人一倍繊細で感受性が強いHSPのことが、世の中に広く知られるようになりました。「自分はHSPかも」と気づきを得る人がいる一方で、職場の人から「HSPなので配慮してほしい」と言われて悩む人も。HSPが仕事で抱えがちな困りごとや周囲の人が何を配慮すべきか一緒に考えていきましょう。
- この記事でわかること
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- HSPの定義と「DOES(ダズ)」の概要
- HSPは病気または障害なのか
- HSPの人への対処が求められる理由
- 職場のHSPへの上手な接し方
HSPとはどんな意味? 病気なの?
HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person)の略語で、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念です。
- HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは
- 繊細で感受性が強い特性・性質を生まれ持った人。さまざまな刺激に敏感に反応しやすい。感受性が強く共感しやすいなどの特徴を持つ
繊細な人や感受性が強い人すべてがHSPとは限りません。HSPには、「DOES(ダズ)」という4つの性質を持ち合わせると考えられています。
- D:Depth of Processing:情報を深く処理をする
- 深く思考して処理をする傾向があり、時間をかけて結論を出す
- O:Overstimulation:過剰に刺激を受ける
- さまざまな刺激を受けやすく、疲れやすい
- E:Emotional response and empathy:情緒的(感情的)に反応しやすい・共感力が強い
- 共感力が高く、他人の感情の影響を受けやすい
- S:Sensitivity to Subtleties:些細なことも察知する
- 他人の感情や気分、周囲の音や光、匂いなど、些細な刺激を察知しやすい
HSPは病気ではない
HSPは病気ではありません。生まれ持った特性や性質であると考えられています。そのため治療などで治せるものではなく、HSPによる困りごとには工夫や配慮で対処していく必要があります。
HSPは発達障害ではない
HSPは特性や性質であり、障害とも異なります。そのため、障害者手帳などの支援を受けられるものではありません。
HSPの人は身近にいて当然!
HSPは全人口の15~20%が該当すると考えられています。これは、約5人に1人はHSPという計算です。家族や友人、職場の人の中にHSPがいても当然のことだということになります。
仕事や職場でHSPの人が苦手とすること
HSPの人は生きづらさを感じることがありますが、それは仕事面や職場の環境・人間関係でも見られます。
たくさんの人と会う
HSPの人は刺激に弱いと考えられていますが、人間関係においても敏感である傾向がみられます。その性質はシャイ、内気、繊細と受け止められることもあります。
過大なタスクやタイトなスケジュール
プレッシャーや疲れを感じやすいのもHSPの特徴です。たくさんのタスクやタイトなスケジュールで仕事をこなすことを求められ続けると、心に余裕がなくなったり、さまざまなことを気にし過ぎる傾向があります。
まぶしい光や特定の音、においが苦手
強くてまぶしい光、大きな音、においなどもHSPの人にとって刺激過多になりやすいでしょう。職場環境に適応できなかったり、職場のレイアウト変更や移動のタイミングで強いストレスを感じることも。
ストレス発散
HSPの人は繊細な性質を持つため、ストレスや疲労を溜め込みやすい傾向もあります。些細なことでも深く考える傾向があるため、気持ちの切り替えやリフレッシュが苦手な人も多く、なかなかストレス発散できないケースも見られます。
「私、HSPかも!」と自覚する人が増えてきた?
近年はHSPを扱った書籍などが出てきたこともあり、HSPという概念が世の中に浸透してきました。「私、HSPかも…」「僕が生きづらいのはHSPだからだったんだ」と、ご自身がHSPであることを発見する人も増えています。
HSPの人は繊細であるがゆえの生きづらさを抱えていることも少なくありません。HSPであるという気付きを得て、生きづらさを解消するために工夫をしたり、周囲の人に理解を求める人もいます。
HSPは全人口の15~20%の人が該当するといわれているように、社会の中にはたくさんのHSPの人が暮らしています。みんなが生きやすい社会を叶えるためにも、HSPの人が生きやすい社会づくりが考えられるようになっていくでしょう。
HSPの人に対処しないリスクはあるの?
「HSPは病気でも障害でもないんだから、配慮を求めるのは甘え」と考える人もいるかもしれません。しかし、HSPの人の困りごとをスルーし続けることにはリスクやデメリットもあります。
周囲の人からすると「HSPの人は何に困っているのだろう?」「どんな配慮が必要なんだろう」「配慮は義務なの?」と不安に感じることもあるでしょう。HSPは病気でも障害でもないため、HSPに対処することは義務とはいえません。
しかし、社会全体がダイバーシティや個性を認めることに価値を置いている今、HSPの性質を持った人々が生きやすい社会・働きやすい職場環境づくりが求められることが予想されます。
たとえば職場にいるHSPの人から、「窓からの光が強すぎるので席を変えたり、証明の調節をさせてほしい」という要望があったとき、頭ごなしに否定することはおすすめできません。要望を無視したことで、HSPの人の作業効率が下がったり、ストレスによる離職が発生した場合、会社としても損失になります。対応の仕方が不適切だった場合、ハラスメントに該当するおそれも…。HSPの人の要望に耳を傾けることで、会社として新しい気づきや意義のある配慮に繋がる可能性もあるでしょう。
とはいえ、HSPの人の要望を何でも聞き入れるべきというわけではありません。適切なラインを見極めるために、お互いのコミュニケーションが不可欠といえます。
職場のHSPの人への上手な接し方や配慮
職場で「私、HSPなんです」という人がいた場合、どんなことに気をつけて接するのが良いのでしょう。HSPの人と仕事をするときの、接し方のポイントを紹介します。
リフレッシュや休息を促す
HSPの人はストレス発散が苦手だったり、疲労を溜めやすい傾向があります。周囲の人が「そろそろ休憩しようか」など、リフレッシュや休息を促すのもおすすめです。
悩んでいることを丁寧にヒアリングする
HSPの人は共感力が強かったり、他人の気分や感情を察知しやすいため、自分の意見や気持ちを表現することが苦手な人もいます。困りごとがあってもなかなか相談できないケースもあるでしょう。職場にHSPの人がいたら、悩んでいることや困っていることがないか、丁寧に根気強くヒアリングしてみてください。
光や音など職場環境を配慮する
職場環境を整備することは、HSPの人にとって重要な意味を持ちます。光がまぶしすぎないか、大きな音が聞こえやすい位置にいないかなど、仕事しやすい環境づくりを推進しましょう。
タスクは見える化し、見通し良くする
HSPの人はさまざまな刺激を受けやすい性質があります。たくさんの刺激や誰に会うのかわからない状況がストレスが大きくなりやすいでしょう。タスクはできる限り見える化し、段取りしやすいように配慮すると、ストレスが和らぐでしょう。
HSPの長所を活かす方法を考える
HSPには長所もたくさんあります。相手の気持ちを察知し、人のために行動することが得意です。また、物事を深く考える思慮深いところも長所になります。そうしたHSPの長所を活かす仕事を振るという方法もおすすめですよ。
おわりに:HSPの人が職場にいたら特徴を知るところがスタートしよう♪
職場のHSPの人が困っているときは、まずはどんな特徴を持っているのか知るところから始めてみましょう。お互いが気持ちよく仕事をできるよう、コミュニケーションを取りながら何が必要か考えるのがおすすめです。
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