親子関係のこじれや不仲の修復に、映画や本がよいヒントとなることもあります。親子関係の問題を客観視したり、気持ちの整理整頓をするのに映画や本が役立つでしょう。
この記事では、親子関係をテーマにした洋画・邦画など映画10選、親子関係の問題のヒントになる本10選を紹介します。
- この記事でわかること
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- 親子関係修復に映画や本が与えるメリット
- 親子の確執や和解を扱った洋画・邦画
- 親子関係の問題を扱ったエッセイや専門書
- 親子関係修復に映画や本がおすすめな理由
- 親子関係について考えさせられる映画10選
- 親子関係について考えさせられる本10選
- 親子に関する本『それでも親子でいなきゃいけないの?』(田房永子著、秋田書店)
- 親子に関する本『母』(青木さやか著、中央公論社)
- 親子に関する本『謎の毒親』」姫野カオルコ著、新潮社)
- 親子に関する本『東京タワー オカンとボクと、時々オトン』(リリー・フランキー著、新潮社)
- 親子に関する本『幸福な食卓』」瀬尾まいこ著、講談社)
- 親子に関する本『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(石原加受子著、あさ出版)
- 親子に関する本『こじれた仲の処方箋』(ハリエット・レーナー著、東洋館出版社)
- 親子に関する本『思い出すと心がざわつく こわれた関係のなおし方』(イルセ・サン著)
- 親子に関する本『リア王』(シェイクスピア)
- 親子に関する本『にんじん』(ジュール・ルナール著)
- おわりに:映画や本から親子関係を見つめ直すヒントをもらおう
親子関係修復に映画や本がおすすめな理由
親子関係修復におすすめなのが、親子を題材にした映画や本を観ることです。
映画というとエンターテイメントのイメージが強いかもしれません。しかし「映画は人生の教科書」と呼ばれることもあるくらい、考え方のヒントになります。
映画を観ることで、親子関係について下記のような気づきを得ることができるでしょう。
- さまざまな登場人物を通して、自分以外の視点から親子関係を見つめ直せる
- 登場人物に共感することによって、気持ちの整理がつく
- 泣く、怒る、笑うなど、映画を観ることで感情を吐き出せる
- いろいろな親子関係のかたちがあることに気づく
本も、小説やエッセイ、専門書などさまざまなジャンルがあります。親子関係をテーマにした本を読むことで、映画と同じような効果を得られたり、自身の状態を客観的に分析する助けになるでしょう。
親子関係について考えさせられる映画10選
親子関係をテーマにしたおすすめの映画を紹介します。気楽に楽しめる作品から親子について考えさせられる作品もありますので、ぜひチェックしてください。
親子に関する映画『ビッグ・フィッシュ』
ファンタジックなストーリーテリングで有名人となったエドワード。その息子であるウィルは、父の話を嘘だと感じて好きになれずにいました。父と子はすれ違ったまま年月が流れていきますが、父親が病で倒れたことをきっかけに、父子の距離が縮まります。
鬼才ティム・バートン監督が手がける映像美とともに、父と息子の確執が解消されていく展開にも注目。わだかまりの解消には、お互いが向き合ってコミュニケーションすることも大切だということ、相手の話に耳を傾けることで理解が促されることが伝わってくるはずです。
親子に関する映画『私ときどきレッサーパンダ』
『私ときどきレッサーパンダ』は、ピクサーによる母と子の絆を描いたアニメーション映画です。1990年代のカナダ・トロントのチャイナタウンを舞台に、母親の期待通りの娘になろうとする13歳の女の子メイの葛藤が映し出されます。
ある日突然、巨大なレッサーパンダに変身してしまったことから、メイの日常が一変。家族関係、友情といった人間関係から、思春期の感情コントロールまで扱うテーマは多彩です。
何世代にも渡る家族の伝統、自分らしさの解放など、母と娘の親子関係について考えさせられるでしょう。
親子に関する映画『リトルミスサンシャイン』
『リトルミスサンシャイン』は、アメリカの個性豊かな家族の絆を描くヒューマンコメディ映画です。フーヴァー家の9歳の娘オリーヴが、ビューティーコンテストの決勝に出場が決まり、家族みんなでミニバスに乗り込みテキサスからロサンゼルスへ出発。
ヘロイン中毒の祖父、口を聞かないことを誓った兄、自殺未遂を図ったばかりのゲイの叔父、成功理論を振りかざす父など、家族は個性的な人ばかりです。普通の感覚を持った母がみんなをまとめようとしますが、旅はトラブルとパニックの連続。
機能不全家族がトラブルを乗り越えながら、家族として再生していく姿を見届けてみませんか?
親子に関する映画『ぼくと魔法の言葉たち』
自閉症の青年とその家族の過去と現在、将来へのチャレンジを捉えたドキュメンタリー映画。幼少期に自閉症の症状が現れたオーウェンは、家族とのコミュニケーションがほとんど取れなくなりました。家族は戸惑い、オーウェンとの接し方に悩みます。するとある日、ディズニーの大ファンのオーウェンは、ディズニーのキャラクターやセリフを介すると、コミュニケーションが取れることを発見。自閉症の症状と付き合いながら、家族や社会と結びつきを保つ生き方が始まります。
やさしい青年に成長したオーウェンは、家族に愛されながら社会人としてのスキルアップに励んでいる努力家です。家族の支え合い、自立の大切さなどが伝わってくるでしょう。
親子に関する映画『歩いても 歩いても』
『誰も知らない』や『万引き家族』の評価も高い、是枝裕和監督による2008年公開の映画です。阿部寛演じる男性は、夏の帰省で妻と息子を連れて久しぶりに実家に足を運びます。この日は、実家の長男が若くして亡くなった命日でもありました。
父親への苦手意識、噛み合わない母と妻など、一筋縄ではいかない家族の姿が見え隠れします。ひとりひとり普通の人間だからこそ、それぞれの考え方が少しずつズレていくこと、家族だからと言って無条件にうまくいくわけではないことに、改めて納得できるかもしれません。樹木希林、原田芳雄、夏川結衣、YOUなど実力派キャストの演技にも注目です。
親子に関する映画『蛇イチゴ』
是枝裕和監督のプロデュースを受けた、当時28才の西川美和監督・脚本のコメディ映画。祖父の葬式に音信不通の兄が姿を見せたことで起こる、ある家族の崩壊を描くドタバタ劇です。
どこにでもあるような一般家庭が実は秘密や問題だらけだったことが、ドミノ倒しのように明るみになっていきます。問題と向き合うことの難しさ、問題解決には痛みを伴うことがコミカルなテイストで描かれているのが本作の魅力です。
西川美和監督は『ゆれる』や『永い言い訳』など、家族関係や人間関係に潜む毒を描くことも多く、本作も考えさせられる内容となっています。
親子に関する映画『嫌われ松子の一生』
やることなすことマイナスになってしまう女性の人生を描いた映画です。主人公の松子の少女時代や人格形成は、父親との関係性が大きく影響しています。父親は、病弱な妹を可愛がるあまり松子に対しては冷たく接します。松子は父親に好かれようと工夫しますが、その努力は思うようには実りません。
愛情不足に苦しんだ女性の転落人生を、ミュージカル要素も交えながら映し出します。大人になった松子が父親や家族と和解できるのかどうかも見どころです。
親子に関する映画『ペコロスの母に会いに行く』
漫画家・岡野雄一さんの同名エッセイ漫画を映画にした、実話に基づく物語です。漫画家の息子と認知症の母との心温まる交流が描かれています。
認知症をテーマにした映画には悲しいイメージを持たれているかもしれません。『ペコロスの母に会いに行く』では、認知症だからこそ生まれるユーモアも交えつつ、ポジティブな気持ちになれる作品となっています。
舞台となった長崎県の街並みや雰囲気なども本作の魅力です。親子が互いに年齢を重ねてから鑑賞すると、親子関係に対する考え方がまた変わってくるでしょう。
親子に関する映画『老親(ろうしん)』
「介護の原点…それは、対等な人間関係にある。」と『老親』公式HPにあるように、介護を切り口に、親子関係の問題や女性の自立を描いた意欲作です。
萬田久子演じる専業主婦の成子は、舅の介護に疲労困憊中。そこへ、歩けなくなった実母の介護も頼まれるが、「どんなことがあっても私は看ないから!」と宣言します。というのも、成子は母親から事あるごとに叱咤されてきたことにわだかまりを感じているからです。
大人になってからは、親との関係に介護という問題も発生しますが、本作を通して介護と親子関係について考え方を整理整頓してみてはいかがでしょう。
親子に関する映画『ひとくず』
『ひとくず』は、児童虐待に真正面から向き合った注目作品です。虐待を受ける少女と空き巣泥棒の男が出会ったことからストーリーはスタート。日本における児童虐待の実態が描かれるほか、虐待サバイバーが抱える苦しみなども表現されていきます。
本作誕生のきっかけは、監督・脚本を務める上西雄大氏が児童相談所で尽力する医師から話を伺ったことだそう。映画を通してひとりでも多くの子どもが救われることを願い、フィルムを作りました。
2019年のミラノ国際映画祭やニース国際映画祭、マドリード国際映画祭などで数々の賞を受賞。2022年時点でも本作を上映する映画館があるほど、その社会的必要性が高まっている作品です。
親子関係について考えさせられる本10選
親子関係をテーマにしたおすすめの本を紹介します。著者の実体験を基にしたエッセイ、心が揺さぶられる小説、カウンセラーや心理学者による専門書、古典的名作の中から、親子関係を見直すヒントになる本を見つけましょう。
親子に関する本『それでも親子でいなきゃいけないの?』(田房永子著、秋田書店)
話題作『母がしんどい』の著者である田房永子さんが描き下ろしたエッセイコミック。親の過干渉や支配、無関心な父など、しんどい親子関係が描かれています。
このエッセイは、親との関係にしんどさを感じる人へのヒアリングや田房さん自身の体験から生まれました。本書は「インタビュー編」「考察編」「エッセイ編」の三部構成。ゆるさを感じるイラストで、読みやすいのも魅力です。
「うちの親は変かも」「親子関係が辛い」という気持ちがある人がこの本を読むと、心の整理整頓に役立つでしょう。
親子に関する本『母』(青木さやか著、中央公論社)
お笑い芸人・タレントの青木さやかさんの赤裸々エッセイ。母親との確執から和解、親孝行など、大人になってから母親に対して抱くようになった感情がしたためられています。
子ども時代に母親から褒められたことがなかったという青木さん。褒められたいという気持ちを抱え、プレッシャーを感じていたそうです。大人になってから就職や出産などを経験しますが、親子の不仲は心のどこかで気になっていたようでした。
厳しいしつけや疎遠な時期を経て、親子関係の修復・和解にまで至った経緯をエッセイで読んでみてはいかがでしょう。
親子に関する本『謎の毒親』」姫野カオルコ著、新潮社)
親からの何気ないひと言、叱責、無関心などが子どもの心に悪影響を与えることは少なくありません。姫野カオルコさんによる小説『謎の毒親』は、親との関係に悩み続けてきた女性が、過去を振り返る小説です。
物語は、著者である姫野カオルコさんの実体験に基づいた「投稿」と、それに対する「回答」によって構成されるという新鮮な構成。機能不全家族をテーマにしながら、ミステリの謎解き的要素もあります。
親との関係性に悩みを抱えていた人にとって、毒親から解放されるヒントになる一冊かもしれません。
親子に関する本『東京タワー オカンとボクと、時々オトン』(リリー・フランキー著、新潮社)
文筆家や俳優などマルチな才能を見せるリリー・フランキーさんの自伝的長編小説です。母親との強い絆、破天荒な父親との関係などについて、著者の幼少期の記憶から始まり、大人になってからの変化も描かれます。順風満帆の家族とはいいにくいものの、たしかな絆で結ばれた親子関係からは、お互いを大切に思う深い愛情が感じられるはず。
2006年度の本屋大賞受賞作品であり、200万部を超えるベストセラーとなりました。映画化・ドラマ化もされていますので、映像で楽しむのもおすすめです。
親子に関する本『幸福な食卓』」瀬尾まいこ著、講談社)
女子高生を主人公に、ユニークな家族模様を描く物語です。「父親をやめる」宣言をした父、家出中の母、突如として大学進学を辞めた兄など、マイペースな家族に囲まれながら、一人の女子高生が成長していきます。
一見するとバラバラに見える家族でも、愛情や信頼があれば大切な家族であることには違いないことがわかります。家族の在り方やひとりの人間の生き方に「正解」はないという気づきも得られるでしょう。
あたたかい気持ちになりたいときや家族のよさを思い出したいときにおすすめの一冊です。
親子に関する本『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(石原加受子著、あさ出版)
親の過干渉や束縛など、親子関係がこじれるメカニズムを解説しながら、親子のコミュニケーションへのアドバイスを与えてくれる一冊です。具体例とともに親子関係が苦しくなる原因が分析されていますので、ネガティブな状態の理解を助けてくれるはず。
著者は、医療ジャーナリストであり心理カウンセラーでもある石原加受子さん。2014年に発売された『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研パブリッシング)に続き、親子関係改善をサポートする本を執筆しました。
親子に関する本『こじれた仲の処方箋』(ハリエット・レーナー著、東洋館出版社)
人間関係のこじれについて、「謝罪と許し」という糸口から解決の方法を探る本です。関係修復には謝罪が大切であることを解説しながら、やってはいけないNG謝罪についても言及。また、謝罪されたときの心の整理法もまとめられています。
ケーススタディも多く収録されていますので、具体的なイメージを持ちながらこじれた人間関係の修復を考えることができるでしょう。
著者は全米ベストセラー本を執筆したことのあるハリエット・レーナーさんです。心理学者としての長年の経験と専門知識に、世界中から高い信頼が集まっています。
親子に関する本『思い出すと心がざわつく こわれた関係のなおし方』(イルセ・サン著)
親子関係に悩んだことのある人で、距離を置く選択をした人におすすめの本です。疎遠になってしまった家族のことが気にかかる、親子の心の距離を縮めたいという悩みを抱えている場合、本書がわだかまり解消のヒントになるかもしれません。
心理療法の観点から、人間関係の喪失が心に与える影響を指摘。メンタルを整えるための方法として、「感情の棚卸し」「向き合う」「別れ」について解説します。事例と具体的なエクササイズが豊富に収録されていますので、親子関係への理解が促されるでしょう。
著者は、デンマークで活躍する心理療法士のイルセ・サンさん。HSPの人の悩みに寄り添った本『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』も、同氏による世界的ベストセラーになりました。
親子に関する本『リア王』(シェイクスピア)
イギリスの劇作家シェイクスピアの『リア王』は、父親と三人の娘の親子関係が描かれる名作です。一国の主であるリア王は年齢を重ね、三人の娘に国を三分割して譲ろうとしますが、それをきっかけに親子関係の不仲や愛情の行き違い、不信などが表面化し、大きな悲劇を生み出します。非常に教訓の多い作品ですので、読むタイミングやそのときのメンタルによって感じ方が異なるかもしれません。
日本では、黒澤明監督・仲代達矢主演の映画『乱』(1985年公開)としてリア王をリメイク。舞台を戦国時代に、原作の三姉妹を三兄弟に変えて、親子の確執や兄弟間の争いを浮かび上がらせました。国内外からも評価の高い作品で、近年も動画配信サイトなどで視聴可能です。
親子に関する本『にんじん』(ジュール・ルナール著)
主人公の母親は「毒親」なのでは?とも考えられているフランスの文学小説で、児童文学の名作として有名です。主人公は赤い髪とそばかすをしている男の子で、家族から「にんじん」と呼ばれ、寂しい気持ちを抱えています。兄や姉にはやさしいもののにんじんにだけ冷たい母親、不器用で愛情表現が下手な父親のもとで、悩みながら成長する姿が描かれる名作です。
家に居場所がない、愛されている自信がないという気持ちを抱えている人は、共感するところがあるかもしれません。
おわりに:映画や本から親子関係を見つめ直すヒントをもらおう
親子関係のこじれは、複雑に入り組んでいて解決はそう簡単ではありませんよね。関係修復へのアプローチのひとつとして、親子をテーマにした映画や本にふれてみましょう。肩の力を抜いて、気楽に映画や本の物語を楽しむのもおすすめですよ。
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