しく聞き、便秘のタイプや原因を推測し、腹部の触診や聴診で診断します。ほとんどの方はこの時点で便秘のタイプを特定できるのですが、必要があれば血液検査や大腸の内視鏡検査を行う場合もあります。
大腸内視鏡検査は、主に大腸がんやポリープなどで腸内に便が詰まっていないかどうか検査するために行われます。問診や触診でも原因がわからなかった場合に行われますので、必ずしも大腸内視鏡検査を行わなくてはならないというわけではありません。
便秘の治療法
便秘外来で行われる便秘の治療法には、以下のようなものがあります。
- 生活習慣や食生活の指導
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- 食物繊維を摂取するための食事指導や、サプリメント摂取を促すなど
- 腸内環境を整えるため、ヨーグルトなどで生きた善玉菌の摂取を勧める場合も
- 薬物療法
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- 原因によって異なる薬剤を使い分ける
- 刺激性下剤の使いすぎはリスクが高いので、他の薬剤や療法を併用しながら、徐々に刺激性下剤を減らせるよう調整していく
- 肛門の近くまで来ている便を排便しようとする場合は、浣腸や座薬を使う
- バイオフィードバック療法
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- 直腸内に挿入した風船を便に見立てて押し出してもらうトレーニングや、腹筋や肛門の周囲の筋肉がどのように動いているかを肛門の圧などを測定しながら行うトレーニング など
- 洗腸法
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- 肛門から専用のチューブを挿入し、腸の中にお湯を入れて腸の中の便を洗い流す
- 決まった時間に排便を促せるため、QOLを上げることにつながる
- 手術
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- 直腸脱や直腸瘤など、便秘の原因によっては手術が有効
- 便秘の種類によっては、肛門付近の大腸だけを残して大腸のほとんどを切除する治療法もある
便秘の治療は、主に生活習慣や食生活の指導を中心とし、必要に応じて薬物療法を併用しながら行います。症状や原因によってはその他のバイオフィードバック療法や洗腸法などを利用することもあります。手術に至ることは多くはありませんが、便秘の原因によっては手術で便秘が改善できる場合もあります。
前編はこちら
おわりに:便秘解消には生活習慣や食生活、薬物療法がメインで使われる
便秘解消のためには、基本的には食物繊維を多く含む食品の摂取、十分な水分摂取などの食生活指導、規則正しい生活習慣や適度な運動などの生活指導が行われます。これに加え、症状や原因に応じて便秘薬が併用されます。便秘外来で原因を特定したり、医師や薬剤師と相談したりしながら、上手に便秘予防を行いましょう。
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