グローバル化が進む国際社会において、ビジネスシーンで英語を使う機会はどんどん増えています。学校で習う日常的な英語とビジネス英語ではどうしても使う単語などが異なってきますので、知らないとわからないことも少なくありません。
そこで、ビジネスパーソンが英語力をアップさせるコツとして、「シャドーイング」という英語学習法をご紹介します。使える英語を身につけたい方、必見です。
- この記事でわかること
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- アジア諸国と比較して日本人が英語に弱い理由
- 実践的なビジネス英語の力をつけるにはアウトプットとインプットどちらが大事?
- 英語学習のモチベーションの保ち方
- 苦手意識を克服!英語の発音スキルを上げるには?
- シャドーイングを効果的に行うポイント
ビジネスパーソンは英語への苦手意識が高い?日本の英語力は世界55位
国際教育事業を営む「EFエデュケーション・ファースト」が発表した「EF EPI英語能力指数(2020年版)」によれば、日本の順位は 100カ国中55位という、低い方の順位になってしまいました。一昨年は49位、昨年は53位とどんどん順位を落とし続けてしまっています。
各国や地域の英語能力レベルは「非常に高い」から「非常に低い」まで5段階で分類されていますが、日本の英語力は下から2番目の「低い」と評価されています。この段階の英語力は、目安として「同僚とスモールトーク(世間話、雑談)ができる」レベル、と定められています。
アジア地域の順位を見てみると、トップは10位のシンガポール、次に27位のフィリピンが続きます。これらの英語レベルは「高い」で、「仕事で英語を使ったプレゼンテーションを行える」レベルの英語力、と定められています。この後に続く30位のマレーシアの英語力は「平均」と評価されています。
この他、日本の近隣諸国でも32位の韓国、33位の香港、38位の中国がいずれも「平均」と評価され、日本に大きく差をつけています。特に近年、韓国の伸びはめざましく、香港を抜いてアジア地域で4位の健闘を見せました。
このように日本が大きく英語力を落としている大きな要因として、日本人の英語に対する意識や取り組み方が挙げられます。国際ビジネスコミュニケーション協会の調査によれば、ビジネスパーソンのうち「英語が好き」と答えた人は53.6%(約半数)にとどまったのに対し、「英語が苦手」と答えた人は69.0%(約7割)にものぼりました。
例えば、日本人が道で困っているとき、話しかける人は決して少なくありません。しかし、外国人の場合は英語で声をかけて助けようとする人は全体の半数だという調査結果が出ています。その理由は主として「自分の英語力に自信がないから(57.0%)」です。
しかしこのように「英語が苦手」「自信がない」と考えている人が多いにも関わらず、実際に英語を学習中の人は全体の19.2%(約2割)とかなり少ない結果でした。しかも、学習中の人の63.6%は3時間以上の学習が理想であると考えているのに対し、実際の1週間の学習時間は半数が2時間未満です。
また、学習方法も「YouTubeなどの動画を見る」が44.8%を占めていて、インプットが非常に多いことが伺えます。ビジネスシーンで利用するための英語を学習するにあたっては、「読む」「聞く」というインプットだけの学習に偏らないよう、「話す」「書く」といったアウトプットの学習を行わなくてはなりません。
英語が苦手な人と得意な人の違いとは
前述のように、英語をビジネスシーンで使えるようになるためには、どうしてもインプットに偏りがちな学習方法を見直し、「話す」「書く」といったアウトプットの割合を増やしていかなくてはなりません。しかし、それ以外にも英語が苦手な人、得意な人にはだいたい以下のような共通点があります。
英語が苦手な人の特徴って?自分を振り返ってみよう
英語が苦手な人の大きな特徴として、見るだけ・聞き流すだけの「インプット型」勉強しかしていないことが挙げられます。アメリカ国立訓練研究所の「学習ピラミッド」という、どんな学習をしたときに実際に使えるようになったかという知識定着の度合いを表した図でも、やはりインプット型の受動的な学習よりも、能動的なアウトプット型の学習の方が知識定着しやすいことが示されています。
とはいえ、アウトプットをするためにはある程度のインプットが必要です。そもそも基本的な英単語・英文法の知識が圧倒的にない状態では、英語を使ったアウトプットができません。もちろん、ビジネス英語を学ぶ上で複雑な文法や難しい英単語を無理に学ぶ必要はありませんが、中学1年生レベルの英単語や英文法をしっかり復習しておきましょう。
また、間違いを過剰に恐れる日本人の国民性も、英語のみならず語学学習において大きな壁になってしまいがちです。アウトプットをすることは常に間違えるリスクを孕んでいるため、間違えて恥ずかしい気持ちになるよりはそもそもアウトプットしないという方を選んでしまう人が多いのです。
日本社会におけるもう一つの壁として、日本、特に大都市圏を除く地方などではいまだに日本語だけが使えれば十分に生活していけることが挙げられます。実生活で必要に迫られることがないため、英語学習はあくまでも選択肢の一つとして捉えられてしまい、学習中の人が使う機会もなくなってしまうのです。
最後に、インプット・アウトプットどちらの学習においても英語の「音」を正しく理解できていないことも英語学習の妨げになりやすいです。日本の英語教育はどうしても読み・書きという文字ベースで受験を見据えたものが主であり、脳内に英語の「発音」が蓄積されにくいという欠点があります。
すると、頭の中で自分が勝手に想像した英語の音で学習を進めてしまい、実際の英語に触れたときに全く別物のように聞こえたり発音したりしてしまいます。音をそのまま理解するのではなく、音を文字に変換し、さらに日本語に変換してから理解するため、「聴く」にも「話す」にも時間がかかりすぎてしまうのです。
英語が得意な人は、こんな特徴を持っている!
逆に、英語が得意な人の特徴は苦手な人の特徴を全て反対にしたものとも言えるでしょう。まとめると、以下のような特徴があります。
- 高度な英単語にこだわりすぎない
- 日本語を適切な英単語に置き換えることよりも、伝わることを重視
- たとえば「送別会」という単語の場合、「Good-bye Party」でも十分に伝わる
- 中学生レベルの知識でも、伝わりさえすれば問題ない
- 間違えても気にしすぎない
- ちょっとした文法間違いを気にしすぎていると、そもそも話せなくなりがち
- 「相手に伝わればOK」というメンタリティでたくさん話すことが重要
- 英語で話せる環境がある
- 外国人の友人がいる、海外留学の経験がある、英会話スクールで話しているなど
- 英語で話すという実践の環境を持っていることは、会話力に重要
- 週に1回でも、話すことで英会話力アップにつながる
英語が苦手な人の大きな壁として、「間違いを恐れすぎる」というものがあります。もちろん間違えない方が良いのですが、そもそも母語である日本語でも、実際に会話するとき文法的に正しくなくても、単語が多少間違っていても伝わります。英語も同じで、文法的に正しいかどうか、難しい英単語が使えるかどうかよりも、相手に伝わることが重要なのです。
また、英語学習に限らず、何かを身につけようと思ったときには継続が必須条件です。そのためにはモチベーションを保つこと、自分にとって続けやすい学習法を取り入れていることが大切。例えば、以下のように具体的な目標を設定していると、英語学習のモチベーションを保ちやすいでしょう。
- ワーキングホリデーや留学で渡航するために、日常英会話をマスターする
- 仕事でビジネス英語を使えるようになり、業務の幅を広げる
- 転職に有利な英語の資格を取得する
- オリンピックなど、海外の人と話す機会に向けて勉強する
継続しやすい学習法は、自分に合ったもので構いません。なかなか見つからないという人は、以下のような方法を試してみるのがおすすめです。
- 好きな洋画を見ながら、発音の練習や聞き取りの練習をする
- チャットアプリで海外の友人を作り、コミュニケーションをとる
- ビジネス英会話で使えるアプリなどを、通勤時間に行う
このように、教科書を使わなくてもできる英語学習はたくさんあります。英語学習用のアプリもさまざまなものが出ていますので、自分に合ったものを利用してスキマ時間に学習するのも良い方法です。ぜひ、続けやすいやり方で英語学習を継続しましょう。
使える英語を身につけるためのポイントとは?
使える英語を身につけるためには、前述の英語が得意な人の特徴を英語学習に取り入れていけば良いのです。具体的には、まず「目標設定」「基本的な英語力」「発音の理解」の3つから始めましょう。
使える英語を身につけるポイント①:目標設定
まず、英語学習を始める上での具体的な目標を定めましょう。
- 海外旅行に行って、現地の人と交流したい
- 通話やオンラインで、外国人の友人とスムーズに話したい
- ビジネス英語を使えるようになり、仕事に活かしたい
なんとなく英語を使えるようになりたい、という漠然とした理由では、なかなか継続できるほどのモチベーションになりません。上記のような明確な理由がないのであれば、資格取得を目標にするのも良いでしょう。 TOEIC(600点以上)や英検(2級以上)など、履歴書にも記載できるような資格を取っておくと、転職や昇進でも有利です。
使える英語を身につけるポイント②:基本的な英語力
英語を話せるようになるためには、高度な英単語や文法の知識は必要ありませんが、基本的な英単語や英文法の知識は必要です。日常会話の英語に必要な単語は約1200単語とされていますので、まずはこれをしっかり身につけましょう。また、英語には大きく分けてアメリカ英語とイギリス英語がありますが、アメリカ英語に絞るのがおすすめです。
世界的に見ても標準となっているのはアメリカ英語で、イギリス英語とは発音、単語のスペルや意味がやや異なります。最初から両方実践しようとすると混乱してしまいますので、最初はアメリカ英語で基本的な英単語の知識を身につけましょう。
また、英語の語順は日本語と大きく異なりますので、英文法を勉強して語順感覚を身につけることも重要です。例えば、既にできている英語の例文をバラバラにして並べ替えるといったトレーニングを行うと、瞬時に主語・動詞の判断や肯定・否定などの判断をするクセがつき、英語を実際に話すときの瞬発力につながります。
使える英語を身につけるポイント③:発音の理解
英語を身につけるためには、英語の音を理解しなくてはなりません。実際にCDや音声を利用しながらリスニング・リーディング力を鍛えましょう。自分で発声するときは、子どもが大人を真似して発音しながら母語を覚えていくのと同じように、CDや音声を真似しながら進めていきます。
使える英語を身につけるには、学習方法も重要!
英語学習は継続しなくては意味がありません。継続できなくなってしまう人にありがちなミスとして、自分のレベルや目的に合わない教材を選んでしまっていることが挙げられます。難しすぎる、興味がなさすぎるなど、自分のレベルや目的をしっかり把握していないと意味のある学習につながりません。
インターネットなどで簡単、ラク、楽しいなどと紹介されている勉強法が必ずしも自分に合っているとは限りません。まずは自分のレベルと目的をしっかり把握し、適切な教材で学習を進めましょう。
また、ライフスタイルに合った学習方法でないと継続しにくいことにも注意が必要です。例えば、通勤時間やお風呂につかりながらのスキマ時間が捗る人もいれば、週末にカフェで集中して勉強した方が頭に入りやすいという人もいます。自分が一番続けやすい場所や方法で英語学習を継続しましょう。
シャドーイングはyoutubeやアプリがおすすめ
ある程度英語を聞き取れるようになってきたら、聞こえてくる音をそのまま発音する「シャドーイング」という学習を行うのがおすすめです。文法やスペルの細かい部分は気にせず、ただ聞こえてくる音をそのまま発音します。このトレーニングによって、リスニングもスピーキングも鍛えられます。
英語を英語として理解しようとするとき、脳内の「聴覚分野」と「理解分野」がつながっていなくてはなりません。しかし、英語の音を正しく理解できていないと、英語を日本語に変換するという過程が入ってしまいます。そこで、シャドーイングを通じて「英語を英語のまま理解する」英語脳を鍛える必要があるのです。
ネイティブの発音には独特のイントネーションがあり、シャドーイングを行うことでこれを自然に身につけられます。速いスピードに慣れる、語彙力をアップするといった効果も期待できます。一度シャドーイングした後、原文を確認してもう一度シャドーイングするとより定着がはかれます。
シャドーイングにおすすめのyoutubeチャンネル
シャドーイングを行うにはさまざまな方法がありますが、おすすめはYouTubeです。例えば、「ネイティブ英会話・リスニング&スピーキング練習」では、3段階のスピードに分けて英語を読み上げてくれるので、英語学習初心者でも理解しやすくなっています。
チャンネルなら、「Speak English With Vanessa」なども英語学習者向けにゆっくり話してくれますので、非常に聞き取りやすいです。他にも英語学習におすすめのYouTubeチャンネルや動画がたくさんありますので、ぜひ好みのものを探してみてください。
シャドーイングにおすすめの英語学習アプリ
また、シャドーイングはアプリで行うこともできます。例えば以下のようなアプリがありますので、興味があればぜひ利用してみましょう。
- シャドテン
- 自分が録音した英語の音声をプロがチェックし、アドバイスしてくれる
- LINEを使って勉強するので、日常生活に英語学習を取り入れやすい
- 自宅でシャドーイングのコーチをつけるようなイメージ
- スタディサプリENGLISH 新日常英会話コース
- リクルートが提供する英会話アプリで、スクールに通う時間がない人にもおすすめ
- 通勤・通学中に英語のシャドーイングの練習ができる
- スタディサプリENGLISH ビジネス英語コース
- さらにビジネス英会話に特化したアプリならこちら
- 実際にビジネスシーンで使うような英語の練習ができる
- 英語でのプレゼン、海外出張への不安がある、という人におすすめ
- TEDICT
- TEDの動画を英語のシャドーイング練習として使えるアプリ
- さまざまなジャンルのスピーチがあり、自分が知らない単語や表現力を身につけやすい
- 初心者には難しい表現や単語も多いので、TOEIC600点を超えてからが目安
- 本気の人の英語学習えいご漬けMOKA
- シャドーイングアプリとして、かなり本格的な仕様
- 特許登録されたシャドーイングのメソッドで学習できる
- シャドーイングの学習をどんどん進めていきたい人におすすめ
社会人は忙しい!貴重な時間を有効活用して英語を勉強する方法
ここまで英語学習の方法をいろいろとご紹介してきましたが、そもそも社会人は仕事や家事に忙しいため、なかなか英語学習のためのまとまった時間をとれないという根本的な問題があります。そこで、貴重な時間を有効活用するために「身体を動かしながら行う」「字幕で文をチェックする」「ニュースサイトを活用する」という3つの方法を最後にご紹介します。
- 身体を動かしながら行う
- 机に向かってテキストを開かなくても、ウォーキングやジョギングなど運動しながらでもOK
- 実際に、ウォーキングしながら英単語を覚えると暗記力がアップすることが科学的に証明されている
- シャドーイングなら、耳から聞いた音を口から発音するだけなので運動中でもできる
- 字幕で文をチェック
- YouTubeや映画などを見るときには、音声を英語にして英語の字幕を表示するとよい
- 自分が聞き取れていない音に気づいたり、ネイティブ独特の表現や短縮方法を学んだりできる
- 自分の好きな作品で良いが、初心者はできるだけ「初心者でもわかりやすい」と言われている作品を選ぶ
- ニュースサイトを活用する
- 「Wall Street Journal」「BuzzFeed」など、海外メディアのウェブサイトを活用する方法も
- 最新ニュースをチェックしながら、リーディング力アップ
- 初心者なら英語学習者向けのニュースサイト、中級者〜上級者ならCNN(アメリカ)やBBC(イギリス)などの高レベルな文章を読むのがおすすめ
このように、身体を動かしたり趣味・教養の時間を英語学習と組みあわせたりすると、時間を有効に利用できます。ぜひ、忙しい社会人の効率的な英語学習に役立てましょう。
おわりに:英語の音をしっかり理解する「シャドーイング」で効率的に英語学習
日本の英語力は年々低下しているという調査結果がありますが、英語学習を行う人の割合は少ないです。実生活で必要に迫られていないこと、継続できていないことなどさまざまな要因が挙げられますが、英語を英語として理解できていないことも大きな問題です。
そこで、英語脳をつくる「シャドーイング」という学習方法がおすすめです。YouTubeやアプリを活用したり、スキマ時間に語彙力を増やしたりしながら効率的に学習を進めましょう。
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