寝不足で頭痛などの体調不良が起こることはよく知られていますが、寝過ぎても頭痛が起こることをご存知でしょうか。睡眠リズムは多くの人が認識している以上に人間の身体にとって重要で、少なすぎても多すぎても良くありません。
今回は、寝過ぎや寝不足で頭痛が起こる原因やその対処法、睡眠リズムがどうしても整えられない場合に受診する目安などをご紹介します。
- この記事でわかること
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- 寝過ぎはセロトニンの減少を招くって本当?
- 疲労解消!睡眠の質を高める方法
- 片頭痛・緊張型頭痛と睡眠の関係
- 冷やす?温める?原因別の頭痛セルフケア
- 眠りたいけど寝れないときの休息法
- 過眠や無呼吸など睡眠外来受診が必要な症状
寝過ぎで頭痛!休日の「寝だめ」が招くデメリット
睡眠時間は長すぎても、短すぎても頭痛を引き起こすことがあります。ある研究によれば、9時間以上寝ると脳内ホルモンの一つ「セロトニン」の濃度が低下し、脳の血流量が減って頭痛が起こることがあるそうです。こうした頭痛は遅くまで寝ていられる休日に起こりやすく、夜更かしすると翌朝に身体がだるくなるのもこれが一因と考えられています。
日本人の平均睡眠時間は6〜8時間とされていますが、適切な睡眠時間の量には個人差があり、必ずしも6〜8時間が適切とは限りません。日中に快適に活動できることを目安にし、自分に合った適切な睡眠時間をとるよう心がけましょう。できるだけ休日にも目覚まし時計をかけ、規則正しい生活を送ることも重要です。
睡眠時間を適切に保つためには、睡眠の質を改善することも大切です。日頃から以下のようなポイントを心がけましょう。
- 日中は日光を浴びる
- 適度な運動の習慣をつける
- 睡眠の1〜2時間前に入浴などで身体を温める
- 寝る直前にスマホやパソコンなどの電子機器を使わない
- 自分に合った快適な寝具を使う
過度の睡眠で片頭痛が悪化する?
片頭痛とは主に頭のこめかみの辺りに現れる頭痛です。ズキズキとした痛みで、一度現れると数時間〜数日間痛みが続くという特徴があります。こめかみの片側に頭痛が現れることが多いため「片頭痛」と呼ばれているのですが、頭の両側に起こることもあります。症状が繰り返すことも多く、多い人では週に数回生じる場合もあります。
動くと痛みが悪化したり、光や音に過敏に反応してしまったりするため、症状が出たときは暗く静かなところで安静にして回復を待ちます。また、個人差はありますが片頭痛が起こる数十分〜数時間前にギザギザした閃光が視界に現れる「閃輝暗点」などの前駆症状が起こる場合もあります。
片頭痛の原因ははっきりと解明されていませんが、寝不足や寝すぎのほか、空腹や疲労、ストレスまたはストレスからの解放、気圧や温度・湿度の変化などがきっかけで血管が拡張して起こるとされています。月経の開始・終了の時期に起こる人も多く、中でも30代女性に最も多く見られることから、女性ホルモンが何らかの形で関与しているのではないかとも指摘されています。
睡眠時などリラックスしているときは、副交感神経が血管を拡張し、血圧を低下させて血流量を抑えるという働きがあります。この血管拡張が「三叉神経」という神経を刺激するため、片頭痛が起こる場合もあります。つまり、寝過ぎで片頭痛が起こるのは、過剰に副交感神経が働いた状態が続いて三叉神経が刺激されたため、と考えられます。
寝相が緊張型頭痛を引き起こす?
日本人に一番多い頭痛として、筋肉の緊張が主な原因となって起こる「緊張型頭痛」があります。ストレスや肩こりなどが要因となって起こることが多く、頭が締めつけられるように痛むのが特徴です。つまり、寝ている間の姿勢が悪く筋肉が緊張してしまうと、起きたときに緊張型頭痛が起こることがあります。
通常は仰向けや横向きなどで寝ながら何度も寝返りを打ち、寝やすい姿勢で寝るのですが、このとき枕から頭が外れてしまったり、手・足・腰・首などが無理な状態で押されたり曲がったりしてしまうと、長時間無理な姿勢で寝続けてしまうことになり、首や肩に余計な負担がかかって筋肉が緊張し、頭痛が起きやすくなると考えられます。
具体的には僧帽筋・側頭筋・後頚筋など、頭や首の筋肉が緊張状態になり、血流が滞ります。すると筋肉に強い緊張と収縮が起こり、締めつけられるような鈍痛が続く可能性があります。緊張型頭痛は片頭痛と異なり、仕事や家事ができなくなるほどの痛みになることは少ないですが、慢性化して片頭痛と緊張型頭痛が混ざった症状が出るようになるとこの限りではありません。
寝過ぎたときの片頭痛を和らげる対処法
片頭痛は、前述のように原因がはっきりしておらず、個人差も大きな頭痛です。そのため、片頭痛を予防するには日頃から以下のようなことに気をつけましょう。
- 頭痛のした日と環境をチェックしておく
- 人混み、睡眠不足などどんな環境が重なったときに片頭痛が起こるか記録しておく
- 原因となる環境を特定し、片頭痛が起きそうな環境を避ける
- 睡眠不足、寝溜めなど睡眠のリズムを乱さない
- 睡眠不足が溜まった「睡眠負債」が寝溜めを招くので、どっちも避ける
- 週末の寝溜め、二度寝などは空腹と寝すぎが重なり、重い片頭痛を招くことも
- 普段から適切な睡眠時間を確保し、規則正しい睡眠をとるよう心がける
- 頭痛を誘発する食品を控える
- チョコレート、チーズ、ハム、ヨーグルト、赤ワインなど
- これらは血管を拡張し、片頭痛を招くとされるので摂り過ぎに注意
また、上記のような予防を心がけていても、何らかのきっかけで片頭痛が起こってしまうことはありえます。片頭痛が起こってしまったら、以下のような対処を行いましょう。
- 冷やす
- 冷たいタオルなどを痛む部位に当て、血管を収縮させる
- ※入浴やマッサージは緊張型頭痛の軽減には有効だが、片頭痛には血管を拡張してしまい逆効果
- 静かな暗い場所で休む
- 頭痛の最中に身体を動かしたり、光や騒音を感じたりすると悪化することも
- できるだけ、静かな暗い場所で横になる
- カフェインを適量摂取する
- コーヒー、緑茶、紅茶などに含まれるカフェインは血管を収縮させる
- 痛み出してすぐ飲むと痛みを軽減できる
- ※ただし、連日摂取しすぎると逆に頭痛を誘発するので、摂り過ぎに注意
どうしても痛みが治らないときは、市販の頭痛薬を飲んでも構いません。鎮痛作用のある成分が含まれていますので、片頭痛のつらい痛みを軽減できます。しかし、頭痛薬は痛みを抑えるためのものであって、拡張した血管を元に戻すものではありません。頻繁に片頭痛に悩まされる場合は医療機関で診察を受け、トリプタン系製剤のように血管を収縮させる働きのある薬剤で根本的な治療を行いましょう。
起きたら頭に締め付けられるような痛み!緊張型頭痛の対処法
緊張型頭痛は、前述のように筋肉の過剰な緊張と収縮によって起こります。そこで、緊張型頭痛を起こさないためには「正しい姿勢をとり、適度に休憩を挟んで長時間同じ姿勢をとらない」「枕の高さを自分に合ったものにする」という2点を心がけましょう。高すぎたり、柔らかすぎたりする枕は知らず知らず首や肩に負担をかけてしまうので、気をつけましょう。
また、日頃から首や肩の血行を良くするため、以下のようなストレッチを行うのもおすすめです。
- 両肩を上げ、ストンと落とす
- 力を入れすぎず、自然な状態で10〜20回程度行う
- 首を左右に倒す
- 左手を頭に乗せて、右肩の力を抜いて左側へゆっくりと首を倒す
- 反対側も同様に、左右5〜10回程度ずつ行う
- 椅子に座って前屈する
- 椅子に浅く腰かけ、脚を前に伸ばす
- 両肩の力を抜いてリラックスし、首を前にゆっくりと倒し、戻す
- 5〜10回程度行う
また、緊張型頭痛が起こってしまったら、筋肉の緊張をほぐしてリラックスし、血流を良くしましょう。例えば、以下のような方法があります。
- 温めて、コリをほぐす
- マッサージ、蒸しタオル、半身浴などで温めて、首・肩・筋肉のコリをとり、血行を良くする
- 予防法にあったストレッチも有効
- 気分転換をする
- 頭痛が始まったら、心身にストレスをかけていることを中断したり、そこから離れたりする
- 音楽、運動、アロマなどリラックスできることを行い、早めに気分転換する
睡眠不足で頭痛が起きるのはなぜ?対処法は?
睡眠不足で頭痛が起こるのはよく知られていますが、これは睡眠不足による血行不良と自律神経の乱れが原因と考えられます。睡眠不足が続くと体が休息できないので、筋肉が休まらず緊張・収縮した状態が続きます。すると、緊張型頭痛を引き起こす可能性があります。
さらに、睡眠不足の状態では脳も緊張状態が続いてしまいます。脳の血管が圧迫されて収縮した状態が続き、血流が悪くなると脳内ホルモンの一つ「セロトニン」が血管を拡張し、血流を良くしようとします。血管が拡張されることで、片頭痛が引き起こされやすくなります。
一方、自律神経の乱れが頭痛を引き起こすこともあります。自律神経には活動を司る「交感神経」と、休息を司る「副交感神経」の2種類があり、通常は起きて活動しているときに交感神経が、リラックスしたり眠ったりしているときに副交感神経が優位になるよう切り替えて身体の機能を調節しています。
しかし、睡眠不足の日が続くとずっと交感神経が優位な状態が続き、疲れが溜まっていきます。また、交感神経は血管を収縮させる働きもありますので、血行が悪くなり頭痛が生じてしまうのです。忙しくて睡眠時間が十分に確保できない人でも、睡眠の質を上げるような工夫をしてみましょう。
睡眠不足で頭痛があるのに休めないときの対処法は?
睡眠不足で頭痛などの症状が出ていても仕事や学業などを休めないという場合、以下のような対策がおすすめです。
- 仕事や学校の休憩時間に仮眠をとり、身体を休める
- 朝に時間的な余裕があれば、37〜39度のぬるいお湯に10分以上ゆっくりつかる
- 市販の鎮痛薬を飲む
特に片頭痛の場合、暗く涼しい部屋で少し目をつぶって休むだけでも症状の改善が期待できます。また、ぬるめのお湯にゆっくりつかると副交感神経が活性化され、交感神経の働きすぎを抑えられます。副交感神経が働いていると血管拡張の効果も期待できますので、血流が良くなり緊張型頭痛を緩和するのにつながります。
どうしても痛みがつらいときは、市販の鎮痛薬を飲むのも一つの方法です。ただし、薬物乱用頭痛を防ぐため、市販薬の服用は月に10回を超えないようにしましょう。もし、月に10回を超えるほど鎮痛薬を使わなくてはならない場合は、病院を受診して医師に良い方法を相談してください。
気になる症状は睡眠外来へ!受診の目安となるサインって?
睡眠に問題があって頭痛などの症状につながってしまう場合、睡眠障害と判断される症状が出ている可能性もあります。睡眠障害の代表的なものは不眠症で、「入眠障害(なかなか寝つけない、布団に入っても眠気がこない)」「中途覚醒(夜中に目が覚め、その後眠れなくなる)」「早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)」「熟眠障害(たくさん寝ているはずなのに、眠った感じがしない)」のいずれも不眠症に定義されます。
他にも、以下のような睡眠の問題があれば、睡眠障害の可能性があります。こうした症状で悩んでいる場合は、ぜひ一度睡眠外来などの専門医を受診しましょう。
- 過眠
- 寝ても寝ても眠い、日中についつい居眠りしてしまう
- 寝るときの感覚異常
- 脚がむずむずして眠れない、火照った感じがする、脚を動かさないといられない
- リズム障害
- 普通に寝ていても起きる時間が少しずつズレてしまう、思った通りに起きられない、眠れない
- いびき、無呼吸
- 就寝中に大きないびきをかいてしまう、呼吸が止まっていることがある
- 睡眠中の異常行動
- 寝ているのに手足をばたばたさせたり、大声を出したりなど、夢と同じ行動をとってしまう
おわりに:睡眠時間は多すぎても少なすぎてもダメ。ちょうどいい時間を見つけよう
睡眠時間は一般的に6〜8時間が良いとされていて、実際に日本人の平均睡眠時間もこの範囲におさまっています。しかし、適切な睡眠時間には個人差がありますので、自分が日中眠くならず、快適に過ごせるような睡眠時間を見つけましょう。
また、頭痛が起こったときは速やかに対処することも重要です。片頭痛と緊張型頭痛では対処法が全く異なりますので、自分の頭痛がどちらなのか、一度病院で診断してもらうのも良いでしょう。
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