パートナーから暴言を浴びせられたり人格を否定されたりしているなら、それは「モラルハラスメント(モラハラ)」かもしれません。モラハラに当てはまる言動にはどんなものがあるのでしょう。
今回はモラハラとは何か、被害者・加害者になりやすい人の特徴や後遺症の可能性、パートナーと別れるためのポイントなどを紹介します。
- この記事でわかること
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- 人格否定や束縛などモラハラの言動の例
- 自信がなく真面目な人ほどモラハラ被害者になりやすい?
- パートナーより自分が大事?自己愛性人格障害の特徴
- 自己喪失の病「共依存」の危険性とは
- 別居や離婚などモラハラを終わらせるためにできること
恋人や結婚相手からのモラルハラスメントって?
- モラハラ(モラル・ハラスメント)とは
- モラハラとは、精神的な暴力によって苦痛を与える行為です。モラルハラスメントは倫理や道徳を意味する「モラル」に、嫌がらせという意味の「ハラスメント」を組みわせた言葉です。日本語に訳すと「道徳的・倫理的嫌がらせ」という意味になります。
モラハラは、恋人・夫婦のパートナー間の他、職場でも起こり得るとされます。身体的な暴力を伴わないケースも多く、男性から女性へ対してだけでなく、女性から男性へ対しても起こりうるのも特徴です。
なお、恋人・夫婦のパートナー間で起こることの多いモラハラの具体例は、以下の通りです。
- 恋人・夫婦間で起こるモラハラの具体例
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- 他者の前、公の場でパートナーのことを貶める態度や発言をする
- 近所の人など、比較的近しい他人の前でパートナーの失敗や失態を延々と責める
- パートナーの価値観や自尊心を傷つけるような暴言を日常的に口にする
- パートナーの意見、考え、希望をすべて否定し、自分の意に沿うようにだけ物事を進める
- 少しでも自分の意に沿わないことがあると不機嫌になったり、パートナーに対し怒り出す
- パートナーにしてもらったことへ感謝することはなく、何かダメなところ、気に入らないところを見つけては非難する
- 常にパートナーに対し傲慢な態度を取り、自分だけの細かな生活ルールを押し付ける
- パートナーについて嘘の情報を広め、本人の評判を貶めて名誉を棄損する
- 異常な嫉妬心を持っており、パートナーの交友関係を厳しく制限しようとする
- 前もって同意を得ていたにも関わらず、当日になるとパートナーの外出を嫌がり、これを態度に出して当たり散らす
- パートナーの好きなこと、やりたいこと、生き生きできることに時間を使うことを許さず、自分のための奉仕や家事、育児へすべての時間を使うよう要求する
- パートナーの努力を認めず、成功しても喜ばず、粗探しをしては責める
- 子どもに対してパートナーの嘘、悪口を吹き込んだり、目の前で罵倒する
- 自分の考えは常に正しいと思い込み、不都合が起こるとすべてパートナーのせいにして責める
うつ病やPTSDなどモラハラによって起こり得る後遺症の例
モラハラ加害者の多くは自分が正しいと思い込み、相手の意思や感情を顧みることをせず相手を追い詰めていきます。長期間にわたり身近な相手からモラハラを受け続けた場合、その時のみだけでなく下記の後遺症を患う可能性もあります。
- ストレスを原因とする体の不調
- ストレスが原因で起こる神経系や消化器、呼吸器、循環器系など体の機能異常
- うつ病
- うつ病の症状や、それに伴う睡眠障害や食欲不振、物の見方が否定的になるなどの症状が続く
- 適応障害
- 特定の状況や出来事を耐えがたく感じ、心身にさまざまな症状が出る
- PTSD
- 強い恐怖を感じたことがトラウマとなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する
HSPはモラハラのターゲットになりやすい?
以下のような性格的特徴を持つ人は、モラハラ被害者になりやすいと言われています。
- モラハラ被害を受けやすい人の特徴
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- 自己主張することが苦手で、無条件で周囲の人の意見に従ってしまう
- 自分に自信がないため自己評価が低く、相手の言動に対し「嫌だ」と言えない
- とても真面目で責任感が強いため、多少理不尽な目に遭っても我慢してしまう
- 嫌なことをされても誰にも相談せず、自分ひとりで抱え込むクセがある
また他人の表情や感情の変化に敏感で、意図を汲み取って行動する傾向のある「HSP」の人ほど、モラハラ被害者になるおそれが高いでしょう。
- HSP(ハイリ―・センシティブ・パーソン)とは
- 脳の働き方、考え方の傾向を現す言葉で、DOESの4つの特徴をすべて持つ人のこと
- D:情報を深く処理し、何事も考えすぎるクセ
- O:外からの刺激に過剰に反応し、必要以上に脳が疲れてしまう傾向
- E:共感力が非常に高く、無意識のうちに人の感情や思考を読んでしまう
- S:刺激に対して非常に敏感で、感受性が強い
よく気が付くHSPの人は、細やかな気配りで周囲の人に尽くす傾向があります。するとモラハラ加害者がHSPの人のことを「言いなりになる人」「気持ちよく威張れる相手」と見なし、尊大な態度を取るようになることがあります。
また、HSPの人は多少理不尽な言動を取られても「自分が我慢すれば良い」と考えるため、怒ったり反抗したり、誰かに助けを求めることをしません。このため、相手のエスカレートする言動に応えているうちに、モラハラ被害者になってしまうHSPの人が多いのです。
自己愛性人格障害はモラハラをする側になりやすいの?
被害者側の次は、モラハラの加害者側に見られる傾向についても学んでいきましょう。モラハラの加害者になる人には、以下のような性格的特徴が見られるとされます。
- 非常に自己愛が強く、自分は間違っていないという強い意識がある
- 一方で心のどこかに強い劣等感を抱いており、常に不安を感じている
近年、上記のような特徴を持ちモラハラ加害者になる人の多くが、精神的疾患の一種である「自己愛性人格障害」にかかっていることがわかってきました。
- 自己愛性人格障害とは
- 「自己愛性パーソナリティ障害」とも呼ばれる。一般の人の6%、特に男性に多く見られる疾患で、言動や人間関係に以下のような特徴が長期的かつ全般的に見られ、対人関係や日常生活に支障をきたすものと指す。
自己愛性人格障害は、以下のような特徴があります。
- 自分の能力を過大評価しており、自身の業績を誇張する
- 自分の重要性、存在意義、才能について根拠のない自信を持っている
- 特別な人物、優れた機関と関わること、無条件に他者から賞賛されることを望む
- 自尊心を高め優越感を得るために、他者を過小評価し卑下する傾向がある
ただし、すべてのモラハラ加害者が自己愛性人格障害の特徴に当てはまるわけではありません。あくまでも傾向として、自己愛性人格障害者とモラハラ加害者には共通点が多く、併発する可能性が高いと覚えておきましょう。
「共依存」になるとモラハラの関係性から抜け出しづらい
モラハラの特徴のひとつとして、「共依存」の関係にあるパートナー間で特に起こりやすいとされています。
- 共依存とは
- お互いが依存し合い、ある人間関係に縛られ、経済的、精神的、身体的に逃れられない状態にある関係性。共依存の概念は、1970年代にアメリカのアルコール依存症の看護現場から生まれました。アルコール依存症の患者と、患者の世話をする家族の間に互いに依存する様子が見られたことから共依存の概念が発見されました。
人が互いの存在、互いの関係に強く依存している状態のことで、疾患名や診断名ではなく関係性を現しています。共依存の関係のパートナー同士には、以下のような特徴が見られます。
共依存状態のパートナーの特徴
- 一方が相手に対し尽くし過ぎる傾向があり、何でもやってあげてしまう
- 一方が相手の好みに極端に合わせる傾向があり、自分の趣味趣向がなくなる
- 相手の感情、心の機微を敏感に感じ取れてしまうため、自分の意見や感情を押し殺す
- 一心同体になりたいという気持ちが強く、相手がいないと生きていけないと感じる
- 相手を失うことへ強い危機感、恐怖心を抱いているため、束縛し合っている
- トラブルが起きたときは、互いに「自分だけがすべて悪い」と思い込む
- トラブルの後、「こんなダメな自分といてくれるのはパートナーだけ」と強く感じる
- どんなに嫌なことでも、見捨てられることへの恐怖心から「嫌だ」と言えなくなる
上記を見ると、モラハラと合致する項目が多いのがわかります。アメリカの医師・ウィットフィールドは、共依存を「自己喪失の病」と表現しました。互いが互いの存在、担う役割に強く依存し心地よさを感じる共依存の関係になると、疾患やいま抱えるトラブルからも抜け出せなくなります。
共依存関係の2人にモラハラが起こると、加害者・被害者ともにその関係から抜け出すことが難しくなるため、注意が必要です。
DV防止法ではモラハラも暴力!別れるためのポイントは?
内閣府の男女共同参画局がDV防止法第1条によって定義するところによると、モラハラのように身体的暴力を伴わない配偶者からの嫌がらせも、DV(ドメスティックバイオレンス)に含まれています。
DV防止法が定義する「配偶者の暴力」
- 配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの)
- 1(つまり、身体に対する暴力)に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動
主に言葉や表情、空気などによる精神的な暴力・支配を伴うモラハラも、法が認める立派な家庭内暴力なのです。もし、モラハラに気が付き加害者とのパートナー関係を終わらせたい、別れたいと思ったら、速やかに以下の対処をとってください。
モラハラ・DV加害者と別れるために取るべき対策
- メールやSNS画面のスクリーンショット、加害者の音声や動画など、モラハラを受けた客観的な証拠を集める
- スマホやノートにモラハラ被害について毎日継続して綴り、信用性の高い証拠をつくる
- 必要なら第三者に立ち会ってもらったうえで、「モラハラをやめてほしい」とパートナーに直接伝える
- 別れる覚悟が固まり、モラハラ被害の証明に十分な証拠が集まったら、別居に踏み切る
- 配偶者暴力支援センターや心療内科、精神科の医師、弁護士などに実情を話し、相談実績をつくるとともにアドバイスをもらう
- これまでに作った証拠をもとに、離婚や精神的苦痛への慰謝料の支払いを求める
おわりに:「モラハラを受けている」と気付いたら、すぐ自分を守るための行動を!
直接的な身体的暴力こそ伴わないものの、不機嫌な態度や言葉で威圧し、支配しようとする行為は立派なDVです。ここまで本記事を読み、自身がモラルハラスメントの被害を受けていると気が付いたら、すぐに自分を守るための行動を取ってください。これまで恐怖の対象だった相手に抗うのは、難しいことかもしれません。しかし自分の将来の幸福のためにも、第三者の手も借りながら少しずつ別れる準備を進めましょう。
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