尿トラブルのうち、特に女性に多いとされているのが尿漏れと膀胱炎です。
今回は尿トラブルに悩む女性に向けて、女性に多い尿トラブルの症状や発症原因、症状改善に効果的なセルフケアや治療の方法まで、わかりやすく解説していきます。
- この記事でわかること
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- 尿トラブルの種類と異変のサイン
- 尿トラブルを引き起こす原因や生活習慣
- 市販薬と漢方薬の使い分けのポイント
- 女性の尿トラブルを相談できる診療科
トイレですっきり♪尿トラブルのない状態って?
「排尿」とは尿をせき止めていた尿道括約筋をゆるめ、膀胱の筋肉を緊張させ、尿を体外へ押し出すことで成立する排泄行為のことを指します。そして尿道括約筋を緊張させ、膀胱の筋肉がゆるめて一定量の尿を溜めておくことを「畜尿」と言います。
排尿と畜尿、この2つの機能が適切に働くことではじめて正常な排尿が行われるのです。
- 正常な排尿の定義
- 畜尿・排尿機能がともに適切に機能していて、膀胱にある程度の尿が溜まった時点で尿意をもよおし、本人の意図したタイミングで排尿ができる
- 尿トラブルがある状態
- 畜尿と排尿のいずれか、または両方の機能に異常が出たり、働きのバランスが崩れるなどして排尿に何らかの困難を抱えた状態
次項では、特に女性に多く見られるものを中心に尿トラブルの具体例を見ていきましょう。
くしゃみで尿漏れ?若い女性も尿トラブルお悩み中
尿トラブルのうち、代表的な症状としては以下が挙げられます。
- 頻尿
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- 昼間は5~6回、夜間は0~1回と言われる平均的な排尿回数より多く排尿する状態
- 飲酒や水分の多量摂取など合理的な理由がないのに、昼間に8回、夜間に2回と1日に計10回以上排尿をする場合に、頻尿と診断されるのが一般的
- 原因としては前立腺肥大や過活動膀胱、精神的な要因が大きいと考えられている
- 夜間頻尿
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- 頻尿の症状が特に夜間、就寝中に現れる状態
- 眠りについてから朝までに2回以上、排尿のために起床している場合に診断され、前立せん肥大や過活動膀胱が原因で起こるとされる
- 残尿感
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- 排尿をしても、まだ膀胱のなかに尿がのこっているような不快感が続く状態
- 実際に膀胱の中に尿がのこっているかは関係なく「尿が出きっていないような不快感」が現れるのが特徴で、前立腺肥大や膀胱炎、尿路感染症などが原因で発症する
- 切迫性尿失禁
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- 急な尿意を感じてトイレに駆け込むが、我慢できず尿をもらしてしまう状態
- 一般的に「尿漏れ」と呼ばれる尿トラブルで、加齢とともに男女双方に現れる症状
- 腹圧性尿失禁
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- 尿意を感じていないのに、お腹に力が入ったときに軽く失禁してしまう状態
- 階段を上り下りしたとき、重いものを持ち上げたとき、咳やくしゃみをしたときなど、日常のふとした瞬間に症状が現れる
- 高齢者は男女とも、また高齢者以外では女性に最もよく見られる排尿トラブル
次に、上記に挙げた尿トラブルの原因となり得る「過活動膀胱」、「骨盤臓器脱」の2つの疾患についても説明していきます。
- 過活動膀胱とは
- 頻尿や夜間頻尿の他、急に我慢できないほど強烈な排尿衝動に襲われる尿意切迫感や、切迫性尿失禁などの原因となっている疾患。40歳以上の男女のうち8人に1人、全国でおよそ800万人が発症しているとされる。
- 骨盤臓器脱とは
- 骨盤底筋や靱帯など、内臓を支えている筋肉が緩んだために、膀胱や子宮、直腸などが下がり膣から体外へ出てしまう疾患の総称。基本的には女性の体にのみ起こる。体外へ脱出した臓器が膀胱であった場合、頻尿や残尿感、排尿困難、腹圧性尿失禁などの尿トラブルに見舞われることがある。
加齢の他に出産、肥満によっても起こるのが特徴。なお疾患名は脱出する臓器により膀胱瘤や子宮脱、直腸瘤などと変化する。
尿トラブルの多くは過活動膀胱や前立腺肥大など、加齢による疾患が原因で発症します。しかし、人によっては膀胱炎や尿路感染症、骨盤臓器脱など、年齢に関わらず発症する疾患が原因で引き起こされるものもあります。
まだ若いから、女性だからと言って、尿トラブルと無縁だとは決して言い切れません。若い女性にも、出産や肥満をきっかけに尿トラブルを発症する可能性は十分考えられるのです。
接客・サービス業は膀胱炎になりやすいのはなぜ?
尿トラブルの原因となり得る疾患のうち、骨盤臓器脱と並び女性がかかりやすいと言われているのが、膀胱炎です。
- 膀胱炎とは
- 膀胱に細菌が侵入することによち膀胱に炎症が起こる急性疾患のこと。発症すると頻尿や排尿時の違和感、排尿痛、残尿感、尿失禁、血尿、下腹部痛などの症状を現し、悪化すると腎盂腎炎など腎臓感染症の原因ともなる。
男性に比べ、女性の方が急性膀胱炎を発症しやすい理由は、主に構造上の問題にあります。女性の尿管は男性に比べて短く、さらに体の構造上、膣や肛門と言った雑菌の繁殖源となる器官と隣接しています。
膀胱炎は尿管から膀胱へ細菌が侵入して発症するため、尿管が短く、雑菌源からも近い女性は、どうしても男性に比べて女性の方が膀胱炎の発症リスクが高くなってしまうのです。
また、近年では女性がフルタイムで働くことが一般的になり、仕事への責任感から尿意を我慢しやすくなったことも、膀胱炎の発症率が上がる一因だと考えられています。
特に、持ち場を離れることが難しい接客業やサービス業に従事する女性ほど膀胱炎にかかりやすいとされているため、注意が必要です。
尿トラブルを軽減するセルフケアとNGトイレ習慣
ここからは、女性に起こりがちな尿トラブルを軽減するための対策を紹介していきます。
まず自宅や職場でできる、尿トラブル軽減対策としては以下が挙げられるでしょう。
- 生活習慣を変える
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- 冬や冷房の効いた屋内では、汗をかかない分尿の量が増えやすいことを知っておく
- 水分や、利尿作用の強いカフェインの入った飲み物を摂りすぎないようにする
- 尿意がきたら我慢せずにトイレに行き、下半身を冷やさないようにして膀胱炎を予防する
- 栄養バランスを考えて食事を摂るようにし、膀胱が圧迫されないよう肥満を改善する
- 内臓を支えている骨盤底筋を意識的に鍛えて、骨盤臓器脱による尿トラブルを防ぐ
- 畜尿と排尿の機能を整えるため、尿意がないときに無理にトイレに行くのはやめる
- 十分に眠って疲れを取り、免疫力を高めて細菌感染に負けない抵抗力をつける
排尿はもちろん、水分や食事の摂り方を変えることも、尿トラブルの改善に効果的です。
自身の普段の生活習慣を見直し、できそうなところから変えていってくださいね。
トイレの習慣も要注意です。尿意を我慢したり、排尿時に過剰に力を入れたりするのはNGですので、習慣になっている人は気をつけてください。
なお、尿トラブルを軽減・解消するために避けるべきトイレ習慣としては、以下が挙げられます。改善のためにできることと一緒に、こちらも覚えておきましょう。
- トイレ習慣の改善方法
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- 尿意を我慢せずに、行きたいと思ったときにトイレに行く
- 尿意を感じていないのに、行きやすいタイミングだからと何度もトイレに行くのは控える
- 便秘気味で毎日トイレでいきんだり、おなかに強い力を入れて尿を絞り出している場合は控えるようにする
- 排尿が終わったあと、毎回いきんで残尿感を確認するのは控える
- 尿管への雑菌の侵入を防ぐため、排便の後は前から後へ肛門を拭くようにする
- ナプキンやおりものシートはこまめに交換する
市販薬と漢方薬どっちが尿トラブルにおすすめ?
次に、薬を使って排尿トラブルを改善・治療する方法について紹介していきます。
まず、病院にかからずにドラッグストア等で購入できる市販薬のうち、頻尿や残尿感の症状緩和に効果的な成分としては「フラボキサート塩酸塩」が挙げられます。
フラボキサート塩酸塩とは
- フラボキサート塩酸塩を含む市販薬の具体名
- アクティL、レディガードコーワ、ユリガードL
- 特徴
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- 特に膀胱の筋肉の緊張を和らげ、畜尿機能を助ける作用がある
- 膀胱に溜めておける尿の量を増やして尿意を感じるのを遅らせ、頻尿を改善する
- ただし、前立腺肥大が原因で起こる頻尿や残尿感を悪化させる恐れがあるため、原則として男性は服用できない
薬剤師に相談した上で服用を開始し、しばらく経過観察をすると良いでしょう。
なお、フラボキサート塩酸塩のような西洋医学的な薬を服用しても効果が実感できない場合は、医師や薬剤師と相談のうえ、漢方薬で治療していくこともできます。
以下に頻尿や尿漏れ、膀胱炎など、排尿トラブルで処方されることの多い漢方薬の名称をリストアップしていますので、参考にしてください。
- 尿トラブルに処方されることのある漢方薬
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- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
- 猪苓湯(ちょれいとう)
- 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 温経湯(うんけいとう)
- 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)
- 真武湯(しんぶとう)
- 猪苓湯豪四物湯(ちょれいとうごうしもつとう)
- 五淋散(ごりんさん)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
市販薬と漢方薬の服用、そして生活習慣の改善だけで尿トラブルが軽減する人もいます。2種類の薬を併用してみて、尿トラブルの症状改善を実感できたなら、しばらく薬の服用を続けて様子を見ましょう。
ただし、市販薬と漢方薬で症状の改善を実感できない場合は、尿トラブルを引き起こしている原因疾患の治療が必要です。できるだけ早く医療機関へ相談し、医師による診断と治療を受けることをおすすめします。
女性の尿トラブルは泌尿器科または婦人科へ
尿トラブルに悩む女性が受診すべき診療科目は、膀胱や腎臓を専門的に扱う泌尿器科、尿検査が可能な内科、または婦人科のいずれでもかまいません。
ただし長期間、または繰り返し何度も尿トラブルに悩んでいる場合は、腎臓や膀胱を専門分野とする泌尿器科を受診することをおすすめします。
対して下腹部痛など、排尿トラブル以外に膀胱炎か、婦人科系の疾患か判断がつかない症状がある場合は、まず婦人科を受診してみましょう。
もし、尿のトラブルで病院に行くのが恥ずかしいということであれば、風邪でも気軽に受診できる内科の医療機関で相談してくださいね。
おわりに:尿トラブルには生活習慣の改善と市販薬・漢方薬で対処を!それでもだめなら病院へ!
尿トラブルの多くは、加齢により男女双方に起こり得るものです。しかし膀胱炎になりやすく、出産や肥満をきっかけに骨盤臓器脱にもなりやすい女性は、男性に比べ若くして尿トラブルを発症しやすいとも言われています。尿トラブルを自覚したら、まずは生活習慣改善と市販薬・漢方薬服用のセルフケアで、症状の改善をめざしましょう。それでも良くならないときは泌尿器科、婦人科、内科いずれかの医療機関へ早めに相談してくださいね。
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