インターネットの利用が便利になった現代では、ネットトラブルはどんな年齢・性別・立場の人にも起こり得るリスクです。誹謗中傷や炎上は、有名人だけではなく、一般人にも起こりうるトラブルといえます。
そこで今回は、インターネットトラブルに巻き込まれないようにするための予防法、巻き込まれてしまった場合の対処手順を中心に解説。インターネットトラブルの被害者はもちろん、加害者にもならないために、誰しも知っておくべき情報をまとめて紹介していきます。
- この記事でわかること
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- アルバイトやSNS上の口論などネットトラブルにつながる例
- ネットへの投稿で注意すべきポイント
- ネットトラブルで加害者となるおそれなある行動
- 被害を大きくしないために速やかに行いたい対処法
インターネットの誹謗中傷トラブルって?
俗に「ネット中傷」などとも呼ばれるインターネット上のトラブルは、主にインターネットを介して行われる誹謗中傷と、これにまつわるトラブルのことです。警視庁発表の広報資料「平成30年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、5年間でインターネットトラブルの相談件数は増加傾向にあります。
- インターネット上の名誉棄損・誹謗中傷等に関する、警察への相談件数の推移
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- 平成26年度…9,757件
- 平成27年度…10,398件
- 平成28年度…11,136件
- 平成29年度…11,749件
- 平成30年度…11,406件
インターネット上で、どのようなトラブルが起こっているのでしょうか。過去に実際に発生した2つの事例から、探ってみましょう。
具体例1:個人情報の特定被害
インターネット上での誹謗中傷トラブルでも、最も多いとされる事例です。アルバイト先で撮影した不衛生な動画、食べ物を使った悪ふざけ動画などをSNSに投稿したことをきっかけに、炎上したケースも存在しています。
投稿者本人の顔や氏名、住所などの個人情報、アルバイト先の店舗の住所や連絡先も特定され、長期にわたり誹謗中傷や営業妨害を受けることになりました。
具体例2:ネット上の誹謗中傷を発端とする殺人事件
もともと面識のなかった者同士が、ネット上の口論をきっかけに殺人事件の被害者・加害者となった事例です。1に比べるとレアケースではありますが、ネットトラブルを発端としたリアルでの事件は発生しています。2018年6月には、ネット上で口論になったブロガーを、ブログの読者が刺殺した事件が起きました。
上記から、インターネットトラブルがどんな個人・組織にも起こり得ること、そして最悪の場合、命を失うほどの大事件の発端にもなり得るのだと実感できます。
誹謗中傷トラブルに巻き込まれないための予防法
インターネット上での誹謗中傷の被害を受けないためにできる予防策としては、以下が挙げられます。
- 自身の本名や電話番号、メールアドレス、住所などの個人情報は安易に公開しない
- アンケートなどへの回答時も含め、個人情報の取り扱いには十分に注意する
- ネットにはネット上のマナー、ルールがあると心得て投稿や書き込みを行う
- トラブルのもととなるような発言や写真、動画の投稿をすると、名誉棄損や業務妨害、強迫などの罪に問われる可能性があることを常に自覚する
- ネット上で口論に発展しそうになったときは、その場を離れるなどして回避する
- 反対意見を書き込むときは、投稿する前に自分が書いた文章を再度見直し、挑発的な内容になっていないかチェックするクセをつける
日々インターネットを利用するうえで、上記すべてを意識するのは面倒かもしれません。しかし、これらを意識し続けることがインターネット上の誹謗中傷、トラブルから自身と家族の身を守ることにつながりますので、どうか覚えておいてください。
ネットトラブルの加害者にならないためのネットリテラシー
被害者だけでなく、無意識のうちに誰でも加害者になり得るのもインターネットトラブルの難しいところです。
何気なく投稿・拡散をしただけでも、その内容が相手の人格を否定・攻撃する内容であった場合は誹謗中傷行為となり、民事または刑事上の責任を問われる恐れがあるのです。
そこで以下からは、自身がインターネットトラブルの加害者にならないために、よく理解しておくべきポイントを紹介していきます。
投稿・拡散の先にいるのは、生身の人間だという事実を忘れない
あなたが自身の人格を否定・攻撃するようなことを、第三者から言われたらどう思いますか。誹謗中傷にあたるような内容のコメントを投稿する、または拡散する行為は、インターネットの向こう側にいる人を誹謗中傷するのと同じです。
姿が見えないため実感しにくいですが、SNS投稿をしているのもあなたと同じ人間です。安易な同意や拡散が誰かを傷つけているかもしれない、自分が同じことをされたらどう思うかを考えれば、誹謗中傷する側にはなれないでしょう。
「批判・意見すること」と「誹謗中傷」はまったくの別もの
誰かの意見に対し、自らの反対意見を述べることは悪いことではありません。しかし、意見そのものではなく発信者自身の考え方や性格、性別、国籍、容姿などを批判することは誹謗中傷に当たりかねません。
反対意見を投稿、拡散する前に、その内容が誹謗中傷に当たらないかよく考えてください。
一度投稿・拡散した事実は、取り消せないと肝に銘じよう
リアルの場でも、カッとしてつい言い過ぎてしまうことはありますよね。この場合は心から謝罪すれば相手が許してくれることもありますし、特に記録は残りません。
しかしネット上には、あなたが行った投稿・拡散の記録が半永久的に存在し続けます。仮に一時的な感情で誹謗中傷に加担してしまったら、その事実は消えません。時間が経って冷静になり、自身のしたことを悔やんでも取り消せないのです。この事実をよく理解し、カッとして衝動的な書き込みや拡散をしそうになったら、ネット環境から離れて冷静になりましょう。
いくら匿名でも、投稿・拡散した人物の特定は技術的に可能
インターネットトラブルの多くは「匿名だから」という、安心感から発生するものと考えられています。しかし現代の技術をもってすれば、匿名のネットユーザーの個人情報を特定するのは難しくありません。現に、匿名だった人でも個人情報が特定され、ネット上にさらされています。
同じことが自身の身にも起こるかもと考えれば、顔を出し実名ではできないような発言・行動は、インターネット上でもできないはずです。
SNSや掲示板で誹謗中傷を受けたときの対処手順
では、もしもインターネット上で誹謗中傷の被害に遭ったら、どうしたらいいのでしょうか。まずは以下の手続きをすべて行い、誹謗中傷から自身と家族の身を守ってください。
ネットの誹謗中傷被害にあったとき、まず行うべきこと
- 誹謗中傷、個人情報が掲載された掲示板のアドレスを確認して、その掲示板の管理者またはサーバ管理者に被害を報告する
- 掲示板やサーバの管理者には、トラブルのあった掲示板のログ保存も依頼する
- 誹謗中傷の内容、個人情報が掲載された画面をスクリーンショットや動画で保存しておく
- 特定の電話番号、メールアドレスなどからくり返し誹謗中傷被害を受けているなら着信拒否、または電話番号やメールアドレスの変更も検討する
- 誹謗中傷や個人情報が公開された掲示板から、当該箇所を削除するよう裁判所に仮処分を申し立てる
- 誹謗中傷、個人情報に関する情報の送信を防止し、その情報を発信した人物を特定するよう「プロバイダ責任法」に基づき請求することもできる
- 書き込んだ人を罪に問いたい場合は、お住まいの地域を管轄する警察署へ被害届を提出
なお、インターネット上で受けた誹謗中傷被害について相談したいと思った場合は、相談後どうしたいかにより相談先を変える必要があります。
以下に、インターネットトラブルについての相談に応じてくれる公的機関を目的別にリストアップしていますので、参考にしてくださいね。
- 書き込んだ人に賠償等を求めたい場合…弁護士へ相談するため「法テラス」へ
- 身の危険を感じるなど…最寄りの警察署、または都道府県警察本部の「サイバー犯罪相談窓口」へ
- 削除要請、削除依頼したい場合…法務省の「人権相談」窓口、またはセーファーインターネット協会の「誹謗中傷ホットライン」へ
上記の相談窓口のうち、投稿内容の削除依頼に関する相談先の詳細については次章で解説していますので、そちらもしっかり確認しましょう。
ネットの誹謗中傷で削除依頼をしたいときの相談窓口
インターネット上に投稿された誹謗中傷、個人情報の削除を最優先に行いたい場合は、まず以下3つの機関のいずれかへ相談してください。
- 違法・有害情報相談センター
- 総務省が設けている、国管轄の相談窓口。被害者が投稿内容の削除のために、今すぐ自分でできる対処法を教えてくれる。対応してくれるのは、インターネットの技術・精度について専門知識を持つ相談員。被害に遭った驚きや恐怖からパニックになり、どう行動すればいいかわからなくなったら、まずインターネットを通じここへ連絡してみよう。
- 人権相談
- 法務省が設けている、国の相談窓口。被害者自身が投稿削除のためにできることへのアドバイスはもちろん、投稿内容に違法性があると判断された場合は、法務局からプロバイダ等へ削除依頼もしてくれる。相談は法務局の窓口、電話、インターネットで相談可能。ただし、削除依頼をしてもらうための「違法性の判断」には、時間を要する可能性あり。
- 誹謗中傷ホットライン
- インターネット企業有志が運営する民間団体、セーファーインターネット協会の相談窓口。世界中からインターネット上の誹謗中傷についての連絡を受け付け、メールで被害者とやり取りをし、各プロバイダへ利用規約に沿った対応を促す連絡を取ってくれる。
ただし、プロバイダへ連絡をするのは協会が「一定の基準に該当する」と判断した場合のみ。
企業向け誹謗中傷や風評被害対策サービスも
個人だけでなく、企業などの組織がネット上の誹謗中傷の被害に遭うこともあります。
企業が受ける恐れのあるインターネット上の誹謗中傷内容は、以下の通りです。
企業に対して行われる、ネット上の誹謗中傷の例
- 「あの会社の○○は不良品」「いつ食べてもまずい」など、製品への誹謗中傷
- 「役員が脱税をしている」「店員の態度が悪い」など、従業員への誹謗中傷
- 「性別や国籍に対して差別的」など、CMやプロモーション活動に対する誹謗中傷
- 「あの会社はブラック企業だ」など、労働環境に関する誹謗中傷
企業の場合、誹謗中傷による被害が一時的な風評被害だけでなく、長期的な売り上げや株価の下落、営業や採用活動にも悪影響を及ぼす可能性が高いのが特徴です。
インターネット上で自社が誹謗中傷被害に遭っていることに気付いたら、インターネットトラブルに対処してくれるサービスを利用し、迅速に対処しましょう。
なお、企業向けにネット上での誹謗中傷・風評被害対策をしてくれるサービスに利用には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
専門業者を利用し、ネット上の誹謗中傷に対処することのメリット・デメリット
- メリット
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- 社内の法務部や弁護士の目が行き届かないところまで、インターネットや炎上対策のプロがしっかり対応してくれる
- 利用プランによっては、ほぼ24時間体制で自社に関する炎上がないか監視し、誹謗中傷や風評被害を予防してくれる
- デメリット
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- 専門家集団に管理と対処を依頼するため、相応のコストがかかる
- 企業や組織の内部情報をサポート業者にある程度公開、共有しなければならない
インターネット上での企業に対する誹謗中傷・風評被害に対処してくれるサービスとしては以下6つが挙げられます。
利用のメリット・デメリットをよく理解したうえで、自社に合うサービスを利用しましょう。
企業のネット炎上に強い、代表的なサービス事業者
- 株式会社エフェクチュアル
- 企業のブランディング、Webリスクマネジメントを行う
- 株式会社リンクス
- Webサービスを幅広く扱い、風評被害対策サービスも充実
- 株式会社プロモスト
- 事業の一環として、Web上のリスクマネジメントにも注力
- シエンプレ株式会社
- 警察庁からの業務委託儲ける、風評被害と炎上のスペシャリスト
- 株式会社エルテス
- 24時間365日、デジタルリスクの対応をしてくれる専門業者
- 有限会社アスプロ
- Webマーケティング、広告と並行してネットの風評被害対策も行う
おわりに:ネット上の誹謗中傷・風評被害に遭ったら個人は相談窓口、企業はWebリスクマネジメントを扱う業者へ相談を!
特定の個人の人格を否定・攻撃するような内容、また特定の企業の製品・サービス内容・従業員について攻撃することは誹謗中傷にあたります。これは、リアルの場でも匿名で利用できるインターネット上でも同じことです。もし自身がネット上で誹謗中傷の被害に遭ったら、信頼できる知人または専門の機関に相談して、今後の対処を考えましょう。自社がネットの誹謗中傷被害に遭った場合は、炎上対策に長けた専門業者の利用がおすすめですよ。
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