還暦と言えば、日本でポピュラーな長寿のお祝いです。以前は還暦といえばおめでたい長寿だったのです。その後も節目ごとにさまざまなお祝いがあります。
今回は、そんな長寿のお祝いについて、種類や金額の相場、プレゼントのマナーをまとめました。長生きなおじいちゃん・おばあちゃんに、お祝いを送ってはいかがでしょうか。
- この記事でわかること
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- 長寿のお祝いをする年齢とイメージカラー
- 祖父母に喜ばれる長寿のお祝いプレゼントの選び方
- 熨斗とメッセージカードを付けるときのマナーや例文
長寿のお祝いの種類って?数え年と満年齢どっちで祝う?
長寿のお祝いにはさまざまな考え方がありますが、一般的には以下のようなお祝いがあります。日本百貨店協会によるイメージカラーも合わせて紹介します。
- 還暦(かんれき、61歳):赤色
- 十干十二支が一巡し、生まれた年と同じ干支に還るため
- 緑寿(ろくじゅ、66歳):緑色
- 日本百貨店協会が、平成14年に新しい長寿祝いとして提唱したもの。ろくろく(緑緑)という語呂合わせから、お祝いの色を緑として設定した
- 古稀(こき、70歳):藍色
- 中国の唐時代の詩人、杜甫が「人生七十古来稀なり」と詠んだことが由来。70歳まで生きる人は、古来、珍しく希少であった
- 喜寿(きじゅ、77歳):黄色
- 「喜」という字の草書体が「七」を3つ重ねた形であり、「七十七」と読めることから
- 傘寿(さんじゅ、80歳):オレンジ
- 「傘」という字の略字が「八」と「十」を重ねた形であり、「八十」と読めることから
- 米寿(べいじゅ、88歳):ベージュ
- 「米」の字を崩すと、「八十八」と読めることから
- 卒寿(そつじゅ、90歳):紫色
- 「卒」の略字が「九」と「十」を重ねた形であり、「九十」と読めることから
- 白寿(はくじゅ、99歳):白
- 「百」から「一」を引くと「白」になることから
- 百寿(ももじゅ、100歳)
- 文字通り、百歳のお祝い。1世紀が100年であることから、「紀寿」と呼ばれることも
この他、100歳を超えた長寿のお祝いとしては108歳の「茶寿(ちゃじゅ、八十八の上に十が二つ並んでいるように見えることから)」、111歳の「皇寿(こうじゅ、白=白寿の下に一、十、一と並んでいるように見えることから)」などもあります。
長寿祝いの年齢は満年齢と数え年のどちらで数えるのか、という問題ですが、近年では数え年がだんだん廃れてきていることもあり、わかりやすい満年齢の誕生日やその年の敬老の日などにお祝いすることが多いようです。ただし、還暦だけはその意味から必ず満60歳、数え年の61歳でお祝いします。
長寿のお祝いは色が決まってるの?好きなものをあげるのも◎!
上記で長寿祝いの色を紹介しましたが、色の名前がお祝い名に含まれている白寿であっても、必ずしも色にこだわりすぎる必要はありません。昔ながらの慣習を大切にする人なら、古稀や喜寿に紫色のちゃんちゃんこ、頭巾や座布団を贈るのも喜ばれるかもしれませんが、現代の70代はまだまだ元気な人も多く、お年寄り扱いを嫌がる人も多いです。
ですから、その人が本当に喜ぶもの、好きなものを贈るのが何より良いお祝いになるでしょう。もちろん、贈る側がサプライズプレゼントをしたい場合は、日頃からさりげなく本人にリサーチしておくことが大切です。温泉旅行やホテル・レストランでの食事会などをプレゼントするのも良いでしょう。
しきたりを軽視するのではなく、お祝いの本当の意味を考えたとき、現代ではやはり本人が心から喜ぶものを用意するのが最も大切なマナーなのです。日頃から付き合いのある兄弟や家族がいれば、一緒に計画してお祝いするのもおすすめですよ。
両親や祖父母へ 長寿のお祝いにかける金額の相場
長寿祝いの費用として決まった金額があるわけではありませんが、一般的な相場は以下のようになっています。
- 両親へ:20,000円〜30,000円
- 祖父母へ:10,000円〜20,000円
- 親戚へ:5,000円〜20,000円
- 恩師など、親戚縁者以外へ:10,000円前後
もちろん、これはあくまでも相場であり、お祝いしたい人が好きな金額に設定して構いません。また、負担は兄弟で等分するのが一般的です。もし、孫もいて孫もお金を出してくれるという場合、少し少なめになるよう配慮してあげると親切でしょう。お祝いしたい全員で相談し、お互いに無理のない金額で楽しくお祝いするのが一番です。
長寿のプレゼントの熨斗はどう選ぶ?
長寿祝いのプレゼントに熨斗(のし)をつける場合、以下のようなマナーを守ってつけましょう。
- 「内熨斗」と「外熨斗」について
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- 礼儀として熨斗をつけることが重要なので、どちらでもOK
- 贈る相手と親密な間柄であれば、形式にこだわりすぎずリボンやラッピングでもOK
- ただし、熨斗をつけるならリボンはつけないよう注意
- 水引について
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- 古くは品物に掛け紙をし、その上から「水引」という紐でくくっていた
- 現代では、水引も熨斗と同様、熨斗紙に印刷されている
- 長寿祝いでは「蝶結び」の紅白や金赤、金銀などを使う
- 表書きの書き方
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- 品物と一緒に目録をつけなくなった代わり、簡略化されて表書きを記すように
- 「御祝」、「祝◯◯(祝古稀、などお祝いの名前を書く)」など
- 四文字は「し文字=死文字」と呼ばれてしまい、お祝いにふさわしくないと気にする人もいるので避ける
- 「祝」のみ少し大きめに書いて、少し離して「還暦」などと書くやり方も
内のしとは「贈り物に直接のし紙をかけ、その上から包装紙で包装する」というつけ方、外のしとは「贈り物を包装してから、その上にのし紙をかける」というつけ方です。基本的にはどちらでも構いませんが、郵送などで手渡しできないときは「内のし」にして熨斗が傷つかないようにする、直接渡せるときは「外のし」にして表書きが見えるようにする、というように使い分けると良いでしょう。
また、水引は近年、のし紙に印刷されているのがほとんどです。わざわざ結ぶ必要はないのですが、「繰り返しお祝い事があるように」と、簡単に解けて何度でも結び直せる「蝶結び」を選びましょう。色はおめでたいことを表す紅白のほか、金赤、金銀などお祝い事にふさわしい色を選べばOK です。
表書きの紙の、水引を挟んで下段にあたる部分に、表書きよりも一回り小さい文字で贈り主の名前を書きましょう。毛筆や筆ペンを使い、楷書で丁寧に書きます。連名で贈る場合は、地位や年齢が高い順に右から書いていくのが一般的だとされています。
メッセージカードをつける場合、表書きは上記の熨斗に関するマナーと同じように、四文字にならないよう気をつけましょう。例文としては以下のようなものがありますが、お祝いの気持ちを伝えられて失礼に当たらないなら、決まった形式はありません。
- つつがなく古稀を迎えられたことを、心よりお祝い申し上げます。どうぞこれからも、お身体を大切にいつまでもお元気でお過ごしください。
- 長寿のお祝いを申し上げます。せっかくのお祝いの席に参上できず、大変残念に思っております。これからもどうぞお元気で、ますますのご活躍をお祈りしております。
- 謹んで、米寿のお祝いを申し上げます。ご健康と益々のご活躍をお祈り致しております。
食べ物を贈るなら特別感がありつつ体にやさしいものを
長寿のお祝いに決まった食べ物はありませんが、お祝いにふさわしい験担ぎをする食べ物として、以下のような食材や料理があります。
厄除けや健康を祈る
- 小豆
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- 厄払いの意味があり、お赤飯は神様のお供え物として使われていた名残ともされ、お祝いの定番として使われる
- 甘味が好きな人ならあんこのお菓子や、無病息災・長寿の験担ぎになる黒豆を一緒に使った甘味もおすすめ
- 豆類全般に「まめまめしく働く」の語呂合わせがあるため、一生懸命働いて家族を守ってくれた両親や祖父母へのお祝いにもぴったり
- 伊予柑(いよかん)
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- 「いい予感」の語呂合わせで験担ぎに使われるだけでなく、ビタミンCを豊富に含み感染症予防にも役立つ
- 「いつまでも元気で息災に過ごしてほしい」と願う相手にぴったりの食べ物
- ゼリーやアイスクリームなら食べやすく、洋食が好きな人にはフルーツサラダにするのもおすすめ
- アワビ
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- のし袋のモチーフとしてよく使われ、縁起物として親しまれてきた食材
- タンパク質やミネラルが入っていることに加え、肝機能を高めてくれるタウリン、皮膚や粘膜を健康に保つビタミンAなど、健康維持に必要な栄養がたっぷり
- 中国では不老不死の妙薬として伝えられるほど、薬膳としての効果も注目される
福を呼ぶ
- 尾頭つきの鯛
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- 「めでたい」で知られる鯛は、お祝いの席にふさわしいメニューの一つで喜ばれる
- 小豆同様、赤い見た目が邪気を払うとされ、悪運を遠ざけて福を呼ぶ意味でも知られる
- お祝い膳は見た目の良さも重視されるので、尾頭つきの堂々とした見栄えの良さも福につながる
- 自宅でお祝い膳を作るときは、かごの上に紅白の敷き紙を挟んだり、松の葉を添えたりすると華やかになる
- 松の葉は常緑で寿命が長く、長寿を祝う縁起物として知られる
- 同じく長寿の象徴である菊の葉、殺菌力が強い笹の葉などもおすすめ
- 細く長い幸せを願う、ごぼう
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- 地面にまっすぐ根を張るので、「細く長く幸せが続くように」との願いを込めて験担ぎされる
- お正月のおせち柔らかく煮たごぼうを軽くたたいた「たたきごぼう」が使われるなど、お祝いとして親しまれてきた食材
- ごぼう茶で有名になったように、抗酸化作用が強い野菜としても知られ、生活習慣病予防や腸内環境正常化につながる
- 血糖値の上昇を抑えたり、悪玉コレステロールを抑えたりするのにも役立つ
- 長生きの象徴、海老
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- えびは漢字で「海老」と書くように、長いヒゲや曲がった背筋などが長寿の象徴とされる
- お正月のおせちに海老のうま煮を入れるのは定番ですが、よりお祝いらしさを出すなら伊勢海老がおすすめ
- 温泉旅行や食事会なら、メインに伊勢海老を盛り込んでもらう、伊勢海老の入ったフルコースを選ぶなども良い
お祝いの日らしさを出して喜んでもらうには、普段なかなか食べていない食べ物を選ぶのがおすすめです。食卓に出すだけで特別感を演出できるような、高級感のある食べ物だと喜ばれやすいでしょう。
一方で、お年を重ねた方の中には身体が思うように動かない、健康に不安を抱えるといった方もいます。こうした方の場合、単に高級な食事ではなく、相手の心身の状態に差し支えないような食べ物を選びましょう。
たとえば
- 歯が悪いなら柔らかい食べ物を選ぶ
- 一人暮らしやご高齢の夫婦だけの家庭には開けやすく調理しやすいものを選ぶ
- 食欲が落ちてきてあまりたくさん食べられない場合、賞味期限が長くゆっくり食べられるものを選ぶ
といった心遣いが大切です。喜んでもらえるように、祖父母の食の好みのほかにも体調の変化などを日頃から気にかけてみましょう。
おわりに:長寿のお祝いは本人が喜ぶものや、心身の状態に合わせて
長寿のお祝いは、還暦を皮切りにいくつかの機会があります。平均寿命が伸びてきた現代では、100歳を超えるお祝いを迎える人も増えてきました。お祝いであげるプレゼントやメッセージに決まりはなく、本人が喜ぶものを選びましょう。
また、お祝い事でよく使われる験担ぎの食材を選ぶのも良いですが、高齢の方は心身の状態に不安を抱えていることもあります。本人の状態に合わせた食べ物を選ぶ気遣いも、お祝いごとには大切です。
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