少子高齢化が進む現代日本では、一人暮らしをする高齢者の数が増加を続けています。離れて暮らしていると、オレオレ詐欺を代表とする犯罪や病気・ケガが心配になるものです。
今回は離れて暮らす高齢の両親、親族を困りごとや犯罪から守るのに役立つ各種サービスをアプリ、民間企業、自治体が提供するものまで幅広く学んでいきましょう。
- この記事でわかること
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- 持ち家か借家か、一人暮らしの高齢者の住まい事情
- インターネット通販トラブルなど注意すべき危険
- 孤独死のおそれもある一人暮らしの健康リスク
- 老後の生活の安心を支える宅食サービスや見守りアプリ
- 地域包括支援センターにいるのはどんな人か
高齢者の一人暮らしの割合や暮らしぶりって?
日本で一人暮らしをする65歳以上の割合は、男女ともに増え続けています。
内閣府が発表した「令和2年版高齢社会白書(全体版)」によると、1980~2040年の一人暮らしをする65歳以上の男女別の実績値・推測値は、以下の通りです。
男女別、一人暮らしをする65歳以上の人の推移
- 1980年の実績値
- 男性はおよそ19万人、65歳以上人口に占める割合は4.3%
- 女性はおよそ69万人、65歳以上の人口に占める割合は11.2%
- 1990年実績値
- 男性はおよそ31万人、65歳以上人口に占める割合は5.2%
- 女性はおよそ131万人、65歳以上の人口に占める割合は14.7%
- 2000年実績値
- 男性はおよそ74万人、65歳以上人口に占める割合は8.0%
- 女性はおよそ229万人、65歳以上の人口に占める割合は117.9%
- 2010年実績値
- 男性はおよそ139万人、65歳以上人口に占める割合は11.1%
- 女性はおよそ340万人、65歳以上の人口に占める割合は20.3%
- 2020年推測値
- 男性はおよそ243万人、65歳以上人口に占める割合は15.5%
- 女性はおよそ459万人、65歳以上の人口に占める割合は22.4%
- 2030年推測値
- 男性はおよそ294万人、65歳以上人口に占める割合は18.2%
- 女性はおよそ502万人、65歳以上の人口に占める割合23.9は%
- 2040年推測値
- 男性はおよそ356万人、65歳以上人口に占める割合は20.8%
- 女性はおよそ540万人、65歳以上の人口に占める割合は24.5%
1980年代から2010年代に至るまで、一人暮らしをする65歳以上の人はどんどん増えていますし、今後も増得続けると推測されていますね。
また、同白書は住居と外出手段についても調査し、高齢者の暮らしぶりにも触れています。
一人暮らしをする65歳以上の住居、外出手段について
- 持ち家で暮らす人の割合が66.2%と最も多い
- 次いで民営の借家が21.7%、公営・都市再生機構・公社の借家が11.6%の順に多くなる
- 65歳以上の外出手段で最も多いのは自分で運転する自動車の68.6%
- 次いで自転車が28.2%、電車が23.2%、バスが20.2%となっている
移動手段に関しては一人暮らしの高齢者に絞った調査結果ではありませんが、上記からは65歳以上の人達がある程度自立し、外出も楽しみながら生活する様子が見えてきます。
シニアの一人暮らしの心配点や困りごとは?オレオレ詐欺に要注意
65歳以上の高齢者が一人暮らしをするうえで起こり得る心配な困りごと、トラブルの具体例としては、以下が挙げられるでしょう。
犯罪に巻き込まれ、被害者となること
オレオレ詐欺やキャッシュカード詐欺などの「特殊詐欺」は、高齢者をメインターゲットとする組織的な犯罪です。実際、2019年中に発生し認知された特殊詐欺の被害者は、およそ8割が65歳以上でした。
高額商品の購入など、金銭トラブルに巻き込まれること
水道局などの職員を名乗る身分詐称やインターネット通販などで金銭トラブルに巻き込まれる高齢者は多いです。消費者生活センターに寄せられる相談のうち、契約当事者が65歳以上の案件の割合は2018年にはおよそ36万件、2019年にはおよそ31万件にのぼりました。
これを手口別に分類すると、身分詐称に関する相談が22.4%、インターネット通販に関わるトラブルが21.8%を占めています。
身体機能、認知機能低下からご近所トラブルを引き起こすこと
65歳以上の高齢になると、本人も気づかないうちに生活能力が下がることがあります。一人暮らしの高齢者が起こしやすいご近所トラブルの例としては、地域のルールにのっとったゴミ出しができない、被害妄想から根拠のないクレームを近隣住民へぶつける、深夜に徘徊したり大声で騒いでしまうなどがあります。
警察や弁護士が介入するほどの重大トラブルに発展する可能性も考えられるので、注意が必要です。
病気や事故、服薬管理ができないことによる孤独死
65歳以上ともなると、毎日の服薬が必要な持病を抱える人も多くなります。一人で暮らすことの億劫さ・気軽さから、食事内容の偏りや睡眠リズムの乱れ、適切なタイミングと量で服薬ができないなど、生活が乱れるケースも少なくありません。
しかし加齢により身体機能が低下し、持病を抱える高齢者にとって生活習慣の乱れや不適切な服薬は、命に関わる重大な問題です。独り暮らしをするシニア世代にとって最大のリスクは、生活の乱れや正しく服薬ができないことによる孤独死の可能性だと言えます。
食事の準備が大変!一人暮らしのシニア向け宅配弁当サービス
一人暮らしをする65歳以上が抱えるリスク、困りごとがわかったところで、ここからは問題を解決するためのサービスを紹介していきます。
まずは持病の悪化、生活習慣病のもととなる、一人暮らしシニアの食事問題の解決に役立つサービスから見ていきましょう。
先述の通り、一人暮らしの高齢者は「面倒くさい」「一人で食べても寂しいから」などの理由で、食事を適当に済ませがちです。
また感情面以外にも食事が簡素になり、一人暮らしの高齢者が低栄養状態に陥ってしまう理由としては以下が挙げられます。
・内臓機能の低下で食べることそのものへの興味、意欲が低下する
・足腰が弱くなり、最寄りの商業施設へ買い物へ行くのも億劫に感じる
・「もう年寄りだから肉や魚を食べなくて良い」などと、誤った栄養知識を信じている
この問題の解決に役立つのが、高齢者向けの宅配弁当サービスです。
以下に、高齢者向けに栄養バランスを考えた弁当を宅配してくれるおすすめのサービスを3つそれぞれの特徴と一緒に紹介しますので、利用を検討してくださいね。
- 1:わんまいる
- 使用している食材は国産のみで、1食あたり400キロカロリー、塩分量は3.5g以下に抑えられた健康的なメニューを提供
- 合成着色料、保存料は不使用で、柔らかく飲み込みやすいよう調理されている
- 関西の有名料亭、ホテルと取引する料理人が調理したおいしいお弁当が冷凍で届く
- 2:ウェルネスダイニング
- 持病や体質のために摂取する栄養を制限したい人のための「制限食」が豊富
- カロリー、塩分、タンパク質、糖質など各栄養成分の制限が可能な食事を注文できる
- 栄養価の制限が必要な人に向けた「健康食」も注文可能
- 管理栄養士がバランスを考えて作ったメニューは全6コースあり、定期便を利用するとお得になる
- 3:食宅便
- 日清医療食品に所属する管理栄養士考案のヘルシー食、制限食など目的に合わせて選べるコースが豊富
- お正月、クリスマス、節句などイベントに合わせたメニューも登場する
- 健康のためでなく、季節感も意識しながらメニューを選べて楽しい
- TVコマーシャルも放映されている、人気の宅配サービス
防犯や安否確認に便利なシニアの見守りアプリ
特殊詐欺、悪徳商法などの犯罪者グループは一人暮らしの高齢者が抱える健康、孤独、金銭問題などへの不安を煽ることで、巧みに金銭を奪い取ります。
高齢者がこのような犯罪被害に遭う理由のひとつは、誰にも相談できず、不安な気持ちのまま誤った判断を下してしまうことでしょう。
そこで防犯、家族間での安否確認に利用してほしいのが、見守りアプリの数々です。
以下に、高齢者向けのおすすめ見守りアプリ3つを特徴とともに紹介しますので、確認してくださいね。
- 1:みまもりLite
- 普段使用しないスマホ、タブレットにダウンロードして専用機にして使うアプリ
- 動きを感知できるカメラ、明るさを感知できるセンサーを内蔵し、暮らしのデータを蓄積
- 活動状況や生活パターンは、夜間に離れて暮らす家族へメールで自動報告される
- 外出か在宅か、体調や電話の必要性などを伝えるメッセージをワンタッチで送信可能
- 2:あんしん365
- 一人暮らしの高齢者の所在確認、安否確認に役立つ見守り系アラームアプリ
- 連絡や安否確認をしたい曜日、時刻をあらかじめ設定しておくと、操作を促してくれる
- 適切な操作が行われるか、一定時間アラームが無視されると通知メールが自動送信
- 家族への通知メールには、端末の位置情報を含めることも可能
- 3:お元気ですか
- ワンタッチで高齢者の気持ち、状況を家族に送信できるコミュニケーション支援アプリ
- 「家にいる」「外にいる」「元気がある」「元気がない」「助けが必要」「助けはいらない」「のんびりしてる」「忙しい」の選択肢からタッチするだけでメッセージが作成でき、家族へ送信できる
- 毎日決まった時間に操作を促すアラーム機能も搭載
- 一人暮らしの高齢者が、家族とコミュニケーションをとるための習慣にしやすい
オレオレ詐欺に騙されないための対策法
特殊詐欺には、大きく以下10種類があります。
特殊詐欺の手口10類型(令和2年)
- オレオレ詐欺
- 架空料金請求詐欺
- 融資保証金詐欺
- ギャンブル詐欺
- 預貯金詐欺
- 還付金詐欺
- 金融商品詐欺
- 交際あっせん詐欺
- キャッシュカード詐欺盗
- その他の特殊詐欺
特殊詐欺の具体的な手口は、まずは電話、文書、対面で接触したうえで現金やキャッシュカードをだまし取ったり、ATMから送金・振込させるなどというものです。
これらの特殊詐欺、特にオレオレ詐欺など電話を使って接触しようとする犯罪者から高齢者を守るには、以下の対策が効果的です。
あらかじめ家族間でよく話し合い、できる対策は講じておきましょう。
オレオレ詐欺への効果的な対策方法
- 在宅中も留守電を起動しておき、相手を確認してから出る
- 「録音している」などの警告メッセージを流したうえ、会話を自動録音する
- 迷惑防止機能付き電話機を使い、自動で警告メッセージと録音ができるようにする
- 家族や親族、頻繁に連絡を取る人の電話番号をすべて電話機に登録しておく
- 登録していない番号からの電話は、メッセージで確認してから折り返すか検討し、怪しい場合は対応しない
- 家族を名乗る相手から「番号が変わった」と言われたら、一旦切って登録している番号へ折り返して事実かどうかを確認する
- 警察や銀行、公共機関を名乗る相手も簡単には信用せず、名前と所属、電話番号を聞いて一旦電話を切る
- お金やキャッシュカードの話が出たら、一旦電話を切って家族に相談する
- あらかじめ家族と合言葉を決めておき、怪しい相手には合言葉を求める
自治体の介護サービスでできることと民間サービスの内容は違う!
独り暮らしをする65歳以上の人が日々の生活で抱える困りごとへは、自治体や民間企業、NPO法人などが提供するサービスを利用するのがおすすめです。
自治体などが提供する公共と民間の介護サービスの内容は、以下のように異なります。
自治体から受けられる介護サービスの内容
- 要介護認定を受けている人の場合
- 1~5のすべての段階で受けられるのは「身体介護」「通院等乗降介助」「生活援助」
- 身体介護…入浴や排泄、着替え、移動、体位変換や洗顔、歯磨きなどのお手伝い
- 通院等乗降介助…病院や役所など、出向く必要のある外出先への送迎と乗降のお手伝い
- 生活援助…掃除、調理、買い物、ゴミ出し、洗濯など日常生活を送るためのサポート
- 要支援認定を受けている人の場合
- 介護サービスではなく「介護予防通所介護」「介護予防通所リハビリ」「介護予防訪問介護」の3つに分類される、介護予防サービスを受けられる
- 1か月単位の定額で、本人の体調や環境に合わせて上記サービスが提供される
- ※要介護、要支援へのサービスはいずれも介護保険を利用し在宅で受けられる内容です。
民間の企業、団体から受けられる介護サービスの内容
- 大手スーパーなどが行う買い物介助、商品宅配サービス
- 家事代行業者による、買い物と宅配、調理、掃除、見守りサービス
- NPO法人、ボランティアなどによる食事支援や配食サービス
上記には原則として介護保険は適用されず、実費での利用となります。
自治体と民間の介護サービスそれぞれの内容と特徴を理解し、有効活用してくださいね。
お住まいの地域包括支援センターや地域活動もおすすめ
65歳以上の高齢者が一人暮らしをするうえで抱える困りごと、また将来抱えるであろうトラブルが心配なときは、まずは自治体の地域包括支援センターへ相談しましょう。
要介護・要支援の認定も行う地域包括支援センターには福祉のプロであるケアマネジャー、保健師、社会福祉士が配置されています。困っていること、心配なことを改善・軽減するためのアドバイスや、利用できるサービスなどの紹介を受けられますよ。
また、不安を少しでも軽減するために家族でできることとしては、普段から時間をかけ以下のポイントについて話し合っておくことが挙げられます。
不安解消のため、高齢者と家族が話しておくべきこと
- 病気や災害で介護が必要になったとき、頼れる機関や支援内容を一緒に確認する
- 災害が起こったときの避難の場所や経路、過程での備蓄を十分にしておくこと
- 高齢者が普段から参加する地域活動などを把握し、健康状態を確認する機会を作っておく
いま感じている心配ごと、困っていることとその対処法を話し合いながら明確にしていくだけでも、高齢者が抱えている漠然とした不安はかなり解消されます。
少しずつでも時間を作って話し合い、支援制度もうまく使いながら未来へ備えましょう。
おわりに:一人暮らしの高齢者が抱える問題の多くは、介護関係のサービスやみまもりアプリ、家族間の備えで解消できる
65歳以上の高齢者のうち、一人暮らしをする人の割合は今後も増加が見込まれています。食事の簡素化による栄養の偏りや持病の悪化、孤独死、犯罪に巻き込まれるなど心配な要素は多々ありますが、かと言って同居できない事情を抱える人も多いでしょう。しかし近年では自治体や民間の企業・団体がさまざまな高齢者向けのサービス、アプリを提供しています。これらをうまく使って、一人暮らしをする高齢者の健康と安全を守りましょう。
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