就職活動で重視されることもある学歴。大卒と院卒の待遇の違いが異なる人もいるのでは?
この記事では、大学院に進むメリット・デメリット、学部卒と院卒の初任給や生涯年収の違いなどを解説します。これから大学院に進む人や大学院に在学中の院生、大学院を目指す社会人は是非参考にしてくださいね。
- この記事でわかること
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- 学士・修士・博士の定義と違い
- 履歴書に記入する最終学歴
- 企業が大学院卒の人材を高評価したくなる理由
- 大学院卒と学部卒の初任給・生涯年収の差
大学と大学院の違いって?学士・修士・博士の意味
大学院卒業者と就職コンプレックスの関係を理解するためには、まずは大学と大学院の違いをしっかりと認識しましょう。大学を卒業すると学士号を得られ、大学院を卒業すると修士号を得られます。
- 学士とは
- 学士は、大学を卒業した人が得られる称号です。英語では学士のことを「Bachelor’s degree」といいます
- 修士とは
- 大学院を卒業した人が得られる称号で、「マスター」とも呼ばれます。。英語では修士のことを「Master’s Degree」といいます。大学院の研究を修了した人は、基本的に修士号を取得しています。
学士号と修士号の大きな違いは、修士号を取るためには「修士課程」や「博士前期課程」において、専門性の高い研究や実績を修める必要があることです。大学を卒業してから大学院に進むときにも、院試を受けて合格したり教授の推薦をもらったりしなくてはいけません。ただし、医学部、獣医学部、薬学部、歯学部など6年制の特定の学部の場合、学部卒業の時点で「修士相当」と認識されることがあります。
博士とは
修士からさらに専門的な研究へと進み、大学院の「博士課程」や「博士後期課程」を終えた人は、博士号の称号を得られます。英語では博士号を「PhD」または「Doctor’s degree」と呼びます。日本語では「ドクター」と呼ばれることも多いです。
博士課程では標準修業年限は5年とされています。そのため、博士号を取得するのは30代以降の場合が多くなります。特定の6年制の学部を卒業した人が大学院に進む場合、博士課程に進むことを指す場合が多いでしょう。
ポストドクター(ポスドク)とは
博士課程を修了後、大学等の研究機関で任期付きの研究員として働く人を「ポストドクター(ポスドク)」と呼びます。ポストドクターのキャリアプランの多くは大学教員ですが、企業に就職する人もいます。
大学と大学院は違う学校でもいい?最終学歴はどっち?
大学卒業後、大学とは異なる運営の大学院に進むことは問題ではありません。そもそも大学院には、学部のある大学を持たない「大学院大学」や「独立研究科」もあります。大学院を修了した場合は、最終学歴は大学院修了となります。
- 最終学歴とは
- 最も高い水準の教育機関を卒業(または修了)した経歴
大学卒業後に専門学校に通った場合は、最終学歴は「大学卒」となります。これは専門学校よりも大学の方が教育水準が高いからです。
なお大学院を修了した場合、履歴書には「卒業」ではなく「修了」という言葉を使用してください。大学院は「博士課程前期(修士課程)」と「博士課程後期(博士課程)」に分かれています。修士号だけを取ったのか、博士号も取ったのかを明確に記載しましょう。修士号のみであれば「修士課程修了」と記載します。博士号も取得したのであれば、「博士課程修了」と記載します。
大学院を中退した場合、大学院は最終学歴に含まれません。最終学歴として認められるのは、卒業(修了)した場合のみです。大学を中退した場合は、最終学歴は高校となるでしょう。ただし中退した場合でも履歴書に学校名を記入することは可能です。履歴書には学歴を時系列に沿って記入します。中退した場合は、「◯◯大学中退」「〇〇大学院中退」と記入します。
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学歴ロンダリングとは?就職でメリットはある?
学歴に関して「学歴ロンダリング」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。学歴ロンダリングとは、大学院進学のタイミングで出身大学よりも高いレベルの大学院に進学することを指します。
前述した通り、最終学歴とは「最も高い水準の教育機関を卒業(または修了)した経歴」ですので、学歴ロンダリングすることで大学卒業時よりも高学歴になります。ロンダリングという言葉が使われているためネガティブなイメージを抱かれることもありますが、レベルの高い大学院に進むことはむしろポジティブに捉えられてよいことです。院試に合格して大学院に進み、専門的な研究や実績を挙げて修了したのであれば、評価されるべき経歴です。
学歴ロンダリングはより高レベルの環境で研究を行うことができるほか、就職活動では学歴フィルターを通りやすいというメリットがあるでしょう。また、理系の研究職や技術職の場合は院卒が有する知識やスキルが重宝されることが多いです。
大学院卒で就職するメリットとデメリット
大学院では学士よりも高度な研究を行います。しかし学術的なメリットが多い一方で、大学院に進むことにデメリットを感じる人もいます。大学院に進むことのメリットとデメリットを解説しますので参考にしてくださいね。
大学院に進むメリット:理系は就職に有利
学士よりも専門性が高い研究をしてきた大学院生は、特に理系の業界で重宝されることがあります。就職活動では、技術職・研究職で内定をもらいやすいとされています。就職活動をより有利に進めるには、院生時代の研究実績が重要です。企業が魅力に感じるような専門的知見や研究結果を有していると、内定を獲得しやすいでしょう。
大学院に進むメリット:専門スキルを有した即戦力になれる
大学卒業時点では、総合職として採用されることが多くなります。事務職や営業職としてキャリアをスタートさせ、徐々にステップアップする人が多いでしょう。
院卒の場合、卒業時点で専門的知識やスキルがある程度身に付いています。研究者やエンジニアとして、企業からは即戦力として活躍することが期待されています。文系の大学院を修了した場合も、たとえば経営学修士(MBA)を有しているとコンサルティング会社などで即戦力として働く能力が求められています。
大学院卒のデメリット:初任給が学部卒より高いことがある
院卒で就職した場合、学部卒と比較して初任給が高いこともあります。特に技術職や専門職では特にその傾向が見られます。
大学院卒のデメリット:求人が少ない
修士や博士が持つ強みは高い専門性です。ところが、研究分野によっては専門知識やスキルが活かされる求人の数が非常に少ないことがあります。すると求人に対する競争率が高くなってしまい、なかなか就職活動が成功しません。大学院の修了者が就職でコンプレックスを抱えるのは、少ない求人に対して応募者が殺到し倍率が高くなることが大きな理由です。また、専門知識やスキルを活かすことのできない求人では、自己の強みをアピールすることができずに内定を獲得できないこともありえます。
また、基本的に日本の研究者の募集は多くありません。研究の道に進みたい場合は研究実績を多く挙げたり、その研究分野での人脈を広げておくことをおすすめします。
大学院卒のデメリット:学費がかかる
大学院に進むということは学費がかかります。条件を満たせば奨学金を受給することはできますが、将来的には返済しなくてはいけません。
大学院卒のデメリット:社会人になるのが最低でも2年遅れる
学部卒と比較すると、社会人になる時期に最低でも2年の遅れが発生します。学費がかかるということはもちろんですが、大学院時代の生活費も必要です。ただし大学院で研究に時間を費やしたことが、将来的なキャリア形成につながることもあります。短期的な目線で「大学院は金銭コストが大きいから」と進学をやめるのはおすすめできません。
大学院に進む場合は、長期的なキャリアプラン、ライフプラン、マネープランを考えておくのが安心です。
学部卒と大学院卒だと生涯年収に差が出る?
大学院は研究分野によっては求人数が少なく、希望通りの就職ができない可能性もあります。まだ、大学院の学費コストもかかります。ただし、一般的には院卒の方が初任給が高く、生涯年収も学部卒と比較して高いと考えられています。
厚生労働省が公表している「令和2年賃金構造基本統計調査結果の概況」によると、大学院修士課程修了の初任給は25万5600円で、大学卒は22万6000円です。年齢を重ねるにつれてその金額差は大きくなることがあり、2014年に内閣府経済社会総合研究所が発表した分析によると、生涯年収では大学院修了者の方が5000万円近く収入が多くなりました。
社会人になってから大学院に入学できる?
大学院を修了すると専門的なスキルアップを実現しやすくなります。企業としても、専門的な知見や技術を持った人は、確保しておきたい貴重な戦力です。スキルアップやキャリアアップを検討している人は、大学院進学を検討するのもおすすめです。特に、すでに働きだしている社会人こそ大学院にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
大学院に進み、学び直しする社会人は多くいます。社会に出て仕事を経験したからこそ、学びたい分野や身に付けたい専門知識、キャリアプランが明確になることがあります。若い頃よりも社会人になってからの方が「学ぶことが楽しい」という人もいます。
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おわりに:大学院は就職に強い!生涯年収などキャリアアップにも有利
学部卒と比べると社会に出るタイミングが遅くなるなど、院卒の人は焦ることがあるかもしれません。しかし大学院で研究に専念することで、就職やキャリアプランを有利にする専門知識を磨くことができます。長期的なキャリアプランやライフプランを考えながら、院卒の強みを発揮してくださいね。
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