つらいかゆみが続くダニ刺され。大人は皮膚や免疫機能が成熟しているため、子どもと比べてダニ刺されの症状が軽いのですが、赤ちゃんや子どもは皮膚も柔らかく、免疫機能が未成熟なため、症状が酷くなりやすいです。
子どもをダニ被害から守るためのダニ対策や駆除、刺されてしまったときの対処法を解説します。
- この記事でわかること
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- ツメダニ、イエダニ、マダニの特徴と対策のポイント
- 赤ちゃんがダニに刺されやすく症状が強く出る理由
- ダニが繁殖しやすい環境や時期
- ダニ駆除の燻煙剤の煙タイプ、霧タイプ、水タイプの違い
ダニに刺されて腕や足がかゆい!アレルギー症状なの?
人を刺すダニは主に「ツメダニ、イエダニ、マダニ」の3種類です。イエダニ・ツメダニは室内で発生するダニ、マダニは野外で発生するダニで、以下のような特徴を持っています。
- ツメダニ:体長0.3〜1.0mm程度の小さなダニ
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- 本来吸血はしないダニだが、間違って人を刺してしまい、体液を吸うことがある
- 刺された直後は自覚症状がなく、刺された翌日以降にかゆみや赤い腫れが生じ、しつこいかゆみが1週間程度続く
- 布団や畳に接している部分が刺されやすい
- イエダニ:体長0.6〜1.0mm程度のダニ
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- ネズミや鳥類に寄生しているが、人も吸血することがある
- 二の腕、太もも、脇の下、お腹周りなど、皮膚が柔らかい場所を刺されやすい
- 刺された直後からかゆみ・赤みなどの症状が出る。吸血で感染症を媒介することも
- マダニ:体長3〜10mm程度の大型ダニ
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- 草むらや樹木などで野生動物を待ち伏せして寄生する。人も吸血する
- 吸血中は麻酔用物質を含む唾液を注入するので、刺されてもかゆみを自覚しにくく、刺されていることに気づかないことも多い
- 7日間ほど吸血して満腹になると自然と脱落するが、その後かゆみ・灼熱感・痛みなどの症状が残ることがある
- 吸血で日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの感染症を媒介することもある
マダニやイエダニは感染症を媒介することもありますが、基本的に吸血で発生するかゆみや腫れは「アレルギー反応」です。虫が皮膚を刺したり咬んだりすると、虫が持つ毒成分や唾液成分がアレルゲン(抗原)となって体内の抗体(免疫)と反応し、ヒスタミンなどかゆみの原因物質を分泌することで、かゆみや炎症などの皮膚症状を引き起こします。
また、虫刺されによる物理的な刺激や、皮膚に注入された成分の化学的刺激によって炎症が生じると、痛みを引き起こすこともあります。これらの症状は年齢や刺された頻度、体質などによる個人差が大きいのですが、一般的にアレルギー体質の人はアレルゲンに対する反応が出やすいことから、症状が強く出る人が多いとされています。
赤ちゃんや子どものダニ刺されとあせも(汗疹)の見分け方
赤ちゃんや子どもの場合、虫刺されだけでなく汗もによってもかゆみや腫れが生じます。特に夏場にはあせもも増えてくるため見分けるのが難しいのですが、以下のように症状の出ている場所とその状態を注意深く観察すると見分けやすいです。
- ダニ
- 脇の下や太もも、二の腕、下腹部など人の皮膚の柔らかい場所を刺す。特に、衣服で隠れている場所が多い。赤いポツポツが出る、強いかゆみが生じる、かゆみが長引く、外出しなくても毎日増える
- あせも(汗疹)
- ひじやひざの裏、首元などの汗腺に汗がたまって炎症が起こる。面状に湿疹が広がる
また、大人は皮膚の柔らかい場所が刺されやすいのですが、赤ちゃんは全身どこでも皮膚が柔らかいため、どこの皮膚でも刺されてしまう可能性があります。このため、場所だけを見て判断するのではなく、場所と症状を合わせて判断すると良いでしょう。
ダニの可能性が高ければもちろん病院を受診した方が良いのですが、ダニかどうかはっきりしなくても、気になる症状があれば一度病院で診てもらうのがおすすめです。というのも、ご両親がアレルギー体質でなくても赤ちゃんがアレルギーを発症してしまうことや、抵抗力が弱く未発達な赤ちゃんはアレルゲンの影響を強く受けやすいため、アレルギー体質でなくても症状が出ることがあるからです。
乳幼児を含む子どもに、大人と比べてアレルギーが多いのは抵抗力が低いからです。さらに、子どもの小児喘息・アトピー性皮膚炎の原因として多いのはダニです。家族中で1人でも喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症などの慢性的な鼻炎・目のかゆみなどが見られる場合、室内のダニ、またはその死骸がアレルゲンとなっているかもしれません。
最近はペットを室内で飼う家も多いのですが、ペットのハウスダストが原因でアレルギーを発症する人も増えています。ペットを飼うことが良くないのではなく、ハウスダストを軽減できるような対策をしましょう。赤ちゃんの未発達な身体に合わせたアレルギー対策を行うことは、家族全員のアレルギー発症リスクを低下させることにつながります。
ダニ予防・ダニ避けのおすすめ法
ダニはどんな家にでも季節を問わず存在しますが、中でも高温多湿の環境を好みます。気温が20〜30度、湿度が60〜80%程度の環境だとよく繁殖するので、梅雨の時期はダニが繁殖しやすいと考えられています。また、ツメダニ・イエダニはそれぞれ以下のような生態の特徴を持っています。
- ツメダニ
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- カーペットや畳、ソファーなどに潜み、他のダニや小さな昆虫をエサにして生きる
- エサになる虫が増える梅雨〜秋にかけて盛んに繁殖するため、8〜9月の被害が多い
- イエダニ
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- ネズミなど哺乳類、鳥類の血液をエサとするため、ネズミの巣や被毛中に住む
- 5月ごろから増え始め、6〜9月が繁殖のピーク。被害は初夏〜秋に集中
- 家の中でネズミを見かけたら、イエダニもいる可能性が高いと考えて良い
ダニは非常に小さく、またどこにでもいるため、完全に駆除するのは難しいです。しかし、以下のようにそれぞれのダニの発生リスクを下げれば、大繁殖を防いでダニによる被害を減らすことができるでしょう。
- ツメダニ:部屋や寝具にこまめに掃除機をかけ、エサとなるような他のダニ・昆虫を除去する
- イエダニ:宿主であるネズミを駆除する
ツメダニとイエダニ共通の対策として、下記に気をつけてください。
- 部屋を換気して風通しを良くする
- 布団乾燥機を使って湿気を取り除く
- ダニのエサとなるフケ・髪の毛・アカなど人間から落ちるゴミをキレイに掃除する
- シーツやタオルは洗濯後に乾燥機にかける
- ぬいぐるみは時々天日干しにする
部屋を締め切った状態だと湿度が上がりやすいので、湿度計などを利用して湿度が高くなったら窓を開ける、などルール化してしまうのもおすすめ。ダニが繁殖しやすい5〜10月には、駆除剤を使って部屋にいるダニの数を一定に抑えるのも良いでしょう。
布団やシーツ、タオルケットなどにはゴミが付着していますし、湿気が溜まりやすく高温多湿になりやすい場所です。布団は天日干しにして湿気を飛ばし、干した後は布団クリーナーなどでゴミやダニの死骸を吸い取っていつも清潔にしておきましょう。
シーツやタオルケットは大物ながら洗濯しなくてはならず、こまめな洗濯と干しはやや手間がかかりますが、清潔を保つことがダニの被害軽減につながります。ダニは50℃の熱を30分間あてると死滅するとされていますので、干すのではなく乾燥機で乾燥させるのも有効な方法です。
野外でマダニに刺されたらどうする?予防法は?
マダニに刺されると、吸血する場所を決めて皮膚に咬みつきながらセメント物質を出し、固着されます。吸血中のマダニを発見すると、気持ちが悪いのでつい取り除きたくなってしまいますが、絶対に自分で取ってはいけません。無理に引き剥がそうとすると、セメント物質で固着した口の部分が体内に残ってしまう可能性が高く、危険なのです。
吸血しているマダニを潰したり、つまんだりするのも厳禁。マダニの体液中に潜む病原体が体内へ逆流し、感染症を引き起こす可能性があるからです。マダニを見つけたらすぐに医療機関を受診し、安全かつ完全に取り除いてもらいましょう。
また、マダニがいそうな場所へ行くときは「帽子・手袋・長袖・長ズボン」などを身につけ、肌の露出をできるだけ防ぎましょう。ズボンの裾から侵入することも多いため、靴下や長靴を履いてマダニの侵入を防ぐ工夫も必要です。虫除けスプレーを使うときは、マダニが嫌う「ディート成分」が入っているものを使いましょう。
マダニはヒトにとりついてすぐに吸血するのではなく、皮膚が柔らかく吸血しやすい場所を探してしばらく徘徊する性質があります。ですから、帰宅したら着ていた服にマダニがついていないかしっかりチェックし、着替えや入浴でマダニを除去しましょう。このときも、マダニが既に皮膚に固着していないかどうかを確認することが重要です。
ダニ刺されの対処法や薬の種類って?
室内でダニに刺されると、激しい炎症とともにしつこいかゆみが残ります。適切なケアを怠ると、掻き壊して湿疹になってしまったり、色素の沈着を起こしてしまったりすることもあります。そこで、ダニに刺されたら以下の手順で処置を行いましょう。
- 患部を洗い流し、清潔にする
- 虫刺され薬(特に、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬を含むステロイド外用剤)を塗る
ダニによる虫刺されを早く、痕を残さないようキレイに治すためには、十分な強さのステロイド外用剤を使うのが良いでしょう。ステロイド成分はかゆみ・腫れの元となる炎症を抑える働きが強く、虫刺されの激しいかゆみや患部の炎症を素早く抑えられます。
市販のステロイド外用剤の中には、掻き壊してしまった虫刺されにも使えるように抗生物質を配合したタイプもあります。虫刺されはできるだけ掻き壊さずに治療するのがキレイに治す方法ですが、我慢できないかゆみがあるとき、既に掻き壊してしまったときは、抗生物質を配合したステロイド外用剤を使いましょう。
ステロイド薬は危険、リスクが高いというイメージを持つ人もまだまだ多いのですが、「適量を短期間」「適切な強さで、刺激に弱い部分を避けて」使うのであれば、迅速で痕の残りにくい治療ができます。ステロイド薬に限らず、薬剤は用法・用量を守って正しく使いましょう。
また、以下のような場合は自分でなんとかしようとせず、速やかに病院を受診しましょう。
- 患部の腫れがひどく、痛みもあるとき
- 広範囲にわたって症状が出ているとき
- 外でマダニに刺されたとき
特に、前章でもご紹介したようにマダニが吸血していることに気づいたら、潰したり無理に引き剥がしたりしないよう気をつけましょう。マダニが媒介する感染症には「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」という、発熱や消化器症状を伴い、感染者の6%が死に至る病気もあります。病原体が体内に入らないよう、速やかに医療機関を受診してマダニを除去・消毒してもらうことが重要です。
枕や布団に!ダニ駆除の市販グッズの選び方
室内のダニが増えてしまった場合、駆除するためには「燻煙剤(くんえんざい)」を使います。燻煙剤とは煙や霧状の殺虫剤であり、ダニ以外にもゴキブリやノミなどの害虫をまとめて駆除できます。正しい使い方をすれば人間やペットに害を及ぼすものではありませんが、部屋の隅々にまで殺虫成分を含む煙や霧が行き渡るので、使用手順をしっかり守って使いましょう。
燻煙剤を使う前には、以下のような準備を行います。
- 部屋の窓や換気口を閉め切り、引き出しや戸棚、押し入れなどを開けておく
- 食器や衣類、おもちゃ、寝具などはビニールシートや新聞紙でカバーしたり、部屋の外に出したりする
- ペットや植物、観賞魚など生き物は部屋の外に出す
燻煙剤を使うときは害虫をまとめて駆除するため、隠れ場所となりやすい引き出しや戸棚、押し入れなどを開けておきましょう。逆に、煙や霧が出ていきやすい窓や換気口は閉め切っておきます。使用後に薬剤が口に入ったり、皮膚刺激を起こしたりしないよう、食器・衣類・おもちゃ・寝具などは煙や霧が触れないようにカバーしたり、部屋の外に出したりしましょう。
燻煙剤の効果が出るまでには2〜3時間かかりますので、使っている間、人間はもちろんペットや植物も部屋に入らないよう注意しましょう。終わった後は、ドア・窓・換気口を開けて十分な換気をしてから、床・畳・カーペットなどにしっかり掃除機をかけて虫の死骸を除去します。布団や枕は天日干しをして、同様にしっかり掃除機をかけましょう。
燻煙剤には煙・霧のほか、水タイプもあり、それぞれ以下のような特徴を持っています。
- 煙タイプ
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- 強い噴射力と拡散力を持ち、使うときは蓋を本体に擦って一瞬火を起こす
- イエダニの他、ゴキブリ・ノミ・トコジラミ(ナンキンムシ)、ハエの成虫、蚊の成虫なども駆除可能
- 霧タイプ
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- 霧状で煙も熱も出さないので、燻煙後に部屋を閉め切る時間が約1時間程度で済む
- 時間がない人におすすめ。火災報知器には反応しないがガス警報器には反応するので、使うときはカバーをかける
- イエダニの他、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ(ナンキンムシ)は駆除できるが、ハエや蚊の成虫は駆除できないので注意
- 水タイプ
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- プラスチック容器に水を入れるだけで使える。初めて燻煙剤を使う人、煙をあまり発生させたくない人に
- イエダニの他、ゴキブリ・ノミ・トコジラミ(ナンキンムシ)、ハエの成虫、蚊の成虫なども駆除可能
また、洗濯できないソファや絨毯、畳などのダニ対策には、ダニを防ぐシートやスプレーを使うと良いでしょう。もちろんこまめに掃除機をかければ表面のダニや死骸を取り除けたり、生息・繁殖しにくい環境を作れたりはするのですが、内部のダニまでは駆除できず残ってしまうことがあるからです。
そこで、スプレータイプの駆除剤を使うのがおすすめ。乾いた後に掃除機をかけて、死骸を取り除くのも忘れないようにしましょう。駆除した後は、ダニを防ぐシート(寄せつけないシート、忌避タイプ)や置いておくだけでダニを寄せつけないグッズなどを使い、ダニが再び繁殖しないようにする工夫も必要です。
また、ダニを寄せつけないだけでなく、ダニを駆除できる「ダニ取りシート」を使う方法もあります。ダニを駆除できるタイプのシートには「粘着タイプ」と「特殊タイプ」の2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
- 粘着タイプ
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- ダニ取りシート内部に粘着式のシートがあり、ダニをおびき寄せて粘着で捕獲するもの
- いわゆるゴキブリホイホイと同じタイプ
- 特殊タイプ
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- おびきよせるまでは粘着タイプと同じだが、その後の駆除方法が独自
- ダニを乾燥させて死滅させたり、3D構造のシートでダニを閉じ込め、出られなくしたりする
ダニ取りシートを使うときは、安全性や駆除できるダニの種類をしっかり確認しましょう。ダニを死滅させるためとはいえ、殺虫成分が強いタイプは小さい子ども・ペットのいる家では使いにくいものです。安全性がしっかり調査されたダニ取りシートを選びましょう。捕獲できるダニの種類も、イエダニ・ツメダニの他、アレルギーの原因になりやすい「チリダニ」が入っているかどうか確認しましょう。
また、ダニ取りシートは実際にどれだけダニが捕獲できたか目視で確認しにくいものです。そこで、ダニ取りシートの効果を確認するには、それぞれの会社が第三者機関に依頼して捕獲データを調査してもらったものを見るのが良いでしょう。データはホームページ上で公開されていますので、ダニ取りシートを選ぶときにはぜひチェックしてみてください。
おわりに:赤ちゃんや子どものいる家では特に、ダニ対策が重要
ダニに刺されると大人も子どももつらい症状が出ますが、抵抗力や免疫力が弱く、未発達な赤ちゃんや子どもは特にダニ被害やアレルギー反応が強く出てしまいやすいです。そこで、こまめな掃除やダニ駆除、予防対策を行いましょう。
もしダニに刺されてしまったときは、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。特に、屋外のマダニに刺されてしまったときは絶対に自分で潰したり除去したりせず、医療機関で除去してもらいましょう。
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