食事は子どもが勉強したり遊んだりするために必要な大事なエネルギー源です。前編では朝食の欠食によって集中力が低下し、心の落ち着きにも影響するデメリットを紹介しました。
この記事では、学校給食ではどのように栄養バランスを考えて献立が作られているか解説します。また、近年話題の「こども食堂」の仕組みについても見ていきましょう。
- この記事でわかること
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- 学校給食の献立の栄養バランス
- 家庭でできる食育の取組方法と効果
- 無料や低価格でごはんを食べられる「こども食堂」の探し方
学校給食の献立はどんな風に決められている?
義務教育として定められている公立の小学校では、学校給食が提供されています。学校給食は子どもに必要なエネルギーや栄養素を計算して作られており、まずエネルギーについては以下のように決定されています。
年齢(歳) | 6〜7 | 8〜9 | 10〜11 |
---|---|---|---|
標準身長(男子/女子、cm) | 122.5/121.5 | 133.6/133.4 | 145.2/146.8 |
標準体重(男子/女子、kg) | 24.0/23.4 | 30.4/30.0 | 38.4/39.0 |
基礎代謝量(男子/女子、Kcal) | 1,062/979 | 1,240/1,148 | 1,438/1,358 |
推定エネルギー必要量(男子/女子、Kcal) | 1,661/1,537 | 2,009/1,867 | 2,412/2,271 |
学校給食のエネルギー | 530 | 650 | 780 |
1日の推定エネルギー必要量の男女平均を求め、それを3食で分散すると考え、約1/3のエネルギー量を学校給食から摂取できるように決められています。
また、他にも下記の栄養をバランスよく摂取できるように献立が考えられています。
- タンパク質
- 脂質
- ビタミン(A、B1、B2、C)
- カルシウム
- 鉄
- マグネシウム
- 亜鉛
- 食物繊維
- ナトリウム
特に、三大栄養素から摂取するエネルギー量は、タンパク質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%となるように供給バランスを定めています。エネルギー摂取がどれか1種類の栄養素に偏らないよう、調整されているのです。
一見脂質の比率が高いように見えますが、これは牛乳を摂取するためです。成長期の子どもが牛乳から効率よくカルシウムを摂取するため、あえてやや高めの値に設定されています。
このように、学校給食は主食・主菜・副菜に加え、ビタミンやミネラルを補う牛乳・乳製品、果物の組み合わせで献立が作られています。バランスよく、かつ、エネルギーも十分に摂取できる献立は、栄養士が考えています。
給食は子どもにとっての栄養食の基本とも言えるものです。何を作ったら良いかわからない、という場合は、まず給食をお手本にしてみてはいかがでしょうか。
子どもと一緒に親子で「食育」を始めよう
「食育」とは、いわば「食生活による教育」のことで、生きるために必要なもっとも基本の項目である「食べること」を知育・徳育・体育の基礎と位置づけ、さまざまな経験を通じて食に関する知識と、食を選択する力を得て、健全な食生活を実践できるような人間を育てることが目標です。
食育が重要視される背景として、下記の健康問題があります。
- 食事の栄養バランスの偏り
- 不規則な食習慣による肥満
- 食習慣の乱れによる生活習慣病の増加
- 若い女性を中心に見られる過剰なダイエット志向
- 高齢者の低栄養傾向
このように食事の問題は、子どもから大人まで幅広い年代に関わり、健康に悪影響を与えかねません。食の安全・信頼に関わる問題や、外国からの食料輸入に依存する問題なども食を取り巻く環境を大きく変化させています。
こうした諸問題の中で、健康的な食生活を十分な知識と選択力から実践することで、心身の健康を維持し、生涯を通じて生き生きと暮らすための「食べる力」、すなわち「生きる力」を育む教育が「食育」なのです。具体的には、以下のようなポイントがあります。
- 食事を通して心と身体の健康を維持する
- 食べ物を選択したり、食事作りができたりする
- 食事の重要性や、楽しさを理解する
- 日本の食文化を理解し、伝える
- 食べ物や作る人への感謝の心を持つ
- 一緒に食べたい人の存在がある(社会性につながる)
こうしたことは、大人になって突然できるようになるものではありません。子どもの頃から家庭・学校・地域などさまざまな場所で学び、身につけていくものです。もちろん、大人になってからも生涯にわたって適宜実践し、育み続けていく必要があるでしょう。また、大人にはこうした日本の食文化・知識を次世代に伝えていくという役割もあります。
食育は、乳幼児期の離乳食から始まります。
- 乳幼児期
- まずは食べることへの根源的な欲求、楽しさを理解する時期
- 小学生~高校生
- 学校給食によってバランスよく食べることを習慣化し、自ら食を選ぶことを覚えていく時期
- 成年期
- 自分で健康的な食生活を実践したり、子どもに教えたりする責任が発生する時期
- 老年期
- 体調に合わせた健康維持のための食生活や、低栄養状態を防ぐための食事を選ぶ時期
中でも、家庭で子どもたちに実践すべき食育とは、主に以下のようなことを指します。
- 買い物・料理
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- お菓子や惣菜ではなく、原料となる肉・魚・野菜などの生鮮食品を一緒に買いに行く
- 機会があれば、切り身でなく丸ごとや生簀のある市場へ連れていくのも学びになる
- 一緒に料理をして、食事ができるまでの労力を理解する
- 食材に感謝したりする心を育てる
- 食事中の配慮
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- 家族で楽しく会話し、食材への理解を深めたり、家族のコミュニケーションを深める
- 携帯電話を使わない、時間が合わないなら朝食だけでも一緒に摂るなど、家庭ごとのルールを作る
- 食材を育てる
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- キッチンガーデンやベランダ菜園などで、好きな野菜を一緒に育てる
- 家族で芋掘りや果物狩りを楽しむ
また、生活習慣病予防のため、以下のようなポイントに気をつけましょう。
- 油っこいものばかり食べるのは避ける
- ご飯が少なすぎる、おかずが多すぎることのないようにバランスを整える
- 野菜、果物、海藻を積極的に摂取する
- タンパク質摂取は、肉類より魚類を積極的に摂取する
- カロリーや栄養バランスを考えながら、牛乳や乳製品を摂取する
こうした食習慣は、一朝一夕に身につくものではなく、学校給食はもちろん、子どもの頃に家庭で経験した食習慣が非常に重要な意味を持ちます。その意味でも、子どもに対して食育を意識した食生活を送らせることが大切なのです。
無料で食事を食べられる「こども食堂」の利用方法
近年、地域住民などによる民間からスタートした取り組みとして、無料または安価で栄養ある食事や、温かな団らんを提供する「こども食堂」などが広まっています。
- こども食堂とは
- 家庭での共食(誰かと一緒の食事)が難しい子どもたちに対し、食事を低価格または無料で提供する施設。共食の機会を提供したり、地域コミュニティの中で子どもの居場所を提供したりするという積極的な意義を持つ。
「全国箇所数調査2020年版」によれば、こども食堂の数は年々増加傾向にあり、2016年には319箇所だったこども食堂は、2018年には2,286箇所に、2019年には3,718箇所に、2020年には5,086箇所に増加しています。この増加数はほとんどが2020年1月以前のものだと考えられていますが、新型コロナウイルス感染症が猛威を奮った2020年2月以降にも新設の話は少なくありません。
都道府県別に見ていくと、最多は東京都の617箇所、2位は神奈川県の418箇所、3位は大阪府の357箇所と、そもそもの母数が多い大都市圏で多く見られます。最下位は島根県の18箇所ですが、これはそもそも人口が少ない地域であるためだと言えますので、普及率を考える場合は人口比や小学校比で見る必要があります。
また、増加数では神奈川県が東京都を抜き、3位に埼玉県がランクインしました。増加率トップは青森県で、なんと206%増加しワースト3を脱却したことが大きな躍進です。しかし、2020年2月以降は新型コロナウイルス感染症の影響で実施を見送った箇所も多いため、実態としては十分な増加ではないと話す関係者もいます。
では、こうしたこども食堂を実際に利用したいとき、どうすれば良いのでしょうか。まずは、「こども食堂マップ」などのサイトから、小学校の学区に合わせて探すのが手っ取り早くおすすめです。このように自治体としても気軽な利用を推奨していますので、もし、行ってみたいけれどまだ行ったことがない、という場合はぜひ一度、近くのこども食堂を検索してみてください。
また、「こども食堂ネットワーク」というこども食堂の活動の管理・支援を行っている団体があります。こちらのHPからは全国各地のこども食堂を検索することができます。こども食堂の利用や参加に興味がある人はHPを訪ねてみてはいかがでしょう。
前編はこちら
おわりに:子どもの食事は単なるエネルギー補給ではなく、心身の発育のために重要
子どもの食事は単なるエネルギー補給としての役割だけでなく、成長期の骨や筋肉など身体を作ったり、脳を発達させたりと非常に重要な役割を持っています。たかが食事と侮らず、3食しっかり栄養バランスのとれた食事を摂取しましょう。
健全な食生活を学ぶことを「食育」とも言い、なかなか家庭で食育を学ぶ機会がとれない子どもに対しては自治体などが「こども食堂」という取り組みも行っています。ぜひ、気軽に利用してください。
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