会社員として働くほか、起業・開業することにはさまざまなメリットがあります。特に一人ではなく夫婦で開業する場合、信頼できるビジネスパートナーを得られ、節税効果も期待できます。
この記事では、夫婦で開業する場合の人気の業界・職種、開業前にやっておきたいことを紹介します。
- この記事でわかること
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- 公私ともにパートナーになるメリットとデメリット
- 個人事業主と法人化など、開業の方法
- 節税効果が高い開業の進め方
- 夫婦で開業できる職種とおすすめの資格取得
夫婦でビジネスパートナーになるメリット・デメリット
夫婦で開業し、公私ともにビジネスパートナーになると、どんなメリットがあるのでしょう。
- 夫婦でビジネスパートナーになるメリット
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- 気軽に相談しやすい
- 同じ夢や目標を持ち、一緒に人生計画を練りやすい
- 夫婦経営がブランディングとなることがある
- 会社都合でなく、夫婦のスケジュールを比較的自由に決められる
- 家族と一緒にいる時間が増える
- リストラや転勤の心配がなくなる
- 自分の好きなことや得意なことを仕事につなげやすい
- 事業の形態によっては人件費を抑えられる
一方で、デメリットとして下記のことが考えられます。
- 夫婦でビジネスパートナーになるデメリット
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- 事業がうまくいかないとき、経済的に夫婦双方に余裕がなくなる
- 仕事とプライベートの区別が難しい
- 夫婦のお互いの目標や希望する働き方に相違があると、公私ともに衝突しやすい
- 個人事業主の場合は福利厚生がなくなる
夫婦で開業(自営業)するときの役割のパターン
開業には、個人事業主として開業するか、会社を設立して法人として開業する方法があります。
- 個人事業主
- 税務署に開業届を提出し、事業を行います。事業開始の手続きに費用はかかりません。個人事業主となると、個人事業税がかかります。
- 法人
- 法人登記、会社設立に関わる書類や会社印の準備が必要です。資本金や登記料など、会社設立の手続きには費用と時間がかかります。法人になると、法人税、法人住民税、法人事業税などの税金が発生します。
夫婦で開業する場合、個人事業主になるか法人化するか、夫婦で話し合うとよいでしょう。
- 夫婦のどちらかが個人事業主となり、配偶者を雇用する
- 夫婦双方が個人事業主にならなくても開業することはできます。どちらかを従業員にすることで、「青色事業専従者給与」または「事業専従者控除」の制度を利用可能になり、課税所得の節税につながります。
- 夫婦がそれぞれ個人事業主となる
- 別の個人事業主として開業届を提出する方法です。会計帳簿も別管理となり、万が一どちらかの経営状況が悪化したとしても、共倒れのリスクを減らせます。ただし会計帳簿が別ということは、店舗や事務所を共有する場合でも、経費計上のための区分けなどをしっかり決めておく必要があります。
- 会社を設立し、夫婦が社長や従業員となる
- 法人税は利益が増えても原則一定税率のため、ある程度利益が安定してきたら法人化することで節税につながります。経費計上できる範囲も広くなります。ただし事務処理・会計処理は個人事業主の場合よりも複雑になりますので、税金の申告などは税理士や会計士に依頼する必要も出てくるでしょう。
夫婦で開業する場合の人気の業界・職種
夫婦でビジネスを始めるとき、下記の業界や職種が人気です。
飲食業界
- カフェ・パン屋
- 店舗を持ち、飲食品などを提供します。店舗の規模によっては夫婦2人で営業することも可能です。ただし立地などの条件次第では利益を得ることが難しくなってきます。
- 移動販売・キッチンカー
- 調理設備が備わった自動車で食品を提供するビジネスです。店舗を持たないため、店舗型と比べると固定費が抑えられます。
美容業界
- 美容院や理容院
- 美容師資格や理容師資格を取得している場合、夫婦でオーナーになって経営することもあります。
- ネイルサロン・エステサロン
- ネイリストやエステティシャンの資格を取得している場合、ネイルサロンやエステサロンを独立開業することも可能になります。
医療業界
- 開業医
- 歯科医や内科医など医師免許を取得している場合、開業医として夫婦で病院を経営することもあります。
観光・旅行業界
- ホテル・ホステル経営
- 近年は小規模なホテル・ホステルへのニーズも高く、宿泊業を開業する人もいます。外国人観光客もターゲットとするならば、英語など語学力も必要です。
小売業界
- ネットショップ
- 店舗を持たずに始められるビジネスですが、商品を管理するために倉庫などある程度のスペースが必要です。
農業
- 農家
- 土地や農業に関する知識や経験がある場合、農業を始めることもできます。近年はスマート農業の発展により、体力面などの負担は従来よりは軽くなってきました。
フランチャイズ
開業する方法として「フランチャイズに加盟する」という方法が人気です。
- フランチャイズとは
- フランチャイズ企業は加盟した個人に対して、ロゴや看板、サービスノウハウ、商品を使用する権利を与えます。個人は権利を使って店舗を経営し、ロイヤリティという契約料をフランチャイズ企業に支払います。フランチャイズは初期投資が抑えられることや運営のノウハウをフランチャイズ企業から得られることがメリットです。
フランチャイズでは、コンビニや結婚相談所が多く展開されています。
夫婦で開業する前に必ずしておきたいこと
開業する前に、手続き以外でもやっておきたいことはあります。
- 開業したい業界のリサーチをする
- 業界の経験を積んでおく
- 開業資金や経営にかかる資金を貯める
- 節税など税金対策の知識を身に付ける
- 夫婦間で経営内容や経営方針のすり合わせをする
どのビジネスを始めるにしても利益を出せなくては仕事が続きませんし、生活が苦しくなります。軌道に乗せるまでには時間がかかることもありますので、必要な知識や経験をできるだけ多く身につけておきましょう。
また夫婦で経営する場合は、仕事上での意見の食い違いや誤解がプライベートに悪影響を与えかねません。情報共有や意見交換は積極的に行い、ビジネスパートナーとしてお互いを尊重してください。
夫婦で開業するときに役立つおすすめの資格
夫婦で開業する場合、2人が中心となって経営に関わります。事務仕事から実務までを2人で行うことが多くなるでしょう。
経営をスムーズに行うためにおすすめの資格を紹介しますので参考にしてください。
- 日商簿記検定
- 経営に関わるお金の流れを把握し、経理の知識を身につけられます。2級に合格すると、確定申告を自力で行えるレベルだと考えられています。
- 中小企業診断士
- 経営コンサルタントの国家資格で、中小企業の経営状態を診断・分析する能力を習得できます。経済学や財務会計、人事、マーケティングなど、経営に関する基礎知識も学習します。
- ビジネス実務法務検定
- 民法、会社法、労働法などビジネスに関わる法律の知識が問われる検定です。法的トラブルへの適切な対応を検討する力が身につくでしょう。
- 社会保険労務士
- 従業員を雇用する場合に必要となる、保険や雇用、労働環境整備に関する知識が身に付きます。
- 行政書士
- 行政書士は、官公庁に提出する書類を作成する能力や、その代行行為を認められる資格です。憲法、行政法、民法、商法など、法律に関する知識を習得します。起業において必要とされる許認可申請書類や公的書類を作成する能力が身に付きます。
- 税理士
- 税法に関する知識を習得し、会計帳簿や財務諸表を行えます。独立や開業に伴う税務関係の書類処理、税額の計算、税法上の処理に必要な知識が身に付きます。
- ファイナンシャルプランナー
- 保険や年金、不動産、投資、税金などのプランニングやリスクマネジメントに役立ちます。健全経営、資産運用のための知識が身に付きます。
- 自動車免許
- 開業の職種や経営形態によっては、自動車の免許が必要です。
上記のほか、飲食店を経営するのであれば食品衛生責任者や防火管理者の資格取得が必要となるでしょう。美容院であれば美容師免許が必要です。また、食品営業許可、旅館業による許認可など、業種によっては開業に伴い許認可が必要となります。
どの業界、どの職種で開業するかによって必要な手続きは異なりますので、事前にしっかりと情報収集と準備をしておきましょう。
おわりに:事前準備と情報収集で、公私ともに最高のビジネスパートナーに
夫婦で開業する場合は、節税効果や家族の時間が増えるなどのメリットがあります。それぞれがすでに持っているスキルを活かしたり、共通の人生計画を立てて、一緒に頑張ってくださいね。
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