eスポーツとプロゲーマーは、日本ではいずれもここ10年ほどで一般的に認知されるようになってきた新しいスポーツジャンル、職業です。
今回は競技としてのeスポーツの特徴や種目の具体例、競技人口やトップ選手の年収相場をはじめ、プロゲーマーの働き方、キャリアパスに至るまでまとめて紹介します。
- この記事でわかること
-
- 世界的人気種目となったeスポーツの魅力
- プロゲーミングチームに所属するプロゲーマーの働き方
- 日本のeスポーツ人口とこれからの可能性
- プロゲーマーを目指すなら習得したいスキル
eスポーツはどんな競技?プロゲーマーの働き方って?
「Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)」の略称であるeスポーツはビデオゲーム、日本で言うところのテレビゲームで行う競技です。
一般的にスポーツと言えば、野球やサッカーなど体を動かし汗を流して楽しむ、肉体的なエンターテインメントと認識されていますよね。
しかしスポーツの語源は、ラテン語で「楽しむ」「遊ぶ」という意味の言葉です。この語源を考えるとゲームもスポーツに該当しますし、将棋やチェスなど、主に思考で対戦し観客を楽しませるコンテンツも「マインドスポーツ」とも呼ばれています。
だからこそeスポーツも、スポーツの新ジャンルとして世界で受け入れられているのです。
なおeスポーツの市場規模は、2020年現在で10億5,930万ドルにのぼります。2023年には15億ドル規模にまで拡大すると予測されていて、2024年にパリで開かれる予定のオリンピック・パラリンピックの正式種目への採用も検討されています。
日本では、一般社団法人 日本eスポーツ連合がオフィシャルサイトを解説し、国内のeスポーツの普及を推進しています。オフィシャルサイトでは大会の開催情報やライセンスの情報を確認できます。
このため、2020年までにeスポーツは以下のような大会の種目に採用されており、退会競技としてのデモンストレーションが行われています。
- eスポーツが種目採用された大会の例
-
- 2018年、ジャカルタで行われた「アジア競技大会」のデモンストレーション種目
- 2019年、茨城県で開催された国民体育大会の文化プログラム「都道府県対抗eスポーツ」
そしてプロゲーマーとは、eスポーツの大会で報酬を得ることを仕事にする人たちのことを指します。
プロ野球選手やプロサッカー選手と同じように、プロゲーマーの多くも「プロゲーミングチーム」に所属し、以下のような仕事に従事することになります。
- プロチームに所属する、プロゲーマーの仕事内容
-
- トークイベントやeスポーツ大会へのゲスト出演
- eスポーツのPRや地位向上のためのメディア出演
- 日本大会、世界大会への出場を練習とした日々の練習 など
チームとしての収入源は、企業スポンサーからの資金提供やイベント参加時の報酬、所属するプロゲーマー関連のグッズ販売などがメインです。そして所属するプロゲーマーの給与は、主に月俸または年俸というかたちで支給されます。
eスポーツではどんなゲームが種目になっているの?
ここからは、eスポーツの競技種目となっているゲームのジャンル、タイトルをまとめて紹介していきます。
FPS
「ファーストパーソンシューティング」の略で、一人称視点でプレイするシューティングゲームのこと。
- 具体的なタイトル例
-
- カウンターストライクシリーズ
- Unreal Tournamentシリーズ
- ペインキラー
- Quakeシリーズ
- Warsow
- コースオブデューティシリーズ など
画面に映るのはシューティング対象とフィールド、そしてプレイヤーの腕や武器のみ。
プレイヤーはフィールドを移動し、武器や格闘スキルを使って敵と戦って進めていく、アクションゲームにあたる。
TPS
「サードパーソンシューティング」の略で、第三者視点で楽しむアクションゲームのこと。
- 具体的なタイトル例
-
- 荒野行動
- Splatoon
- Fortnite
- World of Tanks
- World of Warship
- PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS
FPSと同じく、敵にあたる存在をシューティングしながら楽しむゲームだが、最大の違いはプレイヤーの視点が第三者目線であり、操作するキャラも武器も見えるところ。
プレイヤーはキャラを動かし、フィールドを移動して敵を倒すなどして勝敗を競う。
RTS
「リアルタイムストラテジー」の略。ゲームは基本的にリアルタイムアタック形式で進み、俯瞰した視点でフィールドを見てゲームをプレイする。
- 具体的なタイトル例
-
- Age of Empiresシリーズ
- Warcraft Ⅲ:The Frozen Throne
- Starcraft Ⅱ
戦局を大局的に捉える観察眼、洞察力、計画的に敵を倒す頭脳が求められる。
MOBA
「マルチプレイオンラインバトルアリーナ」の略。
RTSのサブジャンルのひとつであり、複数のプレイヤーでチームを組んで団体戦を楽しむ。
- 具体的なタイトル例
-
- Dota
- DotA Allstars
- League of Legends
- Heroes of the Storm
- Vainglory
- LORD of VERMILION ARENA
ゲームの勝利条件は「敵陣地・敵本拠地の破壊」であり、メンバーの配置やバランス、攻撃と防御への人数割りを的確に行う頭脳とセンスが求められるジャンル。
格闘ゲーム
「格ゲー」とも呼ばれるジャンル。
対戦アクションゲームから派生したジャンルで、プレイヤーはゲーム上のキャラクターを選んで1対1で戦い、相手の体力をゼロにすると勝利となる。
- 具体的なタイトル例
-
- ストリートファイターシリーズ
- 鉄拳シリーズ
- バーチャファイターシリーズ
- DEAD OR ALIVEシリーズ
- 大乱闘スマッシュブラザーズ
- ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ など
スポーツゲーム
バスケットボールやサッカーなど、スポーツの試合を楽しむシミュレーションゲーム。
- 具体的なタイトル例
-
- NBAシリーズ
- FIFAシリーズ
- ウイニングイレブンシリーズ
- ロケットリーグ
- マッデンNFLシリーズ
「SPG」とも略称されるジャンルで、プレイヤーは各選手を操作して試合を行い、試合に勝ったチームのプレイヤーが勝者となる。
レーシングゲーム
自動車やオートバイ、自転車、飛行機、船舶、宇宙船など乗り物を操作するゲームのこと。
- 具体的なタイトル例
-
- Formula Oneシリーズ
- rFacterシリーズ
- GRAN TURISMOシリーズ
- Test Driveシリーズ
- PROJECT CARSシリーズ
- Need for Speedシリーズ など
プレイヤーは乗り物の運転手として、または無人の乗り物をラジコンで操作するような感覚でタイムや順位を競い合う。
パズルゲーム
アクションパズルPCゲーム。上から落ちてくるピースをうまく積み上げ、画面がいっぱいになる前に消して言って遊ぶ。別名「落ち物ゲーム」「落ちゲー」。
- 具体的なタイトル例
-
- TERISシリーズ
- ぷよぷよシリーズ
トレーディングカードゲーム
ゲーム上でデッキを作成し、トレーディングカードでの対戦を楽しむゲームジャンル。
日本では「TCG」、英語圏では「CCG」とも呼ばれるもので、1対1の戦いに勝利するには頭脳と運の両方が必要になる。
- 具体的なタイトル例
-
- Hearthstone:ハースストーン
- シャドウバース
MMORPG
「マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム」。
オンライン上に複数人で集まり、多人数で勝利をめざす。なおMMORPGのうち、eスポーツの競技になっているのは競技性、格闘性が高いタイトルのみ。
- 具体的なタイトル例
-
- ブレイドアンドソウル
オンラインストラテジーゲーム
日本ではシミュレーションゲームのサブジャンルとされるカテゴリ。熟考して戦略を立て、主に敵陣地を制圧することをめざす。
- 具体的なタイトル例
-
- クラッシュ・ロワイヤル
日本国内や世界のeスポーツ人口はどのくらい?
前章では格闘ものからスポーツ、パズル、頭を使い陣取り合戦を楽しむものまで、eスポーツに実に多様なジャンルがあることがわかりましたね。
そんなeスポーツの全世界、日本における競技人口の目安は以下の通りです。
eスポーツの競技人口目安
- 全世界
- 競技者は1億人超、視聴者は3億人を大きく超えると言われている
- 日本
- 競技者はおよそ390万人、視聴者はおよそ160万人と言われている
より具体的に競技人口をイメージするため、上記の数値を世界中で人気のスポーツである野球、サッカーと比較してみましょう。
全世界での野球の競技人口はおよそ3,500万人、サッカーではおよそ2億5,000万人です。
スポーツとしてまだまだ歴史の浅いeスポーツですが、既に野球の競技人口は上回っていますし、サッカーの競技人口にも追いつきつつありますね。
また、日本においての競技人口は少ないようにも感じられますが、390万人は日本の人口のおよそ3%に当たる数値です。
対して、全世界の人口に対してのeスポーツ競技人口の比率は1.2%です。この事実から、日本を含む世界中でeスポーツが競技として人気があり、多くの人に愛されていることが伝わってきますね。
eスポーツのトップ選手の年収は?賞金相場って?
eスポーツ選手の具体的な年収額や平均は、ほとんどの選手が公開していません。
そこで参考として、定期的に開催されているメジャーなeスポーツ世界大会の優勝賞金、賞金総額を見ていきましょう。
メジャーなeスポーツ大会の賞金総額の例
- The International Dota2 CHAMPIONSHIP…2021年大会の賞金総額は40億円以上
- World Cyber Games(WCG)…2019年大会の賞金総額はおよそ5.8億円
- Evolution Championship Series(EVO)…過去大会の賞金総額はおよそ1,000万円
- World Championship…優勝賞金はおよそ2億6,000万円
eスポーツの大会では、優勝者及び上位入賞者に対してのみ賞金を支払うのが一般的です。
日本の大会では上位入賞者1人につき数万~数百万円、海外の大会では優勝者1人に数億円単位と、非常に高額の賞金が支払われることも珍しくありません。
プロチームに所属しているトップクラスのeスポーツプレイヤーであれば、スポンサーからの給与やグッズの売り上げ、出演動画の再生回数に応じた報酬を手にしているでしょう。
これに加え、大会で優勝した場合には数億円単位の賞金を手にできると考えると、トッププロゲーマーの年収はかなり高額になると推測できますね。
ちなみに、いわゆるテレビゲームだけでなくスマホアプリゲームを種目とするeスポーツ大会も開催されており、2019年には国際大会で総額1億円もの賞金が支払われています。
近年では競技としてのeスポーツが確立されてきたため、eスポーツに関わるプロゲーマーとしての収入のみで生活をしている人も大勢存在します。
しかし競技人口が多く、競争率の高いeスポーツで賞金を十分稼ぐのは難しいのが現実です。仮にプロゲーマーになれたとしても、限られた回数しか開催されない大会で毎回優勝し、賞金を獲得し続けるのは至難の業です。
それだけで生活ができるほど、大会賞金を得続けられるプロゲーマーはほんの一握り。
ほとんどのプロゲーマーは、チームに所属してさまざまな仕事をこなすことによって生活費を賄っているのです。
eスポーツになるには英語力が重要?専門学校に通うメリットって?
プロゲーマーとしてチームに所属し、eスポーツの選手として活躍するために満たすべき必須条件は以下の2つと考えられています。
- eスポーツ選手になるための必須条件
-
- 大会に出場し、好成績をのこせるだけのゲームスキルがあること
- 普段の生活、またSNSでの発信内容において本人の素行に問題がないこと
特定の学歴・職歴は必要とされていません。実力があれば、ゲームスキルだけでトッププロゲーマーに上り詰めることができます。
ただ、日本人としてプロゲーマーをめざすなら、日本eスポーツ連合(JeSU)が発行するプロライセンスを取得したうえで、eスポーツの大会に出ることをおすすめします。
これは、日本のeスポーツ大会においてはJeSUのライセンスを取得していないプレイヤーへの賞金が減額される恐れがあるためです。
賞金を満額受け取るためにも、日本でプロゲーマーをめざすなら要件を満たし、数千円の登録料を支払ったうえで以下いずれかのJeSU認定ライセンスを取得しておきましょう。
- JeSU認定ライセンスの種類
-
- 13~15歳向けの「ジュニアライセンス」
- 15歳以上向けの「プロライセンス」
- チーム向けの「チームライセンス」
また、将来的により賞金額の高い海外の大会に出場することを考えると、英語を習得しておいて損はありません。
ゲームスキルに加え高い英語力があれば、現地のスポンサーやファン、大会スタッフと直接意思疎通を図れますし、コミュニケーションに困ることがなくなります。
TOEICやTOEFLなど、英語関連資格の試験勉強も兼ねて英語での会話力を高めましょう。
なおプロゲーマーになる方法としては、独学でゲームスキルと英語力を磨く他、プロゲーマー専攻科のある専門学校に通い、技術を身に付けるという方法もあります。
以下に、専門学校に通ってプロゲーマーをめざすことのメリットをまとめていますので、参考にしてくださいね。
- 専門学校を卒業し、プロゲーマーになることのメリット
-
- 現役プロゲーマーによる特別講義やイベントがあり、トップ選手と接点を持てる
- ゲームが好きなだけでは知ることのできない、実践的な攻略法を身に付けられる
- 選手やチームと接点を持てる分、在学中から多くのチャンスに触れられる
おわりに:ゲームスキルと英語能力を身に付け、eスポーツの世界大会でも活躍できるプロゲーマーをめざそう!
近年、新しいスポーツとして世界中から注目されているeスポーツ。プロゲーマーとは、そんなeスポーツの世界で活躍するプロ選手のことであり、動画出演やグッズの販売、大会入賞による賞金で生計を立てる人達のことです。特別な学歴や経歴は必要なく、実力があればのし上がれる世界ですが、ゲームへの愛だけで活躍できるほど甘くはありません。専門学校等でゲームスキルと英語力を身に付け、まずはプロチームへの所属をめざしましょう。
コメント