夫婦のかたちはさまざまで、別居を選択する家庭もありますよね。離婚を視野に入れた別居もあれば、再構築のための別居も。この記事では夫婦が別居するメリットとデメリット、別居前に準備しておきたいこと、別居中に不利益をもたらす行為、子どもがいる夫婦が注意すべきことなどを解説します。
- この記事でわかること
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- 速やかに別居した方が安心な夫婦関係
- 一方的な別居のデメリットが大きい理由
- 別居を始める前にしておきたい準備
- 別居中に油断せず注意すべきこと
夫婦が別居を考えるのはどんなとき?
何らかの事情があって離婚へと踏み出す夫婦もいますが、別居を経て離婚に進む夫婦もいれば、別居したからと言って夫婦仲が再構築不可能というわけでもありません。夫婦が別居を考えるのには、どんなきっかけがあるのでしょう。
- 別居を考えるきっかけ
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- 夫婦間で価値観や生活リズムが合わない
- 夫婦喧嘩が増えた
- 夫婦間の問題が子どもに影響を及ぼし始めた
- 育児に対する価値観や考え方が合わない
- 義理の家族との折り合いが悪く、夫婦仲にも影響がある
- 離婚など夫婦関係を見直すための冷却期間を置きたい
- (DVやモラハラなど)一緒に暮らすのが難しい状況が発生した
離婚の理由としてよく挙げられるのが、価値観の相違や生活リズムなどライフスタイルが合わないということです。一緒に暮らしているとストレスを感じ、これ以上夫婦でいるのが辛くなったケースでしょう。
夫婦喧嘩が絶えないようなケースでも、お互いが冷静になるために別居という方法を取ることがあります。夫婦間のトラブルで子どもまで巻き込み始めた場合も、別居が一時的な解決策になることも。親と同居している場合や義理の家族との関係性に悩んでいる場合、夫婦仲がギクシャクし別居をしてみることもあるでしょう。
一時的な措置というよりも、離婚を現実的に考えて別居に踏み切るケースもあります。特にDVやモラハラの被害を受けている人は、速やかに別居することが推奨されます。
夫婦が別居するメリットとは
夫婦が別居することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょう。
夫婦喧嘩のきっかけが減る
顔を合わせれば喧嘩ばかりという状態の夫婦にとって、別居はイライラや怒り、苦痛を軽減する手段になります。子どもに夫婦の喧嘩を見せたくない、というケースでもメリットを感じられることもあるでしょう。
距離を置くことで冷静になれる
同じ家に住んでいると相手の嫌なところばかりが目についていたのが、別居をしたことで冷静に夫婦関係を見つめなおすきっかけになります。相手の存在に感謝の気持ちが湧いてくることもあれば、やはり夫婦関係の継続は冷静に考えても難しいと離婚の決意が固くなることも。
冷静に考えた結果、離婚と夫婦関係の継続のどちらに気持ちが傾くかは、ケースバイケースです。
離婚の準備が捗る
離婚のために弁護士に相談したり、離婚後の住居を本格的に探したい場合、時間と労力が必要です。家で相手と顔を会わせていると、つい弁護士への相談内容を話してしまったり、書類を見られたり、時間がとられてしまうことがあります。別居することで自分の時間を確保しやすくなり、離婚のための準備が捗るというケースも。
離婚したい人にとっては、別居という状態が発生し、ある程度継続したという事実が離婚自由にもなります。離婚を希望している人からすると、離婚への一歩を踏み出したかたちになることもあるでしょう。ただし、離婚に関する決定的な理由がない場合、別居期間は数年以上など長期的に必要なことが多いでしょう。
DVなどの危険から心身を守れる
配偶者からDVやモラハラを受けている場合、別居によって心身を守ることができます。経済的DVは被害者が自覚なく被害を受けているケースもあり、別居して環境がガラッと変わることで、「自分は経済的DVを受けていた」と気付きを得る場合もあります。
夫婦が別居するデメリット
夫婦が別居することには、十分に考慮すべきデメリットもあります。
一方的な別居は離婚の原因になり得る
法律上は、民法752条によって結婚した夫婦は同居する義務が定められています。会社の異動や介護などの諸事情による別居は義務違反には当たりません。しかし夫婦が正当な理由や合意なく別居するということは、婚姻関係の破綻を招いたとみなされることがあるのです。
夫婦の不仲や問題解決のための別居の場合、一時的であれば問題となる可能性はそれほど高くありませんが、長期化すればするほど問題に発展しやすくなります。どちらかが一方的に別居を始めた場合、離婚の意思がなかったとしても、もう一方から「別居は義務違反だから離婚してほしい」と主張されることもあり得ます。
DVなど心身の危険がある場合は速やかに別居するのが安心ですが、危険性や緊急性があまり高くない場合、一方的に別居を始めるとご自身に不利な状況を招く可能性もあることを理解しておきましょう。
居住費などコストがかさむ
別居では、コストがかさむことがあります。特に夫婦の住居から出ていった側は、新しい住まいの確保や水道光熱費などが必要です。実家や親しい友人などの家に身を寄せるという方法もありますが、居候先から費用を請求されるケースもあります。
そのほか、通勤ルートが変わったことによる交通費の増加など、別居によってどんなコストが増えるかは、それぞれのライフスタイルや新しい住居によって変わってくるでしょう。
住居の使い方でトラブルが発生することがある
家の使い方次第ではケンカの種が発生することが考えられます。別居後に勝手に友人知人を家に泊めたり、騒いだ後に後片付けをせずに家屋を傷つけるなどしたときは、配偶者が不満や怒りを抱いても不思議ではありません。
勝手に親や家族を呼んでほぼ同居のようなかたちになった場合に、配偶者が著しく帰り辛くなるようなケースもトラブルになりやすいでしょう。
子どもがいる場合、夫婦の問題を隠しきれなくなる
子どもがいる家庭で別居をする場合、両親の不仲を隠しきることは難しくなります。子どもの性格や年齢、状況によっては、心身に大きな影響を与えることも少なくありません。
仲違いしたまま気持ちがどんどん離れる
別居することで相手への感謝の気持ちが湧くケースがある一方で、どんどん気持ちが冷めてくるケースもあります。つまり、夫婦関係の再構築が難しくなる可能性もあるのです。
財産隠しが発生する可能性が高まる
別居中はお互いの行動が見えにくくなります。すると、配偶者が財産隠しをする可能性も高まります。離婚時には、夫婦が協力して築いた財産は共有財産として分け合う制度が利用されるのが一般的ですが、別居中に財産を隠された場合、離婚時の分け前が減ることがあります。
別居中であっても浮気・不倫は慰謝料発生のリスク大
別居をすると、「もう夫婦関係は破綻しているから、新しい恋人を作っても問題ないだろう」と思われるかもしれません。しかしこの考え方にはリスクが伴います。
婚姻関係にある夫婦には、貞操義務が発生します。これは別居中であっても変わりません。もう離婚間近だから…と思って新しい恋人を探したり、第三者と性的関係を結んだりしたことが、離婚事由の不貞行為に該当してしまうのです。
すると、配偶者から慰謝料を請求されるリスクが発生します。ただし別居によって夫婦関係が破綻していると認められた場合は、不貞行為に該当しないとみなされるケースもあります。
別居する前に準備すべきポイント
別居は夫婦間トラブルのストレスを軽減したり、気持ちを見つめなおす良い機会になることもあります。スムーズに別居を始め、その後の人生に役立つ時間にするためにも、下記のことを実践するのがおすすめです。
別居に関して夫婦間の合意を得る
前述したように、一方的な別居開始はトラブルの元になり得ます。別居をする前は夫婦で話し合いをしましょう。特に子どもがいる場合は、教育費や育児の負担について具体的に決めることで、子どもに与える不利益を小さくすることができます。
別居中の金銭の負担について話し合う
別居を始めると、別居中の生活費はそれぞれ負担になるのか気になりますよね。民法752条によって、夫婦には互いを扶助する義務が定められています。そのため、専業主婦が別居によって生活費を得られなくなるかというと、そうではありません。
正式に離婚するまでは、別居中であっても収入のある配偶者が他方の生活費を負担する義務が生じます。収入のない側は、婚姻費用分担請求として生活費を求めることができます。
ただし一方的に「生活費を払ってよね!」という要求では、話し合いがこじれてしまいます。法律で扶助義務が定められていることなどを説明しつつ、現実的に必要な生活費を計算しておくとスムーズでしょう。話し合いで合意できない場合、家庭裁判所で調停・審判の手続を進めることができます。なお、合意の内容は書面に残し、日付や書名を記載しておくのが安心です。
別居中の育児分担について話し合う
子どもがいる家庭で、特に未成年を育児中の場合、育児の分担を話し合う必要があります。将来的に離婚したときに親権が欲しい場合、別居中でも子どもと一緒に暮らすのが理想的ですが、必ずしも子どもと一緒に暮らしていれば親権を獲得できるとは限りません。
また、子どもにも自分の生活や大切な人間関係などがありますので、「別居するから今すぐ転校」などと親から言われても、なかなか受け入れがたいこともあるでしょう。別居が夫婦間の問題だとしても、可能な限り子どもとの対話の時間を確保し、子どもの気持ちや考えに耳を傾けましょう。
仕事や収入源を確保しておく
別居中は経済的負担が増える可能性が高くなります。専業主婦・主夫の人は、配偶者から生活費を負担してもらえるとしても、仕事や収入源を確保しておくのが安心です。
離婚届不受理申出を出しておく
別居中に、相手方が勝手に離婚届を出してしまうことも考慮しておきましょう。無断で離婚届を提出することは法的には認められていませんが、離婚の無効を希望する場合は裁判所の手続きが必要になります。
勝手に離婚届を出されることを予防するためには、自治体の窓口に「離婚届不受理申出」をしておくのが安心です。
別居するからといって、あらかじめ離婚届に判を押しておくこともおすすめできません。判を押した離婚届を相手の住居に置いていった場合、「やっぱり離婚したくない」と思い直しても、すでに提出されていたというケースもあり得ます。
配偶者の有責事由の証拠を集めておく
離婚を考えるように至った原因が、浮気・不倫など配偶者の有責事由である場合、別居前に証拠をしっかりと集めましょう。別居後は証拠収集が難しくなります。
夫婦の共有財産を把握する
別居後に離婚に進むことを考慮し、夫婦の共有財産を把握しておくのがおすすめです。
- 共有財産の例
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- 夫婦が共同名義で購入した不動産(建物や土地)
- 家具や家電など生活必需品
- 単独名義の財産(不動産、車、預貯金、有価証券など)
- 退職金 など
お互いの収入を把握しておくことも大切です。財産分与に関わってきます。なお、別居後に築いた財産は財産分与の対象にはなりません。
別居後に離婚するか再構築するかはケースバイケース
別居する理由がさまざまなように、別居を経て夫婦関係が終わるか継続するかもさまざまです。別居前は「離婚したい!」という気持ちが強かったのに、距離を取ったら離婚したくないと思い直すこともあるでしょう。ところが別居をしてみたら相手が離婚を強く希望するようになった、ということもあり得ます。
そのため別居することに決めたならば、ご自身の気持ちや意向のみならず、離婚する可能性、夫婦関係を継続する可能性の両方のシミュレーションをし、情報収集や準備を進めておくのが安心です。
おわりに:別居するなら準備が大切!今後の人生のためにも慎重に
別居のメリットとデメリットを紹介し、しておきたい準備を解説してきました。別居をする場合は、その後に離婚する可能性と再構築する可能性の両方があることを考慮しつつ、適切な準備や情報収集を進めるのが安心ですよ。
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