身長を伸ばすためには食事・睡眠・運動が重要ですが、サプリメントや治療というケアの方法もあります。しかし大人になってから身長を高くしたい場合はどの方法がおすすめなのでしょうか。
この記事では身長を伸ばしたい人におすすめの栄養補助食品やサプリメント、治療法、身長を高く見せるファッションコーディネートを紹介します。
- この記事でわかること
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- 栄養機能食品やサプリに背を伸ばす効果はある?!
- 身長を伸ばす治療や手術の内容と費用は?
- 身長が高見えするファッションコーディネート
身長を伸ばしたい人に人気のサプリや栄養機能食品
身長を伸ばしたい子どもに向けて、成長をサポートしてくれるサプリメントや栄養機能食品などが販売されています。
身長を伸ばしたい人向けの栄養機能食品って?
身長を伸ばしたい人向けの食品にはさまざまなものがありますが、今回は中でも人気な「セノビックバー」と「グーンアップMBP®」についてご紹介します。
セノビック
ロート製薬株式会社の「セノビック」は、成長期の子どもに大切な栄養素であるカルシウム・ビタミンD・鉄を豊富に含んでいます。牛乳にとかして飲むタイプの栄養補助食品で、手軽に摂取できるのがうれしいポイント。牛乳アレルギーを持っている子どもの場合は水にとかす「セノビックウォーター」という製品がおすすめです。
グーンアップMBP®
牛乳に溶かして美味しく飲める粉末飲料です。カルシウム・ビタミンD・鉄のほか、ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、ビタミンCなどをしっかり摂取できます。子どもに人気のココア味といちごミルク味がありますので、飽きずに長く続けて飲みやすいのがポイントです。
MBP®とは、牛乳に含まれる重要な成分である天然の微量タンパク質で、雪印メグミルクが解明した機能性タンパク質の名称です。牛乳に含まれるMBP®は1本(約200mL)あたり約10mgなのですが、グーンアップMBP®では1日1回飲むと20mg、2回飲むと40mg摂取することができます。
サプリや栄養機能食品は本当に成長に効果があるの?
前述のような栄養機能食品のほか、カルシウムやビタミンD、鉄分などを含むサプリメント、成長ホルモンの分泌を促進する物質を含むサプリメント、成長ホルモンを含むスプレーなども成長をサポートしてくれる働きが期待できるとして知られています。これに対し、日本小児内分泌学会が評価した見解があります。
カルシウムやビタミンD、鉄などを補給するメリット
まずは、カルシウムやビタミンD、鉄などを含むサプリメントや栄養機能食品の場合、いずれかの栄養不足で成長が妨げられているときには、これらの栄養素を補充することで成長が正常になる可能性があります。例えば、主に乳幼児期に発症する「ビタミンD欠乏性くる病」では成長障害が起こりますが、ビタミンDを補充すると成長が正常に回復します。
しかし、もともと栄養素が食事から十分に摂取できていて、不足していない子どもがこれらの食品やサプリメントを摂取しても、成長をより促進するというデータはありません。逆に、多量に摂取しすぎると健康を損なう恐れもあります。特にカルシウム製剤は成長を促進すると思われがちですが、骨を強くする物質であり、成長そのものを促進するわけではありません。
成長ホルモンの分泌を促進するサプリを摂取するメリット
では、成長ホルモンの分泌を促進するとされている物質を含むサプリメントについてはどうでしょうか。これらの物質のうち、代表的なものは「アルギニン」で、アルギニンは確かに成長ホルモン分泌刺激試験の薬として用いられています。しかし、分泌刺激試験で用いる場合は直接血中に、体重1kgあたり0.5gという量を投与するのです。
これに対し、サプリメントとして販売されているアルギニン製剤は200mg〜2g程度の製剤であり、内服薬です。つまり、血中に移行する量は分泌刺激試験の10分の1よりもさらに少ないと考えられます。サプリメントを服用することで、血中のアルギニン濃度が大きく変化するわけではない以上、成長ホルモンの分泌がそれほど大きく促進されるとは考えられません。
アルギニン以外の物質に関しても、サプリメントとして投与した場合に成長ホルモンの分泌が促進されたという学問的なデータが信頼できる学術雑誌に報告された例はありません。さらには、成長ホルモンの分泌が薬剤によって促進されたとしても、それがすなわち成長の促進にはつながらないことが科学的に証明されています。
成長ホルモンの分泌刺激作用を持つ「GHRP-2」という薬剤を静脈投与した実験がありますが、プラセボ群と低用量投与群、高用量投与群の3群において、1年間の投与の結果、平均成長率は統計的に全く差がありませんでした。つまり、成長ホルモンの分泌を薬剤で促進したとしても、もともとの成長率以上に身長が伸びるわけではないということです。
あまり効果を期待しすぎるのも考えもの…
最後に、成長ホルモンを含むスプレーについてです。日本小児内分泌学会がHPで発表している内容によると、スプレーによって身長が伸びる効果は期待できません。
鼻や口の中に噴霧すると成長ホルモンが体内に吸収されると説明されていますが、成長ホルモンは分子量が約22,000という大きめのタンパク質であり、鼻や口の粘膜からはほとんど吸収されません。舌の下に投与した場合、多くが唾液と一緒に胃の中に流れ込み、食品と同様に分解されてしまいます。
成長ホルモンが何らかの作用を及ぼすためには、治療で注射するのと同様に、血中濃度が上がらなくてはなりません。しかし、前述のようにスプレーで吸収される程度の成長ホルモンはごく少量であることから、スプレーで注射に見合うほど成長ホルモンの血中濃度が上がることはまず考えられません。(参考:日本小児内分泌学会HP)
これらのことから、成長ホルモンの分泌を増やす、成長ホルモンの量を増やすといった食品やサプリメントについてはあまり効果が期待できないとわかります。また、カルシウムなどの栄養素を含む食品やサプリメントに関しても、栄養不足の子どもの場合は補充によって成長が正常に回復することはありますが、もともと正常に成長している子どもに関しては、成長が過剰に促進されるわけではないことに注意しましょう。
また、こうしたサプリメントや栄養機能食品はあくまでも食事で補いきれない栄養素を補うものであることを念頭におき、あくまでも食事からバランス良く栄養素を摂取することを心がけましょう。サプリメントなどを摂取する場合は、食事の前後に一緒に摂取すると食材から摂った栄養素と組み合わさるので、より効率良く吸収できます。
身長を伸ばす方法-ホルモン療法
前述のように、成長ホルモンは鼻や口の粘膜から摂取したり、内服したりしてもほとんど成長に影響しないことがわかっています。しかし、血中に直接注射して濃度を上げることで、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」の子どもでは正常児と同様に成長を促進することができます。投与量は体重1kgあたり、1週間に0.5単位と決められています。
以前は週に2〜4回通院して筋肉注射を受ける必要がありましたが、糖尿病Ⅰ型のインスリン注射と同じように成長ホルモンも在宅で注射することが厚生労働省から認められたため、自宅で毎日皮下注射することができるようになりました。正常児では睡眠の始め頃に大量の成長ホルモンが分泌されますので、これに似せて毎晩の注射で成長ホルモンが睡眠中に増えるようにすると自然な成長が促進できます。
実際に、1週間の投与量が同じであれば、週に2〜4回の注射よりも、少量を毎日(毎晩)注射した方が背を伸ばす効果があるとわかっています。治療前は年間で平均3〜4cmしか伸びなかった子どもが、治療開始後の最初の1年間では平均8cmほど伸びることもわかっており、この成長促進効果は2年目以降徐々に弱まるのですが、根気よく続けていくことで正常範囲の身長に近づけられます。
とはいえ、平均身長に達することができるかどうかは個人差があり、状況や環境も一人ひとり異なりますので、主治医と相談しながら成長の目標を定めていきましょう。
成長ホルモン療法は基本的に身体の中に不足しているホルモンを補う治療ですが、体質によっては頭痛・痙攣・耐糖能異常などの副作用が生じるケースもあります。こうした症状が現れたときには、すぐに主治医に相談しましょう。また、以下のような基礎疾患がある場合は成長ホルモン療法が行えないか、慎重に行わなくてはならないため、これも医師と相談が必要です。
- 糖尿病
- 糖や脂質の代謝が悪化しているため、身長の伸びが悪くなる。成長ホルモンには血糖を上げる働きもあるため、糖尿病が悪化するケースも考えられる。このため、糖尿病患者には原則的に成長ホルモン療法が禁止されている
- 悪性腫瘍
- 成長ホルモンは細胞を増殖させる働きがあるため、悪性腫瘍細胞を増加させてしまう可能性があり、悪性腫瘍の患者には原則として成長ホルモンの投与が禁じられている。ただし、脳下垂体周辺にできた脳腫瘍による圧迫、その腫瘍の摘出や放射線などの治療で下垂体組織が損傷・喪失した場合の分泌不全においては、腫瘍摘出後または腫瘍の増殖抑制後、数年間再発が起こらないことを確認した上で医師の判断で成長ホルモン療法を行うケースもある
- 腎疾患・心疾患
- 成長ホルモンは水分を身体に溜める作用があり、腎疾患や心疾患の患者に投与するとむくみの原因になるため医師と相談しながら成長ホルモン療法を行う。慢性腎不全による低身長症の子どもには、成長ホルモン治療が行われている
- 脊椎側弯症
- 側弯症を持つ子どもに成長ホルモン療法を行うと、側弯の程度が強くなることがあるため、主治医と相談の上で慎重に行う
また、成長ホルモン療法を行う場合、国の厚生事業として法制化されている「小児慢性特定疾病治療研究事業」によって助成を受けられます。この研究事業は、慢性的な難病を対象として医療技術の研究や治療に対して経済的な助成を行うもので、成長ホルモン分泌不全性低身長症もこの事業の対象疾病となっています。
必要な手続きを行い、認定を受けると20歳に到達するまで治療費の助成を受けられます。ただし、1年ごとの更新申請時に治療継続基準を満たしていることが条件で、未成年であっても男子で156.4cm、女子で145.4cmを超えた場合は助成の対象外となります。また、家庭の所得額(所得課税年額)によっても自己負担限度額が変わります。
大人になってからホルモン療法で身長を伸ばすことはできる?
成長ホルモン療法は基本的には成人身長になるまで行いますが、治療の効果が見られない場合や重篤な副作用があった場合には終了することがあります。成人身長の定義は、年間の成長速度が1cm以下になったとき、または骨年齢が男子で17歳、女子で15歳に達した場合です。そのため、成人が成長ホルモン療法を受けることは原則としてできないと言えます。
大人が身長を伸ばす方法-外科的手術
前述のように、成人は成長ホルモン療法が原則として利用できません。そこで、成人が身長を伸ばそうとする場合は外科的なアプローチが必要となります。主にプリサイス法、ISKD法、デバスチアーニ変法、テイラースペシャルフレーム法の4種類の手術が行われています。
プリサイス法
- 髄内釘によって脛骨や大腿骨を延長するもので、傷跡は目立ちにくい
- 創外固定器がないため目立たず、骨の出来が悪い場合は一旦縮めることもできる
- 片足で625万〜750万と、非常に高額なデメリットがある
- 手術直後は装具と松葉杖を使用する
ISKD法
- 髄内釘によって脛骨や大腿骨を延長する。術後7〜10日後から1日0.5〜1mm延長するが、足関節をひねることで簡単に延長できる
- 体外に機器が露出しないので目立たず、延長に伴う痛みがない
- 片足で420万〜450万円程度
- 手術直後は装具と松葉杖を使用する
デバスチアーニ変法
- イタリアのデバスチアーニ氏が考案した、単支柱型の創外固定器を使う延長法
- 創外固定器に6mmのピンを合計6本挿入し、骨を固定する最もシンプルな延長法
- 脛骨と上腕骨に適応し、早期に創外固定器を外した後は目立たない
- 片足で290万〜350万と、比較的安価に行える
- 手術直後から体重をかけて歩行できる
テイラースペシャルフレーム法
- 脛骨と大腿骨に適応し、脛骨では膝と足首回りに160mm程度のリング状の板を設置し、皮膚の外から6mmのピンと1.8mmの細いワイヤーを用いて固定する
- 長い間、創外固定器を利用するため目立つ
- 皮膚の外から手動で延長するため、延長量の変更など微調整ができる
- 延長に伴ってピンを刺入した部分の皮膚が突っ張るため、痛みが続く
- 固定期間は個人差があるものの、平均で半年くらい。1年程度かかることも
- 両足で500万〜600万と、比較的安価に行える
また、伸ばせる長さはすね5〜6cm、太もも5cm程度で、同時には行なえませんので順番に行うことになります。それ以上は外見のバランスが悪くなってしまうため、推奨されていません。手術を行う男女比は6:4で男性が多く、男性の場合は身長に対するコンプレックスから、女性はキレイになりたいという思いから手術を受ける方が多いようです。
手術の所要時間は1時間程度で、下半身のみの麻酔で行えます。痛みは手術の方法にもよりますが、創外固定器を用いて延長する場合は延長中、ずっと痛みを伴うことがあります。ISKD法やプリサイス法では痛みが少ないとされていますが、痛みの感じ方には個人差がありますので、あくまでも目安と考えましょう。
身長コンプレックス解消法-男女共通身長高見えコーデ
手術などで物理的に身長を伸ばすには、費用もかかりますし身体に大きな負担がかかります。そこで、身体を変えるのではなく、外見の見え方を変えることで身長コンプレックスを解消してしまうという方法もあります。この方法なら身体に負担がかからず、費用も手術と比べればはるかに安価で手軽に行えます。
まずは、靴や帽子を使って物理的に身長を高くしてしまう方法があります。これらの方法は最もシンプルでやりやすいのですが、やりすぎるとかえって身長の低さが目立ってしまう場合もありますので、必ず身体全体のコーディネートのバランスを考え、自然に見えるように行いましょう。
- 靴
- ローカットのぺたっとしたスニーカーなどは身長が低く見えやすいので、細身のブーツなど、底がしっかりあるものを選ぶ。ずっしり横に大きなブーツを選んでしまうと足元の印象が重くなり、足が短く見えてしまうので注意!
- 帽子
- 頭の形にフィットするキャップやキャスケットは避け、頭の上に空間ができて身長を大きく見せられるハットなどを選ぶ。夏なら、麦わら帽子などもおすすめ。
また、全身を同系統のカラーで揃える「ワントーンコーデ」は、長身効果の代表格とも言えます。上半身と下半身でそれぞれ異なる配色のコーデを行うと、縦のラインがばっさり分断されてしまうため、身長が低く見えたり、足が短く見えてしまったりすることがあります。ワントーンで揃えると、縦のラインに連続性が生まれ、身長も高く足も長く見える効果が期待できます。
他にも、明るめのカラーをトップスにもってくることで、見る人の視線が自然に上に向き、背の低さをカバーできます。細く見せたいと引き締め色のブラックやネイビーを好む人も多いのですが、身長を高く見せたいときはボトムスやスカートに対して明るめのトップスを合わせましょう。
前編はこちら
おわりに:身長を伸ばすには成長期の栄養とホルモン分泌が重要
身長を伸ばすために重要な骨の成長は男子17歳、女子15歳くらいで止まってしまいますので、低身長症の場合は早期発見・治療が必要です。大人になってから身長を伸ばしたい場合は、原則として外科手術になります。負担が大きい手術ではなく、コーデで見せ方を変える方法もありますので、ぜひやってみてください。
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