人生の中で、予期せぬトラブルに襲われることは誰にでもあることです。ときに、離婚や事故など弁護士を頼まなくてはならない事態に陥ることもあるかもしれません。そんなとき、できるだけ良い弁護士に頼みたいものです。
では、良い弁護士とはどのように探し、選べば良いのでしょうか。専門性や費用面はもちろん、他にもチェックしたいポイントを確認しておきましょう。
- この記事でわかること
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- 交通事故や遺産相続、離婚で弁護士に依頼できること
- できるだけ費用を抑えたい人の弁護士の探し方
- 弁護士の専門分野は医師のように保証されているか
- 依頼した弁護士と合わないと感じたときの対処法
- 民事法律扶助概要や利用条件とは
ケース別の弁護士ができることって?どんな依頼ができる?
弁護士に似た法律関連のことがらを扱う職業として司法書士や行政書士がありますが、司法書士や行政書士は弁護士と比べてできることが限られています。例えば、よくある法律関係のトラブルとして交通事故・相続問題・離婚問題、そして債権の回収などがありますが、弁護士であれば以下のようなことがすべて行えます。
- 交通事故のとき
- 加害者側・被害者側との示談交渉、裁判手続の代理
- 相続について
- 他の相続人等との遺産分割交渉、裁判手続の代理
- 離婚問題
- 相手方配偶者との離婚条件交渉、裁判手続の代理
- 債権の回収など
- 各種強制執行手続きの代理
これに対し、行政書士は各種交渉や裁判手続きの代理ができません。司法書士は交通事故や債権回収においては、請求額140万円までの少額訴訟の場合のみ交渉や代理を行うこともできますが、請求額が140万円を超える大きな訴訟や、相続問題・離婚問題において交渉や裁判の代理手続きを行うことはできません。
弁護士を見つける方法は?ネット検索や知人からの紹介も
弁護士を探す方法は、インターネットから紹介までさまざまです。ここでは、代表的な4つの方法についてご紹介します。
- インターネットで探す
- 「トラブル名 弁護士」と入れて検索すれば、その分野で情報発信している弁護士が見つかる
- 今はほとんどの法律事務所がホームページを公開しているので、得意分野や対応実績を確認しやすい
- こうした情報や実績を確認しつつ、じっくり検討できるのがインターネット検索のメリット
- ただし、近年では広告・宣伝などの影響で信憑性を判断するのが難しい。実績確認だけで費用が発生するケースは少ないので、まずは電話やメールで直接確認を
- 法テラスで探す
- 法テラス(日本司法支援センター)は、国が運営する法的トラブル解決サービス
- 各都道府県に事務所が設置されていて、事前予約すれば担当の弁護士に法律相談・事件委任ができる
- 収入・資産状況など所定の条件を満たせば、無料で法律相談もできる
- 追加条件を満たせば、事件委任後の弁護士費用を立て替えてもらえる
- 事前予約が必要なのですぐ相談できないこと、事件委任のための着手金など立替制度を使う場合、各種審査で時間がかかってしまうことが難点
- 弁護士会
- 各都道府県に設置された弁護士会を通じ、弁護士を探すことも可能
- 住む地域に該当する弁護士会のホームページで問い合わせ先を確認し、メールや電話でトラブルの概要を伝える流れ
- サービスの内容が弁護士会によって異なるので、法律相談の費用はかかるのか、どこで実施するかなど事前に確認しておく
- トラブルに応じた弁護士を紹介してくれるので、自分で探す手間が省けるが、弁護士が少ない地域だと特定のトラブルに強い弁護士を探しにくい
- 知人からの紹介
- 弁護士の人柄や性格を事前に知ることができ、トラブルが同様のケースなら弁護士がどのような対応をしてくれたかも聞けるので、安心できる
- 弁護士側も、全く知らない人よりも紹介してもらった顧客の方が心理的に接しやすい
このように、それぞれの方法によってメリット・デメリットがありますので、自分に合った方法を探しましょう。特に、弁護士費用がないからと迷っている人は、一度法テラスに相談してみるのがおすすめです。
「離婚専門」など専門弁護士の実力は信頼できる?
「離婚専門弁護士」「債務整理専門弁護士」といったように、専門分野を強調する弁護士や事務所もあります。しかし、弁護士の世界における「専門」はあくまでも自己申告であり、医師の世界での「外科専門医」などのように、学会や国家機関による客観的な基準があるわけではありません。
多くの場合、その分野を取り扱ったことが多い、実績が多いといった意味で使われています。弁護士は専門職としての高い倫理観が求められ、虚偽申告は懲戒対象となりますので、自分の業務について虚偽の申告をすることはまずありませんが、必ずしも「専門をうたっていない弁護士と比べて、高い能力を有している」という意味で使われるわけではないことに注意しましょう。
そもそも、弁護士の業務は依頼内容が千差万別であり、実際に事件を受任して終わってみなければ、他の弁護士と比べて良い結果を出せるかどうかはわかりません。つまり、能力をはかる基準を客観的に設けることは非常に難しいのです。
とはいえ、弁護士は法律問題一般に関してはプロフェッショナルであり、特に訴訟手続きについてはほとんど独占的な専門性を持っています。ですから、そもそも弁護士資格を有している時点で、一般的に弁護士が扱う分野の案件ではどの弁護士でも一定のスキルを持っていると言えるでしょう。
ただし、建築・医療・知的財産など、他業種における専門的な知識が必要な分野に関しては、取り扱い事例の積み重ね、専門家とのつながりなどを持っている弁護士や事務所の方がより良い結果につながりやすいことは想像できるでしょう。
このようなケースの場合は、相談の際に弁護士に直接聞くのがおすすめです。弁護士は弁護士会など横のつながりが強いので、「この分野ならあの弁護士」というように、得意・不得意はある程度共有されているものです。とはいえ、弁護士によってはこうした内容を相談者に伝えたくないという人もいますので、必ずしも教えてくれるとは限らないことにも注意が必要です。
相性や評判のリサーチが大切?弁護士の選び方のポイントは?
専門分野以外にも、弁護士を選ぶ上で大切なポイントが3つあります。
- 相互理解に努められる
- 何でも相談できて、相互理解に努めてくれ、話しやすい
- ※この場合の話しやすさとはあくまでも案件に関する内容であり、雑談の時間が長くかかってしまうのはNG
- 忙しすぎて連絡できないのは問題外。密に連絡が取れる弁護士を
- 正直である
- 質問に対する回答が誠実であり、正確であること
- すぐ回答できない場合や、判例がなくて正確に回答できない場合もそれをきちんと伝えられる
- 何でもできるような安請け合いの態度をしてしまうような人は避ける
- 弁護士費用が適正である
- 高すぎても安すぎてもダメ。手抜きなど、無理な事件処理になるリスクが高い
- トラブルを抱える人はどうしても安さを一番に選びやすいが、失敗しやすい
- もちろん、安く値段交渉しておいて、契約してから多くを要求するのもNG
弁護士費用は安ければ安いほどいい、と考えがちですが、安すぎるのは考えものです。というのも、弁護士は安い費用で引き受けても事件処理に最低限必要なことは通常の処理と同じように行わなくてはならないため、その分依頼者とのやりとりや意思疎通、相互理解といった手間が省かれがちになります。逆に、費用が高すぎるのも依頼者側が「全部弁護士に任せればいいや」と考えてしまい連絡を怠りやすいので、注意しましょう。
また、他にも「研究熱心であること」「懲戒処分歴がないこと」という2点も重要です。
- 研究熱心であること
- 事実関係についての調査(事情聴取)、法律の調査、判例の調査に熱心であること
- 調査をしない、準備に手を抜くといった弁護士は避ける
- 懲戒処分歴がないこと
- 懲戒処分が軽い「戒告」だったとしても、それが氷山の一角である可能性は高い
- 一部の弁護士会や日弁連などでは、インターネット上で、現在「業務停止」の懲戒処分を受けているかどうかは公開している
- 戒告や、過去の懲戒処分歴は日弁連に開示請求すれば過去3年以内の懲戒処分歴を回答してくれる
法律調査など専門性に関することはもちろんですが、事件について事実関係を調査したり、過去の判例について調査したりすることも弁護士の仕事で重要なことです。また、懲戒処分歴があるということは、100%ではありませんが業務に対する倫理観に欠けている可能性がありますので、できるだけ避けておいた方が良いでしょう。
弁護士でもセカンドオピニオンをしていいって本当?
ある弁護士に事件を依頼中、事件の説明や進め方に疑問や違和感がある場合は率直に話し合うことが最も重要ですが、他の弁護士の意見も聞いてみたい、という場合は医療と同じように「セカンド・オピニオン」を求めることが可能です。もちろん、セカンド・オピニオンを受ける目的はどんなことでも構いませんし、現在の弁護士への通知や承諾も必要ありません。
弁護士はただ法律の条文を当てはめて事件を機械的に解決することだけが仕事ではなく、弁護士自身の経験・知識・考え方なども事件の進め方に関わってきます。ですから、弁護士と相性が良いかどうかというのも、依頼者が安心して事件の処理を依頼するためには非常に重要なことです。
セカンド・オピニオンを依頼された弁護士自身も守秘義務がありますので、依頼の内容やセカンド・オピニオンを依頼された事実については、依頼者の承諾がない限り口外されません。もちろん、既に相談・依頼している弁護士を批判したり、責任を追及したりするものでもありませんので、安心して依頼しましょう。
セカンド・オピニオンを受けた結果、途中で弁護士を変更することもできます。ただし、この場合は弁護士費用について、事件処理の進行具合によって返還額が変わってきますので、それぞれの弁護士と依頼者の間で十分な話し合いが必要です。
無料で法律相談や費用の立替ができる?法テラスの「民事扶助」とは
「弁護士の探し方」の項目で、法テラスで一定の条件を満たせば、弁護士費用を立て替えてもらえる場合があるとご紹介しました。これは「民事法律扶助業務」と呼ばれるもので、経済的に余裕がない人などが法的トラブルに遭った場合、無料で法律相談を行うとともに、必要な場合は弁護士・司法書士の費用などを立て替えてくれるという法テラスの業務の一つです。
法テラスは国が設立した「法的トラブル解決のための総合案内所」です。誰に相談すれば良いか、どんな解決方法があるのか、といった道案内をするための場所、と言えます。近くに専門家がいない、全国の相談窓口が一つになっていないため情報に辿り着けない、経済的な理由で専門家に相談できないなどといった問題を解決するため、「総合法律支援法」に基づいて平成18年4月10日に設立されました。
ただし、民事法律扶助を利用するためには「同居の家族を含む本人の月収(手取り)が、およそ次の金額以下」であることが条件となります。ただし、賞与は含まれますし、福岡市・北九州市に在住の場合は約1割増しとなっています。賞与のある方や該当地域の方で民事扶助を利用できるかどうかわからない方は、直接事務所に問い合わせてみましょう。
- 単身者:182,000円以下
- 2人家族:251,000円以下
- 3人家族:272,000円以下
- 4人家族:299,000円以下
代理援助または書類作成援助を受けるためには、収入基準の他に以下の2つについて、法テラスの審査で認められる必要があります。
- 勝訴の見込みがない、とは言えないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適していること
これらの条件を満たせば、法テラスの民事法律扶助を受けられます。事件内容が審査に認められるかどうか不安だという方は、まず一度相談してみてはいかがでしょうか。
おわりに:トラブルで困ったときは、話しやすく正直で費用が適正な弁護士を選ぼう
離婚や事故、相続など法的なトラブルにおいて、交渉や代理など法律業務全般を取り扱えるのは弁護士だけです。弁護士の探し方はインターネットや弁護士会などもありますが、経済的な問題があるなら法テラスが良いでしょう。
また、依頼者と弁護士との相性や、費用の適正、正直さ、懲戒処分歴がないことなども重要なポイントです。医療のようにセカンド・オピニオンを受けることもできますので、必要に応じて利用しましょう。
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