一年の終わり、年の暮れにお世話になった人に贈る「お歳暮」。相手に喜ばれるようなお歳暮を贈るためには、どんなことに気をつければ良いのでしょうか。失礼に当たらないような選び方や金額の相場、送り方のマナーなどを確認しましょう。
また、お歳暮をいただいた後のお返しや新婚夫婦が実家・義実家や仲人にお歳暮を贈るかどうかなど、お歳暮にまつわる疑問点も一緒にご紹介します。
- この記事でわかること
-
- 関東と関西で異なるお歳暮を贈る時期
- のし紙や表書きにはどんなことを書く?
- 悩んだときにおすすめのお歳暮で人気の食べ物や飲み物
- お歳暮を贈ってはいけない相手とは
- お礼状は手書きがマスト?LINEなどでもOK?
お歳暮を贈る時期はいつ?お中元との違いとは?
お歳暮を贈る時期は、もともと「12月13日〜12月20日」とされていました。これは、12月13日が「正月事始めの日」、すなわちお正月の準備を始める日であることと、一般的に20日以降はどこの家庭も年越しの準備で慌ただしくなることが関係しています。しかし、現在では11月の間からお歳暮の準備を始め、11月末には発送してしまう人も少なくありません。こうした背景には、お歳暮ギフトを取り扱うデパートなどが早期割引を実施している影響もあるでしょう。
また、関東と関西ではお歳暮を贈る時期の目安が若干異なります。
- 関東の場合
-
- 12月初旬〜12月31日までに届けば問題ないケースが多い
- 年内に贈りそびれた場合は「1月7日(松の内)まで」に、のし紙の表書きを「御年賀」に変えて品物を贈る
- 関西の場合
-
- 正月事始めを守るケースが多く、12月13日〜12月31日までに届けば良いことが多い
- 年内に贈りそびれた場合は「1月15日(小正月)まで」に、、のし紙の表書きを「御年賀」に変えて品物を贈る。
ただし、夫婦どちらかの実家や海外で過ごす人もいるので、あまりぎりぎりに届いても受け取ることができません。基本的には地方を問わず、12月20日までに届くようにしておくと良いでしょう。
上記を越えて間に合わなかった場合は、2月4日の立春までにのし紙の表書きを「寒中見舞い」に変えて贈りましょう。
「お歳暮」とよく似た習慣に「お中元」がありますが、それぞれざっくり言うと以下のような違いがあります。
- お中元とは
- お世話になった人に、日頃の感謝を込めて贈る夏の挨拶。「中元」とはもともと道教の習俗の1つで、旧暦7月15日のこと
- お歳暮とは
- 日頃お世話になっている人たちに対し、1年の締めくくりにお礼の気持ちとして贈るもの
お中元とお歳暮、いずれも「お世話になった人に品物を贈る」という行動自体は同じですが、意味は大きく異なります。もともとお中元は中国の宗教の一つである「道教」のお祭りで、これが仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と混ざり、祖先の霊を供養する日とされるようになりました。やがて江戸時代以降は盆の礼として親戚やお世話になった人へ贈り物をする習慣へと発展し、現在のような形で定着します。
お歳暮の起源は江戸時代までさかのぼり、毎年2回お盆と暮れの時期に長屋の大家さんや取引先に対して「日頃お世話になっています、これからもよろしくお願いします」という意味を込めて店子や商人が贈り物を持参したのが始まりの一つと考えられています。それが商習慣と結びつき、現在のような形になったそうです。
喜ばれるお歳暮の選び方と好印象につながるマナー
お世話になった人に感謝の気持ちを込めて贈るお歳暮は、できるだけ相手に喜ばれるような品物を選びたいものです。まずは、基本的なお歳暮の選び方を2つ見ていきましょう。
- 人気商品から選ぶ
-
- 年末年始は実家への帰省などで親族が集まることも多いため、ビールや日本酒などの酒類、お正月用の料理で使える数の子や鮭などの生鮮食品が人気
- 普段はなかなか買わないカニやふぐなどの高級グルメや、産地の食材なども人気が高い
- 大人数でシェアできる和菓子・洋菓子、ハムやソーセージなどの加工肉も嬉しい
- 先方が好みで商品を選べるカタログギフトも、季節を問わず贈り物におすすめ
- 相場から選ぶ
-
- 毎年継続して同じくらいの品物を贈るため、高価すぎるものは相手に気を使わせたり、翌年以降の負担になったりする
- 一般的には、3,000円〜5,000円程度が相場
- お中元を贈らずお歳暮だけ贈る、贈る側の年齢が高い、特に重要な取引先という場合は5,000円〜10,000円程度でもOK
お中元とお歳暮は季節が正反対なので、その意味でも人気の品物が変わってきます。お中元は猛暑の最中なので、下記の品が定番で人気です。
- ビールやジュースなどのドリンク
- そうめん
- スイカなど夏らしい食品
- メロンやマンゴーなど冷やして食べやすいフルーツ/li<>
特にお中元でこうしたものを贈っている場合、お歳暮は別のものを贈ると良いでしょう。
また、お中元を贈った後にお歳暮も贈る場合は、お世話になったことに対する感謝の気持ちに加えて「来年もよろしくお願いします」という意味を込めてお中元より2割程度高めの品物を選ぶ傾向にあります。ただし、いずれの場合も生鮮食品は日持ちしないものが多いので、発送する時期には十分気をつけましょう。
お歳暮の基本的なマナーは?
では、お歳暮を贈るときの基本的なマナーを確認しましょう。
- 相手の食べ物・飲み物アレルギーや好き嫌いは、事前に確認しておく
-
- 食料品を贈るときは、相手のアレルギーや好き嫌いに十分配慮する
- そばアレルギー、お酒やコーヒーが飲めない、などは見落としがちなポイントなので注意
- 好き嫌いが分かれやすい品物も、それが好きとわかっている場合を除いて避けておく
- 毎年継続的に贈る
-
- お歳暮は「お世話になったことへの感謝」と、「これからも変わらぬおつきあいのお願い」の両方の意味がある
- 贈る相手との関係が今後も続くわけではなく、1回限りならお歳暮ではなく「御礼」でOK
- また、贈る相手との関係性が変わったときも無理して贈らなくて良い(例:退職や転勤は、次のお中元かお歳暮までで、さりげない区切りの手紙を添える)
- 個人でもビジネスでも、今までと今後の関係をよく考えて贈る
- のしなど、マナーをきちんと守る
-
- 基本的に、贈り物を贈るときは「内のし」、直接手渡しする場合は「外のし」
- のし紙は紅白の蝶結び(リボン結び)で、結びの上段中央に「御歳暮」などの表書き、下段中央に贈り主の氏名(フルネーム)を記載
- 最近では紙資源節約のため、短冊タイプの簡易のしが増えているため、それでもOK
- お礼状・送り状を忘れずに
-
- お歳暮をもらったらお礼状を、贈るときには送り状をつける
- いずれも、ごく親しい間柄の場合は電話やメールなどで済ませてもOK
- 送り状の場合、ギフトの宅配サービスなどで手紙を同封できないときは、届く頃を見計らって近況をしたためた挨拶状を出しておくと良い
どんな贈り物でもそうですが、食料品を贈るときに相手のアレルギーや好き嫌いを把握しておくことは大切です。もしわからなければ、好き嫌いの分かれやすいものは避け、食料品を避けると良いでしょう。また、のし紙はデパートなどのギフトコーナーで手配する場合、印刷してつけてくれますので別に買う必要はありません。
ワンランク上のマナー!贈り方にも配慮しよう
もう一歩進んだマナーとして、お歳暮の贈り方にも配慮しましょう。
- 生鮮食料品など足が早いものを贈るとき
-
- 受け取れる日時を事前に確認
- 家族が集まる年明け直前に届くように手配する
受け取れる日が確認できない場合は賞味期限が長く腐りにくいビールや焼き菓子、海苔などを贈ると良いでしょう。
お歳暮は感謝の気持ちを表すものですから、受け取った人がどう感じるか、受け取る人がどんな状況かといったことに少し配慮するとより喜ばれやすいです。
お歳暮の金額相場や贈ってはいけない物は?
前述のように、お歳暮の金額の相場はだいたい3,000円〜5,000円です。しかし、自分と相手との関係性によってはやや異なります。概ね、以下のような金額を目安にすると良いでしょう。
- 親戚、友人、会社の同僚など:3,000円〜4,000円前後
- 両親、仲人、会社の上司など:5,000円前後
- 特にお世話になった人:5,000円〜10,000円前後
また、お歳暮では相手の喜ぶものをあげるのが一番良いのですが、以下のような品物を贈ってはいけないとされています。マナー違反なだけでなく、相手に不快な思いをさせてしまう可能性もありますので、これらの品物は贈らないよう注意しましょう。
- 下着・肌着
- 直接身につけるものを贈ることは、相手に対し「みすぼらしい格好」「生活が苦しい」「施しをする」などの失礼な意味にあたる
- 履物・マット・スリッパ
- 「踏みつける」ことを連想させるため、贈り物には向かない。特に、目上の人には失礼な印象を与えやすいので注意する
- 時計・文房具
- 「勤勉奨励」すなわち、もっと勉学に励みなさいという意味になる。入学祝いなどであれば適切だが、お歳暮、特に目上の人に贈るのは非常に失礼
- 鞄
- 「通勤」を連想させるため、これも目上の人には失礼にあたる
- 商品券などの金券・現金
- 贈る金額があからさまなことに加え、相手が金銭的に困っているという意味になってしまう。相手が喜ぶ品物を選ぶような心遣いもない、と捉えられるので、特に目上の人には避ける。ただしお歳暮を贈り合う習い事のうち生徒数が多い習い事教室では、お歳暮は現金のみとしているところもあり、そのような場合は現金でOK
- 刃物
- はさみ、包丁など切るために使うため、「縁を断ち切る」という意味にとられやすく、お歳暮に向いていない
- ハンカチ
- 日本語でハンカチは「手巾」と書き、「てきれ(手切れ)」とも読めることから、やはりお歳暮には向いていない
これら以外にも、不吉な意味の花言葉を持つ花、語呂合わせで「死」や「苦」を連想させるような品物を贈るのも失礼にあたりますので、避けましょう。お歳暮はあくまでも感謝の気持ちを表すものなので、実用性だけでなく品物の持つ意味に注意して選ぶことが重要です。
仕事関係やお世話になった相手にお歳暮を贈るときの注意点
お歳暮は、お世話になった人にお礼・挨拶として贈るものです。一般的には両親・義父母などの親戚、仲人、友人、恩師、会社の上司や同僚に贈るのが良いでしょう。ただし、公的な立場にある人(学校の先生や公務員、議員、政治家など)の場合、品物を贈ることで利害関係が生じてしまうといった不都合が起こる可能性もありますので、お歳暮は控えましょう。
また、会社の上司や同僚のほか、取引先も会社によっては社内コンプライアンス上、または慣習上、贈答品を贈り合うことが禁じられている場合もあります。仕事がらみの人に贈りたい場合は、事前に会社が定める贈答品のルールについて確認しておきましょう。
喪中の人にはお歳暮を贈らない?四十九日を待った方がいいの?
お歳暮は感謝の気持ちを伝えるものであり、お祝いではありません。そのため、贈る側や贈られる側が喪中(不幸から1年以内の状態)であっても、お歳暮を贈っても差し支えありません。ただし、通常使う紅白の水引がついたのし紙ではなく、無地の短冊に表書きと名入れだけして品物を贈りましょう。もし、年内に贈りそびれた場合は松の内の時期を避け、送り状やお礼状にはおめでたい言葉を避けます。
忌中(故人の四十九日前)の場合は、贈り物をすると香典としての意味合いが強まってしまいますので、四十九日が終わって忌中を終えてから贈りましょう。どうしても忌中が年内に明けない場合は、年が明けて松の内が過ぎてから「寒中お見舞い(寒中御伺)」として贈ります。表書きを書かない無地ののしでも良いでしょう。
事情がありどうしても忌中の相手にお歳暮を贈りたい、という場合は、無地の短冊や奉書紙、地味な包装紙などを使ってお歳暮を贈ります。手紙におめでたい言葉を避けるのは喪中と同じですが、できれば慰めの言葉も添えておくとより丁寧です。
お歳暮をいただいたらお返しはどうする?
お歳暮は本来、目下の立場から目上の立場の人に日頃お世話になっている感謝の気持ちを込めて贈るものです。そのため、お歳暮をもらっても基本的にお返しは必要ないと考えられています。逆に、お返しをしてしまうと贈り主に「かえって相手に気を使わせてしまったのではないか」と思わせてしまうことにもなりかねません。
ただし、お歳暮が届いたらできるだけ早く「お礼状」を出しましょう。お歳暮をいただいたお礼であるとともに、無事に品物が届いたことを相手に知らせるものでもあります。家族や親しい友人・知人などであれば電話やメールで済ませても構いませんが、目上の人や年上の人にはより丁寧に、電話・メールを避けて直筆の手紙を送りましょう。
お礼状は封書でなく、はがきでも構いません。はがきや便箋、封筒、シールなどに雪だるまなど季節のイラストが描かれた可愛いものを使うのも良いでしょう。また、お礼状だけではどうしても気が済まないというときは、お歳暮が到着してしばらく間をあけてから、いただいたお歳暮の半額程度の品物を「お年賀」「寒中御見舞」「御礼」として送ります。
新婚夫婦は実家・義実家や仲人にお歳暮を贈るべき?
ここまでで、実家・義実家や仲人にもお歳暮を贈るのが定番であることをご紹介してきました。しかし、お歳暮を贈る習慣は地域や家庭ごとにも事情が異なりますので、新婚当初でどうすべきなのか悩む場合はパートナーや自分の両親、既に結婚している兄弟や従姉妹などに相談・確認すると良いでしょう。
特に、自分の親だけでなく相手にも親がどう思っているのか聞いてもらい、両者のすり合わせを行うと良いでしょう。「もともと、親に贈る風習はない」「親と別居するときは贈る」など、考え方はそれぞれです。また、親同士が贈り合うというパターンもありますので、自分たちが贈るのか、親に任せたままで良いのかも明確にしておきましょう。
親から明確な返答が得られない場合など、先に結婚している兄弟姉妹や従姉妹がいれば聞いてみるのも有効です。地域や家庭によっては「義兄弟の家にも贈る」という風習があることもありますので、その点もぜひ確認しておきましょう。
また、確認せず最初の一年はとりあえず贈ってみる、という方法もあります。もし、先方に贈答の習慣がなければ「今回は頂きますが、お心遣いだけで結構です」と断ってくれるでしょう。「最初の頃は贈っていたけれど、だんだんと贈らなくなった」というケースも少なくないようです。
仲人さんにはいつまで贈ればいいの?
一般的に「仲人さんへは3年間」と言われますが、必ずしも3年間が絶対のマナーというわけではありません。もちろん、今後もお付き合いを続けたい人であれば贈り続けても構いませんが、基本的に「今年度はお世話になりました、来年もよろしく」と贈るお歳暮は、何もしていないのに毎年もらうことを負担に感じる人もいます。
特に、当日の結納や結婚式の媒酌をお願いした「頼まれ仲人」「名誉媒酌人」「表仲人」といった人に対して長年贈り続けるのは嫌味にもとられかねませんので、贈るかどうか良く考えましょう。3・5・10年目などの節目の時期に、相手先からお礼状で「今後はお気遣いなく」とやんわり断られる場合も多いです。
自分から止める際、特に改まって申し出る必要はありませんが、年賀状や暑中見舞いで近況を伝えたり、会う機会があったときに手土産を渡したりする心遣いをすると良いでしょう。
おわりに:お歳暮はお世話になったお礼と、今後のお付き合いのお願い
お歳暮は、一年間お世話になったこと、今後ともお付き合いをお願いしたいことの両方の意味を持つ贈り物です。時期的にビールなどの酒類、お正月に食べられる生鮮食品、大人数で分けられる焼き菓子などが喜ばれます。
基本的には両親・義父母などの親戚、仲人、友人、恩師、会社の上司や同僚などに贈るものですが、実家・義実家や仲人に贈るかどうかは家庭や地域の事情にもよりますので、両親などにあらかじめ確認しておきましょう。
コメント