仕事にはパフォーマンスが大切だとよく言われます。近年ではパフォーマンスの高さを維持するために個人でも会社でも、スキルアップや職場環境改善などさまざまな工夫を行っています。
しかし、意外と見落とされがちなのが毎日の食生活の重要性です。今回は、仕事のパフォーマンスを上げるための食事の摂り方、不足しがちな栄養素など、社会人が注意すべき食生活に注目してみましょう。
- この記事でわかること
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- パフォーマンスが高い・低いってどんなこと?
- 食事の摂り方が仕事に影響を与える理由
- パフォーマンス向上のために摂取したい栄養素
- モチベーションがアップするランチ時間の過ごし方
- すぐに取り入れたい仕事の効率を上げる方法
仕事のパフォーマンスとは?能力や業績のことを指す?
「パフォーマンス」という言葉は、英語の「Performance」から作られたカタカナ語です。一般的に日本語では「人の目を引く行動」という意味で使われることが多く、例えばステージで披露される演技や、身体表現を用いた芸術などのことを指すケースが多く見られます。
大元の言葉である英語の「Performance(パフォーマンス)」にはたくさんの意味がありますが、ビジネスやプライベートでよく使われるのは主に以下のような意味です。
- 性能、能力、動作、仕事ぶり、腕前
- 業績、成績、実績、功績、出来高、売り上げ
- 任務・仕事などの実行、遂行
- 劇などの演技、公演、上演
- 音楽の演奏、コンサート
- 宣伝など、特定の行動
このため、ビジネスや仕事の文脈で「パフォーマンス」という言葉が使われる場合、「仕事ぶり、腕前、能力、業績、成績、売り上げ、出来高」などを表すことが多いです。金融業界であれば投資の運用実績や運用成果のことを指し、職種によっては任務や職務における実行、履行といった意味を表すこともあります。
広告活動や宣伝活動など、特定の行動を「パフォーマンス」と呼ぶこともありますが、意味のベースとなるのは、いずれの場合も「物事や状況における動作や変化」というものです。
仕事のパフォーマンスが低い人の特徴や「質的栄養失調」の影響
「パフォーマンスが低い、悪い」と言う場合、「仕事ぶりが悪い」「業績が悪い」といった意味になるのがほとんどです。さらに派生して「売り上げがいまひとつ振るわない」「成績が上がらない」「業務の遂行が滞っている」といったことに使う場合もあります。
パフォーマンスが低い状態になる原因はさまざまですが、近年指摘されているのが「質的栄養失調」です。
- 質的栄養失調とは
- 食事を摂取しているのにも関わらず、栄養が偏っているために栄養不足になっている状態。糖質の摂り過ぎに加えて、タンパク質・ミネラル・脂肪酸・ビタミンが不足している。質的栄養失調に陥ると、「やる気が出ない、イライラする、眠りが浅い、だるい」など心身の不調を招く
特に、タンパク質と鉄分は心身の健康を保つ土台となる栄養素ですから、これらが不足すると心身に不調が現れやすくなります。現代の食生活ではタンパク質が圧倒的に不足しやすいので、「体重(kg)×1g」の量を意識して摂取する必要があります。体重50kgの人なら50g摂取すれば良いので、意識しやすいでしょう。
質的栄養失調を防ぐためには、他にも以下のようなポイントに気をつけましょう。
- 意識的にタンパク質を摂取する
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- 肉・魚介・卵など、動物性タンパク質を最優先に
- 肉・魚介は特に赤身のものを意識すると、鉄分も補給しやすい
- ごはん、麺、パンは半分に
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- 主食の量を半分にすると、糖質を手軽に減らせる
- 酒食を減らす代わりにタンパク質をしっかり摂取すれば腹持ちが良いので、無理なく糖質量を減らせる
- 調味料を変える
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- 砂糖など糖質が多く含まれている調味料の摂り過ぎに気をつける
- できるだけ、糖質が含まれない調味料を使う
- ジュース、甘いお菓子を避ける
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- ジュースや甘いお菓子は糖質量が多く、血糖値の乱高下を招くのでできるだけ避ける
- 鉄不足を解消する(鉄を十分に摂取することで代謝がうまくいくので、甘いものを欲しなくなる)
質的栄養失調を改善すると、うつ病・パニック障害・摂食障害などの精神疾患のほか、小児のADHD(注意欠陥・多動性障害)、高齢者の認知症なども改善される傾向にあるとわかっています。このように、日々の食事を改善することで仕事のパフォーマンスを上げられるかもしれません。次章から、パフォーマンスを上げるために注意すべき食事のポイントをご紹介します。
パフォーマンスを下げる食事の摂り方は?社会人は朝食を抜きがち?
前章で、日々の食生活が仕事のパフォーマンスに影響するかもしれないことをご紹介しました。そこで、まずはパフォーマンスを下げないように注意すべき食生活のポイントを見ていきましょう。
仕事のパフォーマンスを維持するためには、集中力が必要です。その要となるのが脳の働きですが、脳は寝ている間も働き続けている臓器で、そのエネルギー消費量は全身の約20%を占めます。脳の重量は体重の約2〜2.5%とされているので、他の部位と比べてもエネルギー消費量が圧倒的だとわかります。
脳にエネルギーを供給するためには、寝ている間に消費したエネルギーを補給できる朝食が不可欠です。朝食を食べないと下記のような不調を引き起こします。
- 脳のエネルギー不足で集中力が散漫になる
- 疲れやすくなる
- ぼーっとすることが多くなる
というように、朝食の欠食によってその日のパフォーマンスが低下してしまいます。平成26年の国民健康・栄養調査によれば、女性より男性の方が朝食の欠食率が高いというデータもありますが、仕事のパフォーマンスを上げたいならしっかり朝食を摂りましょう。
また、午後からの仕事には昼食の摂り方が影響します。前述の質的栄養失調に陥らないような栄養バランスを心がけるのはもちろんですが、他にも以下のようなことに注意しましょう。
- 血糖値が乱高下しないよう、炭水化物中心のメニューを避ける
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- 空腹時にラーメン、ざるそば、うどんなど炭水化物中心のメニューを摂取すると吸収が早すぎて、血糖値が急上昇してしまう
- 昼食の後に強い眠気に襲われたり、ぐったりと疲労感を感じたりする人は要注意
- 忙しくてジュースだけで済ませる、菓子パン・カップラーメン・おにぎりだけで済ませる、などもNG
- 食事はしっかり噛んで食べる
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- 歯応えのあるものを10分以上かけてよく噛むと、セロトニンが活性化される
- 栄養ゼリー、柔らかい麺類、パンなどをろくに噛まず飲み込むと、午前中に消費したセロトニンを回復させられない
- 食事しながらスマホを見たり仕事をしたりするのも噛まずに飲み込むことにつながるので、セロトニン活性効果を弱めるので注意
血糖値が急上昇することの問題点は、上がりすぎた血糖値を下げようと、膵臓から「インスリン」というホルモンが大量に分泌され、今度は一気に血糖値が下がってしまうことです。このように食事中から食後という短時間で血糖値が急上昇・急降下することを「血糖値スパイク」と呼びます。血糖値スパイクは血管の炎症や酸化ストレスを起こしやすくなるだけでなく、動脈硬化が進む原因にもなります。心当たりのある人は、ぜひ昼食の内容を見直してみましょう。
パフォーマンスを上げる朝食とランチの食べ方
前章で朝食が脳のエネルギー補給に重要なことをご紹介しましたが、さらに朝食の内容にもひと工夫するとよりパフォーマンスアップにつながります。具体的には和食を基本ベースとしながら、主食・主菜(メインのおかず)・乳製品・サラダという以下のような組み合わせを意識しましょう。
- 主食:ごはん、パンなど
- 主菜:肉、魚、豆腐、卵などのタンパク質
- 乳製品:牛乳、ヨーグルトなど
- サラダ:2〜3種類以上の野菜を組み合わせたもの
また、近年注目されているホルモンの1つに「インスリン様成長因子(IGF-1)」がありますが、このホルモンは正常に分泌されることで生体の発達・成長・成熟、物質代謝の調節、老化の抑制などを行っています。食生活が乱れるとこのホルモンが減少してしまい、代謝の調節や老化抑制がうまくいかなくなってしまいます。
ですから、「朝はお腹が空かないから食べない」「朝食を摂らなくても、1日の必要カロリーや栄養は摂取できる」という考え方は危険なのです。単純なカロリー計算や栄養素の合計値だけではなく、規則正しい食生活で体内のホルモンバランスも同時に意識しましょう。
また、必要な栄養素は一度に摂取するのではなく、朝・昼・晩の3食に分けて少しずつ摂取する必要があります。例えば、タンパク質を積極的に摂取することは質的栄養失調を防ぐのに有効ですが、朝や夜に一気に摂取しようとするのではなく「朝食にはハムや卵を適量」「ランチの麺は肉・大豆製品の入ったメニューに」「夜の主菜は魚で」というように、分散して摂取しましょう。
ランチタイム前後は仕事で忙しい人も多いでしょうが、昼食では以下のようなポイントを意識しましょう。
- いつも社内で食べるのではなく、できるだけ外出する
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- 日光を浴びながら少し歩くと、セロトニンが回復する
- 外食に限らず、テラス席や公園など、自然に近い場所でお弁当を食べるのもOK
- 昼休みは午前中の仕事で溜まった疲れを癒し、集中力を回復する時間として、リラックスするのがおすすめ
- 違うお店、違うメニューを開拓してみる
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- 人間の脳は、いつもと違う行動をとると創造性やひらめきに関わる「アセチルコリン」という物質が活性化する
- せっかく外食しても、行く店や頼むメニューが決まっていると脳が働きにくい
- 仕事の企画やアイディアなどに煮詰まっている人は、ぜひ違うお店やメニューを開拓しよう
- 昼食後はすぐ20分歩く
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- 食後すぐに運動すると、血糖値が上がりにくい
- ハードな運動ではなく、早足のウォーキングなどでOK
- 特に、糖質の多い食事を摂ったら食後すぐに運動するのがおすすめ
- 好きな人と親交を深めながら食事する
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- 気の合う同僚、上司、部下、友人と一緒に昼食をとる
- 親しい存在に対して愛情を感じると、「オキシトシン」というホルモンが分泌され、ストレス軽減につながる
食事のとり方を工夫してリラックス!セロトニンやオキシトシンの増やし方
デスクワークが続くと、リラックスや精神安定などに関わる「セロトニン」というホルモンが減少してしまいます。昼食でセロトニンを十分に回復できないと、午後からの仕事でイライラや意欲減退が起こってしまうかもしれません。昼休みはオフィスにこもらず、ぜひ外で昼食をとりましょう。
また、血糖値スパイクを防ぐことは重要ですが、ときには炭水化物の多いものを食べたいときもあるでしょう。そんなときは、食後すぐに運動すると血糖値が上がりにくくなります。歩く場所はどこでも構いませんし、階段の上り下りなどでも構いません。
これまでは、食後は消化のためにゆっくりするというのが定説でしたが、この考え方は生活習慣病予防の観点から言えば間違いなのです。できれば、炭水化物の多い食事をしたときだけではなく、毎日行って足腰も鍛えながら効率的にダイエットしましょう。
昼食は気が合う人と親交を深めるのにも有効な時間です。自分が好意を抱く人と楽しい時間を過ごすことで、オキシトシンというホルモンが分泌されますが、オキシトシンが増えると上記のようにストレスを減らすだけでなく、良質な睡眠につながるメラトニンに働きかける「セロトニン」も増えます。
セロトニンも同時に増やしてくれるのは、デスクワークの多い人にとって願ってもないことです。精神を安定させ、午後からの仕事も前向きに頑張れるだけでなく、夕方を過ぎればメラトニンに働きかけて睡眠の質を高めてくれます。ぜひ、気が合う人と楽しく話しながら昼食を摂取しましょう。
仕事のルーティン化や通知オフが効く?パフォーマンスを上げる方法
最後に、仕事のパフォーマンスを上げるために食事以外で気をつけやすいポイントをご紹介します。キーワードは「ルーティン化」「休憩」「オンオフの切り替え」の3つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
仕事のパフォーマンスを上げる方法①:ルーティン化
人が最もストレスを感じるのは、何かを判断するときです。例えば、仕事の最中に「次は何をするのか」「他にやるべきことがあったか」というように考えを巡らす場面が多いと、疲れが溜まりやすく、パフォーマンスの低下につながりやすくなってしまいます。そこで、できるだけ仕事をルーティン化しておくことが重要です。
仕事のルーティン化に最も良いのは、手順書を作ることです。料理のレシピを作るように、ちょっと複雑な工程はササッとチェックリストを作り、最初に手順を確認するだけで構いません。毎日行うような手慣れた作業に手順書を作らなくても良いのですが、行う頻度が低く、少し複雑な仕事にはぜひ手順のチェックリストを作ってしまいましょう。
やってみるとわかりますが、余計な思考や判断ミスが極力排除されるので、かえって効率よく仕事を進めやすくなります。チェックリストを作ることで、改善点やアイデアが閃くこともあるでしょう。そうすれば、さらなる効率化やスピードアップにつながります。
また、ストレスを減らすという意味では、疲れもストレスもまだ少ない午前中に重要度の高いクリエイティブな仕事を行い、午後はできるだけ頭を使わない単純作業、簡単な仕事を行うと良いでしょう。大切な仕事を先送りしてしまいがちな人は、この順番が逆になっていることが多いのです。心当たりがあれば、ぜひ仕事の順番を変えてみましょう。
仕事のパフォーマンスを上げる方法②:休憩
1日を通じて高いパフォーマンスを発揮するためには、仕事の合間に上手に休憩時間を挟み、適度にリフレッシュしてモチベーションや集中力を回復することも重要です。近年の研究では、人間は長時間ぶっ続けで作業を行うより、適度に休憩を挟んだ方がかえって効率も集中力も維持できることがわかってきました。
例えば、2013年にニュージーランドの学生を対象にして行われた研究では、以下の3つのことがわかりました。
- 休憩せずに同じタスクを続けていると、集中力は悪化の一途である
- 休憩せずに別のタスクに切り替えても、集中力は回復しない
- 集中力が回復するのは、休憩を挟んだときだけ
休憩をとらず何時間も同じ作業をしているととても疲れる、ということは誰もが経験するでしょうが、実際に研究結果からも休憩の重要性が示唆されています。「ちょっと疲れたかな」というタイミングで、早めに休憩をとるのがコツです。まだいける、と思ってしまうときには、ぜひ思いきっていったん休憩をとりましょう。
仕事のパフォーマンスを上げる方法③:オンオフの切り替え
仕事には集中力が大切です。ということは、仕事モードに入るときは、集中力の妨げになるものは極力排除しておきましょう。具体的には、「携帯やスマホをマナーモードにする」「携帯やスマホは離れた場所に置いてしまう」「通知をすべてオフにしておく」などがおすすめです。
新着メール、電話の着信、PCやスマホの通知機能などは集中力の妨げになりやすいものです。営業中などで着信やメールを常にチェックする必要があるときは別ですが、デスクワークを集中して行うときには無用です。ぜひ、「集中モード」の切り替えを上手に行い、パフォーマンスをアップしましょう。
また、仕事が終わったら仕事のメールの確認や仕事関連のサイトのチェックなどをすべてやめましょう。テレワークで仕事をしている人なら、仕事関連のアプリやサイトをすべて閉じれば良いのです。「今日の仕事はここで終わり」と、自分の脳に伝える「シャットダウンの習慣」をつけ、仕事モードと休憩モードのオンオフをしっかり切り替えましょう。
おわりに:質的栄養失調や血糖値スパイクに注意してパフォーマンスアップ
現代の食生活では、糖質過多になりやすいことに加え、タンパク質・ミネラル・脂肪酸・ビタミンが不足する「質的栄養失調」に陥りやすいとされています。糖質控えめ、タンパク質や鉄分を意識的に摂取しましょう。
また、血糖値の乱高下「血糖値スパイク」を防ぐためにも、空腹時は糖質の摂り過ぎや早食いはNGです。できるだけ社外に出かけ、よく噛んで食べ、昼食後はすぐ運動するなど、脳と身体に良い食生活を身につけましょう。
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