どんな人にも、気分が落ち込んだり情緒不安定になるときはあります。しかし気分の落ち込みが数日、数週間と長く続くなら、うつ病、自律神経失調症、不安障害、パニック障害などこころの病気になっているのかもしれません。
今回は気分の落ち込みを伴うこころの病気について、その原因や特徴、こころの病気の診断・治療のための病院受診のコツと一緒に紹介していきます。
- この記事でわかること
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- ホルモンバランスやカフェインの影響も?落ち込む原因とは
- 食欲不振や集中力低下…うつ病の兆候の種類
- 自律神経失調症のサインと発症しやすい人の特徴
- 全般性不安障害と社会不安障害の違い
- ある日突然発症する?パニック障害の症状
- 精神科、心療内科、神経内科の違いと病院の選び方
気分が落ち込むのは情緒不安定?心の病気が原因かも?
こころが安定せず、感情の起伏が激しくなった状態を情緒不安定と言います。
人が情緒不安定の状態に陥る原因としては、以下のパターンが考えられるでしょう。
【情緒不安定を引き起こす原因】
- 甲状腺機能亢進症など、他の病気による影響・症状
- 女性の場合は生理や妊娠、出産に伴うホルモンバランス変化の影響
- カフェインやニコチン、アルコールなど刺激の強い物質の過剰摂取
- 睡眠障害のため、心身を十分に休めることができなくなった影響
- 日常生活、または一時的なストレスへの反応
- 現状や将来に対する不安感からくるもの
- うつ病など、他の精神疾患の影響や症状
情緒不安定の状態に陥ると無意識のうちに悲しさ、辛さ、苛立ちと言ったマイナスな感情のなかでのこころの浮き沈みが激しくなり、暗い気持ちになることも多くなってしまいます。
日頃からカフェインやニコチン、アルコールなどの刺激物の摂取を適量に留め、十分に心身を休めるよう注意していれば、情緒不安定はある程度予防できるでしょう。
また原因が他の精神疾患の場合には、各疾患の症状から情緒不安定の兆候をみつけることもできます。
この記事では、代表的な精神疾患「うつ病、自律神経失調症、不安障害、パニック障害」について、日ごろから気を付けておくべき精神疾患とその症状・特徴を紹介します。
自身の情緒不安定、こころの病気の兆候がないかのセルフチェックにお役立てください。
うつ病セルフチェック-憂うつになるのは病気とは限らない?
まずは代表的な症状に当てはまるかどうかで、うつ病の可能性を確認していきましょう。
【うつ病の代表的な症状】
- 以前は楽しめていたことも含め、物事に楽しみや興味を持てなくなった
- 気分の落ち込み、憂鬱感、絶望的な気持ちをいつもどこかで感じている
- 寝つきが悪い、眠りが浅く夜中に何度も起きるなど睡眠障害の症状がある
- 食欲が沸かず食事を食べられないか、または過剰に食べすぎてしまう
- いつも疲れた感じや倦怠感があって、何をするにも気力が沸かない
- 勉強や仕事はもちろん、読書やテレビを見ることにも集中できない
- 周囲の人から指摘されるくらいに所作、話し方が遅くなる
- 最近、周囲の人から挙動不審な態度、そわそわした態度を指摘される
- 自分が周囲に迷惑をかける、ダメな人間だという気がしてならない
- 迷惑をかけないよう死にたい、消えたい、自分を罰したいと思ったことがある
うつ病は、脳や自律神経の働きに異常が生じて発症する精神疾患です。
具体的には脳内で情報伝達を行う神経伝達物質セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンの分泌量が減ったり、偏ることで起こると考えられています。
このため、何か特定のトラブルや出来事に対し上記のような症状が短期的に起こるものは、うつ病には当たりません。
トラブルや嫌なことに対峙したとき、一時的に睡眠障害や食欲不振、気分の落ち込みが起こるのは人間として普通の反応なのです。
上記セルフチェック項目に複数当てはまったからと言って、必ずしもうつ病とは限りませんが、長期的に続くようならうつ病の可能性があると考えるべきでしょう。
自律神経失調症セルフチェック-4種類のタイプの特徴は?
次に、自律神経失調症の代表的な症状を見ていきましょう。
【自律神経失調症の代表的な症状】
- 基本的に昼夜が逆転した生活をしている
- 動悸や息苦しさ、胸への圧迫感がある
- だるくて疲れやすく、手足が冷えていることが多い
- 寝つきが悪い、眠りが浅いなどの症状があり睡眠不足だ
- 睡眠障害のためか、疲れを感じているのに眠れない
- 最近ショックなこと、生活面での大きな変化があった
- 家庭や職場での人間関係、または将来や健康に対し大きな不安がある
- 基本的に運動不足で、食事は急ぎで食べるか、抜くことが多い
- あまり食欲がなく、下痢または便秘症状もありおなかの調子が良くない
- 吐き気や、喉がつまるような感じがして苦しいときがある
- 仕事や勉強の成績が不振で、どう対処したらいいかと悩んでいる
- 夏から秋にかけてなど、季節の変わり目に体調を崩しやすい
- 顔や手足への発汗が多く、立ち眩みや気分不良が負い凝りやすい
- 耳鳴りやめまい、ふらつきを感じることが多い
- 日中に強い眠気を感じ、ぼーっとすることがある
自律神経は、生命活動に欠かせない心臓や肺の動き、そして気温の変化や食事の摂取など外からの刺激への反応を司る神経のことです。
交感神経、副交感神経の2つの神経から成り、状況に応じてそれぞれの自律神経が切り替わり、どちらか一方が優位になることで働いています。
【2つの自律神経の働き】
- 交感神経
- 覚醒・緊張した状態を司る自律神経で、日中や起きている間に優位になる
- 副交感神経
- リラックスした状態を司る自律神経で、夜や睡眠時などに優位になる
自律神経失調症は、何らかの理由で自律神経がうまく働かなくなった状態です。情緒不安定を伴う場合もあり、大きく以下4つの種類に分けることができます。
【自律神経失調症の種類】
- 《1》本態性自律神経失調症
- 本人が生まれもった体質、自律神経の乱れやすさによるもの。低血圧や虚弱体質、体力に自信のない人が発症する。
- 《2》神経症型自律神経失調症
- 心理的な原因から、自律神経の働きが乱れるもの。自分の心身の不調、体や気持ちの変化に敏感な人が発症しやすい。
- 《3》心身症型自律神経失調症
- 日々の生活から受けたストレスを抑え続けた結果、発症するもの。我慢強い人こそ発症しやすく、発症者の半数がこのタイプだとされる。
- 《4》抗うつ型自律神経失調症
- 慢性的なストレスを蓄積することで発症するもの。几帳面で完璧主義な人がなりやすい。
全般性不安障害(GAD)セルフチェック-社会不安障害との違いは?
全般性不安障害でも、情緒不安定を含む以下のような身体的・精神的症状が現れます。
【全般性不安障害の代表的案症状】
《身体症状》
- いつもそわそわして、挙動不審な態度をとってしまう
- 頭が揺れる、もうろうとするような感覚やめまいがある
- 頭痛、頭が重い感じ、頭への圧迫感や緊張、しびれるような感じがある
- 体への悪寒、手足を中心に冷えやほてりを感じる
- まるで全身が心臓になったように、脈拍を強く感じる
- 自分の体が、自分のものでないように感じる
- 便秘や頻尿の症状がある
《精神症状》
- 小さなことがとても気になり、些細なことで不安になってしまう
- 注意散漫で、いろいろなことに不安が及び落ち着かない
- 根気がなくて疲れやすく、イライラして怒りっぽい
- 記憶力が悪くなるため、覚えていられることが減る
- 悲観的な気持ちになり、人と会うのもおっくうで外に出たくなくなる
- 寝つきが悪く、数時間おきに目が覚めてしまう
全般性不安障害は、多様な出来事・物事に対して日常生活に支障をきたすほど過剰に不安、心配を感じてしまう精神疾患です。
不安の対象となる範囲は非常に広く、自身や家族の健康のことから災害の可能性、他者との人間関係など身近なものから、海外の戦争など国際問題にまで及びます。
自分の力では解決できない、心配しても仕方のないことまで過剰に心配するため、いつも漠然と大きな不安に苛まれるのが特徴です。
その結果、常に心身が緊張した状態になって疲れてしまい、日常生活を送れないほど身体的・精神的症状に苦しめられるようになります。
社会不安障害(SAD)セルフチェック
全般性不安障害に近いもう一つの精神疾患として、社会不安障害が挙げられます。
世の中のありとあらゆることに対し強い不安を感じる全般性不安障害に対し、社会不安障害では対人関係にのみ、過度の不安や緊張を感じるのが特徴です。
例えば人前に立ってのスピーチ、複数人との対話を求められる食事会や接待などの場面で過剰に緊張し、以下のような体調不良が引き起こされます。
【社会不安障害の代表的な症状】
- 人前で恥をかくこと、他者からの評価が下がることがものすごく怖い
- アルコールを摂取したりしなければ、怖くて人と交流する場に行けない
- 人前で話す機会や、職場や行事など、人と交流する場面を極力避ける
- 人前に出たときには激しい動悸や息切れ、呼吸困難、手足の震えや体の硬直、冷や汗の噴出、吐き気や下痢などの身体症状が現れる
パニック障害セルフチェック-うつ病を併発しやすいことに注意
パニック障害によって引き起こされる代表的な症状としては、以下が挙げられます。
【パニック障害の代表的な症状】
- 急激に心拍数が上がる、動悸が現れることがある
- 体の震えや息苦しさ、冷や汗の噴出が起こる
- 喉に何か詰まっているような窒息感、胸の痛みや不快感がある
- おなかの不快感や吐き気が現れる
- めまい、ふらつき、気が遠くなるような感覚が現れる
- このまま死ぬのでは、気が狂うのではという恐怖がある
- いま起こっていることに現実感がなく、自分が自分でないような感じがする
- 寒気がする、または体が熱っぽく感じられる
- からだの一部がジンジン、びりびりとしびれるような感覚がある
- 上記の症状が同時に4つ以上現れ、5~20分程度で収まる
- 発作が始まってから、辛い症状は10分程度でピークに達する
- 同時に複数の症状が現れる発作を、何度も繰り返し経験している
- 身体症状について病院で検査を受けたが、異常が見つからなかった
上記のような症状を伴うパニック障害の発症原因は、まだはっきりわかっていません。
しかし近年では、脳内で不安を司る大脳、大脳辺縁系、青斑核(せいはんかく)・視床下部の働きに異常が生じることで発症する、という見方も出てきています。
脳に異常が発生しているため一度発症すると、本人の意思や体調に関係なく発作を繰り返すようになるのでは、と考えられています。
発作を繰り返すうちに発作への恐怖、発作が起こりやすい場所への恐怖が生じること、そして生活への不安が増すことから、パニック障害はうつ病を併発しやすいとも指摘されているのも特徴です。
こころの病気の病院受診費用目安と病院の選び方
こころの病気で病院の保険診療を受ける場合、かかる費用の目安は初診で2,500~5,000円、再診では1,500~2,500円程度です。
保険診療にかかる医療費は一律であるため、どの医療機関を利用しても必要な費用は変わりません。
ただし血液検査の有無など、初診時の検査内容により、数千円の幅が出てきます。
なお保険診療以外に、医療機関がその料金を自由に設定できる自由診療を受けることもできます。
例えば光トポグラフィー検査、TMS治療などは自由診療で受けられますが、保険診療と自由診療を同じ病名に対して併用することは禁止されています。
保険診療と自由診療、どちらでこころの病気を医療していくかは、自身の経済事情と医師からのアドバイスを受け、熟考してから決める必要があります。
こころの病気の場合、受診すべき診療科目は精神科、心療内科、神経内科のいずれかです。
以下にそれぞれの違い・特徴をまとめましたので、診療科目選びの参考にしてください。
【精神科、心療内科、神経内科の違い】
- 精神科
- こころの病気そのものを治療する。精神的な症状が強い場合の受診がおすすめ
- 心療内科
- ストレスによる動悸、腹痛、頭痛など身体症状が強い場合の受診がおすすめ
- 神経内科
- 体の震え、しびれなどストレスによる神経系異常が強い場合の受診がおすすめ
あなたに合った医師のいる医療機関の受診が、こころの病気を治す第一歩になります。
こころの病気で医療機関にかかるなら、以下を参考にあなたという患者の感覚、考え方に合ったところを選ぶようにしてくださいね。
【こころの病気を治す医療機関、選び方のコツ】
- 治療薬の必要性や、他の選択肢についてきちんと説明してくれるか
- 症状やこころの病気の根本原因を断つためのサポートや治療法を提供しているか
- 医師が書類やパソコンではなく、きちんとあなたの顔を見て診療にあたってくれるか
- あなたの状況に合わせ、症状改善だけでなく自立や復職支援のサポートをしてくれるか
- 医療業界だけでなく他の職種、業界にも精通した社会経験豊富な医師がいるか
- あなたにとって通いやすい立地、診療時間、代金の医療機関であるか
おわりに:気分の落ち込みが長く続くなら、こころの病気を疑い医療機関へ
ショックを受ける出来事やトラブルに見舞われれば誰でも気分が落ち込みます。しかし、その気分の落ち込みが長期間にわたり続くなら、こころの病気が原因かもしれません。こころの病気は気分の落ち込みをはじめ、さまざまな体調不良、睡眠障害などの症状を表します。本記事で紹介したこころの病気のうち、複数の症状が当てはまるものがあるなら、早めに近隣の精神科、心療内科、神経内科のいずれかを受診しましょう。
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