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【後編】社会人でコミュ力が低い原因が発達障がいだったときの相談先

発達障がいとコミュニケーション能力 こころの不調
この記事は約8分で読めます。

社会人が仕事をスムーズに進めるためには、コミュニケーション能力が必要です。しかし発達障がいの特性を持つ人は、人間関係構築や日常会話で困難を抱えていることも。

この記事では、発達障がいの人が就職や転職をするときに頼れる相談先、利用できる支援制度を紹介します。能力や個性を活かして働くために、相談のポイントを抑えましょう。

この記事でわかること
  • 発達障がいの種類と特徴
  • 発達障がいの人が仕事の人間関係で悩んだときの相談先って?
  • ミスマッチを減らすための就職支援の内容

発達障がいかも?と思ったら就労支援に相談を

コミュニケーション能力が欠如している、と思われる人の場合、疾患や障がいがあってコミュニケーションが上手く取れないというケースもあります。近年ではさまざまな疾患や障がいの研究が進んだことで、コミュニケーションの障がいとなる疾患や障がいが解明され、知られてきました。

特に、よく知られているのが「広汎性発達障がいです。

発達障がいは、かつては自閉症・アスペルガー症候群などの名称で知られてきました。トゥレット症候群(いわゆるチック障がい)、小児期崩壊性障がいなども現在では広汎性発達障がいの一つとされています。

広汎性発達障がいを持つ人は、感覚が敏感であったり、逆に非常に鈍麻であったり、強いこだわりを持ったりする傾向があります。コミュニケーションにおいても他人と関わることを全くしない、または会話がかみあわない、他人と積極的に関わろうとしても自分本位のコミュニケーションに終始してしまうケースもあるなど、症状には個人差があります。

それぞれの症状について、もう少し詳しく見ていきましょう。

自閉症
言語発達の遅れ、コミュニケーション障がい、パターン化した行動、強いこだわりなどが特徴。自分が安心できる場所やよく知っている場所だと落ち着いて行動できたり、やり慣れた作業などに対しては一生懸命取り組めたりするので、環境整備が重要。自閉症と一口に言っても、症状には個人差があることにも注意。
アスペルガー症候群
広い意味で広汎性発達障がいの中の「自閉症」に含まれる。社会性や対人関係の障がい、コミュニケーション障がい、関心の偏りやパターン化した興味・行動が特徴。自分が関心を持つことや好きなことには集中して取り組めるため、特技を集中的に伸ばした結果、周囲から一目置かれる存在になることもある。
注意欠陥多動性障がい(ADHD)
一つの物事に集中できない、じっとしていられない、考えるより先に身体が動いてしまうなどが特徴。注意散漫になって物忘れが重なることがあり、いい加減な人と誤解されてしまうことも多い。他人への気配りや配慮が行き届くのも特徴で、細やかな優しさで周囲との人間関係を築く人も少なくない。
学習障がい(LD)
全般的な知識面での発達遅延はないのに、特定の能力(読む・聞く・話す・計算する・推測するなど)の習得に著しい困難を伴う。ビジネスシーンでは、仕事全般は無難にこなせるのに、会議のメモをとることだけがどうしてもできないといったケースなどが該当する。本人の努力不足と誤解され、見過ごされやすい。
トゥレット症候群
チック障がいのことで、突然素早い運動を繰り返す「運動チック」と、突然素早い音声を繰り返し発する「音声チック」の2種類がある。こうした症状が1年以上続いてしまうと、トゥレット症候群と呼ばれる。本人にはそのつもりがないにも関わらずチック症状が出るため、周囲から迷惑がられたり不審に思われたりしてしまう。孤立した結果、さらにコミュニケーションが取りにくくなる、というケースが多い。
小児期崩壊性障がい
それまで明らかに定型発達していたのに、突然覚えた言葉や排泄能力などを失い、最終的には知的障がいを伴った自閉症のような状態になる障がい。小児の0.005%に発症する非常にまれな疾患で、発症前までは元気に成長する。発症時期はほとんどが3〜4歳までで、常同行動や強迫行為を繰り返すようになることもある。

こうした発達障がいを持つ人は、本人の努力や精神的な発達の程度に関わらず、コミュニケーションをうまく取れない場合があります。他にも、発達障がいではありませんが、吃音や境界性パーソナリティ障がいなどもコミュニケーションに支障をきたすケースがあります。

吃音
いわゆる「どもる」と言われる話し方のことで、言葉と言葉の間に変な間が空いてしまう、音を繰り返したり引き伸ばしたりしてしまうなど、話し方に特徴がある
境界性パーソナリティ障がい
若い女性に多く見られる心の障がいで、神経症や統合失調症との「境界線」にある状態。周囲の状況で気分が変化したり、感情が爆発しやすかったり、空虚感に襲われたり、強いイライラ感があったり、現実認識能力が低下したりする特徴がある

また、対面式のコミュニケーションを取るのが苦手、緊張して異性とうまく話せないなどの特徴を持った人のことを「コミュ障」と俗語として呼ぶことがありますが、これは医学用語の「コミュニケーション障がい」とは別物と考えて良いでしょう。

なぜなら、医学用語の「コミュニケーション障がい」とは、アメリカ精神医学会による診断基準「DSM-5」において「言葉を扱うことに対し、障がいが発生する複数の疾患が一つにまとめられた」総称、と定義されているからです。単に対面式のコミュニケーションを苦手とする人や、異性と話すときに緊張してしまう人はこの状態に当てはまりません。

発達障がいの人が就職したいとき、どこに相談すればいい?

発達障がいの人は、前述のように定型発達の人と比べ、コミュニケーションが苦手な傾向にあります。そのため、就職において何のサポートもない状態では、定型発達の人と比べてどうしても不利になりがちだと言わざるを得ません。そこで、発達障がいの人の就職をサポートしてくれるサービスとして「就労支援」というものがあります

例えば、すぐにでも就職したい、具体的な就職先を紹介してほしい、という人にはハローワークの職業相談や職業紹介がおすすめです。個々の障がい特性に応じたきめ細やかな職業相談を実施してくれるほか、福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」による就職の準備段階から職場定着までの一貫した支援を行ってくれます。

また、その際に「障がい者トライアル雇用事業」を利用している企業を紹介してもらうのもよいでしょう。

障がい者トライアル雇用事業とは

これは、障がい者を一定期間(原則として3ヶ月)試行雇用することで適正や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深め、継続雇用への移行のきっかけとすることを目的とした事業です。

じっくり相談に乗ってほしい、少しずつ就職に向けた準備をしていきたい、という人には「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」「発達障がい者雇用トータルサポーター」「地域障がい者職業センターにおける職業リハビリテーション」などがおすすめです。

若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム
ハローワークで、発達障がいなどの要因でコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者につき、その希望や特性に応じて専門支援機関である地域障がい者職業センターや発達障がい者支援センターなどに誘導する。障がい者向けの専門支援を希望しない人については、きめ細やかな個別相談や支援を行う
発達障がい者雇用トータルサポーター
13地域のハローワークに配置され、発達障がいを持つ求職者に対してカウンセリングなど就職に向けた支援を行う。同時に、事業主に対しては専門的な知見に基づき、発達障がい者の就労における問題解決のための相談援助などの支援を実施している
地域障がい者職業センターにおける職業リハビリテーション
ハローワークと連携の上、地域障がい者職業センターにおいて、職業評価・職業準備支援・職場適応支援などの専門的な各種職業リハビリテーションを実施。障がい者職業総合センターにおける技法開発の成果を活用し、地域障がい者職業センターで発達障がい者に対する専門的支援を実施している

また、職業能力開発のための訓練としては、以下のようなものがあります。

一般の職業能力開発校における、発達障がい者を対象とした職業訓練
一般の公共職業能力開発校において、発達障がい者を対象とした訓練コースを設置し、障がいに配慮した職業訓練を行うもの
障がいの状態に応じたさまざまな委託訓練
各都道府県において、身近な地域で職業訓練が受講できるよう、障がいの状態に応じたさまざまな委託訓練が行われている。居住する地域の企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関など

さらに、就職した後にも手厚いサポートが受けられる「ジョブコーチ支援」や「障がい者就業・生活支援センター」もあります。

ジョブコーチ支援
障がい者の職場適応を容易にするため、職場にジョブコーチを派遣してきめ細やかな人的支援を行うもの。ジョブコーチ支援には、地域障がい者職業センターに配置するジョブコーチによる支援のほか、就労支援ノウハウを有する社会福祉法人、事業主が自らジョブコーチを配置し、ジョブコーチ助成金を活用して支援するなどのケースがある
障がい者就業・生活支援センター
雇用、保険、福祉、教育など地域の関係機関ネットワークを形成し、障がい者の身近な地域で就業面・生活面における一体的な相談や支援を行うもの

近年では発達障がいは広く知られるようになり、同時に理解も進んできました。社会で暮らしやすくするために制度を使うのがおすすめです。就職を考える際にはぜひ積極的に相談してみましょう

前編はこちら

【前編】コミュニケーション能力を上げて仕事で成果を出す方法
コミュニケーション能力は「コミュ力」とも呼ばれ、人と人との関係性づくりに長けている能力をいいます。コミュ力は、ビジネスシーンにおいてもやはり重要な能力。企業が採用選考などで重視するポイントの一つでもあります。 コミュニケーション能力とはどのような能力のことを指し、どのようにスキルアップしていけば良いのでしょうか。

おわりに:発達障がいへの就職支援制度を活用し、自信とスキルを身に付けよう

コミュニケーションの問題が発達障がいなどから来ている場合は、ハローワークなどの就職支援を利用しましょう。特性に応じた支援やアドバイスを受けられるため、就職のミスマッチが起こりにくくなります。相談や支援を活用しながら、就職・転職活動を進めてくださいね。

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