正座をして長時間経過すると、足がしびれたという経験がある人も多いでしょう。こうしたしびれはもちろん疾患によるものではありませんので、しばらくすれば治ります。しかし、心当たりがないのに手指や足、顔がしびれる場合、何らかの疾患が隠れているかもしれません。
そこで、今回は手指・足・顔がしびれる原因として考えられる疾患や、日常生活上の習慣についてご紹介します。
- この記事でわかること
-
- 体のしびれでみられる症状
- 高血圧や肥満、姿勢の乱れがしびれを引き起こす理由
- 口の周囲のしびれは重大な病気のサイン?
- ヘルニアの症状かも?足のしびれの特徴
- 脳腫瘍や脳梗塞で注意したいしびれ
しびれってどんな感覚?しびれにも種類がある?
しびれには、手足に力が入りにくくなる「運動麻痺」と、正座をした後に感じるジンジンとした「感覚異常」の2種類があります。
- 運動麻痺
- 脳から手足を動かす命令を伝える「運動神経」の経路に障害が起こって発生
- 手足の筋肉に思い通りに力が入らなくなったり、筋肉が衰えたりするために起こる
- 感覚異常
- 手足の感覚を脳に伝える「感覚神経」の経路に障害が起こる
運動麻痺と感覚異常はどちらかのみが起こる場合も、両方が同時に起こる場合もあります。これらの神経が傷つく原因はさまざまで、時には脳や脊髄が障害されることもあります。障害が起こった場所によってもしびれの原因が異なります。痺れが生じると、主に以下のような症状を自覚します。
- びりびりとした、正座の後に足に感じるようなしびれ
- 感覚が鈍くなったと感じる
- 力が入らない
脳・脊髄といった中枢神経のほか、脊髄から枝分かれして手足の末端まで伸びている末梢神経のどこに異常が起こってもしびれが生じることがあります。そのため、しびれがどんな風に起きるかによって原因となる場所や病気を絞り込みます。
血行不良や肥満も?日常的な体への負担によるしびれって?
比較的よくあるしびれの原因として、日常生活で無意識に身体に負担がかかっていることが挙げられます。特に、血行が悪化したり神経が圧迫されたりしてしびれを感じることはよくあることです。
- 血行が悪化する
- 肩こりがひどくなったり、腕や背中のあたりが冷たくなったりしてしびれる
- 手足の先の血行が悪くなるために起こるしびれ
- 神経が圧迫される
- 神経を長年にわたって酷使してきたり、加齢に伴って神経の通っている管が細くなったり、背中の骨が変形したりして神経が圧迫されるしびれ
- ピリピリした痛みを伴うしびれ
また、体重が重く肥満傾向の人はさまざまな動作で身体に負担がかかりやすいです。例えば、座っているときに身体にかかる圧力が大きいため、神経が圧迫されてしびれやすくなります。しびれと言えば正座がよく連想されますが、折り曲げた足の上にお尻を乗せるこの姿勢は特に体重が重くなるほどしびれも強くなる傾向にあります。
肥満になると高血圧傾向になり、血管が細くなって血流も悪くなり、手足にしびれが生じるケースもあります。肥満気味の人で身体にしびれを感じることが多ければ、食生活や運動習慣などを見直してダイエットを試みましょう。
座ったときの姿勢が悪い人も、やはり神経や血流を圧迫しやすくなります。座ったとき、すぐに足を組んでしまったり、猫背になったりしてしまう人は要注意で、骨盤を中心に骨格が歪みやすくなってしまいます。骨盤にゆがみが生じると、他の骨も連動してバランスが崩れるので、身体全体の血流が悪くなって手や足が痺れてしまうのです。
座っていると身体のどこかがしびれやすい、という人はまず正しい姿勢で座る方法を確認してみましょう。背筋をまっすぐ伸ばし、正しい姿勢で座っていれば長時間同じ体勢をしていても身体がしびれにくくなります。
日常的に神経が圧迫されていると、血管や骨などが神経に触れたり、神経を圧迫したりしてしびれを伴う疾患につながってしまうこともあります。特に三叉神経痛・坐骨神経痛を訴える人は多く、脊柱管狭窄症(脊柱管がつぶれて中の神経を圧迫する)や椎間板ヘルニア(椎間板が飛び出して周囲の神経を圧迫する)も同様に下半身のしびれの原因となります。
他にも血行不全による閉塞性下肢動脈硬化症、帯状疱疹(帯状ヘルペス)の後遺症、脳卒中、糖尿病による代謝障害などが原因で手足のしびれが起こることもあります。
手のしびれの注意点と考えられる病気
上記のように、手のしびれは日常的な要因のほか、何らかの疾患のサインである可能性も考えられます。手は細かい動きをする器官なので、手がしびれてしまうと日常生活への影響も少なくありません。以下のようなしびれがあれば、注意が必要です。
- 最近、手のしびれが強くなってきたような気がする
- 朝起きると、いつも手がしびれている
- 手がしびれて、スマホを落としたことがある
特に注意が必要な手のしびれとして「脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)」から引き起こされるものがあります。脳の血管が破れたり、詰まったりするために起こるもので、手のしびれの他にも「話しにくい、口の周りがしびれる、手足に麻痺が生じる、頭痛がする」といった症状が見られます。もし心当たりがあれば、すぐに病院を受診しましょう。
また、手のしびれが長く続いている場合は、以下のような疾患の可能性も考えられます。思い当たる症状があれば、早めに病院を受診しましょう。
- 頚椎症性脊髄症・頚椎症性神経根症
- 首の骨(頚椎)の間でクッションの役割をしている「椎間板」などが変形することで、痛みや手の動かしづらさなどが生じる
- 従来は中高年に多い疾患だったが、近年ではパソコンやスマホを頻繁に使う若年層にも増えている
- 手根管症候群
- 指先の感覚や手の運動などに関わる「正中神経」に障害が起こり、手のしびれや痛みなどが生じる疾患
- 妊娠・出産期や更年期の女性に多く見られるほか、骨折やスポーツのしすぎなどが引き金になることも
- 夜間から明け方にかけて強い痛みを感じ、手を握ったり曲げ伸ばしをしたりすることで多少痛みが和らぐなどの特徴がある
- 多発性硬化症
- 複数の神経症状が起こる難病で、手のしびれ・ふらつき・排尿障害・視力や見え方の障害などが比較的多く見られる
- 症状には個人差が大きいのもこの疾患の特徴
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病になると末梢神経が知らず知らずのうちに傷つき、本来の働きが十分できなくなることがある
- 痛みや温度に鈍感になったり、手のしびれが生じたりする
- 糖尿病の治療中に手のしびれが生じたら、まず主治医に相談を
足のしびれの注意点と考えられる病気
足のしびれは正座などでもよく起こるため軽視しがちですが、こうした理由がないのに以下のように足のしびれが生じる場合、続く場合は注意が必要です。
- 正座などこれといった原因がないのに、足がじんじんとしびれる
- 腰痛がつらく、足のしびれもきになる
- いつも足の裏になにかがはりついているようで、しびれている
足のしびれは何らかの疾患が原因となっている場合が多いです。特に、足のしびれを引き起こす神経や骨に関する疾患として考えられるものには、以下の4つがあります。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている「椎間板」が、腰への負担などで変性し、神経の通っている「脊柱管」内に飛び出して神経を圧迫するもの
- 主な症状は腰痛だが、足や臀部の周辺にしびれ・痛みを伴うこともある
- 脊柱管狭窄症
- 背骨の中を走る神経や血管が、さまざまな原因によって圧迫され発症するもの
- 足がしびれる、ある程度の距離を歩くと痛むが椅子にしばらく座っていると治る、といった症状が特徴
- 最初は片方の足だけに症状が出て、次第に両足に広がっていく、というケースも
- 頚椎症
- 首の骨が加齢とともに変形し、神経などが圧迫されて起こる疾患
- 神経が圧迫されている場所によって症状が異なる
- 両手がしびれて細かい動作がしにくくなる、足がしびれて次第に歩くのが不自由になる、などの症状が特徴的
- 足根管症候群
- 足の裏に行く神経が、内くるぶしの部分で圧迫されて起こる
- かかとを除く足の裏から足の指にかけてしびれて痛くなるが、足の甲や足首より上にはしびれがないのが特徴
- 足の裏になにかがついているような感じを伴うことも
その他、以下のような全身性の疾患が原因となって足のしびれが生じることもあります。思い当たる症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。
- 脳血管障害
- 一般的に脳卒中と呼ばれるもの
- 大きく分けて「脳出血(脳の血管が破れて出血する)」と、「脳梗塞(脳の血管が詰まる)」の2種類
- いずれの場合も手足のしびれ、意識障害、呂律が回らないなどの症状が見られる
- 発症後すぐに適切な処置をすることが非常に重要なため、おかしいと感じたらすぐに病院へ
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、神経が傷ついてさまざまな症状が出ることがある
- 特に足先や手先などの末梢神経で起こりやすいので、足先のしびれ・冷え・足の裏に紙が貼りついているような感覚などの症状がよく見られる
- 糖尿病治療中にこうした症状があれば、すぐ主治医に相談する
- 閉塞性動脈硬化症
- 動脈硬化などによって血管が狭くなり、主に足の血管に障害が起こる疾患
- 足のしびれ・痛みのほか、休息をとりながらでないと歩けないといった症状が見られる
顔のしびれの注意点と考えられる病気
しびれというと手足のイメージが強いかもしれませんが、顔がしびれることもあります。とはいえ、顔のしびれの多くは末梢神経性のものでしびれそのものもわずかであり、原因が特定できなくても問題ないものです。また、顔の片側が麻痺する疾患の場合、麻痺部分にしびれを感じることもあるのですが、この多くはウイルス性で、治療によって麻痺が改善すれば消滅します。
ただし、以下のような場合は注意が必要です。
- 脳血管障害によるもの
- 手足のしびれ同様、脳出血や脳梗塞によって脳の視床・脳幹などが障害されると顔がしびれる
- 脳腫瘍や頸部腫瘍
- 脳の側頭葉の底の部分、脳幹などに見られる一部の脳腫瘍や、頸部腫瘍から顔のしびれが生じることも
同じ顔のしびれでも、緊急性を要するものとそうでないものがあります。もちろんこれらを自己判断するのは難しいことですから、顔のしびれを感じたらまず専門医のいる病院を受診し、問診・神経の所見・磁気共鳴画像装置(MRI)の画像診断などから総合的に判断してもらい、治療方法を相談していきましょう。
おわりに:手指や足、顔のしびれは神経の圧迫や血行不良が多い
手指や足、顔がしびれるという場合、多くは日常生活で身体にかかる負担から血行が悪くなったり、神経が圧迫されたりして起こるものです。例えば、体重が重く肥満傾向の人や、姿勢が悪くて骨格が歪んでいる人などはこうした症状が起こりやすいです。
一方で、しびれは脳血管障害など重篤な疾患のサインである可能性もあります。手足のしびれが続く場合や、他の疾患が疑われるさまざまな症状があれば、すぐに病院を受診しましょう。
コメント