職場の人と普段の立場、仕事を離れて楽しめる場のひとつに社員旅行が挙げられます。しかし、旅行を年齢も好みも違う人達がみんなで楽しめる内容にするのは至難の業です。
そこで今回は、社員旅行の幹事さん・経理担当者が知っておくべき前提、旅行計画の立て方、経費の科目に至るまで、楽しい社員旅行にするためのポイントを紹介します。
- この記事でわかること
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- 社員旅行に期待される転地効果とは
- 福利厚生とするための日数や参加人数の条件
- 社員が安心して参加できる日程やお酒の席の計画
- 社員同士で楽しめる旅行のレクリエーション例
コミュニケーション活性化やリフレッシュなど社員旅行の目的って?
企業が社員旅行を実施する目的には、大きく以下の3つが挙げられるでしょう。
頑張ってくれている従業員に、リフレッシュできる時間をつくる
旅行には、心身を刺激しリフレッシュさせてくれる「転地効果」が期待できます。
社員旅行は、この転地効果を利用した企業から従業員への福利厚生の一環。いつも頑張ってくれている従業員に仕事から離れ、心身をリフレッシュさせる機会を提供することが、社員旅行の大きな目的なのです。
仕事や普段の生活から離れて、従業員同士で交流する機会をつくる
職場の上司・同僚との交流は、互いの立場や年齢を踏まえ行われるのが一般的です。このため話す内容は仕事、または職場のことがメインとなり、社員同士の人柄や趣味を知ることのできるような会話の機会は少ないでしょう。
そうした社員同士の距離を縮めるきっかけとなるのが社員旅行です。仕事から離れて過ごすことになる社員旅行では、従業員同士で職場での立場・利害関係を超えた交流をする、貴重な機会となり得ます。
他の業務を気にすることなく、人材の教育や研修を受けられる時間をつくる
旅程に何らかの研修や見学、視察が含まれる社員旅行であれば、従業員同士の交流やリフレッシュ以外に「学びの機会を提供する」目的も含まれてきます。
社員旅行に組み込まれる研修の内容は、工場・地域の視察やグループワークなどさまざま。研修中には普段の業務とは異なる体験から学び、かつ、フリータイムで観光やレジャー、従業員同士の交流を楽しめる社員旅行は、人材育成の貴重な機会ともなっているのです。
社員旅行の目的は、単なる娯楽や従業員同士で交流する機会の創出だけではありません。企業は人材育成や従業員同士の交流促進、またその先にある職場や労働環境の改善などさまざまな効果を期待して、社員旅行の機会を提供しているのです。
社員旅行は会社の福利厚生?交通費は旅費交通費?
社員旅行の目的、企業が社員旅行に期待することがわかったところで、ここからは社員旅行を企画・運営する経理担当者、経営者が知っておくべき費用の取り扱いについて解説します。
企業が従業員を招待するかたちで行う社員旅行の費用は、企業が負担するのが一般的です。
そして社員旅行の費用を、会社運営に必要な費用である「経費」として計上する場合、その名目は「福利厚生費」となります。
ただし、どんな旅行でも社員旅行となり、経費で行けるわけではありません。
社員旅行にかかる費用を税法上の経費、福利厚生費として計上するには「広く社会一般で行われている福利・厚生目的となり得る社員旅行」と認められる必要があるのです。
具体的には、最低でも以下3つの条件を満たす場合のみ社員旅行と認められ、社員旅行にかかった費用が福利厚生費として計上できるようになります。
- 社会通念上の社員旅行、税法上の福利厚生費として認められるための条件
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- 一人当たりの社員旅行費の企業負担額が10万円以内
- 旅行の期間は飛行機などの機内泊を覗、実質の滞在日数が4泊5日以内
- 旅行に参加する人数が、それぞれの職場ごとの人数の50%以上であること
なお福利厚生費の条件を満たす社員旅行の場合、旅行中にかかる交通費も「福利厚生費」「旅費交通費」となり、別途交通費として精算する必要はなくなります。社員旅行を福利厚生費として計上するためのポイントと併せ、覚えておきましょう。
福利厚生に当てはまらず課税対象となる社員旅行
前章で紹介した社員旅行の基準、社員旅行にかかった費用を福利厚生費とする条件を満たせない場合、企業が負担した社員旅行費は従業員への「給与」扱いとなります。
給与とみなされた場合、社員旅行に使った費用も課税対象となるため、注意が必要です。
以下に、社員旅行にかかった費用が福利厚生費として認められず、課税対象の給与となる例を紹介しますので、参考にしてくださいね。
福利厚生費と認められず、課税対象となる社員旅行の例
- 企業や事業所、部署全体を対象とせず、特定の従業員や役員のみを対象とした旅行
- 取引先への接待、慰安などを目的とした旅行で、経費科目上の交際費にあたる旅行
- 旅行に参加しない従業員に対し、旅行費用分を現金支給、つまり給与支給する場合
- 一人当たりの企業による費用負担額、参加人数の割合とも条件を満たすが、旅行の期間が4泊5日以上になる旅行
参加率が上がる社員旅行にするための工夫
社員旅行をするなら、福利厚生費の条件を満たし旅費を非課税にしたいところ。そして社員旅行費が福利厚生費と認められるには、対象とする事業所・部署からたくさんの参加者を募り、参加率を50%以上にすることが条件となります。
つまり、たくさんの人に社員旅行に参加してもらうことが、自社の節税に役立つわけです。
そこで以下からは、従業員が抱くマイナスイメージや不安を払拭し、社員旅行への参加率を上げるためのコツを紹介していきます。確認しておきましょう。
職場の人間関係から解放される、自由時間を適度に設定
従業員同士の交流を目的のひとつとする社員旅行ですが、一人で行動するのを好む人や、仕事関係の人と深く付き合いたくないと考える人も少なくありません。
そんな人たちにとって、職場の人と仕事外の時間まで行動を共にするのは苦痛となります。
このため、食事の前後や旅程のうち1日、半日など個人や気心の知れたグループで過ごせる自由時間を設けると、社員旅行参加へのハードルが低くなります。
お酌や一発芸など、前時代的な文化や風習は廃止する
数十年前まで、女性が役職者や男性にお酌をして回るもの、若手が一発芸をするなどの風習が、職場の飲み会での「暗黙の了解」「一般常識」とされてきました。
しかし、これらは女性従業員や若手従業員に大変な精神的負担、苦痛を強いるものであり、パワハラやセクハラのおそれがあります。社員旅行中、食事の度にこれらを「やって当然」と強要されるのでは、参加したくないと思われても仕方ありません。
できるだけたくさんの従業員に参加してもらい、社員旅行を楽しいものとしたいなら、会社としてこれらの文化を廃止してください。
具体的にはお酌、飲酒の強要を禁止する規則を設ける、社長はじめ経営陣・役員から「気を使わなくていいよ」などと従業員へ声掛けし、態度で変化を伝えるのが効果的です。
日程や席決めなど、各段階で従業員の精神的負担を減らす
土日や祝日、有給休暇は、社員がプライベートな時間を過ごせる貴重な時間です。
このため、せっかくの休日に社員旅行の日程を重ねると「せっかくの休日なのに仕事が入った」と感じ、従業員の社員旅行への参加意欲が低くなる傾向があります。
社員旅行の日程はできるだけ休日と重ならないよう配慮し、どうしても重なるなら代休や手当を支給するなどして、従業員の不満感・不公平感を軽減しましょう。
また精神的負担を軽減するため、普段の仕事を連想させない工夫をすることも重要です
例えば移動中、食事中に仕事の話にならないよう、隣や近くの席にはあまり交流のない部署・役職の人同士で組み合わせてみてください。
精神的負担だけでなく、経済的負担も従業員に負わせない
社員旅行に行きたくないと考える従業員の多くは「プライベートな時間やお金まで、会社や仕事に使いたくない」と考えています。
このため精神的負担と併せ、社員旅行に伴う経済的負担も軽減するのが、参加率アップのコツとなります。
社員旅行を実施するなら移動や宿泊の費用はもちろん、食事やレクリエーションの一部費用まで、企業が率先して負担することを基本としましょう。
レクリエーションの内容は、すべての性別・世代に配慮して設定する
年齢や性別、個々人の好みにより楽しめるレクリエーションの内容は異なるものです。
社員旅行中のレクリエーションは、以下のポイントを参考にさまざまな従業員が楽しめる内容・時間になるよう工夫してください。
- 事前の練習や準備に時間がかかるものは、一部参加者の負担になるので避ける
- 飲み会やカラオケは定番だが、年齢や上下関係により好き嫌いが分かれるので避ける
- 従業員の各年代、性別をターゲットに複数のレクリエーションを用意すると良い
- 複数のレクリエーションを用意したうえで、好みで選択できるようにすると尚良い
超豪華から無人島も!ユニークな社員旅行の魅力
ここからは、各企業が実施するユニークで魅力的な社内旅行の例を見ていきましょう。
ケース1:未来工業の超豪華社員旅行
岐阜県の電気・設備資材メーカー未来工業では、5年に一度社内旅行を実施しています。
「超豪華」として知られる未来工業の社内旅行の概要・特徴を、2015年のイタリア旅行を例に以下に紹介します。
- 費用は全額会社負担、宿泊先は4つ星以上の評価を受けるホテルのみ
- 世界遺産を巡る13のコースを用意し、各社員が好きなコースを選べるようにした
- 旅行中に撮る写真でコンテストを開き、「新会社の社長就任」「有給休暇1年間」「有給休暇50日」などの豪華賞品を用意
社員に喜び、楽しんでもらうこと、また従業員同士だけでなく従業員と会社との交流に重きを置いた、ユニークな社員旅行と言えるでしょう。
ケース2:アクティビティ、非日常感重視の無人島旅行
社員旅行netが自社サイトユーザーに実施したアンケートによると、社員旅行参加者が「楽しかった」とした旅行の内容は、以下のような非日常感を味わえるものが大半でした。
- 普段は体験できない、見ることのできない素晴らしい景色に出会えた
- 大自然や地元の人との触れ合いが楽しかった など
参考:「社員研修にもおすすすめ!無人島で社内イベントを企画してみよう」
上記から普段できないこと、見られないもの、出会えない人と過ごす時間は、社員旅行を楽しいものとする有効材料だとわかりますね。
この非日常感という視点から、近年の社員旅行先、オプショナルツアー先として人気を集めているのが無人島です。
会社で島を貸し切り、年齢や立場に寄らず大人が全力で遊ぶ経験はなかなかできません。
そんなまさしく非日常的な、現代日本では味わいにくい不便さもあるなかで、以下のような各種アクティビティを楽しむ無人島での社員旅行はかけがえのない思い出となるはず。
アウトドア好きが多い会社なら、海外や観光地などの一般的な旅行先よりも、無人島への社員旅行を企画した方が魅力を感じてもらえるかもしれませんね。
おわりに:福利厚生費の条件を満たし、幅広い年齢・性別が楽しめる社員旅行を企画しよう
社員旅行は、企業から従業員へ日頃の感謝の気持ち、今後の期待を現すひとつの方法です。このため、社員旅行にかかる費用も企業側が負担するのが一般的ですが、社員旅行の費用が非課税対象の福利厚生費として認められるには、いくつかの条件があります。せっかく社員旅行を実施するなら、できるだけたくさんの従業員に参加して楽しんでもらい、節税にも役立てられるよう本記事を参考に企画・準備していきましょう。
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