子どもが食事をあまり食べない、または特定のものしか食べてくれないと、脳や体の発育に影響するのではと心配になりますよね。毎日の食事メニューや栄養バランス、おいしい味付けを考えるのは一苦労。
そこで今回は、子どもの食が細い場合に考えられる原因と食事量をアップさせるためにできる工夫、医療機関を受診すべき目安などをまとめて解説します。
- この記事でわかること
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- 幼児の食事の主食、主催、副菜などの理想的なバランス
- 保育園や幼稚園など家の外なら食べられる理由
- 子どもに無理やり食事を食べさせることによる弊害
- 食べすぎを予防するために家族が意識したいこと
- 子どもの食事の悩みをプロに相談する目安
幼児の一日の食事量の目安って?食欲が低下する原因とは
東京都幼児向けバランスガイドによると、幼児が1日に摂取すべきとされる食事量の目安は以下の通りです(単位は「SV(サービング)」という、料理を1つ、2つと数える新しい単位。料理グループごとに1つの目安量が決められており、これを基準に必要量を換算)。
1日分の幼児の食事量目安
- 主食は3~4つ、炭水化物の摂取量目安
- 「1つ」の基準量はごはんなら子ども用のお茶碗で1杯、おにぎり1個、食パン1枚
- ただし、スパゲティやかけうどんの子ども1人前は「2つ」として換算
- 主菜は3つ
- 肉や魚、大豆料理などタンパク質の摂取量目安
- 「1つ」の基準量はウインナーのソテー2本分、目玉焼き1個、納豆1パック、冷奴1人前
- なお刺身、焼き魚、煮魚、魚のフライ1人前は「2つ」、鶏のから揚げや豚肉の生姜焼き、ハンバーグ各1人前は「3つ」分と換算
- 副菜は4つ、野菜やキノコ類、いも類、階層料理などの摂取量目安
- 「1つ」の基準量は冷やしトマト3つ、ほうれん草のお浸しや小松菜の炒め煮、カボチャの煮もの、根菜の味噌汁やレタスとキュウリのサラダなど、和惣菜1人前
- ただしコロッケなど、揚げ物の副菜は「2つ」分として換算
- 牛乳・乳製品は2つ
- 「1つ」の基準量はヨーグルト1パック、スライスチーズ1枚、牛乳ならコップに半分
- 果物は1~2つ
- 「1つ」の基準量はももやみかん、柿なら1個、りんごや梨なら1/2個、いちご6個、バナナ1本、ぶどうなら半房
親が主観的に少ないと感じていても、上記の目安量を食べられているなら幼児にとっては十分な食事量だと言えるでしょう。なお子どもが十分に食事を食べない、食が細い理由や原因としては、以下が考えられます。
- 子どもが睡眠不足で消化不良が起き、空腹を感じず食欲が減退している
- 十分に体を動かしていないためにお腹が空かず、食べたいと思わない
- お菓子やジュースなど、食事以外に間食を摂りすぎてお腹が空いていない
- おなかが痛い、風邪気味などの体調不良が原因で、食事量が減っている
- 生まれつき少食で、本人がお腹いっぱい食べていても食が細く見える
食が細い子は発育が心配?元気に食べてもらうためのポイントは?
子どもの食が細い場合、最も気になるのは発育への影響です。しかし、なかには家では食が細いものの幼稚園からは「たくさん食べています」との報告を受ける場合もあるでしょう。子どもは幼稚園や学校など、家以外の場所で食べることで以下の心理が働き、食欲が増す場合があります。
- 友達と同じように、自分も食べてみたくなるから
- 先生や友達の前で良いところを見せたくて、頑張って食べようとするから
この場合は、外で食べる量と合わせて1日に必要な栄養量が摂れていれば心配ありません。体が成長してくれば自然と食べる量も増えてくるでしょうから、見守ってあげてください。
対して、家でも外でも総じて少食な場合は、非常に心配になりますよね。しかし先述したように、大人から見て不十分でも子ども本人にとっては十分な量を食べているケースもあります。本人が満足しているのに大人が無理に食べさせると、かえって子どもが食事に嫌なイメージや恐怖心を持ち、食欲が低下する原因ともなります。成長曲線を大きく下回らなければ問題ありませんので、以下の対策のみ行い、様子を見ましょう。
家でも外でも少食で、心配な子どもへの対策
- 本人が満足しているなら、一旦食事を切り上げてOK
- 次の食事、おやつの時間まで間食をさせず、しっかり空腹を感じさせてみる
量が少ないことに加え、特定のものしか食べない子どもの偏食に悩む親御さんも多いと思います。栄養バランスが偏り、発育への影響が懸念される偏食ですが、やはり嫌がるものを無理に食べさせようとするのはおすすめできません。食の好みが固定化するとされる6~7歳までを目標に、以下の対策をとって少しずつ食べられるものを増やし、偏食の改善をめざしましょう。
偏食改善のためにできる対策
- 嫌いな食べ物を少しでも口に入れたら褒めてあげる
- 保育園や幼稚園などで食べているなら、家では無理に食べさせない
- 好きなものばかり与えるのを避け、食卓に並べる食品の種類を徐々に増やしていく
- 食べるのを嫌がり、大騒ぎしても、その場しのぎで好きな食べ物を与えたりしない
- 一度に食べる量を減らす、好きなものと一緒に与えるなど条件をつけて与えてみる
- 一緒に作ったり、調理したりして食材への認識を変えてあげる など
子どもの食が細いのは食物アレルギーや「噛む」のが苦手なせいかも
単なる好き嫌い、食わず嫌い以外にも、食物アレルギーが原因で子どもの食が細くなっている可能性もあります。
- 食物アレルギーとは
- 特定の食べ物が原因、抗原となって発症するアレルギー症状のこと。口腔内や胃腸など消化管粘膜内でアレルギー性の炎症反応が起き、皮膚や気管支のかゆみや違和感、腫れ、咳、呼吸困難などの症状が起こる。
特に発症しやすいとされる食物は卵、乳製品、小麦、大豆、エビ・カニなど甲殻類、そば、ナッツ類、果物、魚介類などです。
子どもが食べたがらなかった日に毎回体調が悪化するようなら、食物アレルギーが原因かもしれません。気になるようなら、一度かかりつけの小児科医院でアレルギー検査を受けると安心ですよ。
また、噛み合わせが悪いためにうまく食べ物を噛んだり、飲み込めないために食事を嫌がる子どももいます。子どもの噛む力、飲み込む力が弱い原因としては、以下が考えられるでしょう。
- 反対咬合、不正咬合になっている
- 離乳がうまくいっておらず、噛むことや飲み込む機能が十分に発達していない など
この場合は歯科医師に相談のうえで何らかの治療を受けるか、食事を歯の生え方に合わせて離乳食に近いものに戻し、噛む力と飲み込む力を鍛えなおしてあげてください。段々と噛むこと、飲み込むことを理解し、上手に噛めるようになってきたら、段階的に食事の内容を変えていくのがおすすめです。
子どもの食欲旺盛もちょっと心配?リスクはあるの?
少食以外に、あまりに食欲旺盛で食べすぎてしまう子どもにも健康上のリスクはあります。まだまだ満腹中枢が未発達な子どもは、お腹がいっぱいになっていることを自覚できずに食べすぎ、肥満に陥ってしまうことがあるのです。
肥満により、子どもに起こる健康上のリスク
- 子どものうちから糖尿病などの生活習慣病になり、命にかかわる疾患の発病リスクが高くなる
- たくさん食べること、動かないことが習慣化し、脂肪がつきやすい体質になる
- 大人になっても身に付いた生活習慣を変えられず、肥満体形からも抜け出せないまま健康を害してしまう
- 体形や運動が苦手なことへのコンプレックスから、自分に自信を持てず苦しむ
子どもの食べすぎを防ぎ、適量を食べる習慣を身に付けさせるには、食べすぎに結びつく食習慣を避け、以下の対策を取ると良いでしょう。
子どものために避けるべき、食べすぎに結びつく習慣
- 外食や総菜など、味付けが濃く脂っこい食事ばかり与える
- 食事の時間が不規則であったり、大皿に盛って提供している
- テレビを見ながら食べるなど、食に集中できない環境で食事を与えている
- 市販のお菓子や、甘い飲み物を頻繁にたくさん与える
- 夕食後、家族でおやつも食べている
子どもの食べすぎと肥満を防ぐためにできる対策
- 具材を大きくするなどして、たくさん噛まないと飲み込めない料理を作る
- 満腹を感じるまでに食べすぎてしまわないよう、とろみのあるカレーやシチュー、丼物などのメニューは避けるようにする
- 献立はメインの一品だけにするのではなく、野菜や豆類、魚介類、こんにゃくなど噛み応えのある食材を使った副菜も取り入れる
- 食前と食後のおやつを食べるのはやめて、栄養バランスに配慮し食事の品数を増やす
- 揚げ物など油脂をたくさん使う調理法は避け、蒸す、煮る、焼く調理法を選ぶ
- あらかじめ1回で食べる量を減らし、おかわりさせることで満足感を演出する
- 十分に食べたと思ったら「お腹いっぱいになったね」と声掛けする
食が進まないのは調理法に原因が?レシピで工夫できること
子どもは特定の食感のものへの食べにくさ、苦手意識から、好き嫌いをすることもあります。野菜を極端に嫌う子どものなかにも、味や匂い以外に食感など、口の中に感じる違和感への苦手意識から食べるのを嫌がり、食が細くなっている可能性が考えられるでしょう。この場合は、子どもの趣味嗜好に合わせて調理法を工夫し、食感を変えるのが効果的です。
以下に、食材や食感の好き嫌いからくる少食、ムラ食い改善のためにできる調理・食事の準備の工夫を紹介しますので、参考にしてくださいね。
好き嫌い、ムラ食いによる小食改善のためにできること
- 子どもが興味を持つよう、食材の切り方や味付け、盛り付けの彩を工夫する
- 食感が苦手なようなら、生や茹でたもの、煮崩したもの、焼いたもの、揚げたものなどさまざまなパターンで調理して食べさせてみる
- ケチャップやマヨネーズ、バター、カレーなど子どもが好む味付けにしてみる
- 苦手な食材は細かく切り、好きな食材や料理と混ぜ合わせるなどして出す
- 買い物や調理を子どもと一緒に行い、食べ物や食事への興味を高めさせる
- しっかり空腹を感じてから食事に臨めるよう生活リズムを見直し、間食は控える
- できるだけ体を動かす遊びをさせて、カロリーを消費しお腹を空かせる
- 子どもが食事に集中しているときは邪魔せず、本人のペースで食べさせてあげる
- 大人が何でもおいしそうに食べ、子どもに手本を示す
食欲がない・あり過ぎる子どもは病院で治療が必要?
子どもの発育には食事以外にも、生まれつきの体質や感染症などによる「器質的疾患」、虐待やネグレクトの有無などによる「社会心理的要因」も影響します。このため、親から見て少食に見えるからと言って、必ずしも問題があるとは限りません。ただし、以下いずれかの条件に当てはまり心配な場合は、医療機関に相談したり、自治体の保健師などから栄養指導を受けても良いでしょう。
- 冒頭で述べた幼児が必要とする1日当たりの摂取栄養量を大幅に下回る、または上回る量の食事を摂っている
- 成長曲線から大きく外れていて、医師から体重減少や肥満の指摘を受けたことがある
おわりに:健康上の問題がなければ、生活習慣の改善と工夫で少しずつ子どもの食べられるものを増やしていこう
親から見て少食に見える子も、健康上の問題があるとは限りません。栄養学的に見て十分に食べていたり、本人がお腹いっぱい食べていて成長曲線の範囲内なら、少食でも問題ないでしょう。ただ、1日に必要な栄養摂取量を大きく逸脱していたり、体重から健康上の問題を指摘されたことがあるなら、生活と食習慣の改善が必要です。子どもの健康のため、医師や保健師のアドバイスも受けながら食材の調理法や食事の与え方を工夫しましょう。
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