裁判離婚と比較すると「協議離婚」は平和でスムーズなイメージがあるかもしれません。ただし協議離婚を円満に成立させるためには、夫婦がお互いに協力するのがポイント。この記事では協議離婚のスムーズな進め方、不利な状況を作らないための注意点などを解説します。
- この記事でわかること
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- 協議離婚とその他の離婚の方法の違い
- 協議離婚をスムーズに進めるポイント
- 配偶者に離婚を切り出すときの注意点
- 離婚のトラブルを回避するコツ
離婚の4つの種類とかかる労力
離婚には大きく分けて、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。
- 協議離婚
- 夫婦が話し合い、合意に基づいた条件で成立する離婚
- 調停離婚
- 家庭裁判所で行われる離婚調停によって、離婚調書に基づいて成立する離婚
- 審判離婚
- 調停離婚が成立せず、夫婦の意見の食い違いが軽微な場合、裁判所が判断して必要な事項について決定を下し、成立させる離婚
- 裁判離婚
- 夫または妻が家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決によって成立させる離婚
協議離婚は当人同士の話し合いで離婚を進めるのに対し、他の3種類は外部の第三者や司法機関を利用するのが特徴です。
たとえば調停離婚は家庭裁判所で調停委員に仲介に入ってもらう方法です。夫婦間での意見が合わず調停が不成立になると、審判離婚へ進むことがあります。さらに夫婦の利害が一致しなかったり、どちらかが権利の侵害をされたと訴えたときは、慰謝料などを請求する離婚訴訟へと発展することもあるでしょう。
離婚には多大なエネルギーが必要です。円満離婚でない場合、相手への不満などを抑えつつ冷静に話し合うためのコミュニケーションコストが小さくありません。裁判離婚では弁護人などの代理人を立てることが多く、訴訟費用や弁護士費用、交通費などもかかります。
もちろん、話し合いのためには時間をかけなくてはいけません。このように、離婚が成立するまでにはさまざまなコストがかかるのが一般的です。
そのため、協議離婚はメンタル面でもコスト面でも負担を小さくしやすいのがメリットです。ただし協議離婚を成立させるためには、夫婦間のコミュニケーションや考え方のすり合わせ、離婚成立に伴う利害調整がスムーズに行われなくてはいけません。
この記事では、いかにして負担の少ない協議離婚を成立させるかについて、いくつかのコツを紹介します。
協議離婚するまでのステップ
夫婦が離婚について話し合い、条件にお互いが合意することで成立するのが「協議離婚」です。必要な手続きは、居住地の自治体の窓口に離婚届を提出すること、その他話し合いに応じて財産などを分け合うこと、親権に伴う手続きなどになるでしょう。
- 協議離婚のステップ
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- 相手に離婚の意思表示をする
- 夫婦で離婚について話し合う
- 離婚に伴う条件をすり合わせる
- 条件の合意がとれたら、離婚の手続きを進める
- 離婚協議書を作成する
- 子どもや家族に離婚について伝える(相談する)
- 離婚届の証人(2人)を見つけておく
- 自治体の窓口に離婚届を提出する
- 離婚後の生活のための手続きを進める
上記が協議離婚の一般的なステップとなりますが、離婚成立までにかかる時間や労力はケースバイケースです。「できるだけ早く離婚したい」という人もいれば、「時間をかけてでもお互いが納得のいくかたちで離婚したい」という人もいるはずです。
次章から、協議離婚をスムーズに納得のいくかたちで成立させるためのポイントを確認していきましょう。
協議離婚で話し合うべき項目
協議離婚では、離婚後の条件を当人同士で話し合います。弁護人や調停委員が同席していませんので、自分たちでしっかりと今後について話し合わなくてはいけません。
- 離婚の話し合いの基本的な項目
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- 財産分与
- 慰謝料(必要な場合)
- 周囲にいつ打ち明けるか
- 子どもがいる場合
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- 親権
- 養育費
- 面会(頻度など)
- 祖父母との交流
条件交渉で不明点や疑問点がある場合は、弁護士や法テラスに相談することで解決の方向性が見えてくることもあります。慰謝料が発生するような夫婦間トラブルがあり、話し合いがこじれてきた場合も早めに専門家に相談するのが安心です。
円満に協議離婚をするためのポイント
「協議離婚は円満」というイメージは間違いではありませんが、進め方を誤ると意見や条件の食い違いが多発し、離婚がこじれる原因となります。円満な離婚を目指す程、しっかりとお互いの条件や権利を主張しつつ、相手を尊重するというハイレベルなコミュニケーションが必要になります。
離婚によるデメリットをシミュレーションする
離婚した後に「こんなことになるなんて!」「こちらが損をした!」と後悔しないように、離婚に関するデメリットから目を背けないのが安心です。離婚によって、世帯収入が減少したり、住んでいる家から引っ越さなくてはならないこともあります。
経済的なデメリットのほか、分担する相手がいなくなったり、会社の異動や昇進に影響が出ることもあり得ます。こうしたデメリットを洗い出し、離婚後に困り事がなるべく起きないような条件を考えましょう。あるいは、困り事が起きたときの協力体制について合意を取っておくのがおすすめです。
離婚を切り出すときは冷静に
協議離婚は、夫婦の話し合いがとても大切です。感情的になったり、投げやりな話し合いでは後々トラブルを招きかねません。離婚を切り出すときは、努めて冷静に話をするように意識してください。ご自身が落ち着いていたとしても、相手からすると青天の霹靂ということも。夫婦喧嘩に発展することも想定し、お子さんがいる場合は誰かに預かってもらうことも検討しましょう。
相手がカッとなりやすい性格の場合、離婚を切り出すときは周囲に割れ物など危険物を置かないのが安心です。
相手のスケジュールや状態を考慮する
離婚の話し合いは、協議離婚だとしてもエネルギーを要します。仕事や家事で忙しい人の場合、離婚を切り出すタイミング次第で印象や影響が大きく変わることも。離婚を切り出す際は、余裕を持って相手のスケジュールを聞いておきましょう。仕事の繁忙期は避け、相手が落ち着いているタイミングで話を切り出すのが安心です。
LINEやメールで離婚を切り出すときの注意点
なかなか面と向かって離婚を切り出しづらいとき、LINEやメールで意思表示をするケースもあります。ただし人によっては「大事なことをメッセージで済ませるなんて、馬鹿にしている!」と怒りや不快な気持ちを抱くことも。
LINEやメールで離婚を切り出すときは、「落ち着いて話す時間を取るのが難しくて…」「今度しっかり時間を取って話し合いたいので、まずは意思だけ先に伝えてみました。突然でごめんなさい」など、対面ではない方法で離婚を切り出したことについて、ワンクッション説明を入れましょう。
離婚の条件などは事前にリストアップする
いざ離婚の話を切り出したものの、肝心の条件面がふわっとしていると、自分や子どもにとって不利な離婚をしてしまうおそれが考えられます。特に離婚の話し合いでは、冷静になろうとしても感情的になったり、話し合うことに疲れて頭がうまく回らなくなることが珍しくありません。
離婚や離婚後の生活について情報収集し「ここだけは譲れない」「貯金など財産分与はしっかりと」など、話し合うべきポイントを整理整頓しておきましょう。
夫婦の共有財産を確認し合う
離婚で最もトラブルになりやすいのが、お金に関することです。養育費など育児にも直結するので、しっかりと話し合っておくべき項目といえます。
基本的には婚姻中に夫婦が協力して築いた財産は、離婚時には1/2の分配で分け合うことができます。ただし協議離婚では話し合いに応じて、分配の割合を柔軟に変えるケースも見られます。年金については1/2の分割が限度と考えられています。
慰謝料を請求するときは、証拠を揃える
相手に不貞行為やDV行為があった場合でも、協議離婚で離婚が成立するケースもあります。その際、相手に慰謝料を請求することが多いでしょう。慰謝料を請求する場合、相手が不法行為をしたという証拠を揃えると話し合いがスムーズに進みます。
ただし相手が逆ギレするおそれがある場合は、信頼できる第三者に話し合いに同席してもらうなど、ご自身の心身を守る準備をしておくことをおすすめします。
話し合った内容は記録しておく
離婚に限らず、話し合いで難しいのが「言った」「言わない」の言い合いになることです。言葉のコミュニケーションでは、言い間違いやお互いの認識のズレが起こりやすく、スムーズに話し合いが進んでいたと思っても、ちょっとしたズレをきっかけに話し合いがこじれることがあります。
こうしたトラブルを避ける一番の方法は、話し合いを録音することです。人によっては「信頼してくれないのか」「録音するなんて、後ろめたいことがあるわけでもないのに」と抵抗感を覚えることもあります。音声録音はお互いの権利を守るための方法であることを伝え、音声は外部には漏らさないこと、お互いが公平に録音内容を確認できることなどを理解し合うことが大切です。
子どもや親族に相談する
離婚は本人同士の利害調整が大切ですが、子どもや親族に相談しておくのが安心のケースもあります。本人同士では合意が取れても、子どもに著しいダメージや影響を与える場合、話し合いをさらに積み重ねる必要が出てくることもあるでしょう。
また、二世帯住宅で住んでいる場合や父母などから少なくない資金援助をしてもらっていた場合、何の相談もなく離婚すると家族間トラブルを招くこともあり得ます。
離婚協議書のメリットとデメリットとは
協議離婚について簡単に説明してきましたが、話し合うべきことにはお金に関わることや子どもの教育の問題など多岐に渡ります。協議離婚は円満に見えますが、決して簡単ではないことを覚えておきましょう。
こうした不安ごとをできるだけ少なくするためにも、「離婚協議書」を作成するという方法もあります。離婚に関する話し合いの合意を、離婚協議書という書面に残すことによって、合意内容の証明が可能になります。
離婚協議書には決まった形式はありませんが、下記の内容で構成するのが一般的です。
- 離婚協議書の項目
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- 離婚に関する合意内容
- 相手が約束を守らなかった場合の対応
- 状況が変わった場合を想定した対応
- 夫婦の署名捺印
- 日付
離婚協議書を公正証書にすることで、相手が合意内容に反することをした際に役立つこともあります。たとえば慰謝料や養育費の支払いがなされなかった場合、裁判所の手続きを経ずに強制執行をすることが可能です(詳細は個別のケースによる)。
離婚協議書の作成が難しい場合やお互いの出す条件が複雑になっている場合、弁護士に依頼するのもおすすめです。内容のしっかりとした離婚協議書を作成するサポートをしてくれるでしょう。
おわりに:協議離婚を目指すなら夫婦の話し合いは必須
円満な協議離婚を成立させるためには、夫婦間の話し合いが欠かせません。条件提示や話し合いの録音などに抵抗を感じるかもしれませんが、後のトラブル予防としてお互いが協力しながら話し合いを進めましょう。
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