社会人留学はキャリア形成やスキルアップを目指す人に人気です。しかし仕事や金銭面の不安があることもたしかです。外国で言語やビジネスなどを効率的に学ぶには、どんな準備や手続きが必要なのでしょう。
この記事では、社会人留学に必要な手続きや費用の相場、おすすめの留学エージェントを紹介します。
- この記事でわかること
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- 専門的な学習、語学、ワーホリなど目的ごとの海外留学の特徴
- 社会人留学は貯金がどのくらい必要なのか
- 会社を休職・退職して社会人留学するときの手続き
社会人留学は将来のためになる!どんな目的で海外に行くの?
社会人留学のスタイルや目的はさまざまです。最も多いスタイルは、下記の3つです。
- 学士・博士号などの取得を目指す社会人留学
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- キャリアアップを踏まえて、海外で国際教養学・芸術学・経済学などの専門分野を学ぶ
- 高度な語学力はもちろん、専門分野の知識も身につくので就職に有利とされる
- 明確なキャリアプランが決まっている人に特におすすめ
- 企業・NPO法人などでのインターンシップ
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- 即戦力採用で、ホテル・レストラン・カフェなど、サービス業や飲食業が多い
- オフィスワークのインターンシップの場合、高い語学力が求められる
- 滞在費用を賄いながら経験を積み、海外のビジネスマナーを直接体感できる
- 海外での就労経験を積みたい人におすすめのタイプ
- スキルアップを目指す社会人留学
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- 留学を通して語学力や専門知識を習得するのが目的
- 語学や文化など現地で直に学ぶことができる
- 実体験を通してスキルを磨きたい人におすすめ
上記の方法などで社会人留学をして学習やスキルアップをします。インターンシップの期間は募集職種や条件によってさまざまですが、一般的には半年〜2年くらい、長い場合で4年くらいが多いようです。
進学のための社会人留学
進学のための留学の場合、既に学士を取得していてさらに上を目指すため、大学院に進学するという選択肢もあります。特に、経営学の修士号を取得できる「MBA留学」は非常に人気ですが、大学院進学にあたっては高い語学力が必要なため、ほとんどの場合はいきなり大学院に進学するのではなく、「院進学コース」に入学して語学力を習得することが必要です。
NPO・NGO法人のインターンシップで社会人留学
企業のほか、NPO・NGO法人でインターンシップをする場合、基本的にボランティアとなりますが、代わりに求められる語学力がそれほど高くありませんので、ハードルも企業でのインターンシップより低めです。ボランティア活動を通じ、地域の人とコミュニケーションを取りながら異文化交流をしたい、という人におすすめです。インターンシップの期間はそのプロジェクトによります。
スキルアップのための社会人留学
スキルアップでは主に語学力を磨くために社会人留学をする人が多いです。
たとえば下記のような方法で、留学先で語学力を磨きます。
- 語学留学をする
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- 語学学校や大学附属の語学コースに入学するときは、高い英語力は問われない
- レベル別学習なので、自分に合った語学学習を始められる
- 語学留学なら、英語力の証明に使えるTOEIC・TOEFLなどの試験対策コースや、大学への進学準備コースも用意されていることが多い
- 会議やプレゼンで使える英語を学ぶビジネス英語コース、転職で有利になる試験対策コースもおすすめ
- ボランティアをしながら、語学を学ぶ
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- チャイルドケア(児童教育)や介護など、ボランティアとセットになっている語学留学も
- 1〜2週間で終わるものから、1年程度のものまでさまざま
- 保育士・教員・介護士の経験があると非常に有利
語学学校に入学した場合、放課後や週末に参加できるバーベキュー、マリンスポーツ、フラワーアレンジメントなど語学学習以外のイベント、アクティビティも企画されています。他の留学生と交流したり、身体を動かしてリフレッシュしたりすることもできますので、現地の景色や文化、食材などを楽しみながら語学を学べるでしょう。
ワーホリ(ワーキングホリデー)のメリット
スキルアップとリフレッシュを組み合わせた「ワーキングホリデー」という社会人留学のスタイルもあります。
- ワーキングホリデーとは
- 2国間の協定により、青年の異文化交流や相互理解を促す留学制度。自由度が高いのが特徴で、現地でアルバイトをしながら語学学校に通い、合間にボランティアや旅行をすることも可能。
自分で自由にプランを組めますので、異文化交流を楽しみリフレッシュしながら、のんびり語学学習したい人におすすめのタイプです。
ワーキングホリデービザの有効期間はほとんどの国で1年ですが、オーストラリアなど期間を延長できる国もあります。ただし、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 充分な貯金が必要
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- ワーキングホリデーでは、現地のアルバイトで生計を賄わなくてはならない
- すぐに採用されないケースもあるので、3ヶ月くらいは働かなくても生活できる程度の貯金を用意しておくのがおすすめ
- 年齢制限を確認する
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- ワーキングホリデーのビザ取得には年齢制限があるため注意
- 国によっても異なるので、事前にしっかり確認しておく
- 労働、通学できる期間を確認する
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- 通学時間や労働時間も国によって異なるので、渡航先のルールを事前に確認する
社会人留学のメリット・デメリットとは?
社会人留学の大きなメリットとして、昔も今も人気のMBA留学は非常に企業の評価が高い、ということが挙げられます。MBAとは「Master of Business Administration」の略で、経営学修士号が取得でき、ビジネスにおける高度な知識を持っている証明になります。そのため、社会的評価も非常に高まるのです。
とはいえ、MBAを持っているだけで面接や書類選考を無条件で通過できるわけではありません。他の資格同様、あくまでも一つの自己アピールとして考え、就活の際にはMBAの資格を就職後どのように業務に役立てていくかを体系立てて説明できるようにしておきましょう。
一方で、社会人留学は帰国後の職場復帰や再就職の際、以下のようなリスクが生じる可能性もありますので、注意が必要です。
- 期待していたほど語学力が身につかない
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- レベル別の授業で初級者向けコースだと日本人も多く、現地の人とそれほど交流できない
- 語学学校に通うときは、事前に日本人の比率やクラスの国籍バランスを確認しておくと良い
- 帰国後の自分のキャリアを明確にしづらい
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- 帰国後のキャリアが明確でないと、再就職も転職も不利になってしまう
- 長期間日本を離れるため、採用側からすれば「なぜ日本を離れたのか」という疑問が生じる
- 留学前に、帰国後のキャリアイメージをしっかり固めておく
- 社会人留学はブランクと認識されてしまうことも
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- 採用側からは、また会社をやめてしまうかもしれない、定着しないというイメージに
- マイナスイメージをいかに払拭できるかが、就職活動の成功を左右する
仕事を休職・退職して留学するなら手続きが必要!
社会人留学をする場合、一般的には既に就職している人が休職・退職して留学することが多いです。
勤めている企業などを休職するのか退職するのかは非常に重要かつリスクの高い判断ですが、留学期間・仕事内容・企業の方針などによって決まります。留学直前になって伝えることはマナー違反であり、勤務先に迷惑をかけてしまいますので、休職するなら上司に半年くらい前から相談し、退職するなら3ヶ月以上は前に伝えるようにしましょう。
また、事前に伝えておいたとしても、勤務先の都合によっては希望通りに留学をスタートできない場合もあります。半年や1年という長期留学の場合は、一般的に休職を選択するのが難しいとされ、1ヶ月の短期留学であっても一般企業に勤める人はまず休みを取れないと言われています。つまり、1ヶ月以上の留学を考えるなら退職を選択せざるを得ない人が多いのです。休職を願い出ても、話し合いの結果、退職に変わることもあります。
社会人留学のために退職するときの社会保険や転出届などの手続き
退職して社会人留学をする場合、留学前に以下の4つの手続きが必要です。
- 国民健康保険に加入する
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- 健康保険から国民健康保険に切り替える必要がある
- 会社から発行された書類を持ち、役所で手続きを行う
- 国民健康保険は後述する海外転出届に記載した転出日から失効することに注意
- 年金の手続き
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- 厚生年金から、国民年金に切り替える
- 会社から発行された書類のほか、年金手帳・印鑑が必要
- 海外に転出届を出しても任意継続ができるので、将来海外に永住するのでなければ継続加入しておくとよい
- 代わりに、渡航時には海外旅行保険などに加入が必要
- 失業保険の手続き
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- 条件はあるが、多くの場合退職した人は失業保険から給付金を受け取れる
- 本人調査、雇用保険受給説明会の参加などがあるので、実際に給付金を受け取れるのは手続きから約1ヶ月後
- 月2回の求職活動の実績がない場合、給付金は受け取れない
- 求職活動を証明できないなど、留学中には給付金を受け取れないことも充分考えられるので、注意が必要
- 海外転出届を提出する
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- 住民税は1月1日の時点で住民票がある地方自治体に、その年の6月から翌年の5月まで支払うもの
- 海外転出届けを出した状態で留学し、年をまたいだ場合、その年の住民税の支払いの必要がなくなる
- 転出日から国民健康保険の保険料の支払いも発生しなくなるので、脱退した月から支払い義務がなくなる
特に失業保険は、退職直後に留学する場合、留学中には給付金を受け取れないケースが多いので注意しましょう。留学の長さやタイミングによっても変わりますので、事前によく検討・計画しなくてはなりません。
社会人留学の費用相場と低コストで留学できる国
では、実際に社会人留学にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。前述のキャリアアップ、スキルアップ、ワーキングホリデーについて、それぞれ相場を見ていきましょう。
キャリアアップのための社会人留学の費用相場
- 大学・大学院留学
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- アメリカの州立大学:約325万円/年(授業料+滞在費+食費)
- 日本と比べると、全体的に学費が高い傾向にある
- アイビーリーグの他、世界各国の名門大学、医学部、法学部などの専門的な学部はさらに学費が高いので、奨学金制度を利用するのがほとんど
- インターンシップ(いずれも授業料+滞在費+食費)
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- ベトナム(航空券、住居、ビザ費用は会社負担、6ヶ月):約25万円
- カナダ・バンクーバー(有給インターンシップ、1年間):約100万円
スキルアップのための社会人留学の費用相場
- 語学留学(いずれも授業料+滞在費+食費)
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- カナダ・バンクーバー(1ヶ月):約50万円
- カナダ・バンクーバー(6ヶ月):約110万円
- カナダ・トロント(1年):約260万円
- カナダ・バンクーバー(1年):約300万円
- ボランティア(いずれも授業料+滞在費+食費)
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- アイスランド(派遣ボランティア・プログラム):約150万円/年
- カナダ・バンクーバー(日本語教師アシスタント):約150万円/年
ワーキングホリデーの費用相場
授業料+滞在費+食費、生活費はアルバイトで賄う場合を想定すると、費用相場の例が以下のようになります。
- オーストラリア:約120万円
- カナダ・バンクーバー:約150万円
社会人留学の費用が低コストの国はどこ?
上記で費用の一例としてもよく挙げられるように、カナダは留学費用が安い国としてよく知られています。その他にも、フィリピン・マレーシア・韓国など、アジア圏の留学費用は安く抑えられやすい傾向にあります。アジア圏以外では、スペイン・マルタ共和国・ニュージーランドなども留学費用が安く抑えられやすいようです。
後編はこちら
おわりに:目的ある社会人留学は将来のキャリアプランに役立つ
社会人留学に行く場合、目的や目標をしっかりと立てると将来のキャリアプランや夢の達成に役立ちます。ただし社会人留学は仕事を休職・退職しなければ行けませんので、留学先での滞在費用や学費など十分な金銭的余裕が必要です。次章では安心して社会人留学するための留学エージェントの選び方、奨学金活用について紹介します。
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