特定の物質や人間関係などに極度に依存したり執着したりする依存症は、日常生活を脅かす心の疾患です。依存症は大人だけでなく子どももかかることがあります。
今回は依存症の対象となり得るものや種類、発症原因、日常生活に及ぶ悪影響や予防・改善に効果的な対策をまとめて紹介していきます。
- この記事でわかること
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- 物質依存、行為依存、関係依存の特徴と依存する対象
- 依存症が及ぼす日常生活や家族、友人への悪影響
- 脳の報酬系と依存症発症のメカニズム
- 依存性パーソナリティ障害の精神療法と薬物療法の特徴
食や喫煙、ネットにゲーム…依存しがちな対象の種類
依存とは特定の物質の使用、行為を繰り返すうちに、その物質や行為がなくてはいられなくなり、身体的・精神的なコントロールが効かなくなる疾患の総称です。本人が依存を自覚できなかったり、進行すると特定の物質の使用や行為を「やめたくてもやめられない」状態になっていくという特徴があります。
なお、依存症は依存する対象によって大きく「物質依存」「行為依存」「関係依存」の3つに分類されます。
- 物質依存
- 特定の物質を使用、摂取することへ依存するもの。具体的な依存対象はアルコール、ニコチン、カフェイン、大麻、覚せい剤、シンナー、処方薬などで、摂取による快楽や刺激、安堵感にのめり込んでいく。
- 行為依存
- 特定の行為をすること、またそのプロセスで得られる刺激や快楽、興奮状態に依存するもの。具体的な依存対象は買い物やギャンブル、ネット、ゲーム、ダイエット、過食、窃盗、仕事、自傷行為、性行為、浮気など。
- 関係依存
- 特定の人間関係に依存するもの。恋人間や夫婦間、家族間で形成した人間関係に執着し、つながりを継続しようとしてのめり込んでいくことが多くみられる。DVや虐待、ストーカーの被害につながったり、執着する相手との関係を優先するあまり日常生活がままならなくなることも。※ただし関係依存については、依存症の定義に含めないという考え方も有。
依存症がこわい理由!人間関係やお金のトラブルを招くことも
依存症により心身に現れる症状や、依存症が原因で起こるトラブルには以下が挙げられるでしょう。
- 脳の状態が変化し、依存する物質の使用や行為をすることを最優先に考えるようになる
- 依存する物質の使用や行為ができないと、離脱症状として体に震えなどの異常が出る
- 依存対象を最優先に考えるあまり、睡眠や食事がおろそかになり、心身の健康を害する
- 家族や友人に嘘を言ったり、借金や窃盗をしたり、仕事や学校を休んでまで依存対象に時間を割くようになる
- その結果、大切な人との人間関係が悪化したり、金銭トラブルを引き起こしてしまう
- ひどい場合は犯罪の加害者になったり、事件に巻き込まれて自身や家族に危険が及ぶ
意志が弱い人は依存体質?考えられる原因とは
依存症は、うつ病は統合失調症などと同じ精神疾患です。医学的根拠に基づいて定義・診断されるもので、個人の性格や意思の弱さだけが原因で発症するものではありません。精神医学や心理学の世界では、依存症は以下のようなメカニズムで起こると考えられています。
依存症発症のメカニズム
- アルコールや薬物、ギャンブルなどで心地よさや興奮を感じると、おいしいものを食べたときや性行為中にも刺激される「報酬系」と呼ばれる回路が刺激される
- 報酬系が刺激された記憶から、脳が依存対象となり得る特定の物質の使用や行為を「癖になる刺激」と認定して記憶する
アルコールや薬物、ギャンブルなど依存対象となりやすい物質・行為による脳への刺激は非常に強いため、脳はこれらを他の行為よりも素早くクセづけてしまいます。すると、本人の意思とは関係なく特定の物質の使用・行為を反復するようになり、そのうちに習慣化していきます。そして習慣化すると、今度は従来と同じ量の刺激では満足のいく効果を得られなくなり、使用・摂取の量や頻度が増えて、特定の物質や行為に依存していくと言うわけです。
上記の事実からも依存症になるのは身体的な要素、脳の働き・仕組みによるところが大きいと言えるでしょう。また、身体的要因とあわせ以下に挙げる心理的要因、社会的要因が依存症発症の三大要因だと考えられています。
- 依存症を引き起こす心理的要因
- 強いストレスや不安から逃れるため、特定の物質の使用・摂取、行為に依存することも多い
- 依存症を引き起こす社会的要因
- 育った環境、普段の生活環境による擦り込みが依存症のきっかけとなることも少なくない
依存をやめたいときの相談先って?依存性パーソナリティ障害だったらどう対処する?
自身や家族に依存症を認め、依存から脱するために頼れる相談先としては以下が挙げられるでしょう。
国や自治体が提供する相談先
- 保健所
- 医療や福祉、メンタルヘルスについて幅広く相談に応じる国・自治体の期間。保健師や医師、精神保健福祉士などの専門家が電話や面会、家庭訪問のうえ話を聞いてくれるので、依存症の患者とその家族にまず相談してほしい機関。
- 精神保健福祉センター
- 依存症を含む、精神保健福祉関係の相談に幅広く応じる機関。各都道府県、政令指定都市に原則1カ所設置されていて、医師など精神保健福祉の専門家が話を聞いたり、家族会などの主催をしてくれる。
- 依存症相談拠点機関
- 依存症相談員が配置されている、依存症を専門に取り扱う相談機関。国が規定する研修を受けた専門相談員が、厚生労働省の事業に基づいて配置されている。各都道府県と政令指定都市で徐々に設置が進んでいる。
- 医療機関
- 精神科、心療内科などの医療機関では依存症治療を行っているところもある。なかには依存症を専門として治療、サポートしてくれる医療機関もあるので、医療従事者への相談も検討すると良い。
- 家族会、自助グループ
- 依存症患者を持つ家族のための当事者会。依存症に苦しむ本人、そして家族が互いの悩みを明かし支え合っていくための機関で、保健所や精神保健福祉センターなどで開催日時、所在地などの情報を教えてもらえる。
- 患者向け自助グループ、回復支援施設
- 依存症患者が自身の回復・治療のため、同じ悩みを抱える人と交流したり、支援員からのサポートを受けながら治療を進められる施設。近くに回復支援施設があるかどうかや所在地は、保健所や精神保健福祉センターなどで教えてもらえる。
- 依存性パーソナリティ障害とは
- パーソナリティ障害と呼ばれる精神疾患の一種。他の人に「頼りたい」「面倒を見てほしい」という想いを過剰に持ち、特定の他者への関係依存や物質・行為への依存症を併発することも多い
- 親や恋人、配偶者など自分の面倒を見てくれる人と離れることを極端に怖がる
- 自分ひとりでは生きていけないと思い込み、相手を離さない
- ささいなことも自分ひとりでは決められず、他者に決めてもらい自己責任を放棄する
- 相手に見捨てられないために自分の意見を押し殺し、肉体的・精神的虐待も我慢する
- 自分の世話をしてくれる人がいなくなると、すぐ代わりの人のもとへ向かう
- 精神療法
- いわゆるカウンセリングのこと。医療従事者と一緒に認知行動療法や自己主張訓練などを行い、治療していく。ただし、患者が医療従事者に依存しないよう注意が必要。
- 薬物療法
- 症状を緩和する、対症療法として用いられる。具体的には気分を安定させるための向精神薬のうち、薬物依存のリスクが低いものを処方していく。
民間の企業・団体が提供する相談先
自分の依存症を治療したいときや周囲に依存症と思われる人がいる場合、まずはお住まいの地域を管轄する保健所、市区町村の窓口、精神保健福祉センターなどへ問い合わせて、相談先を探すと良いですよ。
人間関係のトラブルが起こりやすい?依存性パーソナリティ障害
なお、依存症と併せて知っておきたい疾患に「依存性パーソナリティ障害」があります。
依存性パーソナリティ障害の人に見られる特徴をまとめると、以下の通りです。
特定の人に執着し、相手との関係や年齢相応を超えたことまでを要求し、強い分離不安が見られた場合に依存性パーソナリティ障害と診断されます。依存症が依存性パーソナリティ障害によるものであった場合、治療は精神療法、または薬物療法で進めていくのが一般的です。
依存性パーソナリティ障害の治療法
医療機関へ依存症の相談をした結果、依存性パーソナリティ障害と診断される可能性もありますので、覚えておいてくださいね。
スマホアプリで依存対策!自己管理して依存を克服しよう
最後に、依存症の改善をサポートしてくれるスマホアプリ5つ紹介していきます。いずれも「専門機関や医療機関への相談は気が引ける」「まずは自分でできる範囲で依存症対策をしたい」という人におすすめですので、参考にしてくださいね。
1:Quitzilla
やめたいこと、依存しているものに費やした時間やお金を入力し、これらを断てた時間や節約できたお金を統計的に示してくれます。頑張った結果を数値で見ることができるため、自分の頑張りを可視化してモチベーションアップにつなげられます。特定の習慣・行為をやめたいと思った理由を入力して残せますので、挫けそうになったときに見直せば初心に立ち返ることができます。
2:CureApp SC
ニコチン依存症改善のため、日本で初めて保険収載された治療アプリです。利用には契約申し込みと料金の支払い、処方コードの受け取りが必須ですが保険適応のため3割負担で利用できます。禁煙外来で治療をする患者さんの、院外治療のサポートをしてくれます。
スマホにアプリをインストールした後は、Bluetoothに接続し使用してください。スマホから得られる患者の行動履歴、データを医学的知見搭載のアルゴリズムが解析し、その人に合った治療・行動変容のプランを提供してくれるのが特徴です。効果は医学的に証明されており、国内打第Ⅲ相多施設共同臨床試験ではCureApp SCを使った方が、そうでない人に比べ9~24週の継続禁煙率が高かったという結果が出ています。
3:うちな~適正飲酒普及啓発カレンダー
「節酒カレンダー」の別名を持つスマホアプリで、飲酒の履歴を視覚的に管理できるのが特徴です。簡単な操作・登録で飲酒量、酔いの状態、飲酒が続いているかどうかや休肝日の必要性などがわかります。節酒に役立つ情報をほのぼのとした画面に表示し、アルコール依存症からの脱却を助けてくれますよ。
4:禁煙アシスタント
禁煙をサポートしてくれるスマホアプリです。利用開始時に1日の喫煙本数、通算の喫煙期間、1箱当たりの価格、禁煙開始日などを入力すると、禁煙継続期間から算出した節約金額、伸びた寿命がカウントアップされていきます。禁煙によって金銭面、健康面でどのくらいのメリットが生まれているかをわかりやすく教えてくれます。
5:Forest
スマホやスマホゲームへの中毒状態や依存症改善をゲーム感覚で続けられるスマホアプリです。まずはスマホに触れず、他のことに集中する目標時間をアラームでセットします。
このアプリを起動している間は、他のゲームアプリなどを使用しません。するとForest内にあるあなたの森「My Forest」に木を植えることができます。スマホいじりから離れている時間数に応じて木が成長し、素敵な森へと成長していきます。アプリ内では心やすらぐBGMが流れるため、依存症克服中のイライラの緩和も期待できますね。
おわりに:依存症や身体的・心理的・社会的要因から発症する!アプリや専門機関の力を借り改善していこう
特定の物質の使用・摂取や行為、人間関係に本人の意思で抗えないほどにのめりこみ、日常生活に支障をきたす状態を依存症と呼びます。依存症は個人の性格や意思ではなく、主に身体的要因によって発症する精神疾患です。このため依存症から脱却するには、依存症についての専門知識を持つ第三者の助けが必要になります。まずは国や自治体が構える専門機関へ相談のうえ、専門家やアプリの力を借りて改善をめざしましょう。
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