人間の身体機能は、加齢により低下していくものです。皮膚や髪、内臓はもちろん、骨もその例外ではなく、特に女性は骨粗しょう症を発症しやすくなることがわかっています。
今回は骨粗しょう症について、発症原因から体に現れる変化と症状の具体例、検査方法や予防・改善のためにできることまで、まとめて紹介していきます。
- この記事でわかること
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- 骨粗しょう症の人が、特に骨折しやすい4つの部位
- 栄養の偏り、慢性的な運動不足、喫煙・飲酒がもたらすリスク
- 骨粗しょう症予防は10代20代の食生活が大事な理由
- 骨密度をアップさせる運動の強度の目安
- 節目検診と男女ごとに検査を受けるのがおすすめの年齢
骨密度が低いと骨粗しょう症になるおそれが!骨折しやすいのはどこ?
骨の健康状態をはかる指標には、大きく「骨密度」と「骨質」があります。
- 骨密度(こつみつど)とは
- 「BMD」とも呼ばれるもので、骨に含まれるカルシウムやリン酸塩など、ミネラル成分の総量を現す数値。この数値が高いほど骨の中の密度が高いため、スキマがなく損傷しにくい、しっかりとした骨だと判断できる。
- 骨質(こつしつ)とは
- 骨の質のこと。具体体には以下項目に沿って骨を検査し、判断するもの。
- 骨の細胞の生まれ変わりのペース、バランスがわかる「骨の新陳代謝」
- 骨に含まれる「コラーゲンやタンパク質の量、質、強さ」
- レントゲンではわからないレベルの「ごく小さな骨折の有無や数」
骨は破骨細胞によって破壊・吸収され、骨芽細胞によって新しく作り変えられる。そして堆積のうちおよそ50%を占めるとされるコラーゲンやタンパク質によって作られているため、代謝バランスが乱れたり十分な量の栄養がないと骨質が下がってくる。
上記の骨密度と骨質、その両方が低下した状態になると骨粗しょう症と診断されるのです。これらの値は年齢に応じて大きく変化し、骨密度・骨質ともに20歳前後に最もよい状態となるのが一般的です。そしてその後、骨密度と骨質は加齢に伴って徐々に低下し、40歳を迎えるころ急激に低下しま。女性の場合、閉経を迎える50~60代になると特に発症リスクが高くなり、80歳を迎える頃には女性のおよそ7割が骨粗しょう症になると言われています。
骨粗しょう症の発症後、特に注意すべき症状としては骨折リスクの増大が挙げられます。骨がもろく、スカスカな状態になった骨粗しょう症の人は非常に骨折しやすく、自身の体の重さを支えられずに圧迫骨折することも珍しくありません。
以下の4カ所は特に骨折しやすいため、骨粗しょう症と診断されたら要注意です。
- 背骨の一部である「脊椎椎体(せきついついたい)」
- 腕の付け根である「上腕骨近位部」
- 足の付け根である「大腿骨近位部」
- 手首周辺の骨である「橈骨(とうこつ)遠位部」
骨密度が低くなる原因って?加齢や生活習慣で骨がもろくなる!
加齢の他に骨密度・骨質が低下し、骨粗しょう症を引き起こす原因としては栄養の偏りや慢性的な運動不足、喫煙・飲酒の習慣が挙げられます。
それぞれの生活習慣が骨粗しょう症の発症につながる理由を、以下に見ていきましょう。
- 栄養の偏り
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- 骨の形成に必要なカルシウム、リン、ビタミンDなどの不足
- 加齢や少食、偏食のため全体の食事量が少なく、骨に必要な栄養を摂れていない
- 慢性的な運動不足
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- 運動による骨への圧力、刺激がないため骨密度が低下していく
- 運動不足になると食欲や胃腸機能の低下にもつながり、栄養吸収も十分にできなくなる
- 喫煙の習慣
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- タバコには胃腸の働きを抑え、食欲を低下させる作用がある
- さらに、骨から血中へのカルシウムの流出を防ぐ女性ホルモンの分泌を妨げる
- このため、喫煙の習慣は骨粗しょう症発症のかなり重大な要因となる
- 飲酒の習慣
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- アルコールそのものには、カルシウムの吸収を阻害するなどの作用はない
- ただ利尿作用が強いため、カルシウムの排出を過度に促進してしまうリスクはある
▼ 参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「骨粗鬆症」
年齢を重ねてもこれらの生活習慣を改めずにいると、加齢による骨密度・骨質の低下の影響も受けて、骨粗しょう症を発症するリスクが年々高まっていくのです。ただ逆に言えば、骨粗しょう症を引き起こす危険因子のうち上記は生活習慣改善によって減らすことができるということにもなりますね。
以下に、骨粗しょう症の発症原因のうち自身の意思で改善できるもの・そうでないものをそれぞれまとめていますので、生活習慣改善のための目安としてください。
- 骨粗しょう症を発症する要因のうち、セルフケアで改善できるもの
- カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなどの栄養不足、リン・食塩など一部栄養の過剰摂取、無理なダイエット、運動不足、日照不足、喫煙・過度の飲酒、コーヒーの大量摂取 など
- 骨粗しょう症を発症する要因のうち、セルフケアで改善が難しいもの
- 加齢、女性ホルモンの分泌量の低下やホルモンバランスの変化、遅い初潮または早期の閉経、家族歴など遺伝的な要因、過去の骨折歴 など
ダイエットで骨がスカスカになる?10代は骨を丈夫にする大事な時期
前章で触れた通り、喫煙や運動不足と同じく「過度なダイエット」も骨粗しょう症を引き起こす危険因子となり得ます。なぜダイエットが骨粗しょう症の原因となるのか、その理由を以下に見ていきましょう。
- 急激な体重減少により、骨への負荷が少なくなるから
- 骨は体重から負荷を受けることで密度が増し、強くなっていく仕組みになっています。しかし急激に体重が減少すると、骨に十分な負荷がかからなくなり骨が密度を上げ強くなろうとする機能がうまく働かなくなってしまうのです。
- 急激な体重減少により、女性ホルモンの分泌量が低下するから
- 女性が急激に体重を減らすと、卵巣の働きが低下し女性ホルモンの分泌量も減少します。女性ホルモンのうち「エストロゲン」、そして脂肪には骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、骨を作る骨芽細胞の働きを促す作用があります。このため急激に痩せてエストロゲンの分泌量・体脂肪ともに減少すると、骨の代謝にも影響が出て骨密度も低下しやすくなるのです。
- 栄養バランスが崩れ、骨の代謝に必要な栄養素が不足するから
- ダイエット中はカロリー摂取量を気にするあまり、偏った食事内容になりがちです。なかには、特定の食べ物だけを取り続けるダイエット法もあるため低栄養状態になり、骨の形成に必要な栄養も不足して骨粗しょう症を発症しやすくなります。
一般的に骨密度は10代で急激に増加し、20歳ごろにピークを迎えます。20歳を超えると、それまでのように急激に上昇させることはできません。
若い女性ほど体形が気になり、過度なダイエットにも挑戦してしまうものです。しかし強く、骨粗しょう症になりにくい骨を作るために10代は非常に大切な時期であり、骨と体の形成に必要な栄養をしっかり摂る必要があります。
若いうちにできるだけしっかり食べ、バランス良く栄養を摂取し、骨密度を高めておくのが安心であると覚えておきましょう。
骨密度を上げる食事や運動のおすすめは?サプリの注意点って?
ここからは骨密度を高め、骨粗しょう症を予防・改善するためにできることを具体的に紹介していきます。
十分な量、継続的なカルシウムの摂取
骨は体内に取り込まれたカルシウムを使い、毎日代謝をしています。このため骨密度を高め骨粗しょう症を予防するには、十分な量のカルシウムを継続的に摂取するのが効果的です。以下に、おすすめの牛乳・乳製品の摂り方を年齢別に紹介しますので参考にしてください。
年齢別、牛乳・乳製品の推奨摂取量
- 6~9歳…2つ
- 10~11歳…2つ
- 12~69歳…2~3つ
- 70歳以上…2つ
※「1つ」の単位はカルシウムおよそ100mgが含まれるだけの量。牛乳ならコップ1/2、チーズならひとかけ、スライスチーズなら1枚、ヨーグルトなら1人分包装された1パックが「1つ」分に該当する。(参考「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食育実践マニュアル」社団法人日本栄養士会 監修 武見ゆかり・吉池信男 編)
カルシウムの吸収促進に役立つ栄養素も積極的に摂る
毎日の食事において、カルシウムの摂取と併せ骨粗しょう症予防のために意識的に摂取してほしいのが、体内へのカルシウムの吸収を促進する栄養素です。以下にカルシウム、そしてカルシウムの吸収促進に役立つビタミンD、ビタミンKが豊富に含まれる食品をまとめていますので、食事に取り入れましょう。
- カルシウムを豊富に含む、乳製品以外の食品の例
- 小魚、干しエビ、チンゲン菜、小松菜、豆腐などの大豆製食品
- ビタミンDを豊富に含む食品の例
- ウナギ、シャケ、サンマ、イサキ、メカジキ、カレイ、卵、シイタケ、キクラゲ
- ビタミンKを豊富に含む食品の例
- 納豆、小松菜、ほうれん草、ニラ、ブロッコリー、キャベツ、サニーレタス
毎日少しの運動と、日光浴をする習慣をつける
運動により全身の血流が良くなり、骨に負荷がかかると、カルシウムが呼び寄せられ骨を作る骨芽細胞の働きが活発化することがわかっています。重量挙げなど、体により重さ・負荷がかかる運動ほど骨粗しょう症には良いとされますが、毎日散歩やウォーキング、趣味の範囲でスポーツをするだけでも十分な効果が見込めます。外出が難しいという方は、積極的に家事をして家の中で動くところから始めればOKです。
自身が楽しんで続けられる範囲で、毎日の運動を習慣づけていきましょう。
また日光浴には、カルシウムの吸収を促進するビタミンDの生成する作用が期待できます。夏なら木陰で30分程度、冬なら手や顔に1時間程度日光を浴びる習慣をつけてください。なお、窓ガラス越しの日光浴ではあまり効果を期待できません。運動もかねて、1日30分程度の散歩を習慣化するのがおすすめですよ。
骨密度を上昇、骨粗しょう症の予防・改善には上記をもとに生活習慣を改善するだけでも十分な効果が見込めるでしょう。
栄養については食事以外にも、市販のサプリメントを服用して補給する方法もありますが、常用する飲み薬との飲み合わせに問題が発生するリスクもあります。
骨粗しょう症の予防・改善のためサプリメントを服用したい場合は、かかりつけの医師または薬剤師に相談してから始めると安心です。
骨密度検査は何歳から受ける?閉経後は検査を受けた方がいい?
閉経を機に急激に骨密度が低下する女性の場合、閉経後は原則として1年に1回は骨密度検査をすることが推奨されています。20~40代後半までは、50代以降に入ってからの比較のため「機会があれば受けてみる」という認識でいると良いでしょう。
なお70代以降は男女とも、2年に1回くらいのペースで骨密度を測定し、医師の指示に従って検査回数を増やしてください。検査を受けられる場所としては民間の医療機関、またはお住まいの地域の保健所、保健センター、指定の医療機関があります。
国は女性を対象に40歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳のタイミングで骨密度の「節目検診」を提供していますし、骨粗しょう症対策は多くの市町村で実施されています。骨密度の検査を受けたいと思ったら、まずお住まいの地域を管轄する保健所へ連絡し、保健センターでの検査実施日や実施医療機関の情報をもらうと良いでしょう。
最後に、基本的な骨密度検査の結果の見方と、精密検査が必要になった場合の流れを簡単に説明していきますので、検査を受ける際の参考にしてくださいね。
- 基本的な検査結果の見方
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- 若年成人の平均骨密度に比べ、どの程度の骨密度があるかが記載される
- 骨密度が若年成人の平均の80~90%の人は「やや低い」との判定となり、生活習慣改善の指導を受ける
- 骨密度が若年成人の平均の80%以下の人は「要検査」の判定となり、さらに精密な検査を受けることになる
- 骨密度を測るための精密検査について
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- 検査内容は背骨のエックス線撮影、2種類のエックス線を用いたDXA法による腰椎の骨密度測定、血液検査、尿検査の4つ
- 他の疾患の有無、測定した骨密度から骨粗しょう症かどうかを診断していく
- エックス線撮影で圧迫骨折が見られた場合、また骨量・骨密度が成人平均値の70%以下であれば骨粗しょう症と診断される
おわりに:どんな人でも、加齢により骨粗しょう症リスクは上がる!少しずつ生活主観を変え、加齢による骨密度低下を遅らせよう
骨の形成に使われる栄養素の不足や強度維持に必要な負荷の減少、加齢による代謝機能の低下が起こると、骨は徐々にもろくなっていきます。このためどんな人でも、骨粗しょう症の発症リスクは加齢とともに上昇するのです。骨密度の低下、骨粗しょう症の予防・改善には、生活習慣の改善が効果的。栄養バランスの良い食事を摂り、適度に外で運動し飲酒・喫煙を控える生活習慣を若いうちから少しずつ身に付け、骨粗しょう症対策をしましょう。
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