「休日なのに上司から連絡!」というのはショックですよね。業務時間外なのに対応しなければいけないのか疑問に感じる人もいるでしょう。この記事では休日に会社から仕事の連絡が入ったときの考え方、「つながらない権利」の意味、仕事とプライベートを分けるためのポイントなどを解説します。
- この記事でわかること
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- 「つながらない権利」の意味
- 休日労働が発生した時の考え方
- 休日の業務連絡が違法となるケース
- プライベートを確保するコツ
今話題!「つながらない権利」とは
インターネットの普及・発展により職場にいなくても仕事ができる環境が整いました。それに伴い、いつでもどこにいても仕事の連絡が届くという状況もでき、気が休まらない社会人も増えています。
そんな中、注目を集めているのが「つながらない権利」です。
- 「つながらない権利」とは
- 休日や退勤後などの業務時間外は、仕事に関わる電話連絡やメール、チャット、SNSなどの連絡を拒否する権利
休日なのに上司から「あの仕事の資料を送ってほしい」と連絡が来たり、部下から「週明けの仕事が不安だから土日に企画書をチェックしてほしい」と依頼が入ると、断って良いものかとても悩んでしまうのではないでしょうか。
フランスではつながらない権利は法制度化されていますが、日本では法律で定義されているわけではありません。ただし、労働者として守られるべき権利はほかにもありますので、休日や退勤後の過ごし方は守られます。
電話、メール、SNSなどで線引きは違うの?
労働者が休日のときに緊急性のない業務連絡で仕事をさせた場合、休日労働とみなされます。ただし電話連絡、メール、SNSなど連絡の形態によって認識が異なってきます。現在の日本では、休日の電話連絡は仕事とみなされる可能性が高めです。電話対応という業務をさせていると考えられ、短い通話でも休日労働に該当することも多いでしょう。
一方で、メールやSNS、チャットで連絡が入った場合はグレーゾーンといえます。電話のように応答がなくてもよく、違法と合法の境界線の引き方が難しいのが特徴です。ただし、「休日だからといって無視せず返信しなさい」など、返信の義務を主張したり返信を強要した場合は、時間外労働や休日労働に該当する可能性が高くなります。会社の指揮命令下に置かれたとみなすことができるため、そうしたメッセージは削除せずに念のため保存しておきましょう。
休日の連絡は労働基準法違反にならないの?
会社が社員に対して「指揮命令権」を行使できるのは、基本的には勤務時間内に限られます。もしも休日に連絡したり業務をさせた場合は、休日労働ですので残業代(休日労働の割増率適用)の支払いがあるのが原則です。
短時間の電話やちょっとしたメールでも、電話対応や業務をさせられた場合は「労働時間」が発生したとみなされます。休日労働の割増賃金を支払わなかった場合、労働基準法違法となる可能性があるでしょう。
「週明けでいいけど」など、休日の労働を具体的に指示していないケースでも、労働基準穂違反の可能性が考えられます。休日の労働を示唆していたり、休日労働のプレッシャーをかけている場合、法律上「業務から解放された状態」とは言えないことも。
休日労働の賃金割増率とは?
休日労働で賃金が支払われない状態は、労働者にとって非常にデメリットが大きく、損でもあります。身も心も休まらず、仕事の疲労が蓄積するのは当然です。やがては日々の業務やプライベートにも影響を及ぼすおそれがあります。休日労働をさせた会社は、労働者に割増率を適用した賃金を支払わなくてはいけません。
- 労働基準法第37条第1項
- 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
時間外労働の割増率は2割5分、休日労働の割増率は3割5分ですので、1.35倍にした賃金が支払われるのが原則。つまり休日のサービス労働は、気力・体力はもちろん金銭的にもデメリットが大きいといえます。
休日まで仕事の連絡…パワハラで訴えることはできる?
休日に仕事の電話や連絡が入ることが、労働基準法違反に該当する可能性があることを説明してきましたが、パワハラとして訴えることもできるのでしょうか?結論としては、休日に仕事の連絡を入れることはパワハラに該当する可能性があります。
厚生労働省がパワハラの類型を定義していますが、休日に緊急性のない業務連絡をすることは「業務の適正な範囲を超えて行われること」や「過大な要求」に該当するケースが考えられるでしょう。休日にわざわざ連絡を入れるのが業務の遂行に必要でなかったり不適切である場合、パワハラとみなされます。
また、緊急性がない休日の連絡を拒否した場合に「社会人なのに非常識だ!」「お前の休日なんてどうでもいいから返信しろ」など、対応したいことについて怒りをぶつけたり強要をした場合、パワハラに該当する可能性があります。
休日の連絡の緊急性や必要性の考え方
ここまで休日の連絡について、緊急性や必要性がない連絡について問題点を説明してきました。それでは休日の連絡でも対応すべき、緊急性のある仕事や必要性のある連絡とはどんなものなのでしょう。
仕事の緊急性や必要性は、その部署やプロジェクトによっても異なります。取引先の状況が影響することもあります。緊急性については、すぐに対応しないと会社に不利益や損害を与える状況などが該当するでしょう。
あるいは、通常の勤務日にご自身がミスをしていて工場や下請け会社が困っている場合、そのフォローが求められるケースもあります。状況にもよりますが、無視をした結果トラブルや損害が大きくなってしまうおそれも考えられます。
また、災害に伴う緊急事態では会社から連絡が入るケースが多くなるでしょう。外国でつながらない権利として労働者を守る動きが出ていますが、休日でも対応すべき事態は発生しうることは理解しておくと安心です。
休日は仕事の連絡を控えてほしいときの対処法
職場や上司、部下が休日でも仕事の連絡を入れてくる場合、ご自身のプライベートを守るためにも対処法を取るのがおすすめです。
職場で休日の連絡ルールを提案する
「休日は仕事の連絡を入れないようにしましょう」と提案することで、職場全体への課題提起をすることができます。特定の誰かに注意を促すことを避けたいケースでおすすめです。
SNSのアカウント交換は慎重に
職場の人や仕事関係の知人とSNSのアカウントを交換するのは慎重に考えましょう。電話だと「休日は迷惑かな」と躊躇する人でも、SNSやメール、チャットだと「ま、いいか」「週明けでもいいと一言添えれば問題ないだろう」と考えがち。こうした事態を回避するためにも、仕事上の知り合いとの連絡先交換は最低限にするのが安心です。
メールやチャットは「不在」状態を活用
メールやチャットの機能に、「不在」を表すステータスがある場合は活用しましょう。そのアプリによって表現はさまざまですが、「不在」「睡眠中」「休日」など連絡を受けられる状態ではないことをアピールするのに役立ちます。
人事部に相談する
自分の努力や工夫では休日連絡が改善されないこともあるでしょう。そんなときは人事部に相談してください。人事部は労働者を守ることも業務の範囲内です。具体的にどんな休日連絡が入ってくるか、それによって疲労や苦痛を被っていることを冷静に話しましょう。
自分の仕事を周囲と共有する
休日に連絡を入れる人は、あなたの仕事内容や進捗状況をわかっていないから確認したがるのかもしれません。日頃から周囲と仕事の情報を共有することで、相手を安心させられます。
有給や連休前は簡単な引継ぎを作っておく
有給を取得した日や連休中は特に仕事の連絡が入ってくる、という人もいるでしょう。いつもと違うリズムでの休暇取得では、通常業務をしている人があなたの仕事をフォローすることが少なくありません。
引継ぎが不十分だと「〇〇さんのこの仕事は、どうやって対処すればいいのかな」と、連絡が入る一因になりやすくなります。休みに入る前に、他の人が仕事をしやすいように簡単な引継ぎを作ると安心ですよ。
転職という選択肢もあり!
職場や会社の風土によっては、休日に連絡が入ったりサービス労働が当たり前のことも。会社に在籍しながら働き方改革を進めるという選択肢もありますが、より働きやすい環境を求めて転職するという道も考えられます。
転職を成功させるためにも、日頃からスキルアップをしたり業務をしっかりとこなしていくのが肝心です。転職先で後悔しないように、気になる会社や業界の情報収集もしていきましょう。
おわりに:会社も個人もオンオフの切り替えをするのがスタンダードに!
休日に会社から連絡が入ったとき、必ずしも対応しなくてはいけないわけではありません。その要件の緊急性や必要性が問題です。会社も個人も労働基準法や権利について勉強し、お互い歩み寄ることが大切といえるでしょう。
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