将来に向けて株式投資で資産運用する人が増えています。日本の株はローリスク・ローリターン、外国の株はハイリスク・ハイリターンと言われていますが、分散投資を検討している人は外国株も気になるはず。
今回は、大きな市場であるアメリカ市場と中国市場を中心に、外国株投資について紹介します。これから株式投資を始める人は、ぜひチェックしてください。
- この記事でわかること
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- 外国株式への投資が人気な理由
- 初心者におすすめなのは先進国株?新興国株?
- 外国株式はどんな取引所で売買されているか
- 米国株式と中国株式の始め方
- 外国株式を売買できる証券会社の比較
外国株は大きなチャンスがあるの?日本株との違いやメリットって?
外国株式とは、その名の通り外国籍の企業が発行している株式のことで、日本では昭和40年代の半ば以降、日本から直接外国株式に投資できるようになりました。現在では、国内株式ほどではないものの、数多くの銘柄を比較的自由に売買できるようになったのです。そんな外国株式には、以下の3つのメリットが期待できます。
- 円資産以外に外貨を得られる
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- 日本人は日本円を信頼しているが、国が破綻した場合は日本円の価値がなくなる
- 借金増大、少子化拡大、人口減少など、日本が抱えるリスクは決して少なくない
- グローバル化が進み、日本にも外国人や海外の企業が進出している現在、円資産しか持っていないのはリスクが高い
- 日本がすぐに破綻するとは考えにくいものの、もしものときに備えておくことはリスク回避になる
- 外国株式は、高い配当が期待できる
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- 外国株式は、株価に対して支払われる配当金(配当利回り)が高い、すなわち投資金額に対してのリターンが多い
- 日経平均225銘柄の平均配当利回りは約1.7%だが、米国株には配当利回りが5〜6%の銘柄が多く、株価も安定している
- 飲料メーカー大手のコカコーラ、家庭用品大手のP&Gは長年増配(配当を増やす)を続けているので、持っているだけで配当金が支払われる
- 日本の企業は業績が悪いとすぐに減配(配当を減らす)するが、米国企業は弱気だと投資家から嫌われるため、多少の業績不振では安易に減配しない
- 保有するだけで安定的な配当収入(インカムゲイン)が手に入ることは大きなメリットと言える
- 為替と株価の変動により、ダブルで利益が期待できる
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- 外国株式を買うときは、円高になったときを狙うと良い(例えば、円安ドル高はアメリカの景気が良くなったときなので、米国株が高くなりやすい)
ダブル利益に関しては、たとえば1ドル100円で1,000ドルの株を買い、1ドル110円(より円安の状態)になり、株価も1,200ドルに上昇したときに売ると利益が大きくなります。
- 買い:1ドル100円×株価1,000ドル=100,000円
- 売り:1ドル110円×株価1,200ドル=132,000円
このように、株価と為替のダブルで利益を上げられるのは外国株式ならではでしょう。海外にはグローバルに展開する大企業や、成長性の高い優良企業も多いこと、為替と株価の変動という国内株式では得られない利益が得られることなどから、上記のようにさまざまなメリットが期待できます。
ハイリターンが期待できるけど、外国株はリスクは危険?
さまざまなメリットがある外国株式ですが、もちろんデメリットもあります。デメリットとして最も大きいものは、株価と為替の変動はリスクにもなりうるということです。特に、新興国での株式投資を行う場合、為替リスクが高く株価の上昇が為替の下落によって相殺されてしまうケースが多くありますので、注意が必要です。
例えば、トルコの株式指数は10年間で1.74倍(現地通貨)に成長したのですが、円高が進んだため円通貨建ての収益はマイナス60%と投資元本を下回ってしまいました。このように、新興国通貨にはリスクがつきまとうことを念頭に置いておく必要があります。さらに、円で外貨を購入する際の為替手数料と、株の売買にかかる手数料が二重に発生することもあり、国内株式を売買するのと比べて手数料が割高になることも考慮しなくてはなりません。
他にも、外国株式には以下のようなデメリットやリスクが考えられます。
- リアルタイムでの購入が難しい、手間取る
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- 時差が生じることから、国内株のようにリアルタイムで購入することが難しい
- 初めて外国株を購入するときは、証券会社の窓口の人と相談しながら売買するのがおすすめだが、土日祝は窓口が休みなので手続きができない
- 取扱銘柄が限られる
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- 外国株は特殊なので、証券会社によっては取引銘柄が限られる
- 有名企業ならだいたいの証券会社で購入できるが、少しマニアックな銘柄や規模が小さい企業は取り扱いがないことも
- 日本株と異なり、企業情報を細かいところまでチェックできないのも不安を感じやすい
- 新興国は政情不安・内戦などのリスクがある
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- 新興国株の場合、政情不安や内戦、テロなどが起こる可能性が高い
- 企業情報だけでなく、正確な情報収集が困難なこともリスクの一つ
- 手数料が先進国株に比べて高いこと、直接投資ができない国が多いことなども大きなデメリット
このように、外国株を購入する場合は国内株と比べてさまざまな制限やデメリット、リスクもあります。初心者が初めて外国株を購入する場合は、比較的リスクの少ない先進国株から選ぶと良いでしょう。
外国株式を始めたいけど売買にはどんな方法があるの?
外国株式の売買には、以下のように「海外委託取引」「国内店頭取引」「国内委託取引」の3つの方法があります。
- 海外委託取引
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- 証券会社に外国株式の委託注文を出し、ニューヨーク証券取引所や香港証券取引所など海外の株式市場で直接取引する
- 約定価格は基本的に現地通貨建てとなり、国内株式同様に指値注文なども出せる
- ただし、売買手数料は現地での手数料に加えて「国内取次手数料」がかかるため、国内株式の取引より割高になることも
- 国内店頭取引
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- 外国市場の株価を基準として、証券会社と投資家が相対で外国株式を取引する
- 株価は売買の時点で確定しているので、指値注文などは出せない
- あらかじめ売買価格に手数料相当分が含まれているので、委託手数料やそれに対する消費税などはかからない
- 国内委託取引
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- 東京証券取引所に上場されている外国株式などを取引する/li>
- 売買などは取引所業務規定で定められている方法で行うため、国内株式と同様
- 上場銘柄は過去と比較するとかなり少なくなっていて、売買はあまり活発ではない
初心者が投資で外国株を購入するなら先進国株、できれば市場が活発で配当利回りが高いところが安心といえます。そこで、今回は主な外国株としてアメリカ株と中国株について次章から説明します。
アメリカ株は1株から始められるのが魅力!日本株との違いとは
アメリカ株(米国株)とは、文字通りアメリカ合衆国で取引されている株式のことです。日本では東京証券取引所(東証)などで国内株の取引が行われていますが、同じようにアメリカでもニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダックといった取引所でアメリカ国内の株が取引されています。
アメリカ株は上場している取引所別に見てもそれぞれ以下のような特徴があります。
アメリカ株の取引所の種類
- ニューヨーク証券取引所(NYSE)
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- 米国で最も長い歴史を誇り、ロンドン取引所に次いで世界で2番目に古い証券取引所。時価総額で世界最大の取引所だが、同時に上場審査が最も厳しいことでも知られる
- コカコーラ(KO)、ナイキ(NIKE)、ウォルト・ディズニー(DIS)など、アメリカ及び世界を代表する優良企業が上場
- ソニー、トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループなど、日本企業も米国預託証券(ADR)を発行して上場している
- ナスダック(NASDAQ)
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- 1971年に開設された、世界初の電子株式市場。新興企業向けとしては世界最大規模。ベンチャー向けの市場で、成長力に富んだ新興企業が多く集まっている
- 日本でも知名度が高いアップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)などのネット関連企業も上場
- 日本企業では三井物産、任天堂、日産自動車などが上場
つまり、世界的な有名・優良企業に投資するならニューヨーク証券取引所、次世代のスター企業を見出すならナスダックが適しているとされます。また、銘柄名の横にあるアルファベットは国内株で言うと4桁の銘柄コードに当たるもので、「ティッカーシンボル」と呼ばれます。ティッカーシンボルは社名に由来する1〜5文字のアルファベットで、例えばフェイスブックなら「FB」となっています。
少額からでも始めやすい?米国株式と日本株式の主な違い
米国株式の特徴には下記が挙げられます。
- 1株単位から取引可能
- 日本株式には取引所が定める単元株制度があり、現在は主に100株単位で取引されている。一方、アメリカ株式はすべての銘柄は1株単位から購入でき、少額から投資を始められる。ただし手数料は割高になるため、注意が必要
- ストップ高、ストップ安がない
- 日本株式では、株価によって1日に変動できる額が決まっていて、上限をストップ高、下限をストップ安と言う。アメリカ株市場にはこのルールがないので、思いがけない暴騰や暴落もありうる
- 配当金の分配頻度が多い
- 日本株式の場合、配当金の分配頻度は本決算の年1回、もしくは中間決算を加えた年2回が一般的。米国株式では、四半期の決算ごとの年4回配当を実施する企業が多い
1株単位から取引可能なアメリカ株は、少額からでも手軽に始めやすいというメリットがあります。アメリカ株は楽天証券・SBI証券・マネックス証券などで購入できます。特に楽天証券では2020年4月からスマホアプリでも取引できるようになりました。こうしたネット証券では、日本株とほとんど変わらない感覚でアメリカ株を購入できます。
いずれの証券会社も、口座の開設料と管理手数料は無料なので、アメリカ株を取引したいと考えている人は口座開設を検討してみましょう。投資したいというアメリカ株が見つかったとき、すぐに購入できます。
このとき、日本企業をはじめとしたアメリカ以外の国の企業を米国市場で購入するためには、米国預託証券(ADR)という仕組みを利用します。
- ADRとは
- アメリカ以外の国で設立された企業が発行した株式の裏付けとして、アメリカで発行される有価証券
厳密には株式とは言えないのですが、「裏付けとなる株式に生じる経済的権利のすべてを含む有価証券」となっていますので、株式を保有するのとほぼ同等の効果が得られます。この方式を利用すれば、アメリカ国籍の企業のみならず、世界の有望な企業に米国市場から投資ができます。
中国株式を始めるなら経済成長著しい中国市場も要チェック
国際通貨基金(IMF)の発表によれば、2017年の中国経済の名目GDP(国内総生産)は日本の約2.5倍でしたが、さらに成長を続けて2023年には約3.6倍となる見通しです。また、経済成長率も日本は2019年から2023年まで1%を超えることがないとされているのに対し、中国は2021年まで6%台を維持し、それ以降も世界2位の規模となるものの5%台の成長が続くと見込まれています。
近年の中国では、IT(情報技術)を中核とするニュー・エコノミーの発展もめざましく、さらなる成長が予想されることなどがこうした予測の根拠になっていると考えられます。つまり、今後少なくとも2023年までは日本より中国の方が経済的な成長性がある、と言えるでしょう。こうした中国経済を担っているのがもちろん中国企業であり、中国株なのです。
中国経済の規模が拡大していくにつれ、中国株にはオールド・エコノミーからニュー・エコノミーまで、さまざまな銘柄が揃うようになりました。日本経済は相変わらず低迷が続いていますから、国際分散投資を考える上で中国株は見逃せない選択肢の一つと言えるでしょう。
そんな中国株は、取り扱いのある証券会社で購入できます。証券会社によっては中国株そのものを取り扱っていなかったり、取り扱っている銘柄が異なったりするので、まずは中国株を取り扱っている証券会社をいくつか見比べ、自分が買いたいと思える銘柄、興味を持てる銘柄を扱っているかどうかチェックしましょう。
中国株の取引所の種類
中国株の取引所は、中国本土にある上海取引所、深圳取引所のほか、香港にある香港取引所を含めた3つです。取扱い銘柄はそれぞれの取引所で異なりますが、一部重複して上場している企業もあります。これら3つの取引所はそれぞれ取引ルールや時間帯、通貨も異なり、日本国内からの中国株投資の多くは香港取引所で行われています。
中国株に投資するメリットは、やはり最初にご紹介した経済的な成長性でしょう。経済活動が活発なことで、以下のようなメリットが見込まれます。
- 値動きが大きい
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- 日本株と比べて株価の値動きが大きいため、スイングトレードなどの短期的なトレードをメインに行う人は特に利益を狙いやすい
- ある程度の投資経験があり、値動きを予測でき、すぐに注文を出せる環境が整っているということであれば、中国株に投資してみるのも選択肢の一つ
- 値動きが大きいということは損失のリスクも大きいということなので、判断は慎重に
- 経済拡大が見込まれている
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- 近年では中国企業が自ら製品やサービスを提供するようになり、特にITやAI分野での成長はめざましい
- 中国経済の成長傾向は今後も続くと期待されているので、株価も同様に上昇していくと考えられている
- 中国株には割安で成長性が高い銘柄が多く、さまざまなトレード手法で利益を上げやすい状況がある
- 配当金が高い
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- アメリカ株と同様、中国株は日本株より高配当な株式銘柄が多い
- 銘柄によっては、5%程度の高配当を期待できるものもある
- 香港証券取引所に上場している株式銘柄に関しては、配当金に対して税金が発生しない
- 長期的な投資を考えている人にとっても、中国株投資はメリットがある
中国株式と日本株式の違いは政府の影響の大きさ?
一方で、中国株もやはり外国株ですから、外国株ならではのリスクが存在します。また、中国は国の政策の影響が大きいのもデメリットと言えるでしょう。中国は共産党による一党体制で運営されていて、民主主義国家ではありません。つまり、中国政府の一存によって大きく政策が変わり、民間企業への介入などが起こる可能性もあるということです。
ですから、中国株に投資をするのであれば中国政府がどのような経済政策を取っているのか、必ずチェックしておかなくてはなりません。さらに、アメリカとの貿易交渉などが中国経済に与える影響もありますので、国際的なニュースにも随時関心を払う必要があるでしょう。
アメリカ株や中国株を取り扱う証券会社はどこ?ネット証券もできる?
アメリカ株や中国株を取り扱う証券会社はいくつかあり、窓口があって相談しながら選べる証券会社もあれば、インターネットだけで取引が完結するネット証券会社もあります。まずは、手数料は割高なものの、比較的安心して売買できる窓口対応可能な証券会社からご紹介しましょう。
- 野村証券
- 業界No.1でアメリカ株140銘柄以上、中国株30銘柄以上を取り扱っている。大手証券の強みでもある、レポートや海外企業情報の多さが売りで、海外相場についても精通している営業マンが多い
- 大和証券
- アメリカ株・中国株のほか、ヨーロッパ13ヶ国、ブラジル・インドなど新興國株も取り扱う。中国株については、インターネットからの注文も可能
- SMBC日興証券
- 三大証券の一つ、日興はアメリカ株が700銘柄以上、中国株が450銘柄以上、その他ドイツやオーストラリア株なども購入可能。注文は電話か店頭窓口のみだが、相談しながら購入できるので安心
- 内藤証券
- 中国株のエキスパートで、香港株・中国株はほぼすべて売買可能。国内の証券会社では群を抜いている
逆に、ネット証券の強みは手数料の安さ、手軽さです。ある程度外国株の取引に慣れてきて、それほどしっかり相談しなくても大丈夫という人であれば、ネット証券に移行しても良いかもしれません。
- マネックス証券
- アメリカ株3300銘柄以上、中国株2000銘柄以上と、アメリカ株の取扱い数が圧倒的に多い。手数料もキャンペーンで無料になることもあり、アメリカ株中心に考える人にはおすすめ
- SBI証券
- ネット証券最大手で、アメリカ株・中国株のほか、韓国株・ロシア株・ASEAN株などラインナップが多い。ネット証券ならではの自動買付、SBI銀行との連携機能などもあり、顧客満足度1位
- 楽天証券
- アメリカ株1400銘柄以上、中国株900銘柄以上と、他のネット証券と比べると銘柄の数ではやや弱め。「MarketSpeed」という、60万人が利用する人気の情報収集ツールが利用可能。売買手数料で楽天スーパーポイントを貯めることもできる
このように、証券会社と言ってもその特徴はさまざまです。行いたいトレードの方法や買いたい銘柄、国などをよく検討して選びましょう。
おわりに:外国株式投資はリスクもあるが、メリットも大きい
外国株式投資は、株価と為替の影響による変動が激しいという大きなポイントがあり、これが大きなメリットにもデメリットにもなりうることに注意が必要です。一方で、日本株にはほとんどない高配当な銘柄も多く、長期投資も視野に入れられるでしょう。
特におすすめなのは、世界規模の市場であるアメリカ株や、今後も経済的成長が見込まれる中国株です。初めての方は窓口で相談しながら購入すると、比較的安心と言えるでしょう。
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