日本で働く外国人労働者は増加の傾向にあり、コロナ前の2019年には160万人を超えました。ところが、日本で働く外国人労働者がストレスや悩みを抱えることが少なくありません。また、受け入れ側の日本企業も悩みに直面することがあります。
この記事では、日本で働く外国人労働者と日本人のストレスの原因、ストレスを軽くする方法を解説します。お互いにとって働きやすい環境づくりの参考にしてくださいね。
- この記事でわかること
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- 外国人と働くことによるポジティブな効果
- 日本で働く外国人の困りごと・悩みごと
- 外国人と働く日本人の悩み
- 外国人労働者を受け入れる企業がとるべき準備
外国人と一緒に仕事するメリット・デメリットとは
外国人労働者と一緒に働くことには、メリットとデメリットがあります。
- 外国人と仕事するメリット
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- 異文化の考え方から刺激を受けられる
- 語学のスキルアップにつながる
- 国際的な感覚やダイバーシティが身につく
- 仕事の効率化が進みやすい
- 職場の人手不足が解消される
- 海外のお客様やクライアントの対応が捗る
- 日本人同士では言いづらいことを言ってくれる
- 外国人と仕事するデメリット
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- 言語の壁が発生しやすい
- 互いの文化を理解できず、ストレスにつながることがある
- 就労形態や労働条件のすり合わせに注意が必要
- 時間を守ることに対する概念が違う
- 意見の主張が強く、衝突をすることがある
- 受け入れに伴う人事的サポートが必要になる
- 在留資格確認などの手続きが必要
外国人と一緒に働くことで、日本の文化とは異なる考え方から刺激を受けることができるでしょう。海外のクライアントを有する企業やこれから海外進出を目指す企業にとっては、貴重な戦力となることも期待されます。
一方、外国人を受け入れるためには語学面のサポートや人事的サポートも必要です。受け入れのためのコストがかかることは、デメリットとして感じられることもあるでしょう。文化の違いがあるために、コミュニケーションがうまくいかないことも十分にありえます。
外国人にとって日本の職場で感じやすいストレス
実際に日本で働く外国人労働者は、次のようなストレスを感じることがあるようです。
残業が多い
日本で働く外国人が感じるストレスで多いものが、日本企業は残業が多いことです。特にサービス残業は大きなストレスであり、契約内容からも納得しづらいものになります。
残業に関しては日本人でも改善を希望する人は多く、企業や政府が改善に取り組むべき課題です。個人レベルでも、残業が当たり前という上司がいた場合、外国人の部下との折り合いは難しくなるでしょう。
年功序列制度など給与体系に納得しづらい
給与体系は、外国の場合は成果主義や交渉ベースの場合が比較的多く見られます。対して日本は年功序列制度がまだ強く残っていますの。給与がなかなか上がらないことは、外国人労働者にとってストレスになりやすいポイントです。
福利厚生が差し引かれることも、事前にしっかりと説明しないとトラブルの元になるでしょう。
複雑な日本語表現を理解するのが難しい
日本語能力が高くない外国人労働者の場合、言語の壁が発生します。特に、日本語のあいまいな表現や日本人同士の暗黙の了解はとても難解です。
外国人労働者に依頼や指示をするときは、伝えたい内容を具体化しましょう。なぜその仕事が必要なのか理由や目的を説明すると、仕事への理解を促すことができます。
日本語の二重否定は誤解を生みやすい表現ですので避けるのが安心です。また、依頼や指示をするときははっきりとした声で、表情豊かにすると伝わりやすくなります。ジェスチャーを取り入れたり、メモやメッセージに残すなど、視覚的に伝えるのもおすすめです。
飲み会への参加必須
仕事終わりの飲み会は参加必須という社風、参加を断るのは悪いことという雰囲気も、外国人労働者にとってストレスになることがあります。
基本的に労働時間以外はプライベートの時間です。プライベートをどのように過ごすかは個人の自由ですので、飲み会を強制することはやめましょう。ぜひ参加してほしいときは、事前に時間に余裕を持って誘ってみてください。
休暇のタイミングが自国と合わない
日本で働いていると、休暇のタイミングか日本のカレンダーに沿うようになります。ところが外国人労働者の出身国によっては、日本のカレンダー通りでは都合が合わないことがあります。
たとえばアメリカではクリスマス休暇が長く、中国ではお正月休みは旧暦の時期に取ります。日本のカレンダー通りの休みしか許可されない場合、家族や親戚と顔を合わせる機会がなくなってしまいます。
可能であれば、出身国の文化を考慮して長期休暇の時期をずらすことができるのが理想的です。あるいはまとめて有給を取ることに対して、周囲が理解することが大切でしょう。
職場に相談できる人がいない
日本で働く外国人労働者の相談相手がいないことも問題です。職場に外国人が多い場合は共通の悩みをシェアすることができるでしょう。しかし、外国人が一人だけの職場や、複数人いても部署が異なる場合は、悩みを相談できずに孤独感に苛まれるおそれがあります。
日本人が外国人と一緒に働いて感じやすいストレス
日本で働く外国人が直面しやすい悩みを紹介しましたが、外国人と働くことに悩みや戸惑いを感じる日本人もいます。
日本のビジネスマナーが身に付いていない
日本で働くからには、日本のビジネスマナーを身につけてほしいと考える人は多いものです。
クライアントへの礼儀作法や人間関係の円滑化のためにも、外国人労働者にも基本的なビジネスマナーの習得が求められます。たとえばビジネス敬語や日本の役職名、訪問の礼儀は抑えておくと安心です。
香水や体臭など匂いに対する文化
ビジネスというよりは文化や体質の違いからくるものですが、外国人の香水など香り・匂いのマナーにストレスを感じる日本人は少なくありません。近年は、職場での香り・匂いに対するマナーの議論が交わされています。
日本は外国と比べると、香水をつける人は少数派です。つけるとしても淡い香りが好まれます。外国人の場合は香水をつけることを好む人が多く、香りが強めな場合も珍しくありません。
ただし、日本でスメルハラスメントという概念が浸透しているように、強い香りや匂いはマナー違反と取られることがあります。
残業しないことへの違和感
日本でも問題視されていることではありますが、残業への考え方は日本人と外国人で大きく異なる場合があります。
日本人は、残業またはサービス残業はして当たり前、残業しても仕方ないと考える人が少なくありません。外国人は、翌日以降でも間に合う仕事なら、残業してやる必要はないと考える人が多いです。
残業は改善すべきという意識改革が日本で進められていますので、外国人の意見をしっかりと聞きつつ改善法を考えてみるのもおすすめです。
追加の仕事を頼みにくい
外国人の場合、契約書に含まれない仕事は断ってもよいと考える人が多いです。基本的に労働は双方の合意を得て労働契約を交わさなくてはいけません。そのため、こうした考え方は間違いではありません。
ただし日々の仕事を進める上で、ちょっとした仕事やサポートを頼みたいときに断られるとショックを受けてしまうこともあるでしょう。
お互いの仕事の範囲や役割を理解した上で、頼める仕事・頼めない仕事を意識してみてください。その上で本来受けるべき仕事を断っている場合は上司や人事に相談しましょう。
日本人と外国人がストレスなく仕事するポイント
違う国や文化圏に生まれた以上、カルチャーショックを避けるのは簡単ではありません。お互いが理解し合い、協力して仕事をしていくためにも下記のことにチャレンジしてみてはいかがでしょう。
- 日本語能力のスキルアップ支援をする
- 英語など共通語があれば互いにスキルアップする
- 翻訳アプリや電子辞書を活用する
- メンター制度を導入する
- マニュアルは図や写真を効果的に用いる
- 長期休暇の取り方を検討する
- 評価制度の見直しをする
- 外国人受け入れのために人事の体制を整える
- 互いの文化を理解するコミュニケーションの場を設ける
外国人を受け入れるために役立つ資格
この章では、外国人を受け入れる企業や担当者がすべき準備として、役立つ資格を紹介します。
外国人雇用管理主任者
外国人雇用管理主任者試験とは、外国人雇用についての専門知識が問われる資格試験です。資格所有者は、外国人雇用に関するトータル的なサポートができる人材としてみなされます。外国人を受け入れる企業の人事や総務の人は取得しておくと役に立つでしょう。
試験では下記の内容が出題されます。
- 外国人雇用の基礎知識(外国人労働者とは・社会的背景)
- 在留資格の基礎知識
- 平成31年入国管理法大改正
- 特定技能ビザ 特定技能外国人
- 受け入れ企業・登録支援機関の役割
- 外国人労働者の採用計画(費用・研修・社内理解)
- 外国人労働者に教えるビジネス日本語・ビジネスマナー
- 労務管理のルール(労働基準法・労働保険・社会保険)
- 雇用契約書・就業規則の作り方
- 外国人雇用に対する助成金活用
外国人雇用管理主任者の資格取得についてはこちら
外国人雇用管理主任者の資格取得に関する情報は、こちらのサイトから確認できますよ。
TOEIC
外国人労働者との共通言語として、英語を習得していると意思疎通に役立ちます。特にTOEICはビジネス英語を中心に問題が出題されますので、試験のチャレンジを通して英語でのビジネスコミュニケーションスキルが身に付くでしょう。
外国人労働者とのコミュニケーションであれば、700~800点以上を目指してみてはいかがでしょう。
HSKまたは中国語検定
日本では中国人の外国人労働者の割合が高いため、英語のほかにも中国語スキルを身に付けた人がいると、コミュニケーションがスムーズになるでしょう。
中国語の検定試験では、「HSK」または「中国語検定」が認知度が高い資格です。国際的に浸透しているのは「HSK」で、中国語検定は日本国内での受験者が多い資格です。
おわりに:外国人と働くことで自分の会社も成長できる!
外国人労働者の受け入れは人手不足解消だけでなく、たくさんのメリットを得られるチャンスです。お互いのことを理解することで、日本と外国それぞれの強みを吸収できます。外国人労働者を受け入れる企業で働く人は、スキルの習得や心の準備をしながら、自分を成長させてみてはいかがでしょう。
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