原因不明の倦怠感、集中力の低下は、脳が疲労し機能が低下しているためかもしれません。筋肉の疲れであればマッサージなどを取り入れてみるのもひとつの方法ですが、脳の疲労はどのように解消するのがよいのでしょう。
今回は脳が疲れているとはどんな状態なのか、現れる症状や発症原因、放置することのリスク、そして脳疲労を回復させる方法まで脳疲労についてまとめて解説していきます。
- この記事でわかること
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- 脳の機能に異常が生じ、疲れを引き起こすメカニズム
- リラックスを妨げる自律神経の乱れ
- 認知症や過労死など脳疲労による健康リスク
- 睡眠時無呼吸症候群や更年期障害の悪影響
- 自然音や雅楽など脳を癒す音楽の種類
脳が疲れる「脳疲労」の原因や症状って?脳の疲れをセルフチェック
脳疲労とは、脳が疲れた状態になること、またこれにより現れる諸症状のことと考えられています。脳疲労が起こるとさまざまな感覚が鈍り、まずは味覚や嗅覚など、五感に異常が起きます。さらに症状が進むと辛い便秘や夜に寝付けない、朝は起きられないなどの睡眠障害が起こり、やがては集中力・記憶力の低下など、うつ病や認知症に似た状態になるのが特徴です。
脳疲労発症が発症する主な原因は、外部から入ってくる情報の過多、そして脳内の大脳新皮質・大脳辺縁系・間脳の連携不良だと考えられています。
- 大脳新皮質
- 言語や知性を司り、人間の理性として働く部分
- 大脳辺縁系
- 「休みたい」「食べたい」など、本能的な欲求・感情を司る部分
- 間脳(かんのう)
- 大脳新皮質と大脳辺縁系の両方から指示を受ける部分
大脳は脳の司令塔として、血流や心拍・呼吸など生命活動に必要な機能のコントロールから、仕事や運動を進めるための心身の働きまで、絶えずコントロールをし続けています。間脳は大脳辺縁系からくる本能・生理的欲求と、大脳新皮質からくる理性的な指示の両方を受け取ったうえで指示を体に出し、自律神経や行動を管理しています。
しかし、大脳辺縁系と大脳新皮質からくる情報に大きな矛盾が生じるときがあります。例えば運動や仕事で心身がとても疲れているとき、大脳辺縁系は「休もう」と伝えてきますが、それが難しい状況では大脳新皮質は「働き続けなきゃダメ」と命令してきます。
このように大脳辺縁系と大脳新皮質からくる情報が異なる場合に間脳は混乱し、五感や睡眠、消化器に関わる機能に異常をきたすのです。この状態が、脳疲労です。脳疲労を発症すると、人間の生命活動を司る自律神経がうまく働かなくなり、常に交感神経が優位な状態が続きます。
自律神経を成す2つの神経
- 交感神経
- 興奮、覚醒状態を司る自律神経の一種で、起床時や仕事中に優位になる
- 副交感神経
- 休息、睡眠状態を司る自律神経で、心身がリラックスしたとき優位になる
脳疲労により五感や消化器の異常、睡眠障害が起こるのは、自律神経の切り替えがうまくいかなくなり、ずっと心身が緊張した状態になるためなのです。もし疲労感が解消されず慢性的な不調を感じている場合、あなたの脳は疲れているのかもしれません。以下に、脳の疲労度をはかれるチェックリストをまとめましたので、どれくらい当てはまるか確かめてみてくださいね。
脳の疲労度チェックリスト
- 寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚める
- 必要もないのに、朝早く目が覚めてしまう
- あまり食欲が沸かず、便秘がちだ
- 食事に味をあまり感じず、おいしくない
- あまり体を使っていないのに、なぜか毎日へとへとだ
- 考えがまとまらず、常にイライラしている
- なぜか気持ちが沈み、不安でたまらない
- 現在にも、将来にも希望を持てない
- 自分は無価値な人間だと、強く思う
上記のうち、1つでも毎日続く症状がある場合は、脳が疲れていると考えられます。
現代人の脳は働きすぎ!疲労を放置するとうつ病などの健康リスクも
脳疲労がわたしたちの心身に及ぼす悪影響、デメリットとしては以下が挙げられます。
- 生活習慣病にかかりやすくなる
- 味覚や嗅覚が鈍くなると、味を感じようとして糖分・塩分の高い食事を好むようになります。また、味覚異常になると食欲の抑制が難しくなるため、どうしても食べる量が増えて肥満や糖尿病・高血圧・高コレステロール血症など生活習慣病の発症リスクが高くなるのです。
- うつ病を誘発することが多い
- 満足に眠れないストレスは、うつ病を発症するきっかけとなり得ます。脳疲労により眠れないこと、そして眠れないことで蓄積される心身の疲労は、わたしたちの体だけでなく精神をも蝕むと理解しておきましょう。
- 将来的な認知症の発症リスク上昇
- 認知症の一因は、脳神経の死滅により記憶機能が障害されることだと言われています。脳が疲れた状態が続くと脳の神経細胞に不要な物質が蓄積され、脳が炎症したような状態になることがわかってきました。この脳の炎症が脳細胞死滅の要因となるため、脳疲労の症状がある人はそうでない人に比べて脳の老化が早く、将来的な認知症リスクも高くなると言われているのです。
- 過労死のリスクを高める
- 感覚が鈍り、心身の疲労を感じにくくなるのも脳疲労の恐ろしい特徴です。真面目で責任感が強い人の場合、自律神経の不調や感覚の鈍化など脳疲労の症状にも気付くことなく無理を重ね、30~40代で過労死に至る可能性もあります。
上記のような脳疲労のデメリットを避けるには、意識的に脳を休めることが重要です。脳はわたしたちが働いているときも、寝ているときも絶えず働き続けていますから、意識的に時間を作って休める必要があります。次章からは脳を休めるためにわたしたちができることを、具体的に見ていきましょう。
【マインドフルネス・瞑想】疲れも気持ちもリフレッシュさせるマインドフルネス瞑想の方法
脳を休める効果的な方法として、まず紹介するのが「マインドフルネス瞑想」です。マインドフルネスとは、他者からの評価・判断を考えずに、いま自身が感じている感覚や経験に集中して過ごすことをいいます。
そして、マインドフルネスを叶えるための効果的な手段のひとつが瞑想です。考え事をしないで頭の中を空っぽにし、いま聞こえている環境音や心臓の音、呼吸などに集中して一定時間を過ごします。瞑想をし、マインドフルネスを行うことのメリットとしては以下が挙げられるでしょう。
マインドフルネス瞑想のメリット
- 瞑想中に出るα波の作用で、ストレスが軽減され自律神経が整う
- 過去の嫌な思い出、将来への不安やマイナスな感情を軽減し、ストレスを和らげる
- ストレスや不安が軽減した結果、ポジティブシンキングができるようになる
- 今やっていることに意識を向ける習慣がつくため、集中力アップが期待できる
- 脳の疲労が緩和されることで、睡眠障害が改善しよく眠れるようになる
- 加齢による細胞の劣化、老化を抑え、生活習慣病の発症リスクを減らす など
マインドフルネス瞑想の基本は、安静にして呼吸法を実践することにあります。以下に、基礎的なマインドフルネス瞑想のための呼吸法を紹介しますので、実践しましょう。
マインドフルネスのための呼吸法
- 背筋を軽く伸ばし、背もたれから背中を離した状態で椅子に座る
- 足は組まず、両手は太ももの上に置き、お腹の力を抜いて目を閉じる
- 足やお尻、手がそれぞれ床や椅子、自分の体に触れている感触に意識を向ける
- 体全体が、重力で地球に引っ張られている感覚を確認する
- 鼻、胸、おなかの動きや空気が通る感触など、呼吸に関わる感覚に意識を向ける
- 自分が気持ちよく感じる深さ、タイミングで空気の流れを感じながら呼吸する
- 基本的には呼吸が自然と始まるタイミングを待つようにすると良いが、意識して息がしづらいようなら、呼吸の回数を数えてもOK
- もし将来への不安など雑念が浮かんだら、気づいた時点で呼吸へ意識を戻す
じっとしていることが苦手で瞑想が難しいようなら、体を動かしながらできる「マインドフルウォーキング」がおすすめ。以下に、マインドフルウォーキングの手順も紹介しますので、参考にしてくださいね。
マインドフルウォーキングの方法
- 手は前、または後で軽く組み、足は肩幅くらいに広げて立つ
- 目は半分だけ開くイメージで開けたまま、3~4m先の地面を見る
- 転倒しないよう、普段よりかなりゆっくりめの速度で歩き始める
- かかと、つま先、重心の移動と歩く動きと足の感覚に集中していく
- そのまま歩き続け、右足、左足それぞれに入れ替えながら意識を集中させる
- もし将来への不安など雑念が浮かんだら、気づいた時点で足へ意識を戻す
なお非常にゆっくりした動作で行うこと、また他の人にぶつかると転倒の危険もあるため、マインドフルウォーキングはまずは室内で挑戦しましょう。
【睡眠】良質な睡眠を妨げる原因とは?睡眠時無呼吸症候群など病気の影響も
脳疲労軽減のための有効策として次に紹介するのは、睡眠の質の改善です。睡眠中、わたしたちの脳は1日に受けた膨大な刺激や情報を整理しています。必要と判断されたものは圧縮して保存し、不要と判断されたものやストレスは消去して、脳組織の修復・回復を行っているのです。
しかし睡眠による脳細胞の修復・回復は、以下のような質の悪い睡眠では十分に行えません。
- 質の悪い睡眠の特徴
- なかなか寝付けず、夜中に何度も起きてしまう
- 必要以上に朝早く起きてしまい、二度寝しようとしてもできない
- 時間的には十分に寝ているはずなのに、起きたとき疲労感があり寝た気がしない
なお脳疲労以外にも、睡眠時無呼吸症候群や更年期障害など、他の疾患により睡眠の質が低下し、脳疲労を引き起こす可能性もあります。
寝ている間の息苦しさや頻尿、急な発汗、肥満などは、睡眠時無呼吸症候群または更年期障害の症状かもしれません。心当たりがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
また、ストレスが原因で末梢血管が収縮し、血行不良になって起こる冷えも睡眠障害の原因のひとつです。湯たんぽや暖房器具の使用、お風呂にゆったり浸かるなどの冷え対策も睡眠の質向上に効果的ですので、併せて試してみてくださいね。
【音楽】脳を休ませる音楽ジャンルとおすすめ音楽・サウンドアプリ
最後に脳と心身の緊張を和らげ、リラックスさせるのに役立つ音楽ジャンル、音楽アプリを紹介していきます。まず、脳と心身のリラックス・リフレッシュに適した音楽ジャンルは以下の通りです。
脳疲労に効果的な音楽ジャンル
- 海の音や鳥、虫の鳴き声などが奏でる独特のゆらぎに癒される自然音
- ハープやピアノなどの楽器が、穏やかな曲調を奏でるヒーリングミュージック
- 自然音と同じく癒し効果のあるゆらぎが漢字らえる、クラシック音楽
- 琴や笙(しょう)など、日本古来の楽器で演奏される雅楽
以下からは脳を休ませたいときの曲探しに役立つ、おすすめの音楽アプリを計3つ紹介します。あなたが好む音楽ジャンルに合わせて、活用してください。
- 1:Somnus(ソムナス)
- 睡眠の質を計測・管理・改善できるスマホアプリ。寝る前にアラームをセットし、枕元に置いておけば睡眠の質を計測してくれます。また、計測以外にも睡眠の質向上に役立つ機能があるのも特徴。そのひとつとしてヒーリング、睡眠、自然・季節、日常の音、楽器の6つのカテゴリで計50曲ものレパートリーを誇る、安眠・快眠音楽の聞き放題機能を有しています。
- 2:Relax Melodies
- 入眠の促進、リラックス、良質な目覚めなど睡眠の質の向上、また睡眠障害によって起こるさまざまな不調の緩和が期待できるスマホアプリ。無料で聞けるサウンド・ミュージックの他、コンポーザー機能を使えば52種類ものサウンドやメロディーを組み合わせ、自分だけの入眠導入曲やアラーム音が作成可能です。また瞑想プログラムを利用すれば、100種類以上のパターンから、睡眠の質向上や脳疲労軽減に役立つ瞑想方法の指南も受けられますよ。
- 3:Spotify
- 4,000万曲以上を視聴できる、音楽ストリーミングサービス。クラシックやスリープ系など、脳疲労の改善や睡眠導入に役立つプレイリストも複数あるので、リラックスしたいときにも役立ちます。
おわりに:意識的に休ませないと、脳は疲れてしまう!アプリなども上手に使い、脳疲労を予防しよう
わたしたちの脳は常に外部から刺激を受け、考え、心身に指令を出し続けています。このため無理をすると、脳内で受け取る信号に矛盾が生じ、脳が疲れ機能低下を起こしてしまうのです。脳疲労になると五感の鈍化や睡眠障害、消化器障害など心身にさまざまな不調が起こり、仕事や日常生活に支障をきたします。瞑想を習慣化したり、音楽の力を借りて睡眠の質の向上をめざし、意識的に脳を休める時間を作ってくださいね。
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