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婚前契約の内容は夫婦ごとに違うのが当たり前!財産分与や不貞行為を盛り込むときの注意点

婚前契約を交わす婚約中のカップル 人間関係の悩み
この記事は約11分で読めます。

「婚前契約」という言葉をご存知でしょうか。欧米で始まった婚前契約は夫婦生活の約束事を契約のかたちで合意を取るもので、近年は日本でも若いカップルの間で交わされるケースが増えています。

今回は婚前契約の定義や目的、内容の具体例やカップルで交わすために必要なもの、契約書作成の手順や効力の実態まで、わかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 家計管理や育児など婚前契約の一般的な内容
  • 婚前契約が無効になる公序良俗違反の例
  • 契約の有効性を高める「リーガルチェック」とは
  • 契約書を公的な書類としてのこすメリットと費用

婚前契約とは円滑な夫婦生活のために役立つもの

これからの結婚生活をスムーズに送るため、両者の同意のもと結婚前のカップル間で交わされる契約のことを「婚前契約」と言います。英語では「prenuptial agreement(プレナプシャル・アグリーメント)」、「プレナップ」の名称で知られ、海外の有名人の結婚・離婚のニュースとともに聞くことの多い言葉です。

日本ではあまりなじみのない風習ですが、近年では結婚前に取り交わすカップルが増えているといいます。当事者により婚前契約の内容は実にさまざまですが、以下のような事項が盛り込まれるのが一般的です。

婚前契約に盛り込まれることの多い項目の例

  • 結婚後の家計管理の責任者や方法
  • 育児や家事に関する分担の予定や計画
  • 夫婦どちらかが浮気をした場合の制裁
  • 別居をすることになった場合の互いの生活について
  • 離婚する場合の財産分与、ローン、慰謝料などの精算方法

なお婚前契約は、まだ起きてもいない結婚後のトラブルや離婚のリスクに備えるという性質上、交わすにあたりトラブルに発展するリスクもあります。以下に、カップル間で婚前契約を結ぶにあたり理解しておくべき注意点をまとめましたので、確認してくださいね。

婚前契約締結上の注意点

  • 必要性や意義をパートナーに理解されず、拒否される恐れがある
  • 一度交わしたら、基本的にどちらか一方からの申し出では取り消せない
  • 公序良俗に反する内容は法的効力を持たない
  • 内容を追加、変更、修正したい場合は、契約した両者の同意が必要になる

婚前契約に離婚の財産分与や浮気・不倫トラブルを盛り込みたい!

カップルにより実に個性的で、内容の幅が広いのが婚前契約の大きな特徴です。ただし基本的には、以下のような内容について契約書に盛り込むことが多いでしょう。

婚前契約で盛り込まれることが多い内容

  1. 理想の夫婦像、結婚後の目標の共有
  2. 結婚後の互いの就業状況、家計・家事それぞれの担い手の想定
  3. 子どもが生まれた場合の育児役割分担、基本的な教育方針の確認
  4. 互いの給与のうち家計に入れる割合、主な管理者の決定、小遣い額の確認
  5. 互いの両親・親戚との理想とする付き合いの深さ、頻度についての確認
  6. どちらか一方が浮気をした場合、疑いが発生した場合どのように対処するか
  7. その他、記念日など大切な日の祝い方や過ごし方などの希望の確認

上記のうち、特に婚前契約で触れられることが多いのが財産分与と浮気・不倫に関する項目、つまり不貞によるトラブルや離婚時のお金での対処法についての項目です。2人で納得のうえでしっかりとした内容の婚前契約を交わしても、公序良俗に反する「法律的に無効」な内容については、効力を発揮しないこともあります。

そして法的に無効とされる可能性の高い項目こそ、先述の結婚後のお金や不貞に関する項目なのです。このことを踏まえ、財産分与や不貞行為に関する項目について、これらの項目を婚前契約に盛り込みたい人が理解しておきたいポイントを紹介します。

財産分与に関する項目

離婚時に財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。具体的には結婚後も入出金のあった口座に入っている預貯金、支給される可能性の高い退職金などがこれに当たります。

ただし、結婚前の預貯金は原則として財産分与の対象にはなりません。注意したいのは、結婚前と結婚後で同一の預貯金口座を使用していた場合、結婚前の預貯金額との判別が困難なため、まとめて財産分与の対象となる可能性が高いです。

退職金については、年齢が若く定年退職がまだまだ先である場合には、財産分与の対象とならない可能性があります。離婚時点から数年前後に退職金を受け取る場合にのみ、財産分与の対象とみなされるケースが多いようです。

以上の理由から、結婚前の預貯金と将来の退職金については、財産分与の対象外となる可能性があります。そのため、婚前契約で結婚前の預貯金や退職金についての考え方を擦り合わせておくカップルがいるのです。

預貯金や退職金の婚前契約の内容例
  • 結婚前の預貯金額と口座は特有財産として婚前契約書に記載しておき、結婚後はこれとは別の預貯金口座に夫婦の共有財産を築いていく
  • 退職金については双方同意のうえ、5年以内を目安に離婚時点から一定年数以内に退職を迎える場合のみ適用、などと契約書に記載する

不貞行為に関する項目

婚前契約書に不倫やDVなど、パートナーに対する不貞行為へのペナルティを記載しておくことには、ある程度のトラブル抑止力が期待できます。このため、不貞行為に関する内容を婚前契約書に盛り込むことは問題ありませんが、ペナルティとして記載する慰謝料の金額には注意が必要です。

例えば不倫への慰謝料の場合、法的な相場は100~300万円だと言われています。このため、相場金額を大きく超えるような金額を設定すると「公序良俗に反する」と判断され、婚前契約が無効とされる恐れが出てくるのです。婚前契約書に盛り込める慰謝料の金額は、高くても300~500万円位までと覚えておきましょう。

婚前契約書の効果って?作成の手順と登記のメリット

婚前契約を交わすことのリスクや注意点、婚前契約に盛り込むべき内容を理解できたところで、ここからは契約書の作り方を見ていきましょう。

婚前契約書の種類は、大きく「通常の契約書」と「公正証書」の2種類があります。

通常の書式で作る、婚前契約書の特徴
  • 住居やお金の貸し借りの際に使う契約書と、同等の効力を持つ
  • 契約内容を書面にのこすことにより、裁判での証拠として使えるようになる
  • 互いの結婚前の発言や認識について、結婚後にはっきりと確認できる
公正証書として作る、婚前契約書の特徴
  • 通用の契約書よりも高い証明力を持つ
  • 原案を公証役場へ持って行き、公証人に作成してもらうことで強い法的効力が付与される
  • 原案の作成には法的知識が必要になるため、法律の専門家でなければ原案作成が難しい

またどちらの形式で契約書を作るにせよ、婚前契約書に夫婦の財産に関する内容が含まれる場合は、民法上の「夫婦財産契約」に該当します。夫婦財産契約は、契約内容を登記することによって初めて、契約内容を第三者に主張できるようになるというものです。

このため夫婦の財産について記載するなら、婚前契約書の作成と婚姻届けの提出前にまず夫婦財産契約の登記をしておきましょう。夫婦財産契約登記の簡単な流れは以下にまとめていますので、参考にしてくださいね。

夫婦財産契約登記の流れ
  1. 夫婦財産契約の原本、戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などの必要書類を揃える
  2. 必要書類をすべて持って居住地を管轄する法務局へ行き、所定の手数料を支払い登記申請する

なお夫婦財産契約の登記申請、またこれに必要な書類の準備には数週間単位の時間がかかる場合もあります。あらかじめ管轄の法務局に必要物、詳しい手続き内容などを確認のうえ、早めに準備を始めましょう。

次に、契約書の作成手順について説明します。

婚前契約書、作成の手順

  1. 盛り込む内容を両者が納得できるまで話し合い、決定する
  2. 婚前契約書のひな型に合わせ、婚前契約の内容を条文にしていく
  3. 内容と条文が決まったら、直筆またはパソコン入力で清書する
  4. 2人がそれぞれ署名・押印し、保管できるよう同じ内容の婚前契約書を2部用意する

婚前契約書は、種類を問わず一定の法的効力を有する正式な契約書です。書面に起こす際は、以下のポイントへも配慮してくださいね。

婚前契約書、作成時の注意点

直筆で書面を作る場合
  • 原則として、ボールペンや万年筆など消えない筆記具で作成する
  • 書き損じが生じた場合は修正テープなどは使わず、上から取り消し線と契約者2人分の訂正印を押すか、最初から書き直す
パソコン入力で書面を作る場合
  • 印刷後に誤字やミスがあった場合は、内容を修正のうえ印刷しなおす
  • 訂正と再印刷が困難な場面では、直筆契約書と同じように取り消し線と訂正印で正す
  • 結婚期間中ずっと、長期にわたり保管する必要があるため、劣化しにくい印刷用紙を選ぶ
  • パソコンで作る書面であっても、最後の署名と押印は直筆で行うこと

これで、通常の契約書形式の婚前契約書の作成は完了です。弁護士や行政書士など法律の専門家に依頼し、公正証書として婚前契約書をのこす場合の手順については、次章以降で解説します。

婚前契約に弁護士や行政書士は必要?

婚前契約書は、当事者であるカップル間の合意のもと個人的に作ったものでも、私文書としてある程度の法的効力を発揮する書面です。しかしここまでに述べてきた通り、婚前契約書には後々になってからトラブルのもととなったり、法律に違反すると判断され法的効力を失うリスクがあることは否定できません。

カップルが自作した婚前契約書が、トラブルのもととなりかねない理由

  • 第三者の目が行き届かない場で交わされた契約であるため、本当に両者が理解・合意したうえでサインされたかの適性さを確認できない
  • 法律的知識のない素人が自分達の生活について書いた書面であるため、法律上無効な内容になってしまいやすい

このため法的な有効性を確保し、いざ夫婦間で争いが起きた際に問題を大きくしないためにも、婚前契約書は法律の専門家を入れて作成することをおすすめします。

婚前契約書の作成にあたり、頼ることのできる法律の専門家は以下の3職種でしょう。

婚前契約書の作成を依頼できる法律の専門家

  1. 行政書士…行政手続きの申請、またこれに必要な書類作成の専門家
  2. 司法書士…法律事務の専門家で、登記申請の手続きを主な業務とする
  3. 弁護士…依頼に基づき訴訟に関する行為や、法律事務処理を行う専門家

ただ、普段の業務で離婚協議や離婚調停、離婚訴訟を扱わない行政書士・司法書士は、婚前契約書作成に関する知識に乏しいケースも多いです。法律の専門家に監修してもらい、確実に法的効力の高い婚前契約書を作成したいなら、弁護士にリーガルチェックを依頼するのが安心でしょう。

リーガルチェックとは
契約書等の内容に法的に問題がないか、妥当かを法律の専門家にチェックしてもらうこと。売買契約書や賃貸契約書、雇用契約書、業務委託契約書などビジネスシーンで使用する契約書以外に、婚前契約書の法的有効性の確保にも役立つ

公正証書に法的な強制執行力はあるの?

私文書の状態の婚前契約書を原案として公証役場に持ち込み、これをもとに公証人に婚前契約書を作成・確認してもらえば、公正証書として婚前契約書をのこすことができます。公証役場は全国におよそ300カ所ありますが、公正証書を作成してもらうには事前予約が必要な場合もあります。あらかじめ自宅や職場からアクセスの良い公証役場、そして公証役場利用ルールを確認したうえで、婚前契約書を持ち込みましょう。

また、公証役場では以下いずれかの書類による本人確認が行われます。

公証役場での本人確認に有効なもの
運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、印鑑証明書

その他では認印、印鑑証明書を持参する場合は実印、そして婚前契約書を個性証書としてのこしてもらうための手数料も必要ですので、忘れずに持参してくださいね。

公正証書となった婚前契約書は「公文書」となり、その原本は公証役場で保管されます。これにより裁判上の証拠能力が非常に強く、法的強制力もある契約書となりますが、その法的強制力にも限界はあります。

例えば、離婚時のトラブルを想定した事項について、婚前契約書に離婚時のトラブルを想定したペナルティ、慰謝料額などを記載するケースは多いですが、これは結婚前に「もしも」の事態を想定して作った取り決めです。
法律上、婚前契約とは離婚を前提とした契約ではないと解釈されるという性質を持ちます。そのため、実際に離婚問題が生じた場合の法的強制力は低く、強制執行などによる慰謝料の徴収まではできません。
この点についても良く理解し、弁護士と話し合ったうえで妥当な内容・金額の公然契約書を公文書としてのこすようにしましょう。

なお公正証書以外にも、公証役場では以下のようなかたちで公然契約書をのこせます。

私署証書
私文書の署名、押印が本人のものに違いないと証明してもらう文書形式のこと。公証役場で作成してもらうことができ、これを作成してもらうことで「婚前契約書が間違いなく本人たちの意思に基づき作成された」ことの証明となる。
宣誓認証
私文書の内容が真実であると契約者本人が宣誓し、その宣誓を公証人が認証する仕組み。婚前契約書を契約者であるカップルで作成・持参したうえ、その内容が真実であることを公証人の前で先生すると成立となる。

婚前契約書を作成のうえ公正証書としてのこす、または婚前契約書の私署証書作成や宣誓認証を弁護士に依頼して行う場合の費用相場は、以下の通りです。結婚をするにあたり、婚前契約書の作成を考えているなら参考にしてくださいね。

婚前契約書、公証役場でのこす手続きの費用相場一覧
  • 公正証書にする場合…10~20万円(公証役場でのおよそ20年間の保管料、保管延長費用も含む)
  • 私署証書にする場合…3~5万円
  • 宣誓認証にする場合…10~15万円

おわりに:法的効力の高い婚前契約書を交わすなら、弁護士の力も借りて公正証書にしておくのがおすすめ

結婚後の生活や役割分担、家計のこと、子どもを育てていく上での基本方針やトラブルが起きた場合の対応などについて結婚前に取り決めておくことを婚前契約と言います。その内容は夫婦により実に様々ですが、当事者間でのみ契約を結んだ私文書の状態では、裁判上の証明力や法的強制力は低くなります。法的効力が高く、公序良俗に即した婚前契約書を作成したいなら、弁護士にリーガルチェックと公正証書にする手続きまで依頼しましょう。

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