女性の体に起こる不調や疾患は痛みやだるさを伴うことがあり、日常生活に支障をきたしかねません。前編では、女性ホルモンの働きについて解説し、宮内膜症・子宮筋腫・子宮がんなどの女性特有の疾患の症状を説明しました。
この記事では、PMSの症状とピル使用に期待できる効果、性感染症を発症したときの対処法を解説していきます。
- この記事でわかること
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- PMS(月経前症候群)の代表的な症状とピルの効果
- 月経困難症と月経前不快気分障害(PMDD)の違い
- 気になる不調があるときの対処法
- 性感染症の疑いがあるときの症状と治療法
女性の悩みの代表格!PMS(月経前症候群)
女性にとって、毎月訪れる月経が悩みのタネになることは多いです。特に、近年日本でもよく知られるようになってきた「PMS(月経前症候群)」とは、月経の直前3〜10日間に起こる諸症状のことで、次のような精神的・身体的なさまざまな不調を指します。
- イライラなどの情緒不安定
- 胸の張り
- むくみ
- 体重増加など
ほとんどの場合、月経開始に伴って症状が軽快したり消失したりするのですが、イライラなどの精神的症状が強く出る場合は、家庭や職場の人間関係に悩みが及んでしまうこともあります。日本では月経のある女性の約70〜80%が月経前症候群の何らかの症状を持ち、5.4%は生活にも支障をきたしていると言われています。
PMSの代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- PMSの精神的症状
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- イライラしたり、怒りっぽくなったりする
- 憂鬱な気分になったり、泣きたくなったりする
- ぼーっとする
- いつも張り詰めた気分になり、落ち着かない
- 情緒不安定になる
- 家族や友人など、身近な人に八つ当たりしてしまう
- 集中できない
- PMSの身体的症状
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- 乳房の張り・痛み
- 疲れやだるさ、むくみ、のぼせ
- 肌荒れ、ニキビ
- 体重増加
- 腰痛
- 下腹部の張り
- 頭痛・頭が重い感じがする
- 眠気や不眠など、睡眠リズムが崩れる
PMS緩和に「低用量ピル(OC)」がおすすめされる理由
PMSを緩和するための薬として、低用量ピルが使われることがあります。低用量ピルは避妊効果があるとしてよく知られていますが、PMSのほか下記の不調や疾患の改善が期待されます。
- ニキビ
- 月経痛
- 月経不順
- 月経過多
- 子宮内膜症 など
近年では、特に避妊よりもPMS改善のために低用量ピルを使用する女性が増えています。
PMSが起こる原因は、黄体期と呼ばれる排卵から次の月経までの間に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンバランスの乱れを引き起こすためだと考えられています。低用量ピルを使用するとこうしたホルモンバランスの変動が落ち着くので、PMSに対して一定の効果が期待できます。
ただし、低用量ピルを飲み始めてから3ヶ月ぐらいまでは、人によってPMSの身体症状と同じように吐き気・頭痛・めまい・不正出血などの副作用が起こることもあります。身体が慣れると症状が落ち着き、以降はほとんど副作用やPMS症状に悩まされることなく生活できる場合が多いので、PMSの症状に悩まされている人は、ぜひ医師に相談してみましょう。
月経周期に伴う症状のうち、PMSではないものもあります。以下のような症状がある場合は、自己判断でPMSと判断せず、医師に伝えてよく相談しましょう。
- 月経困難症
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- 月経中の腹痛が寝込んでしまうほど酷い
- 下痢や吐き気など日常生活に支障を来す不調がある
- 月経前不快気分障害(PMDD)
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- PMSの中でも精神的な症状が重く、自分でのコントロールが難しい
- 日常生活が全く送れないほど深刻なケースもある
- 日本では、1.2%くらいの女性にPMDDの症状が見られるとされる
- 初期の更年期障害
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- 45〜55歳ごろの女性に見られることが多い
- PMSと似た症状が現れる人もいる
- 更年期障害なのか、PMSなのか症状の判断が難しい
女性が気をつけたい性感染症(STD)と各症状
性感染症とは、名前のとおり主に性行為を介して感染する疾患のことですが、カンジダや梅毒など、必ずしも性行為を伴わなくても発症する感染症もあります。特に女性で注意が必要なのは、以下のような性感染症です。
カンジダ症
- 概要
- 女性の体内にもともと存在する真菌(カビ)の一種で、性行為がなくてもストレスや体調不良など、免疫力の低下で自然発症することがあります。
- 代表的な症状
- 外陰部の赤い腫れ、強いかゆみなど。
- 治療法
- 定期的な膣洗浄、軟膏塗布など。治療期間は最低でも1週間。
女性の体内にもともと存在する「カンジダ」は、性行為の経験がない人でも自然発生的に発症することがありますので、注意が必要です。健康な人の場合は、腟内をデーデルライン桿菌と呼ばれる細菌が酸性に保っているため、雑菌が侵入・増殖しにくくなっているのですが、免疫力が低下したり、抗生物質の投与でデーデルライン桿菌が大量に死滅したりして細菌の勢力関係が変化すると、カンジダなどの雑菌が増殖し、感染症を引き起こしてしまうことがあるのです。
クラミジア
概要感染性が高い性感染症で、潜伏期間は1〜4週間程度。咽頭に感染する場合もあります。代表的な症状おりものの増加、腹痛など。ただし特徴的な症状がないので感染に気づかないことも多いので注意。治療法治療期間は最低2週間。根治のためにも感染者を増やさないためにも、早期発見が重要。
ヒトパピローマウイルス(HPV)
概要女性のほとんどが一生に一度は感染します。主な感染経路は性行為ですが、ほとんどが免疫力によって自然治癒します。ただし、まれにHPVが消滅せず残ったままになることがあります。そのまま放置してしまうと、良性なら「尖圭コンジローム」の原因に、悪性なら「子宮頚がん」を引き起こすおそれがあります。症状HPVに感染しても、症状がないことが多い。治療法HPVワクチン接種による予防がおすすめ。
淋病
概要オーラルセックスによってうつることが多く、潜伏期間は2〜7日程度。咽頭に感染する場合もあります。代表的な症状おりものの増加など。痛みを感じるケースは少なく、感染に気づきにくいので注意。治療法抗生物質を使用する。
性器ヘルペス
概要ヘルペスの病変部と接触することで感染し、潜伏期間は3〜7日程度。代表的な症状性器に小さな水泡が多数でき、痛みとかゆみが続く。治療法一度感染するとウイルスを完全に駆除することはできないので、再発を防止する治療を行う。
梅毒(第1期、第2期)
概要皮膚や粘膜の小さな傷から、トレポネマという病原菌が侵入することで感染。潜伏期間は長く、3週間〜3ヶ月程度。代表的な症状第1期の症状は、性器に痛みを伴わない硬いしこり。第2期の症状は、全身(特に手足)に発生する多数の小さな斑点。症状が出ないケースもあり、専用の血液検査で判明することもあるので検査が重要。治療法ペニシリンなどの抗生物質の内服。
婦人科と産婦人科の違いって?病院を受診した方がいい症状をチェック
女性特有の疾患を見てもらえる病院には、婦人科と産婦人科の2種類があります。ざっくり言えば、妊娠・出産のための検査や治療を行えるのが産婦人科、女性特有の疾患を診察するのみなのが婦人科です。女性特有の疾患で病院を受診したい場合、どちらを受診しても構いませんが、周囲に妊婦さんばかりいると気になるという人は産婦人科を避け、婦人科のみの病院を選ぶと良いでしょう。
婦人科・産婦人科とも、下記の女性の体の悩みの相談ができます。
- 月経の悩み
- おりものの異常
- 子宮・卵巣・乳房の疾患
- 女性の性感染症
- PMSやPMDD
- 更年期障害
- 避妊の相談
- 不妊の相談 など
女性特有の幅広いトラブルに対応できます。もし、将来的に妊娠・出産の希望があり、ずっと同じ先生に診てもらいたいという場合は妊婦検診や出産にも対応できる「産婦人科」を選ぶと良いでしょう。
また、以下のような症状に心当たりがあれば、早めに婦人科または産婦人科を受診しましょう。
- おりものの異常(色や状態の変化、悪臭、多量、血が混じるなど)
- PMSやPMDDの症状がつらい
- 月経の異常(月経痛が酷い、半年以上来ない、周期が長すぎる・短すぎる、期間が長すぎる、経血量が突然増えた、など)
- 不正出血(月経時以外の出血、性行為後の出血、閉経後の出血、便や尿に血が混じるなど)
- 下腹部や排便・排尿時の痛み、性行為痛、腰痛など
- 更年期障害の症状がつらい
乳房の異常(痛み、へこみ、ひきつれ、しこり、乳汁の異常分泌など)は基本的に乳腺外科・乳腺科で診察しますが、近くにない場合、乳腺外科や乳腺科の医師から婦人科の受診を勧められた場合などは婦人科を受診しましょう。その他、トイレが近くなった、下腹部がぽっこり出てきた、便秘、肌荒れなど、婦人科系の疾患が疑われる場合も診察の対象です。
前編はこちら
おわりに:PMSや性感染症は軽く見ずに病院に相談するのがおすすめ
月経で痛みなどの不調が強く出る場合は、しょうがないと思わずに医師に相談するのがおすすめです。自分では気づかない重大な疾患が潜んでいるかもしれません。性感染症を放置した場合も、深刻な疾患の原因となるおそれがあります。信頼できる婦人科または産婦人科を探してみてくださいね。
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