ペーパーレス化で仕事のメモや会議の効率アップ!無理のない導入のポイント
デジタルデバイスやインターネット環境の発展により、ビジネスの場面でもデジタル化が進んでいます。近年、環境問題とも結びついて叫ばれるペーパーレス化は、仕事のメモ書きや会議効率もアップできるとして注目されています。
今回の記事では、ペーパーレス化のメリット・デメリット、無理のない導入のポイントをご紹介します。ペーパーレス化を検討しているなら、ぜひご一読ください。
- この記事でわかること
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- デジタル技術でペーパーレス化するメリット
- ペーパーレス化がうまく進まない原因と対処法
- 会議で取り入れたいペーパーレス化の方法
- 業務効率を上げるペーパーレス化導入のポイント
ペーパーレス化で環境保護も働き方改革も進む?
ペーパーレス化とは、ペーパー(紙)の利用を減らし(レス)、パソコンなどで電子ファイルとして閲覧できるようにし、環境保護したり業務効率改善したりする取り組みのことを指します。例えば、以下のようなことが当てはまります。
- 紙の書類を作る代わりに、pdf文書やインターネットFAXを利用する
- 電子書籍や電子カタログ、Web会議を利用する
- 日報や勤怠管理を電子化・クラウド管理する
紙を減らすとその分のコスト削減になるほか、セキュリティ強化や業務効率アップなどさまざまなメリットにつながります。また、紙を消費しなくなればその原料となる森林を保護することにもつながるため、環境保護にも良い効果が期待できます。
紙の原料となる森林が伐採されるスピードと、森林が再生するスピードは釣り合っていません。森林が減少を続けると二酸化炭素を酸素に変える働きが減っていき、地球全体の二酸化炭素の量が増えて地球温暖化に影響することが懸念されています。つまり、ペーパーレス化は巡り巡って地球全体の環境を守ることにもつながるのです。
以上のことから、ペーパーレス化で期待されるメリットをまとめると、以下の5つになります。
- コスト削減
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- 紙代の他、印刷代、印刷機器のメンテナンス費用、資料の郵送・運搬の費用、シュレッダーや廃棄業者などの廃棄費用、保管・管理費用、人件費が削減できる
- 業務効率アップ
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- 紙の文書は保管場所を探したり、取り出したりする手間がかかる
- 属人化していたデータ管理をシステム化で共有しやすくなる
- 会議に使う資料で変更・修正があった場合、データなら修正をすぐ共有できる
- セキュリティ強化
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- 紙の重要書類は鍵のかかるキャビネットに保管するなど物理的な対処が必要で、持ち出しルールや廃棄方法がずさんになると、簡単に情報漏洩してしまう可能性もある
- 紙の場合は紛失・盗難・火災などの災害、紙の劣化・破損などで書類そのものを失い、復元できなくなるおそれがある
- データなら担当者ごとにアクセス制限や閲覧制限をかけ、情報漏洩のリスクコントロールが簡単
- データは紙のように物理的な劣化がないため、パソコンやサーバーが故障・盗難に遭ったとしても、クラウド保存したバックアップから復元できる
- 資産の確保が容易
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- 紙の事務書類は法令で定められた年数の保管が必要で、場所はもちろんキャビネットやラックなどの備品やスペースが必要になる
- データなら保管スペースや備品が必要なくなるので、コスト削減になるだけでなくオフィススペースの有効活用につながる
- 企業価値の向上
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- 紙の消費を抑えて森林伐採を減らせば、地球環境保護につながる
- ペーパーレス化の推進は「持続可能な社会を作る」というSDGsの取り組みになる
- 企業としてSDGsに取り組むことは、企業価値の向上につながる
ペーパーレスが「SDGs」への貢献に
前述のように、ペーパーレス化の推進は「持続可能な開発目標(SDGs)」の取り組みにつながります。
SDGsには「17の目標」と「169のターゲット(具体的な目標)」があり、169の具体的な目標は17の目標をより具体的に定めたものです。ペーパーレス化に関連するSDGsの取り組みは、主に「12:つくる責任、つかう責任」「13:気候変動に具体的な対策を」「15:陸の豊かさも守ろう」の3つに関連するでしょう。
では、ペーパーレス化がそれぞれ具体的にどのようにSDGsに寄与するか見ていきましょう。
- 12:つくる責任、つかう責任
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- 紙類の消費削減で、森林資源の持続可能な管理と効率的な利用につながる
- 廃棄書類の処理で生じるさまざまな化学物質などの放出を削減し、健康や環境への悪影響を減らす
- 13:気候変動に具体的な対策を
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- 紙の消費を抑えることで、森林伐採による気候変動への影響を抑える
- 15:陸の豊かさも守ろう
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- 紙の消費を抑えることで、原料となる森林資源の消費を抑える
森林資源の消費を抑え、陸の生態系を守るとともに、砂漠化を食い止める
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世界的な取組であるSDGsは、ビジネスパーソンなら意識したいものです。こうした取組に積極的な企業も増えています。
データ化のためには導入コストと従業員の意識の啓発も必要です。これらについては、次章以降でさらに詳しく見ていきましょう。
ペーパーレス化は導入コスト大?デメリットや悩みとは
上記のように企業自身にとっても、地球環境にとってもメリットの多いペーパーレス化ですが、一方で以下の4つのデメリットも考えられます。
- 画面の大きさによっては資料が見にくい
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- タブレットやスマホ、パソコンなど表示される範囲に制限があるため、画面サイズが小さいと文字も読みにくく感じられることも
- 文書が複数枚にわたるものだと、全体の流れを俯瞰で見にくい
- 導入コストがかかる
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- ペーパーレス化のためには、パソコンやタブレット端末など電子機器が必要になる
- セキュリティ対策のためソフトウェア導入や、場合によってはネット環境の見直しが必要になることも
ある
- システム障害や故障の影響を受ける
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- クラウド上に文書を保管している場合、ネット環境やクラウドサーバーの障害でアクセスできなくなることもある
- 文書を閲覧するための電子機器が故障したときなど、物理的な閲覧不可状態に陥る可能性がある
- 直接メモ書きできない
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- 紙の資料とは異なり、ペンなどで直接メモができないことを不便に思う人もいる
タブレット端末などを使えば直接メモ書きしてデジタルデータとして保存することも可能
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企業の中でペーパーレス化が進まない最も大きな理由として、規定に「紙で提出・保管・配布する」とあることが挙げられます。
実際に、日本画像学会誌の調査によれば、ペーパーレス化が進まない理由として過半数に近い約45%の企業が「紙での提出・保管・配布の規定があるため」と回答しています。企業に古くからある規定・制度・慣習の場合、変えにくいところも多いのでしょう。
また、書類をペーパーレス化するということはすなわち、パソコンやクラウドサービスにアクセスする操作や、セキュリティ対策への知識など、一定レベルのITリテラシーが必要です。日常的にパソコンを使う人であれば何ら難しいことではありませんが、パソコンや電子機器の操作に慣れていない人にとっては、すぐに馴染めず難しいと感じてしまうこともあります。
特に、ベテランの方が長年慣れ親しんできた仕事のやり方が変わってしまうことに心理的な抵抗を感じてしまったり、地域性などで紙に対する絶対的な信頼性を持っていたりすると、こうしたギャップからペーパーレス化への理解が進まず、足並みが揃わないこともありえます。必要機器や環境が揃わず、導入コストが高くなりやすいことも理解が進まない一因です。
さらに、一部の文書はそもそも法令で電子文書化できないものもあります。例えば、不動産取引における「重要事項説明書」や「賃貸契約書」は書面を交付することが法律で定められているため、ペーパーレス化したくてもできません。このため、ペーパーレス化とは言っても100%にすることはできないということも、ペーパーレス化が進まない理由になっていると考えられます。
ペーパーレス化を進めるときのポイント
実際にペーパーレス化を進めるにあたっては、以下のような手順で行いましょう。
- 書類の分量や紙の使用状況の把握
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- 社内で紙の書類をどれくらい保管しているか、一定期間にどのくらい使っているか把握する
- 現状、紙の保管や管理、消費にどのくらいコストがかかり、そのうちどのくらい減らしたいか、減らせるか検討する
- 減らす書類の優先順位を決める
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- いきなり全ての書類を電子化するのは難しいため、導入しやすさや緊急性の高さから優先順位をつけて着手する
- 実際にいくつか電子化し、進捗と成果を記録
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- 優先順位が決まったら、順位の上から順に電子化を実行し、進捗に応じて削減の成果を記録
- 記録を分析し、さらに継続的に改善を図るための指標を打ち出す
また、実際の電子化にあたっては、ペーパーレス化に適したモニターやタブレットを用意することも必要です。ペーパーレス化に消極的になりがちな理由の一つに、画面の見づらさや操作性の悪さが挙げられます。解像度が高く見やすい大きめのモニターや、操作性が高く不慣れな人でも扱いやすいタブレットを用意し、ペーパーレス化へのハードルを下げましょう。
実際に導入するときは、以下のような注意点も意識しておくとスムーズです。
- セキュリティ強化
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- 社内の重要な資料を電子化し、ネットワーク上で共有可能にすると、セキュリティリスクが生じる
- 必要に応じてセキュリティ対策の強化を行い、情報漏洩やデータ盗難のリスクを防止する
- 電子化する情報の整理
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- 資料や契約書などを電子化する際には、後から検索・抽出するための保管・整理方法もルール化する
- 部・課ごと、種類ごとなどでフォルダ分け・階層化し、長期的に活用しやすい状態にする
- 保存形式の統一
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- 電子化したデータをスムーズに確認するためには、保存形式をルール化しておくことも重要
- 閲覧や共有に支障をきたさないよう、ファイルサイズ上限、拡張子などを事前に規定しておく
ペーパーレス時代のメモの取り方 タブレットがおすすめ
ペーパーレス化でメモを取るときには、タブレットがおすすめです。紙のメモと同じように書き込めるなど、以下の4つのようなペーパーレス化のメリットを最大限に活用できます。
- 持ち運びしやすく、場所を選ばず資料を取り出せる
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- 会議で使う資料が大量にあっても、いつでもどこでもすぐに資料を取り出して確認できる
- 会議中・出張中などで急に資料が必要になっても、印刷の手間も持ち歩きの面倒さもない
- 顧客対応においても同様で、印刷コストを削減できるうえに業務効率アップにつながる
- タッチペンを使い、資料に直接記入可能
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- ノートパソコンの多くはタッチパネルではなく、直接記入ができないが、タブレットならできる
- タッチペンが使えれば、資料に直接メモを追記したり、強調したい箇所にマーカーを引いたりできる
- 会議中や視察中にサッとメモを取りたいときにも、軽くてスリム、直感的な操作ができるタブレットが便利
- 資料の検索がしやすい
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- ペーパーレス化で電子化された資料なら、キーワード検索で簡単に目的部分を発見できる
- 膨大な資料であっても、管理の手間が大幅に削減できる
- 資料の複製・共有がしやすい
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- パソコンとプロジェクターでは会議室の明るさや縮尺によって文字が見にくくなる問題があったが、個別にタブレットを持てば見づらくならない
- 例えば、Googleドキュメントでデジタル化した資料に参加者全員の権限を付与すれば、いつでも参加者全員が直接資料にアクセス可能
手元の端末から資料を閲覧すれば、配布の手間やミスによるトラブルも起こらない
とはいえ、紙媒体にしかない良さがあるのも事実です。例えば、長文の資料を何度も行きつ戻りつしながら読み直し、内容を把握しながら提案書をまとめるなどの作業であれば、全体を俯瞰しやすい紙媒体の方が向いていると言えるでしょう。
必ずしも紙媒体をゼロにすることが目的ではなく、必要な場合に紙媒体を使うという上手な使い分けが重要です。
ペーパーレス会議の導入から定着までに必要な準備
ペーパーレス会議とは、文字通り紙を使わずに会議を行うことで、ホワイトボードなどのアナログ機器を使わないことも含まれます。ペーパーレス会議では、紙に代わってExcelやPowerPointで資料を作ったり、既存の資料をスキャンして電子データ化し、デジタル資料にしたりします。
これらの資料をホワイトボードの代わりにパソコンやタブレットなどのデバイスで共有したり、インタラクティブボード(電子黒板)を使って大型ディスプレイで全員が見ながら直接書き込んだりします。インタラクティブボードでは各デバイスの画面情報を表示・共有できるほか、書き込んだ内容をデータとして保存することもできますので、会議の内容を端末にすぐ反映できます。
また、タブレットにペーパーレス会議用のシステムを入れておけば、資料をワンクリックで参加者に共有したり、ペアリング機能でページめくりやスライド切り替えを同期したりすることもできます。つまり、大画面を使わなくても全員が同じ資料の同じ場所を見られるわけです。膨大な資料を持ち運ぶ手間がなく、どこにいても資料の確認・修正ができるため、流動的なデータを扱う会議で特に重宝される手法です。
ペーパーレス会議を導入するなら、業務効率改善につなげなくてはなりません。そのためには、以下の3つの注意点を意識しましょう。
- クラウドツールを利用し、デジタル資料を共有する
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- データを複製して共有するのではなく、一つの資料を全員が同時に閲覧し、リアルタイムに編集できる
- 共有資料に間違いがあったときも、原本を修正すれば全員の資料に即時反映される
- 最後に各デバイスでダウンロードすれば、個別に保存することもでき、運用の汎用性が高い
- 操作や運用しやすい機材やサービスを選ぶ
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- 利用者側のリテラシーレベルによって、使えるデジタル資料やデバイスのレベルも異なる
従業員のリテラシーレベルと合わないサービスやデバイスを使っても、負担が増えるだけ
- 多機能すぎず、必要十分なものだけを備えたシステムを使うことがスムーズな会議に重要
- 試験導入してから全社導入する
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- 初めから全社に一括導入してしまうと、不具合やトラブルが起こりやすくなる
- 定例会議や進行がおおよそ定まっている範囲、IT関連部署など導入しやすく狭い範囲から試験運用を行い、普及させる上での問題点や改善点を見つけながら様子を見る
- すべての資料を一度にデジタル化するのではなく、紙の資料と併用しながら進めるのも効果的
- 全社導入までの中長期的な計画を立て、ノウハウ蓄積から始めるつもりで進めていくことが重要
ペーパーレス化の課題となりやすいのが、端末の操作性やITリテラシーの差です。こうした課題を解消するためには、従業員のITリテラシー教育も重要ですが、ある程度誰でも操作しやすいシステム・デバイスを使うことも重要です。また、一気に全社に導入するのではなく、段階的に導入しながら改善点・問題点を見つけるとともに順次解消していくことも必要です。
おわりに:ペーパーレス化はメリットたくさん!段階的な導入で定着させよう
ペーパーレス化は紙の消費量を減らしてSDGs貢献などの環境保護につながることはもちろん、業務効率化にもメリットをもたらします。しかし一方で、導入コストがかかることや、法令でペーパーレス化できない資料もあります。
そこで、ペーパーレス化導入にはタブレットなど使いやすい端末の準備、ITリテラシー教育、段階的な導入などが必要です。改善点や問題点を洗い出しながら、無理なくペーパーレス化を進めていきましょう。
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