手先や足先が冷えてしまったり、身体が温まりにくかったりする「冷え性」は、ひどくなると寝つけない、便秘や下痢になりやすくなる、といった二次被害的な症状も現れてしまいます。そこで、身体の内側から食べ物や飲み物で温める方法がおすすめです。
今回は、冷え性さんにおすすめの食材や飲み物を中心に、調味料やスパイスもご紹介します。この機会に、ぜひ「温活」を始めてみませんか。
- この記事でわかること
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- 冷えをもたらす食生活や体の状態など
- 体を温める栄養素や働きを持つ飲み物、食べ物
- お腹が冷える人にスムージーが向かない理由
- 冷えない体づくりにおすすめの朝食メニュー
- 忙しい人でもできる冷え性改善の食事法
冷たいもの摂り過ぎてない?ダイエットも冷えのもと!
身体が冷える原因はさまざまですが、まず考えられるのが口から取り込む食べ物・飲み物が冷たい、ということです。人間は恒温動物と呼ばれ、体温を一定に保つ機構が身体に備わっているのですが、体温を一定に保つためにはエネルギーが必要です。歩いたり運動したり、考えたりするときにも使われますが、身体が冷えたときにも熱を出すためにエネルギーが消費されます。
身体の熱は食べ物からの栄養をエネルギーに変えるときに生まれます。口にするものが冷たいと、せっかく栄養分を得られても、飲食物が入ってくるときに冷えた胃や腸などの消化器官を温めるために使われてしまい、手先や足先など末端部分の体温維持にまで熱を回せなくなってしまうのです。
冷たい飲食物を口にすると身体が冷えますが、温かい飲食物なら身体が温まる、ということを経験側的に知っている人は少なくありませんが、身体の熱を余分に消費してしまわないためにも、できるだけ温かいものを摂取するようにしましょう。特に、お腹がすいたらとりあえず冷蔵庫から冷たいものを出して飲んだり食べたりする、ということが習慣になっている人は要注意です。
また、熱を生み出すのは主に筋肉ですが、成人した女性は同じ身長・体重の男性と比べ、筋肉量が10%程度少ない傾向にあります。つまり、体内で作る熱の割合もそのぶん少ないのです。男女とも午後に体温が高くなるときは同じくらいまで上がりますが、女性の場合は少ない筋肉の約10%分の体脂肪が蓄えられており、断熱材の役割をしてくれるためだとわかっています。
ですから、女性にとっては適正な体重だけでなく、適度な筋肉量と体脂肪のバランスも重要なのです。筋肉を作らず、極端に食べる量を減らす無理なダイエットを行うと、摂取エネルギーが不足するだけでなく筋肉量も体脂肪も減り、さらには女性ホルモンのバランスが崩れて体温を維持できなくなってしまうのです。
他にも、食生活の乱れや便秘なども冷えの原因になることがわかっています。
- 食生活の乱れ
- 冷たい飲食物、甘いもの、ファストフード、スナック菓子などの食べ過ぎ
- ミネラル・ビタミン不足に陥ると身体が冷え、血液もドロドロになり循環が悪くなる
- 便秘
- 腸内で蠕動運動が行われていないと、基礎代謝が低くなる
では、逆に冷え性の方におすすめの食材や飲み物にはどんなものがあるのでしょうか。次章で詳しく見ていきましょう。
冷え性さんにおすすめの食材や飲み物は?
前述のように、そもそも調理方法として冷たいものは身体を冷やし、温かいものは身体を温める傾向があります。ですから、常温よりも冷えたものはなるべく食べない・飲まないこと、加熱したものを食べることをまず心がけましょう。その他、おすすめの栄養素と摂取できる食材として、以下のようなものが挙げられます。
- 熱エネルギー源となり、代謝を上げるたんぱく質
- 納豆・豆腐など大豆製品、牛乳・卵・チーズなど乳製品、あじ・カツオなど魚類、牛・豚・鶏など肉類
- 糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素をエネルギーに変え、体温を上げるビタミン群
- 豚肉、ハム、玄米、そば、ピーナッツ、レバー、うなぎ、卵、チーズ、納豆、さば、かれい、ししゃもなど
- 末梢血管を拡張し、血行をよくして新陳代謝を促すビタミンE
- かぼちゃ、アボカド、あじ、アーモンド・ピーナッツ・くるみなどナッツ類、松の実、植物油、ごまなど
- 血液に含まれるヘモグロビンの材料となり、身体の各部に酸素を運ぶ鉄分
- レバー、ひじき、切り干し大根、ほうれんそう、小松菜、ピーマン、わかさぎ、あさり、しじみ、大豆、高野豆腐など
- その他
- ねぎ、たまねぎ、しょうが、にんにく、にんじん・ごぼうなど根菜類、にら、れんこん、桃、栗など
身体を温めやすい食べ物は、主に寒い地方で採れるものや冬が旬のもの、色が濃いもの、地下で育つ根菜類などです。他にも、塩分が多いもの、辛さのあるもの、色の濃いもの、発酵食品なども身体を温めてくれます。塩分や辛みは生活習慣病のことも考慮してほどほどに留める必要がありますが、発酵食品や根菜類はぜひ積極的に摂取しましょう。
また、身体を温めてくれる飲料としては生姜湯が有名です。他にも、ほうじ茶・ココア・葛根湯のほか、甘酒や日本酒なども身体を温めてくれますので、ほっと一息つきたいときや、お酒を飲みたいと思ったとき、こうした飲み物を選ぶと良いでしょう。
トマト・きゅうり・レタスなどの生野菜は身体を冷やしやすいとされますが、蒸したり茹でたりと加熱すれば摂取しても構いません。他にも、もやしやしめじ、なすなども身体を冷やしやすい野菜ですが、やはり加熱調理をしたり、生姜・こしょう・山椒・にんにく・みそなど、身体を温める調味料で調理したりすると冷やす性質が弱まり、食べても身体が冷えにくくなります。
下痢や便秘にお悩みなら内蔵型冷え性かも?おすすめ食材や飲み物は?
一般的な冷え性では、手先足先や下半身など皮膚の表面が冷たくなる傾向が見られます。しかし、内臓型の冷え性では手足の先は温かいのに、お腹だけが冷えているという特徴的な冷えが見られます。腸が冷えるので便秘や下痢を起こしやすくなったり、疲労が溜まりやすくなってよく風邪を引いたりするのもこのタイプの冷え性の特徴です。
内臓が冷えるとエネルギーを作り出す筋肉の運動が低下するため、さらに内臓の働きが弱まり、消化不良で便秘や下痢を引き起こします。消化不足だと身体に栄養が行き届かないので、疲れやだるさにつながることもあります。免疫力や抵抗力が弱まるので、胃腸炎・夏風邪などにもかかりやすくなるとされています。
内臓型の冷え性になるのは、運動不足のほか、冷たいものの過剰摂取やエアコン環境などで血流が滞ったり、代謝が落ちたりすることが原因だと考えられています。つまり、大切なのは普段の生活習慣です。また、ストレスによる自律神経の乱れで末梢の血管収縮がうまくいかないと、血流が悪くなって内臓に血液を集められず、冷えてしまうと考えられます。
内臓型の冷えには、以下のように身体の内外から温める対策を取りましょう。
- お腹の中から温める
- 温かい食べ物や飲み物を摂取する
- 前章でご紹介したように、身体を温める食材を摂る
- お腹の外から温める
- 腹巻やカイロを使う、温めのお湯にゆっくり浸かるなど
- ※厚着や暑いお湯は、汗をかいてかえって身体を冷やしてしまうので注意
- 有酸素運動をする
- 全身の代謝が上がり、血流改善に効果的
また、納豆・みそ・ヨーグルト・チーズ・漬物・醤油など、前章でもご紹介したように発酵食品は身体を温めてくれます。逆に、近年健康に良いとして流行っているスムージーは冷え性という面だけを見ると、あまり効果があるとは言えません。その理由は、体温を上げる肉類を大量に食べる欧米で開発されたレシピなので、もともと身体を冷やしやすくなっているからです。野菜や果物を摂取するなら、加熱調理したものや、常温の果物をそのまま食べるのが良いでしょう。
ぽかぽか朝食で体にエンジン!冷えない一日をスタートさせる方法
体内は、1日のうちでゆるやかに変動しています。一般的に夜間には低く、早朝に最も低くなり、起床して朝食を摂ると急激に上昇し、その後も夕刻前までゆるやかに上昇し続けます。夕食後はゆるやかに下降していき、再び睡眠へとつながるのです。睡眠中は代謝も低下し、朝食は1日の活動に向けて代謝を高めて体温を上昇させるため、朝食は重要な意味を持っています。
ですから、毎朝の食事は規則的に、かつ、温かく消化のよい飲食物を摂取しましょう。できれば昔ながらの朝がゆや雑炊などの柔らかい炭水化物、味噌汁とご飯などを食べられるとエネルギーにもなりやすく、理想的です。また、入浴後の冷たいビールなどは控え、体温の高い日中に果物を食べると体温が必要以上に下がりにくくなります。
1日の始まりである朝食に温かいご飯を食べると、胃や腸への負担が軽減されるほか、栄養を吸収しやすくなります。味噌汁をはじめとしたスープ類は短い時間で作れますし、具材にもビタミン・ミネラルが豊富な根菜類、鳥のささみ、豆腐や豆類など高タンパク・低カロリーな食材を入れると必要な栄養を上手に摂取できます。付け合わせに漬物・納豆・みそ・キムチなどの発酵食品を採り入れると、腸内環境や血流の改善にもなりますので、おすすめです。
冷え性さんが料理に活用したい調味料とスパイス
ここまでご紹介してきた冷え対策をまとめると、以下のようになります。
- 筋肉量維持のためにも、タンパク質を積極的に摂取する
- 腸内環境を整える発酵食品を摂取する
- 玄米、全粒粉のパン、黒胡麻、豆類、小魚など、丸ごと食べられる食品を摂取する
- スパイスや調味料を上手に使う
- 水分は温かいもの、または常温で
- 身体を温める食べ物と冷やす食べ物を知り、温かい食べ物を積極的に摂取する
中でも、スパイスや調味料は一品としてではなく、ちょい足しや料理のアクセントとして手軽に身体を温められます。昔から調味料としてよく使われているみそ・からし・酢・黒砂糖などのほか、以下のようなスパイスを積極的に採り入れましょう。
- 唐辛子
- 辛味成分カプサイシンが血流を良くし、体温を上昇させる
- 高い発汗作用がある
- 生姜
- 加熱すると、辛味成分ジンゲオールがショウガオールに変わる
- 発汗を促す働きがあり、末端部分まで血液をゆきわたらせる
- 胡椒
- 辛味成分ピペリンは新陳代謝を活発にし、血液循環をよくし、代謝を上げる
- 山椒
- 辛味成分サンショオールは、新陳代謝を活発にし、とくにお腹を温める
- 桂皮(シナモン)
- 末梢血管の拡張作用があり、血行を改善する
- 発汗作用、殺菌作用がある
- 八角
- 喉の炎症をおさえ、冷え性の緩和や消化促進作用をもたらす
生姜が身体を温めることは古くから経験則的に知られていましたが、近年では研究によって実際に含まれる辛味成分のショウガオール、ジンゲオールが身体を温める効果を持つことがわかってきました。紅茶にジンジャーパウダーを入れたり、チューブのしょうがを入れたり、生の生姜をすりおろして入れたりすると、手軽に摂取できます。
他にも、紅茶にシナモンをふりかけたり、そばやうどんに七味唐辛子をふりかけたりするのも身体を温めるのにはおすすめです。ぜひ、冷え改善にスパイスを上手に取り入れてみてください。
おわりに:冷え性さんには、温かいものや寒い地方で採れる食材、スパイスがおすすめ
身体を冷やさないための大原則として、冷えたものをなるべく摂らない、ということが挙げられます。アイスやビールなどの冷えた飲食物はできるだけ避け、温かい紅茶や日本酒、加熱調理されたものを飲んだり食べたりするようにしましょう。
また、身体を温めてくれる根菜類や発酵食品などを積極的に摂取するのもおすすめです。飲み物にスパイスをちょい足ししたり、身体を温める調味料で料理するようにしたりするのも良いでしょう。
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