転職によるキャリアアップや成果主義の雇用形態が進み、年功序列型以外のキャリアも一般的になりました。そこで問題となるのが「年上部下」との付き合い方です。目上の人のマネジメントや指導をすることになった場合、職場の良好な人間関係を保つためにどんなことに注意するのが必要なのでしょう。
- この記事でわかること
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- 年上部下の仕事に対する価値観
- 年上部下に活躍してもらうためのポイント
- 年下上司が気を付けたい言葉遣い
- 年上部下のプライドを傷つけるNG言動
年上部下のマネジメントが難しい原因
年上部下のマネジメントが難しく感じられたり、悩みの種になるのは次のような原因が考えられます。
- 年下上司が抱きやすい年上部下に対する悩み
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- 自己判断で仕事を進めることが多い
- 困ったことやトラブルが起きたときに報告・連絡・相談をしてくれない
- 仕事の催促がしにくい
- 指導や注意をしても改善してくれない
- 新しいルールやシステムを受け入れてくれない
- 仕事に対する価値観や休暇の取り方の考え方が違う
- ハラスメントに関する理解が得にくいことがある
成果主義や実力主義の雇用形態が浸透してきたとはいえ、年齢による社会経験というのはやはり重要です。年上部下の場合、仕事の経験を積んできたという自信や社会人としての対するプライドが培われています。そのため年下上司の指示よりも自分の判断の方が適していると判断する人もいるでしょう。
年上なのに年下に相談するのは「情けない」「悔しい」「自分の力でなんとかできるはず」と思い悩み、報連相や情報共有を怠ったり、素直に年下上司の言うことを呑み込めないこともあるのです。
会社は年下上司に対して、若さからくるフレッシュな考え方や時代に沿った仕事の進め方を期待していることもあります。ただし年上部下が新しい仕事のやり方に抵抗感を覚えることも考えられます。
年下上司と年上部下のジェネレーションギャップ
年代が違うということは、職場でジェネレーションギャップが発生しているのが自然です。たとえば年上部下というと、高度成長期やバブル崩壊、就職氷河期と呼ばれる世代の人もいるでしょう。仕事に対する考え方やビジネスマナー、社会情勢や国の教育方針などは、各年代ごとに特徴があるものです。
若手の年下上司は主に、ゆとり世代やさとり世代、ミレニアル世代、Z世代と呼ばれる世代が考えられます。若い世代はデジタルネイティブとも呼ばれ、スマホやパソコン、インターネット、AIなどテクノロジーが身近にある世代です。
- 年上部下世代の仕事に対する価値観
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- 長期的に会社に勤めるのが理想的
- 安定的に仕事をしたい
- 残業することが評価につながりやすい
- 所属する企業や社会の役に立ちたい
- 飲み会など業務時間外のコミュニケーションも大事
- 年下上司世代の仕事に対する価値観
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- 仕事にやりがいや楽しみを見出したい
- 新しいチャレンジや仕事を通した成長が重要
- キャリアアップや収入アップに挑戦的
- 残業はあまりしたくない
- プライベートはしっかりと確保したい
こうした特徴はあくまでひとつの例であり、全員に当てはまるものではありません。ただし年代によって仕事に対する価値観も変わってくるということは意識しておきましょう。
年上部下との接し方のポイントとNG言動
年上部下は経験と知識を持った人材です。ところが接し方次第では能力が十分に発揮されないおそれがあります。年下上司が年上部下をマネジメントするときは、次のようなことを意識しましょう。
年上部下に敬意をもって接するのが基本
人生の先輩であり目上の存在である年下部下に対して、敬意をもって接することが大切です。
- 年上部下にやってはいけないNG言動
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- 呼び捨てで呼ぶ
- タメ口で話しかける
- 強い口調での叱責
- 大勢がいる前で厳しく叱る
- 普段は敬語なのに、注意・指導のときだけタメ口になる
- 従来のやり方を強く否定するような指示
- 「これくらいできるのが当たり前でしょ」など経験を否定する言葉で注意・指導する
- 年齢を揶揄するようなジョーク
仕事で上司・部下という関係になったとしても、年上の存在には敬意を払いましょう。年下上司が敬意をもって接することで、年上部下のプライドを守ることもできます。こうした信頼を築くことで、良好な人間関係が構築されていきます。
年上部下を頼ったり、相談してみる
年上部下から学ぶことはたくさんあるはずです。仕事のコツや長年培ってきた社内外とのつながりなど、経験豊富な年上部下は能力的にもメンタル的にも頼れる存在になります。
- 年上部下を頼るポイント
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- 「〇〇さんの力を貸してもらえますか」と協力を仰ぐ
- 「〇〇さんのおかげで仕事がスムーズです」など褒める
- 社内外のネットワークを紹介してもらう
- 年上部下の成功談を聞いてみる
- チームメンバーの前で、年上部下を頼ってみる
「自分は頼られる存在なんだ」と思ってもらうことで、年上部下のモチベーションが上がることがあります。若くして上司になったことの不安を素直に相談してみることで、お互いが打ち解けることもありますよ。
注意や指導は柔らかい言葉遣いで
上司が部下に注意や指導をするときは、基本的に冷静でいることが大切です。これは部下が年上でも年下でも変わりません。ただし年上部下に対する場合、言葉遣いはより柔らかくするように意識しましょう。
- 年上部下の注意や指導での言葉遣い
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- 「申し訳ないのですが」「私の勘違いかもしれないのですが」などクッション言葉を入れる
- 「〇〇さんのやり方も悪くないのですが~」と、人格や個性を否定しているわけではないことを伝える
- 「~しないでください」ではなく、「やり方を変えて、~~しましょう」など否定的な言い方を控える
- 「~の方がいいように思われますよ」など断定的な言い方は控える
- 「〇〇さんのおかげで仕事がスムーズです」など褒める
- 「私はこう考えるのですが、〇〇さんの意見ではどうですか?」など対話的な注意・指導をする
- 「チームのため」「プロジェクト成功のため」の注意・指導であることを伝える
- 注意・指導は短時間で端的に伝えることを目指す
- 注意・指導の後は気持ちをすぐに切り替えて、普段通りに接する
言い方もですが、相手が忙しそうなときよりは仕事が落ち着いていて心に余裕があるときの方が、注意や指導は受け入れやすい傾向があります。年上部下の考えや意見にも耳を傾け、一方的な注意や指導にならないようにしてください。
年下上司だからといって下手に出すぎない
年上部下には気遣いが必要ですが、だからといって上司が部下の顔色を伺ってばかりでは仕事が進みません。上司の仕事は、部下の指導や管理、プロジェクトの進捗管理など多岐にわたり、チームのバランスを取ることが求められます。
年上部下のことだけ注意しないというのは、上司としての役目を果たせているとは言えません。上司としてチームをどのようにまとめていくのか、プロジェクトを成功に導くために必要なことは何なのかを考え、しっかりと仕事で実践していきましょう。上司だからといって一人で悩まなければいけないわけではありません。他部署の管理職や人事部に相談し、年上部下との接し方についてアドバイスをもらうのもおすすめですよ。
おわりに:年上部下は経験豊かな人材!接し方を工夫して活躍してもらおう
年上部下とのコミュニケーションのポイントは、敬意を払うことと言葉遣いが重要です。お互いが気持ちよく仕事を進めるためにも信頼関係を構築していきましょう。
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